死印

【しいん】

ジャンル ホラーアドベンチャー



対応機種 プレイステーション・ヴィータ
プレイステーション4
Nintendo Switch
Xbox One
Windows 7/8.1/10(Steam)*1
発売元 【PSV/PS4/Switch】エクスペリエンス
【Win】Aksys Games
開発元 エクスペリエンス
発売日 【PSV】2017年6月1日
【PS4】2018年1月18日
【Switch】2018年6月28日
【One】2018年10月25日
【Win】2019年4月4日
定価 【PSV/Switch】
 パッケージ版:4,800円(税別)
 ダウンロード版:4,320円(税込)
【PS4/One】
 通常パッケージ版:5,800円(税別)
 限定版(PS4のみ):7,800円(税別)
 ダウンロード版
【PS4】5,000円(税別)
【One】5,800円(税別)
【Win】5,150円(税込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 良作
ポイント 命がけの心霊スポット巡り
嫌悪感を与える秀逸なビジュアル
ボリュームに難あり
心霊ホラーシリーズ
死印 / NG / 死噛~シビトマギレ~


概要

ダンジョンRPGの雄であるエクスペリエンスが、これまでとは打って変わった同社初となるホラーアドベンチャー。

舞台は体に現れると記憶をどんどん失っていく "シルシ" と、"シルシ" を人間に刻み付け最終的にはその命を奪う“怪異”が潜む東京のとある都市。
自身の記憶を失った主人公が、同じく "シルシ" を刻まれ主人公の元を訪れた "印人(シルシビト)" と共に、心霊スポットを探索し“怪異”に立ち向かう。

なお、ゲーム中で明かされるが舞台設定は1990年代後半であり、携帯電話はまだ普及しきっていない頃。
都市伝説関連のムック本やテレビ番組が小さなブームとなり、世紀末感になんとなく不安と高揚を感じていた時代というのが本作の土台になっている。

ちなみに本作の声優陣は新人向けの声優のみで、理由は「声優陣のギャラが安い」「お得意様」の2つ。


ストーリー(公式サイトより引用)

東京都H市、この郊外都市に最近奇妙な噂話が広がっていた。

"シルシ" を持つ者は死ぬ──

突如体にまるで噛まれたような痣 "シルシ" が刻まれ、 原因不明の死を遂げるというものだ。

事実この町では、人が謎の不審死を遂げる怪奇事件が発生していた。
この事件は都市伝説的に、どこかで幽霊に遭遇したせいだ、
知らぬ間に呪いに祟られるようなことをした、などと様々な憶測を元に広まっていった。

記憶を失ったあなたは、"シルシ" を持つ者を保護するという洋館の前にいた。
何かに引き寄せられる様に洋館の扉を開くと、そこで美しい人形に出会う。

「ようこそ、九条館へ──」

続けて人形は語る。
「このままでは、あなたは死にます」
「ただ、助かる方法がない訳ではない」

"死" へのカウントダウンはすでに始まっていた…


登場人物

  • 八敷一男(やしき かずお)*2(CV:根塚良)
    • 自分の過去・素性・名前すらもシルシのせいで記憶から抜け落ちてしまい、無意識のうちに九条館へと足を踏み入れた男性。八敷一男とは、メリイが名無しでは呼称に困るという経緯で即席で付けられたもの。
    • 後に来る他の印人の怪異を消滅させても彼のシルシは消えず、その理由と過去の素性を探すために次々と怪異に立ち向かう。
    • イラストでは青年程度にも見えるが、作中では「冴えない中年」と表現され、他の印人からも「オッサン」呼ばわりされている。
    • 彼の容姿はプレイヤーによってある程度変更できるが、これに関しては後述。
  • メリイ(CV:立花理香)
    • 九条館エントランスホールのソファーに座っている、人間を模した等身大のフランス人形。「メリィ」ではない。
    • 館の主だった九条サヤが生まれるよりも遥かに前から九条館に存在しているらしく、この世ならざる存在の怪異に対しても多くの知見がある。
    • 彼女のアドバイスを元にプレイヤーは印人達の救済を目指して動くことになる。
+ 以下、その他の登場人物。ネタバレ無しだが長いため格納
  • 九条さや
    • 九条館現当主。主人公が館を訪れた時に、腹部から大量の花を咲かせた奇妙な死体となって現れる。
  • 渡辺萌(CV:高木友梨香)
    • オカルト好きで心霊スポットを巡っている女子高生。
    • 一部のプレイヤーからはとある理由で「着やせするタイプ」と評判。
  • 吉田つかさ(CV:高木友梨香)
    • エリート小学校に通う男の子。子供らしからぬ物言いをするがピンチに陥ると攻撃的な側面が出てしまう。
    • 恐怖を感じている際の表情がかなり怖い…かも。
  • 真下悟(CV:川端快彰)
    • ダウナーな元刑事。真偽不明の不祥事によって退職した(させられた)後も単独で怪異を追っていた。
  • 有村クリスティ(CV:瀬戸英里奈)
    • 元ネタが透けて見える通り、アナウンサーの女性。
    • 訳あって自殺を望んでいたが、主人公と出会った以降、共に怪異に挑むことになる。
  • 長嶋翔(CV:中村良太)
    • 怪我によって野球の道を閉ざされた不良少年。勢いは良いが心霊関係については極度の怖がり。
  • 森宮すず(CV:富沢恵莉)
    • 複雑な家庭事情で父母が別居しているためか大人びており、夜の樹海でも物怖じしない女子小学生。
    • その事情をきっかけに自ら望んで怪異に触れた結果、"シルシ" を受けることになる。
  • 中松栄太(CV:加瀬雅洋)
    • 時代当時を反映したファッションのアイドルオタク。自称自営業。
    • パソコン通信時代からオンライン交流を嗜んでおり、その時に得られた知識が攻略に役立つことも。
  • 柏木愛(CV:船戸ゆり絵)
    • 元気が取り柄の地方ローカルアイドル。テレビ出演もしている。ピアノ演奏はライブで弾き語りできる腕前。
  • 広尾まどか(CV:石飛恵里花)
    • 製薬会社に勤める女性。学者筋の家系で他人への共感も薄い。
    • いかにも地味な理系女子的見た目ではあるが、脱ぐと意外に…。
  • 安岡都和子(CV:加瀬雅洋)
    • 銀座一等地に店を構える高齢の占い師。
    • その霊能力は本物と作中でもお墨付きだが、攻略上は現実的な洞察力に助けられる場面も。
  • バンシー伊東(CV:川端快彰)
    • 何故かマンホール下の地下壕に棲みついている老人。霊的能力があると自称している。
  • 大門修治(CV:根塚良)
    • 白衣をまとった男性医師で、最後に出会う印人。
    • 腕はいいが本人の不健康そうな見た目も手伝って、評判はそれほどよくないらしい。
  • 山下大輔(CV:川端快彰)
    • 市からの委託で廃校舎の警備に来た警備職員。校舎に訪れる主人公たちを追い返した後は散々な目に遭う。
  • 木村正男(CV:山下大毅)
    • 配偶者の浮気のために自殺志願で樹海に来た中年男性。主人公たちの説得によって自殺を断念した。

システム

基本システム

  • オーソドックスなテキストアドベンチャー形式に加えて、DRPG風の探索を加えたタイプ。
  • 主人公は自分と同じ「シルシ」を刻まれた「印人(シルシビト)」から1人をパートナーに選び、心霊スポットの探索を行う。
  • 心霊スポットの探索は上述の通りDRPG風の移動形式で、いくつかの区切られたマスを探索しながら進行していく。
  • 探索中は左スティックを動かすことにより、懐中電灯を照らして調べる「調査モード」に入る。
    • この「調査モード」を行いながら色々な場所を調べていき、必要なアイテムを入手していく。
      • ストーリー設定上「死まで○時間」とカウントダウンが語られていくが、リアルタイムの制限時間はなく、進行に必要なアイテムを入手することでフラグが立つ。そのため時間切れで進退窮まりクリア不能、という心配は無い。

デッドリーチョイス

  • 探索中に発生する、限られた時間内に正しい選択肢を選ぶイベント。
  • 「霊魂」と呼ばれるデッドリーチョイス専用の数値があり、これがライフであり制限時間を表すタイマーでもある。
    • 「霊魂」は選択肢を選んでいる間は自動的に減少し、更に間違った選択肢を選ぶと一定量減少する*3。0になるとゲームオーバー。
    • この「霊魂」は、探索中に見つけられる「ボロボロの御札」で増やすことが出来る。
  • 選択肢自体は、話をちゃんと読んでアイテムの説明文も見ていれば分かる物から、瞬間的な計算を求められる物まで様々。一部においては一般教養も試される。
  • なお探索ルートが複雑化する後半では、運が悪いとヒント入手より前にデッドリーチョイスに出会ってしまい、ヤマカンで答えざるを得ないこともある。
    • とはいえ万が一死亡してもデータロードのほか、ゲームで定められた規定ポイントからやり直しができるため、詰むことはない。

“怪異”の探索と印人

  • 怪異が進行するのを防止するため、印人以外とは極力関わってはいけない
  • 調査中に当の怪異に気づかれる可能性があるため、印人同士は2~3人の少人数でのみ行動しなければいけない
  • シルシが消えた以上は怪異とは無縁となるため、印人は九条館から去らねばならない
  • 以上の諸注意が館にいるメリイから伝えられ、本編中はこの法則にしたがって主人公+パートナーを決めて行動する形となる。
  • 実はこの制約になっているのはとある思惑があり、クリア直前になってその理由が判明する。

“怪異”との対峙

  • 各話にて登場するボスキャラクター「怪異」との戦闘。
  • 探索中で見つけたアイテムを適切に使い、限られたターン内で「怪異」を退けないといけない。
    • 「怪異」はこちらが1回行動する毎に1段階ずつ近づいて来る。基本的に間違った道具を使用すると即ゲームオーバー。
    • こちらは集めたアイテムを駆使して「怪異」の攻撃をしのぎ、「怪異」が最接近したタイミングで弱らせ、動きが鈍ったところへの追い討ちをかけて撃退するのが勝利条件となる。
    • アイテムは単品で使用する物の他、仲間と一緒に連携して使う物、特定のキャラクターだけが使用出来るアイテムがある。
  • 上記の他、大量のダミーアイテム(使用用途が無く選択肢を複雑化させるだけの物)もある。また、意図的な無駄行動が必要となる場面もある。
  • デッドリーチョイス同様、ゲームオーバー時はセーブデータのロードの他、規定ポイントからのリトライが可能。
+ 攻略・ストーリーについてのネタバレを含む
  • 「怪異」の撃退方法には2種類あり、「怪異を破壊」する方法と、「怪異を救済」する方法がある。
    • どちらの方法でもストーリーは進行するが、怪異を「破壊」してしまうと直後に「怪異」の逆襲を受け、同行している印人が死亡する*4
    • また、一度でも「破壊」してしまう(=印人を一人でも死なせてしまう)と、グッドエンドに辿り着けなくなる。

評価点

秀逸なビジュアル

  • 友野るい氏が「怪異」のデザインに加えゲーム中のコンセプトアート(イベントCG)を手掛けているが、その出来は見事の一言。章ごとの終盤にある対決パートにて、強烈なビジュアルの「怪異」がじりじりと距離を詰めてくる様は恐怖や焦燥を掻き立ててくる。
    • 特に2章に登場する「森のシミ男」は、体型・顔ともに生理的嫌悪感を催す仕上がりであり、対峙中に普段はよく見えない顔が最接近したタイミングで露になるさまは(良い意味で)気持ち悪い。
  • ゲームを進める中で表示されるイベントCGでも「顔半分が植物化した警備員が逃げ惑う」「首をへし折られた中年男性に寄り添う森のシミ男」など様々なシチュエーションが描かれ、物語を引き立てている。

心霊スポット探索の雰囲気

  • 本作では廃校・森の中など複数の心霊スポットを巡り「怪異」の手掛かりを探っていくのだが、その雰囲気もしっかりと再現されている。
    • 荒廃した屋内や閉鎖されたハイキングコースを暗闇の中移動するというシチュエーションを、マップのCGだけでなく環境音でも再現しているので臨場感は良好。終盤には絶えず軍歌が流れ続けるというスポットも登場し、その異様な状況下での探索は恐怖感もひとしおといえる。
  • 探索中も懐中電灯を向けた先に一瞬だけいるはずのない人影が映る、聞こえるはずのない音が聞こえるなど「いかにもありそう」な心霊現象がたびたび起こるので、上記のイベントCGも含めて演出・雰囲気のレベルは高い。
    • そもそもほとんどのマップが暗く、背景の細かい所はうっすら見える程度でしかない。そのためプレイヤーは元から「見る」ことに集中している状態になるのだが、一部のグラフィックは「懐中電灯の明かりが当たった時だけ表示される」仕掛けがなされている。そのため、鋭敏になった視覚に突如予想しないものが飛び込んでくる効果をもたらしている。

賛否両論点

「怪異」を撃退出来る印人の制限

  • ゲーム中では様々な「怪異」と、その「怪異」に呪われた印人(章ごとに2~3人)が登場するのだが、印人の中には「怪異」と対峙するときに連れていても撃退出来ない(必ずゲームオーバーになる)キャラが存在する。
    • 体験版にも収録されている1章で具体例を挙げると、植物を操る男の子の悪霊「花彦くん」は生前に校長から受けた非道な虐待により大人に強い敵意を持っており、成人した印人を連れて対峙すると回避不可能な即死攻撃を仕掛けてくる
    • ほかにも「男性じゃないと怪異に有効な打撃を与えられない」「怪異を足止めするために特定の技能を持つ印人が必要」など、撃退出来ない理由付けはちゃんとあるので矛盾や違和感の類はないのだが、それでも「自分が気に入った印人を連れて怪異を撃退したい」と思ってしまうのも仕方がないといえる。
    • このような事情のために、怪異戦必須のキャラにするため探索を中断してわざわざ九条館へ戻ってパートナーを交替しなければいけなくなり、テンポが非常に削がれる。もちろんワープやオートパイロット帰還なんてものは無い。
  • また、2章以降は怪異に出会う前の探索時でも特定キャラクターでないと進行出来ないポイントが出てくる。
    • これ自体は印人ごとの設定や性質を活かしたものであり、寧ろキャラ立ちには不可欠と言える良い要素なのだが、やはり「入れ替えのためにいちいち九条館に戻る」必要がある。前述の少人数行動というルールを理解した上でも若干わずらわしさは感じられるかもしれない。

割とむごい描写

  • 上記の通りビジュアルは十分高く評価できる一方で、CERO:Dの限界に挑むかのような凄惨な描写を描いたイベントCGが多数存在する。1章の時点で「机の上に転がる肘から先の片腕」「胴体を裂いて大量の草花が生えた心霊専門家の死体」と開始10分と経たず飛ばしており、それ以降も「全身に小さい穴が無数に開いた女性の死体」「全身バラバラにされた挙句箱詰めにされている警備員」など、かなり凄惨な場面が続く。
    • かの「暗転ドーン」なら間違いなく暗転ドーンしているであろう、「バラバラ死体の切断面とそこから見えている骨」というものですら、解像度をやや粗くしながらも描かれている。
  • 当然ながら「怪異」に呪われている印人も例外ではなく、進め方によっては上記の場面に相当する死にざまを迎える事がある。マップ背景CGの差分での描写ではあるが、さっきまで一緒にいた印人の身体部位が転がっているというケースもある。
    • 章ごとに違う「怪異」を退けるまでの短い付き合いとはいえ、生き残るために行動を共にしたパートナーが報われずに惨殺されるという結末は辛いものがある。そのキャラに愛着が湧いて「死なせたくない」と思っていた場合はなおさらである。
  • また、凄惨な描写の他にもセクシャルな描写が多数ある。
    • あっても良いとは思うのだが、いくらか「ここでそのセクシーな描写は要るのか?」というタイミングと頻度で出てくる為、気になる人には気になってしまうだろう。
      • 例を挙げると、主人公が垣間見る過去の映像が「半裸のままツタに縛り上げられる女教師」だったり、姿が見えなくなった女性印人が下着姿で吊るされていたりする。
      • 一応これらの展開が発生する理由は作中にきちんと存在しているものの、逆に言えばわざわざ理由付けをしてまで元来ホラーゲームには無用なお色気描写を盛り込んでいるということ。これらを純粋なホラーだけを楽しみたい人が受け入れられるかどうかは疑問符がつくところである。

怪異のバックボーンの悲惨さ

  • これも「むごい描写」に数えることができるが、怪異が生じた背景にはそれなりの事情があり、幾つか性的な意味で生々しい、或いは「胸糞の悪い」ものがある。
    • テキスト数行でさっと語られ、あまり重たく引っ張らないのが多少救いではある。

「デッドリーチョイス」の理不尽さ

  • 「デッドリーチョイス」のイベントでは、失敗すると即死というパターンが序盤から結構な数出てくる。
    • ライフ兼タイマーである「霊魂」を回復する御札が道中落ちているのだが、即死してしまっては「霊魂」がいくらあっても意味が無い。
  • また即死では無いが「全く同じ文言の選択肢から一つ選ぶ」といった、初見では完全な運ゲーの様相を呈する選択肢もあり、理不尽に感じる時がある。
  • この辺の「霊魂」と回復関係がシナリオ上で上手く機能し始めるのが後半になってからなので、そこまで行けば御札の有難みを感じられるようにはなる。
    • しかしそれでもデッドリーチョイスのミスで死ぬという場面が何度も生じる為、死にゲーADVとしての側面がややあると言える。またそれによって「ゲームオーバーを経て同じホラー描写を何度も見ると急激に怖さが薄れる」という難点も併発し得る。

問題点

ゲームのボリューム

  • 恐らく本作を最後までプレイして真っ先に思い浮かぶ問題点。ゲームストーリーはエンディングまで5章、しかも1章あたり1時間前後(要反転)と少なく、やりこみ要素と呼べるものも皆無。エンディングは2つに分岐する、物語の進め方によってエンディングでの印人の近況も変わるといった要素はあるにはあるが、それでも物足りなく感じるだろう。
    • 決して本作がつまらないという訳ではないのだが、税込で5,000円以上の値段(パッケージ版)に対して内容が薄く感じてしまうのは残念である。
    • それに伴い、トロフィーはストーリー(及び必ず発生するイベント)に関係するものに限られており、「怪異」との対峙前にセーブ&ロードを行えば1周でトロフィーコンプが可能となっている。質の高いホラーゲームを楽しみつつプラチナトロフィーが簡単に獲得出来る、という考え方も可能ではあるが。
  • ただし、後発のPS4版/Switch版にでは追加エピソードが入った事に加え、PSV版の方にもDLC*5として配信された。

アドベンチャーゲームに必要なシステムの欠如(改善済)

  • 物語を読み進めるタイプのゲームでありながら、バックログ・オートモード・ウィンドウ消去といった基本的な仕様が発売当初は未実装という状態で、発売直後は不便なプレイを強いられていた。
    • 体験版での意見を反映する形で発売から2週間という早い段階でパッチが配信され、上記システム周りの問題点は改善された。だが、あって当然ともいえるシステムは最初から実装していて欲しかったというのも本音であろう。

全く意味の無いステータス表記と主人公のビジュアル&名前変更

  • 各キャラクターのステータス画面にて、「肉体」「知識」「霊力」「器用」の4つの項目が存在し、数値10を基準に高いか低いかで素質の有無が判別できるといった要素がある。
    • 意味ありげに背景にそのキャラクターのステータスが表記されているのだが、何かこのステータスが関係する項目といった物も無く、そもそも戦闘システムがアイテム使用のみの為、完全にただのフレーバー要素。
    • 例えば印人の1人である中松栄太は各ステータス中「器用」が12と高い値だが、その器用さが怪異の解明に生かされたりストーリーに影響するということも無く、オカルト系の雑誌やゲームをよくプレイしてそっち方面に詳しい設定が怪異に有効打を与えることもない。
  • 同様に主人公の名前の他に「メガネとあごヒゲ」「メガネのみ」「あごヒゲのみ」「全部無し」と顔のセッティングもゲーム開始時に設定できるのだが、ゲーム中に登場するCG絵*6はすべてメガネもヒゲも無い顔になっているため、キャラメイクの存在意義が無い。
  • これらに関しては当ゲームの製作段階で色々あったのが原因であり、余談で後述。

怪異へのアプローチ手段が不十分であっても強制的にバトルに移行する(仕様ではある)

  • その章に存在する全てのアイテムを集めきっていなくても、最低限必要な証拠が集まった時点で怪異戦は発生してしまう。そのため、思ったような結末にならなかったり、情報を想定通りに活かせないという場合は探索が完了していない可能性がある。
  • アイテムの使い方については実際に怪異と対峙してのトライ&エラーによって判ることが多く、また一応バトル中の怪異の台詞から「もしかしたら足りないアイテムがあるのかも」と想像することは可能。そのためバトルを行うことは全くの無駄ではないが、この仕様を解っていないと延々足止めを食らう事態になりかねない。
    + 攻略・ストーリーについてのネタバレを含む
  • より詳しくいってしまえば、「破壊」に必要なアイテムの入手を集めきった時点で、「救済」用アイテムがなくても怪異戦が発生する。
    • 怪異戦でゲームオーバーになった際「再対決」「ロード」の他に「少し前から再開」を選べること自体がヒントになっており、それを選んだ際の開始ポイントが、即ち怪異戦開始フラグのアイテムと救済用アイテムの両方を入手できる分岐点になっている。

誤字脱字がやや多い

  • 理解を阻害したり全く意味が異なったりするようなミスは無いが、度々、助詞が抜けている・文字が余分(衍字)という所が目立つ。基本的にはテキストで読ませ、雰囲気に没入させる必要のあるゲームという以上、若干お粗末。

総評

ストーリーの短さが気になる一方で、それ以外に致命的な問題点といえる要素はなく、ホラーゲームとしてのクオリティは高いと言える。
そのボリュームの少なさについても、追加エピソードの配信でいくらかは補強された。
凄惨な描写への耐性が高いならば、ホラー好きには十分オススメできる作品である。


余談

  • 本作は製作段階ではホラーADVになる予定ではなく、同社の過去作『デモンゲイズ』や『円卓の生徒 Students of Round』のようなキャラメイク要素のあるハック&スラッシュ系のゲーム、つまりホラー + ダンジョンRPGという作品になる予定であったことがエクスペリエンスへのインタビューで明らかになっている。
    • 曰く、いざホラーDRPGとして製作に入ると「ホラー」と「ハクスラRPG」はジャンルとして非常に食い合わせが悪く致命的に合わなかったため、最終的にRPG部分を完全排除したホラーの一本化作品として完成した。
    • 主人公の謎エディット、意味の無いステータス、ダンジョンマップのような心霊スポットを移動するといった要素はこの部分の名残と言えるだろう。
    • と思いきや、2020年10月15日にエクスペリエンスは『黄泉ヲ裂ク華』を発売。昭和54年の東京を舞台にホラー+ハクスラ要素を合わせた「ディストピアダンジョンRPG(公称)」となっており、この食い合わせの問題は克服したようである。
  • 本作のキャラクターの声を当てた「根塚良」「立花理香」「川端快彰」「石飛恵里花」の4名は1年後の4月19日に角川ゲームスから発売されたRPG『METAL MAX Xeno -滅ぼされざる者たち-』で再び起用される事になった。
  • 本作の実況配信をしたプレイヤーの中にカイジのモノマネでも知られるお笑い芸人のこりゃめでてーな伊藤こう大氏がいる。
    • 序盤のみ普通に実況していたのだが、何を血迷ったのか途中から珍朗読でニコ生やライブを騒がせたスタジオカドタ氏*7に朗読をさせた。案の定、ホラーであるはずの本作が全く別のゲームになってしまった。
      • 例えば、「印人」⇒「インド人」・「怪異」⇒「かいじゅう」・「仏像」⇒「ほとけほとけ」・「誘拐」⇒「ゆうわく」・「例」⇒「イタリア」・「カセット」⇒「カッセッツト」など。
    • 氏は『学校であった怖い話』や『かまいたちの夜』と言ったSFCのサウンドノベルの朗読を行っており、SFCの低画質による潰れ文字から珍朗読が生まれていたと思われてもいたのだが、高画質な本作(しかもPS4版)でもやはり読めなかった。

その後の展開

  • PS4版が2018年1月18日に発売され、Switch版が2018年6月28日に発売、さらにOne版が2018年10月25日に発売された。
    • グラフィックの高解像度化、新エピソード、イベントギャラリーが追加されている。追加エピソードは後にPSV版でも配信。
      • この追加エピソード「雨の赤ずきん」はゲーム中に登場した印人が全員再集結し、怪異解決のため再び主人公に協力するという非常に熱い展開となっている。
    • 最後発のWin版は海外版タイトルの『Spirit Hunter: Death Mark』として2019年4月4日にSteamにて配信が開始された。音声/字幕/UIは日本語対応。
  • 追加エピソードに合わせて後日談(赤ずきん解決後)となるボイスドラマ4本が配信された。内容は主人公の独白形式。
    • シミ男の頭を思い出して自分の髪が薄くなることを心配する、くちゃら花嫁を撃退時に撮影したことを思い出してツーショットで撮りたかったと残念そうに漏らす、ゲーム中で拾った折れたバールやビニールシートを九条館の空き部屋に飾って嬉々とする等の本編のシリアス空気が粉々になるとんでもない腹筋崩壊作品になっている。
    • しかし、うち1本のボイスドラマはしんみりとした内容である。
  • 追加エピソード内のエピローグにおいて「シルシを刻んだ元凶とは別の怪異が動いている」という続編を匂わす事実が発覚する*8。その後、本作を起点とした「心霊ホラーシリーズ」の第2弾として『NG』が発売され、その一端が語られている。
    • さらに2019年11月25日より『死印』『NG』に続く「心霊ホラーシリーズ」3作目「シビトマギレ」のクラウドファンディングが開始、2020年1月に目標額の2倍の資金が集まった。「シビトマギレ」は本作『死印』の正統続編であり、主人公だけでなく本作に登場した他の印人も登場することが明かされている。
      • 2021年6月1日に正式なタイトルは『 死噛 (シニガミ)』と発表された。PS4/Switchで2022年3月24日に発売予定であったが延期となり、2022年12月1日に発売された。
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  • 心霊ホラーシリーズ

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最終更新:2023年03月02日 21:58

*1 海外版タイトルの「Spirit Hunter: Death Mark」として配信。

*2 主人公のデフォルトネーム。苗字と名前は新規プレイ時に自由に設定できる。

*3 場面によっては霊魂が即0になるものも。

*4 物語上は「怪異を倒すことはできたが、その想念までは消しきれなかった」と語られる。

*5 期間限定で無料、以降有料。

*6 2章で蜂にたかられる絵や、車のバックミラーに写る顔。

*7 こう大氏の後輩芸人であり、DB芸人の完全体セルでも知られる。

*8 赤ずきんの怪異もそれが原因らしいとされる。