デュアルハーツ

【でゅあるはーつ】

ジャンル アクションRPG
対応機種 プレイステーション2
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 マトリックス
発売日 2002年2月14日
定価 6,090円(税5%込)
配信 ゲームアーカイブス:2015年1月21日 /1,200円
判定 良作


概要

ゼルダタイプのアクションRPG。
アランドラ』を開発したマトリックスによる作品であり「夢の世界を冒険する」という同作を彷彿させる舞台設定が特徴。
3DアクションRPGという点ではその続編『アランドラ2 魔進化の謎』に近いが、
『アランドラ2』が俯瞰視点メインでまだ2D作品の名残を残していたのに対し、本作は完全な3Dアクションとなっている。
2Dゼルダライクだった『アランドラ』に対し、本作は3Dゼルダライクに作られており、ある意味アランドラシリーズの後継作とも言える。
尚、アランドラシリーズで監督を務めた大堀康祐*1は今作ではエグゼクティブプロデューサーとして関わっている。


ストーリー

若くして最高のトレジャーハンター「レリックレイダー」の称号を持つ少年・ランブルは
世界中のトレジャーハンターが追い求める秘宝「夢見る宝石」を求めてソンノ島にやってきた。
一方、夢の世界では1匹のバクが夢女王の命を受け、9個の宝玉を回収する為にソンノ島の遺跡を訪れていた。
しかしバクのうっかりミスで宝玉の間に続く鍵は散らばり、島の住民達の夢に取り込まれてしまった。
ランブルは「夢見る宝石」のある神殿の奥に入る為、バクは散らばった鍵を集める為、
利害の一致した1人と1匹はコンビを組んで夢と現実を股に掛けた冒険に出るのだった。


特徴

  • ゲームは現実と夢を行き来して進行する。
    • 現実ではソンノ島を探索して住民達と会話しながら進む。時間の経過によって昼時間と夜時間が変わり、住民の行動も変化する。ゲームが進むと昼夜を入れ替えたり時間経過速度を操作できるアイテムが手に入る。
      • 眠りに就いた住人に話しかけると夢世界に入る事が出来る。但し、最初から誰の夢にでも入れる訳ではなく、ストーリーの進行に伴って入れる夢が増えていく。
    • 夢世界はアクションダンジョンとなっている。
      • 夢の主によって多種多様な世界が用意されており、敵と戦ったり仕掛けを解いて進む。この世界では主人公が手に入れた宝玉が武器に変化する。近接武器、ボウガン、属性を宿すカードなど様々で、仕掛けを解く為にも必要になってくる。

バク

  • 本作のマスコットであり、主人公のパートナー。所謂「獏」だが、作中ではカバやブタ呼ばわりされる。
    • しかし鈍くさそうな外見に反して非常に有能であり、主人公を乗せて速く走ったり、突進やブレスで敵を蹴散らす事ができる。物語が進めば潜水や飛行も可能になる。
    • 他にも主人公のHPの回復や、謎解きのヒントをくれたりと、あらゆる面で主人公をサポートする。パッケージ裏に「万能キャラ」と書かれるだけの事はある。但し、現実世界ではただの太った生き物。
    • 本名が長ったらしいので、プレイヤーが名前を付けることになる(デフォルト名は「タンブル」)。
    • 力を発揮するには「エサモン」と言う餌で「おなか」を満たす必要がある。エサモンは無限に生える草を刈ると出現する為、よほど浪費しなければ枯渇に喘ぐ事は無い。
  • この手の冒険は主人公1人でダンジョンを探索する事も多いが、本作はこのバクのおかげで孤独感や心細さとは無縁である。話し掛けた時のセリフのバリエーションも多め。
    • 能天気且つ食いしん坊で、お腹一杯になると所構わず呑気に歌って踊り出す、ウザ可愛い奴である。様々な仕草を見せ、日記でそれらを鑑賞する事もできる癒し系キャラでもある。たまに蹴飛ばしたくなるが。
  • しかし作中では何かと酷い扱いを受ける。
    • エサモンに飛びつくバク族の習性を利用し、エサモンを敵に投げつけて突進させると言う攻撃方法がある。
    • 黒いエサモンを食べると喉が詰まり、しばらくすると一定時間見境なく暴れる「バーサク」状態になってしまう。
      • その前に蹴飛ばしてエサモンを吐き出させるとお礼にアイテムをくれる。従って、黒いエサモンが出現したら喉に詰まらせ、蹴飛ばしてアイテムを集る事になる。…ひどい。
      • ちなみに黒いエサモンは他と違って破壊可能なので、詰まらせるのを阻止する事もできる。
    • 新しいアクションを見る度に主人公のコメント付きで日記に項目が記入されていくが、「(羽ばたきで)もがいている姿が見苦しい」「(すぐ喜ぶので)志が低いんだろう」「(嬉しそうに踊ってるので)蹴ってやりたくなる」などとボロクソに書かれている*2
  • 終盤はストーリーに緊張感を持たせ、エンディングではプレイヤーの涙腺を刺激してくれる。

評価点

  • 取っ付き易くも作り込まれたアクションと謎解き。
    • 神器やバクによるアクションが豊富で動かしているだけでも楽しい。取れるアクションは多いが、ストーリー進行に応じて少しずつ増えていく形で、チュートリアルも充実しているので、混乱する事も無い。
      • また、多くの場合、新たなアクションを会得した直後のダンジョンでは、そのアクションを活かさなければ進めない構成になっている為、自然と身に着けられるのもユーザーライクな作りでポイントが高い。
    • ダンジョンもそれぞれの夢の特徴が現れており、見た目、仕掛け、演出共にプレイヤーを飽きさせない。似たダンジョンこそあれど、タイプが被っているダンジョンは無いと言っていいほど。
      • 神器を駆使したり、ブロックを動かすなどパズル要素が豊富で、試行錯誤が楽しい。思い掛けない仕掛けがあったり、意外な所に道がある事も。
      • バクに話し掛ければヒントも貰えるので、こう言った謎解きが苦手な人でも安心である。
    • 夢世界のデザインも芸術家ならシュールレアリスムな世界、子供なら絵本調の世界など、夢の主の性格がよく表現されている。ギミックもそれに応じて様々。
      • 心を閉ざした所為で雪に包まれてい世界が、その心を開いた事で緑の広がる地になったり、当人の二面性を表現して全く違う世界が同居した夢になっていたりと、ストーリー上の演出として作用する場合も。
      • 行方不明になった娘を探す為、母親の夢経由で娘の夢に入るなどと言った夢を上手く利用するケースもある。
    • ボス戦もそれぞれ攻略法が全く異なり、ただ攻撃するだけで倒せるボスはほぼ皆無で、どのボスも一筋縄ではいかない。
      • HPが無限に回復できるので戦闘の難易度こそ低いが、ボス戦では撃破方法を模索する形で歯ごたえを与えている。
      • ボス戦前には石碑が出現し、攻略のヒントが謎掛け形式で表示される。倒し方が分からなくてどうしても詰まると言う事もそうそう無いだろう。
  • 豊富なコンプリート要素。
    • アランドラシリーズにもあった収集アイテムは大幅増加。リング、ドリームエナジー、金のエサモンなど、夢世界には非常に多くのアイテムが散りばめられ、或いは隠されており、全て集めるのは至難の業である。
    • 各夢にはアイテム取得率が表示される為、どれだけ残っているのかが分かり易く、モチベーションにも繋がる。大分集めたつもりが、達成率で見ると全然だったりと言う事もしばしば。
    • クリアするだけならさほどやり込む必要は無く、時間もそれほど掛からないが、コンプリートを目指すなら長くプレイする事になる。
    • 一度クリアした夢世界も、夢の主の心情によって構造が変化したりする。また、ストーリー上は行かなくても良い隠しマップも多い。
    • メインストーリーでは行く必要の無い夢として、ミニゲームやバトルに特化した夢世界も存在し、種類も多め。この点もアランドラシリーズの要素も受け継いでいる。
      • これらの夢の主もエンディングにはしっかり登場する為、最低一度は行っておいた方が良い。
  • ハートフルなストーリー。
    • 『アランドラ2』寄りのライトなファンタジーの世界観だが、サンタクロースが居たりとどこかシュール。ゆるくまとめられており、入り込みやすい。その中で、個性豊かな住人達と夢を通じて触れあっていく。
    • 全体的に軽めの設定のキャラが多いが、幼馴染を亡くして生きる希望を失った歌姫、若かりし頃に友人を救えなかった事を悔やみ続ける元冒険者などの重い過去を背負ったキャラもいる。
    • そしてぶっきらぼうな主人公も人々の夢に触れるうちに心の絆を少しずつ理解していく。『アランドラ』のようなハードさや重厚さこそないものの、人の心と絆をテーマとしたストーリーは王道ながら響くものがある。
  • サウンド。
    • BGMも良質。どれもダンジョンやフィールドの雰囲気に合ったものが用意されており、クオリティも高い。作曲者は音楽プロデューサーの石川鉄男と、アニメのBGMなどを手掛けている西田マサラ。
    • エンディング主題歌『Heart meets Heart』は作中でもあるキャラの歌として登場する良曲で、なんと作詞は小室みつ子が担当している*3
    • キャラボイスは少ないが、瀧本富士子、長嶋高士、鈴村健一、島香裕など有名声優が起用されている。

問題点

  • アクション面
    • カメラワークがあまり良くない場面が見受けられる。カメラがよく動く上にアングルも微妙な所が多く、3D酔いしやすい人は注意。
      • カメラ初期化とロックオンが同じボタンの為、向き直ろうと思ったらロックオンしてしまったり、その逆もしばしば。
      • ロックオンの切り替えも出来ないので、思った通りに狙うのが少々難しい。
      • また、夢らしさを演出する為か、妙にもやが掛かったり急に眩くなったりと、目に優しくない視覚効果も見られる。
    • 草を刈ればエサモンはいくらでも補充でき、その草も無限に生えるのでいくらでも回復が可能。
      • その為、よほど油断しない限り負ける事が無く、戦闘の緊張感が薄い。
      • 無限回復が可能だからと言ってボスは簡単には倒せないし、終盤は攻撃力の高いボスや、エサモン補充の隙をあまり与えず攻撃してくるものもいるが、やはり難易度は低い。
    • 但し、闘技場の夢ではバク無しで戦うなどの高難易度ミッションも存在する。
  • 終盤が駆け足且つ盛り上がりに欠ける。
    + ネタバレ
    • 盛り上がってきたと思ったら、すぐにラスボスの元へ向かい、そのまま撃破してエンディング。ラストダンジョンも無い。悪く言えば打ち切り漫画のような急展開である。
    • ラスボスは世界を滅ぼし得る悪夢なのだが、それが現実世界を脅かすような展開は無い(その前に倒してしまう)。主人公も志などが無い個人的な動機でラスボスを倒し、自覚も乏しいまま人知れず世界を救う形になっており、あまり盛り上がらず終わる。
    • 主人公とバクの友情を主軸に置いている為か、ラストバトルのスケールも相応の規模に収まっており、終盤だからと言って大規模な事件や、『アランドラ』のような「人々の希望を一身に背負ってラストバトルに向かう」「町の住人達が力を貸してくれる」と言ったような熱い展開を期待すると肩透かしを喰らう。
    • また、主人公が本当に心や絆を理解するのはラストバトル後半~エンディングであり、その前までは主人公が目に見えて成長する訳ではないので、いまいちクライマックスの雰囲気が出にくい。
  • キャラの掘り下げは今一つ。
    • ヒロイン的立場であるバルーやシフォンはともかく、多くのキャラは夢世界攻略後はこれと言ったイベントが無く、殆どストーリーに絡まない。クライマックスにも主人公コンビ以外のキャラが関わってくる事が無いので、上記の終盤が盛り上がらない一因となっている。
    • 作中で恋仲になるグレゴールとエマと言うカップルが居るのだが、序盤で2人が出会って以降、終盤で恋仲になるまで惹かれ合う描写が皆無な為、「いつの間にそんな関係に!?」と、置いてきぼりを喰らう。
      • 更に2人ともそこまでに出番自体が少なく、エマに至っては個人のイベントが全く無い上に夢世界がグレゴールの夢への通り道に過ぎないと、扱いが極めて小さい。おまけにこの2人の問題には、主人公がグレゴールの夢世界を攻略した事自体ほぼ影響が無く、勝手に解決している。
    • 吟遊詩人のマクトゥーブはストーリーの根幹に関わる重要キャラだが、彼については正体が仄めかす程度に語られるだけで、殆ど明かされずに終わる。
    • 他にも、神殿の謎の解明に尽力するユーリや、大いなる意思を感じていそうなリリアンなど、ストーリーに絡めそうで絡まないキャラが何人か。
    • 魅力的なキャラが多いだけにもう少し掘り下げや見せ場が欲しかった所である。一応、エンディングではほぼ全員が見送りに来てくれるし、スタッフロールの背景ではそれぞれのその後が映し出されるので、キャラを大切にしているのは分かるのだが。
    • 夢と現実とのシンクロもさほど深いものではないのも残念な所。物語を動かしている…と言う実感は薄め。
  • 微妙に行き届いていないコンプリート要素。
    • コンプリート要素は豊富だが、それを達成した暁に貰えるご褒美が見合わないものばかり。
      • バクの色を変えられる、無敵になる、バクのおなかを回復できるアイテムなど、苦労する割に全体的にしょぼい。
      • また、特定のアイテムを集めた個数に応じて報酬が貰える場合でも、一段階進むだけでノルマが跳ね上がる事もしばしば。均一にした方がモチベーションを保てると思われるが。
    • 闘技場の夢では、条件を満たすと夢の主であるサーティと「バク無しで」戦えるのだが、これに勝っても何も貰えないし、何も起きない。
    • 何より本作は周回プレイやクリア後の高難易度ステージなどが存在しない為、せっかくのコンプリート特典を活かせる舞台が用意されていない。特に周回プレイが無い事を惜しむ声は多い。
    • その為、報酬目当てでコンプリートを目指すのはお勧めしない。
  • 音声関連
    • 上述した通りキャラボイスは少ない。イベントシーンには声は無く、まともに喋るキャラは主人公とバク以外では、オープニングのナレーションでもあるマクトゥーブのみ。後はステージ中に登場して多少声を上げるキャラが数人いる程度。
      • 『アランドラ2』はムービーシーンがフルボイスだった為、それに比べると寂しい。
    • 主人公・ランブルは口が悪く、馴れ合いを嫌う少々やさぐれた性格で、どちらかと言えば冷めた感じのキャラである。
      • しかしその声は瀧本氏が演じる少年キャラに多いやんちゃな子供のような高い声で、設定とのギャップを感じてしまう。更にアランドラや『アランドラ2』のフリットと違って普通に喋るタイプの主人公なので尚の事目立つ。

総評

ハートフルな世界観と、3Dアクションの面白さが上手く合わさった良作。
あまり奥深過ぎず、しかし浅いと言う事もない間口の広さ、プレイの敷居の低さが特徴であり、
シビアで重厚なシナリオと歯ごたえのあるアクションが売りの『アランドラ』とは方向性が全く異なるが、
本作もまた良質なゼルダタイプのアクションゲームと言えよう。
難易度も低く、ライトユーザーにも勧められるが、コンプリートを目指すとなればヘビーユーザーをも唸らせるほどであり、
マップの隅々まで探し回るのが好きな人にもお勧めできる。


余談

  • 知名度はかなり低く、『アランドラ』よりもマイナーなソフトになってしまっており、中古店でも殆ど見かけないが、現在ではゲームアーカイブスで配信されている為、手軽にプレイ可能になっている。
  • 前述の通り3Dゼルダタイプのゲームだが、メインの声優まで主人公役に瀧本富士子、相棒役に水橋かおり…と、3Dゼルダの元祖『ゼルダの伝説 時のオカリナ』そのままである。キャラクター的にはどちらも全く異なるのだが。

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最終更新:2023年11月14日 22:40

*1 マトリックス代表取締役。

*2 一応、その有能さを(遠回しに)誉める記述もある。

*3 小室氏は『アランドラ2』でもOPテーマの作詞も手掛けている。