レイジングループ

【れいじんぐるーぷ】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 iOS(7.0)
Android(4.0)
プレイステーション・ヴィータ
プレイステーション4
Nintendo Switch
Windows*1
発売元 ケムコ
発売日 【iOS/Android】2015年12月3日
【PSV】2017年1月11日
【PS4】2017年3月1日
【Switch】2017年8月3日
【Steam】2017年8月24日
【PS4パッケージ】2018年1月25日
定価 【iOS・Androidプレミアムセット*2】1,600円
【CS・PCダウンロード版】3,000円(税8%込)
【PS4パッケージ版】3,600円(税8%込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 良作
ポイント 「人狼ゲーム」と「ループもの」の融合
山奥の寒村が舞台の強烈なシナリオと多彩なキャラ
巧みな伏線とキャラクターの印象変化が秀逸
終盤の展開はやや人を選ぶか
ケムコノベルアドベンチャーシリーズ
鈍色のバタフライ / トガビトノセンリツ / D.M.L.C. -デスマッチラブコメ- / 黒の令達
レイジングループ / 最悪なる災厄人間に捧ぐ / 千里の棋譜 ~現代将棋ミステリー~


概要

「汝は人狼なりや(人狼ゲーム)」を題材にしたホラーサスペンス。
初出はiOS/Androidで配信されていたスマートフォンアプリであり、それをまとめた上で追加要素を加えてコンシューマーへと移植された。

シナリオ・ディレクションは『トガビトノセンリツ』『D.M.L.C. -デスマッチラブコメ-』などを手掛けたamphibian。
(一応)ラブコメ路線だった前作『D.M.L.C.』とは打って変わり、氏の得意とするサイコホラー・サスペンス路線のデスゲームものとなっている。
一方、本作は山奥の寒村を舞台に老若男女様々なキャラが織りなすストーリーであり、学生達が主役の学園ものが主だった氏の過去作とは一線を画した作風となっている。


ストーリー

「おおかみ」信仰の息づく地・休水(やすみず)に夕霧が立つとき、殺人儀式「黄泉忌みの宴」が開かれる!
幾多の狂気と死の果てに、「死に戻る男」房石陽明(ふさいし はるあき)は事件を解決できるのか?
+ 登場人物 (ネタバレ無し、長いので折りたたみ)

※キャラクターの言動は各エピソードで割り当てられた人狼ゲームの役割によって大きく変化し、1周しただけでは明かされない設定も多いため、以下の記述はあくまでも基本設定のみ。

  • 房石 陽明(ふさいし はるあき)
    • 本作の主人公。バイク事故で迷い込むことになった休水にて謎の殺人儀式に巻き込まれ、さらに一旦死ぬと始まりである5月11日に戻される「死に戻り」という超常現象に巻き込まれる。普段は人当たりの良い好青年だが、異常事態に遭遇しても冷静に対処出来る判断力を持ち合わせている。
  • 芹沢 千枝実(せりざわ ちえみ)
    • 本作のヒロイン。村外の大学に通っているが現在は帰省中。明るく社交的な性格であり、余所者の房石に対しても親切に振る舞う態度を見せる。
  • 織部 泰長(おりべ やすなが)
    • 休水の学生寮に住んでいる男子高校生。聡明で頭の回転が速い。その頭脳は大人達からも認められており、「黄泉忌みの宴」においては彼が議論をリードすることが多い。
  • 醸田 近望(かもしだ ちかもち)
    • 休水の学生寮に住んでいる男子高校生。友人からは「モッチー」と呼ばれている。突飛な言動を取ることが多く変人扱いされることもあるが、時折天才的な勘の鋭さを見せることがある。
  • 巻島 春(まきしま はる)
    • 休水の学生寮に住んでいる女子高校生。恥ずかしがり屋の性格であり、泰長や醸田には心を開いているが部外者の房石には刺々しい態度を取ることが多い。
  • 織部 かおり(おりべ かおり)
    • 織部泰長・義次の母親。休水で唯一の食堂を営んでいる。2人の息子のことを大切に思っているが、お互いの感情の行き違いに苦慮している。夫は既に他界している。
  • 織部 義次(おりべ よしつぐ)
    • 織部かおりの息子で、泰長の弟。中学生だが学校はサボっている。典型的な「田舎のヤンキー」という風体でガラが悪いが、家族のことは大切に思っている。
  • 室 匠(むろ たくみ)
    • 休水に住んでいる男性。普段は農業を営んでいる。村内で数少ない男性の働き手であり、学生達からは兄貴分のように慕われており、年長者からも頼りにされている。「黄泉忌みの宴」についてはやや懐疑的。
  • 巻島 寛造(まきしま かんぞう)
    • 巻島春の祖父。普段は狩猟を営んでいる。休水の村長的な存在であり、村民への発言力も強いが、頑固で強権的な性格の持ち主でもある。「黄泉忌みの宴」においても主導的な立場を取る。
  • 山脇 多恵(やまわき たえ)
    • 休水に住んでいる老女。身寄りがなく、室匠のことを孫のように可愛がっている。休水の伝承や言い伝えに対する信仰心が篤く、それを蔑ろにする若者や部外者の房石陽明には快い感情を持っていない。
  • 能里 清之介(のさと きよのすけ)
    • 藤良村の有力者である「四家」のひとつである能里家の次男。学があり論理的な思考も出来る人物だが、休水のことを見下すような態度を取っているために休水住人との仲はよろしくない。
  • 回末 李花子(うえまつ りかこ)
    • 藤良村の有力者である「四家」のひとつである回末家の末裔。数年前に藤良村から休水に移住してきた。ミステリアスな女性だが、少々抜けている所がある。
  • めー子(めーこ)
    • 房石が休水に来る前日に不吉とされる川で保護された謎の少女。回末李花子が世話をしている。自分の名前すら分からないため、口癖が「めえめえ」であることから村民にこの名で呼ばれている。
  • 狼じじい(おおかみじじい)
    • 休水に住んでいる老人。本名不詳で、普段から「狼が来るぞ」と吹聴していることからこの名で呼ばれている。かなりの高齢であり、ボケが進んでいるためか奇怪な言動で、ほとんど会話が成立しない。
  • 馬宮 久子(まみや ひさこ)
    • B級グルメを取材するフリーライター。この地方に伝わる伝統料理を取材するために休水を訪れる。元オカルトライターであり、日本の神話や伝承にも造詣が深い。
  • 橋本 雄大(はしもと ゆうだい)
    • フリーのカメラマン。馬宮と共に取材のために休水を訪れる。熊のような巨漢で普段は寡黙だが、理性的な頭脳の持ち主。

システム

  • 基本システムは選択肢を選ぶだけの一般的なADV
    • 本作はいわゆる「ループもの」であり、主人公である房石は死ぬ度に事件の起点である5月11日に戻る、という流れを繰り返している。
      そのため、選択肢の結果によりゲームオーバーになった場合は、その経緯を問わず、チュートリアルを除いたシナリオの冒頭である「1.起点」の開始時点に戻される。
      • シナリオを戻される前のタイミングで「ヒント」を聞くことができる。ヒントルームでは、サポートキャラクターの「ひつじ」が「なぜゲームオーバーになったのか」「ゲームオーバーを回避するにはどうすればいいか」をやたら馴れ馴れしい口調で懇切丁寧に教えてくれる。
    • 選択肢の中には、選択するためにシナリオの鍵「KEY」が必要なものがある。
      • KEYを未所持のため選べない選択肢については「???」で選択肢の内容が隠され、その選択肢を開くのに必要なKEYの番号だけが目に見える*3
      • KEYは大抵の場合、何かしらのエンディングやゲームオーバーに到達して「死ぬ」ことで入手できる。つまり、命と引換えに本来その時点で知り得ない重要な知識を得るという点を鍵に例えており、それを活かして新たな突破口を開くという形になる。
      • KEYは1~20までの番号が付いているが、入手順はこの順番とは一致しない。また、入手しても使わないKEYも少数混じっている。
  • チャートシステム
    • シナリオの分岐を確認でき、いつでも好きな場所から再開できる。
      • 上記の「KEY」システムと合わせ、KEYを入手したらそのKEYを使う選択肢の直前からすぐ再開することが出来る。
  • 暴露モード
    • ケムコのADVの定番システムで、トゥルーエンド後に解禁される。会話の裏で考えていたこと、裏で起こっていた行動などが見えるようになる。
    • シナリオは全て主人公である房石の視点で進むため、主には他のキャラクターがその時どう動いていたのかという観点での話になる。

アプリ版からの変更点

  • フルボイス化
    • アプリ版ではパートボイスだった。
  • CGの追加
  • ボーナスボイスの追加
  • 隠しルートの追加

評価点

シナリオ面

  • サスペンスホラーとしての出来の良さ
    • 古い因習の残る寂れた山村を舞台に、超常現象に襲われ、村人同士で殺し合いの話し合いをするという陰惨なシナリオが丁寧に描かれている。
      • 理解を超えた存在からの理不尽な死による恐怖とそれから逃げる為の行動、最初は村人内で殺し合いをすることに抵抗があったのが、次第に抵抗がなくなっていくリアリティを感じる狂気描写等、どれも良くできている。
    • 主人公は何度も「死に戻」され続け、その記憶を元に事件の解決を目指すのだが、そのシナリオ上、悲惨な結末を大量に迎えることになる。
    • 一度死を迎える事で「あの時ああしておけば…」という情報を手に入れる事が出来、それが「KEY」となる。
  • 先の気になる展開
    • 謎の提示と開示がうまく配置されており、目の前の問題に対処しながらも少しずつ事件の真相に迫っていく為、先の気になる展開が続く。
    • 大量の伏線も物語の終了までにしっかりと回収される。
      • 何気ない事項が思いもよらない伏線になっていたりと、驚かされることも多い。
    • 本作は展開上何度も死ぬことになるが、全てのエンディングにヒントと称した小コーナーが設けられており、今のはどういう展開で死んだのか、次はどうすればいいのか等をマスコットキャラの「ひつじ」が軽快な口調で教えてくれる。話が終わると「今回はここまで!次も元気に、死んでこい!」とプレイヤーを送り出す。
  • 「人狼ゲーム」と和風伝奇ホラーの違和感のない融合
    • 「人狼ゲーム」の内容が「黄泉忌みの宴」という風習となっており、人狼は蘇ってきて村人を襲う化物、占い師や霊能力者等の能力者は宴の間だけ神様から加護を授かった人間となっている。
      • 濃霧と共に宴が始まり宴の間は村から逃げられない(霧に巻かれてどこにもたどり着けない)、ルール違反者は人の手とは思えない殺され方をする等、宴の進行を阻害する要素は超常的な力で持って排除される。
      • 進行内容もゲームが元ではあるが、能力の付与が開始日の朝目覚めるとお腹に印と言い伝えが書かれていたり、選んだ一人を吊る際には首吊りをさせてその死体を崖の下へ落としたり、あくまで実際に殺し殺されのあるホラーとしての描写である。
    • 宴内での会話も「リアルな人間関係」を前提としてはいる為、初日には殺し合いをする事自体への抵抗が入るなど、実際の「人狼ゲーム」ではありえない展開(もしやったら村人が損するだけ)が入りはするが、実際に始まってしまえば「能力者のCO(カミングアウト)による主導権の握りあい」「能力者騙りによる信頼の勝ち取りあい」「能力者であることを明かす事による襲撃先の誘導」等、人狼ゲームの定番ともいえる展開が続く。
      • 主人公の判断ミス(選択肢のミス)によるバッドエンドには人狼ゲームでは良くある負けパターンなどが多数配置されており、「人狼ゲーム」経験者からすれば「あるある」と思う事も多い。
      • 主人公が死んだら巻き戻ってしまうという性質上、本来の人狼ゲームであれば自分が死んでも勝利を目指すという場面であっても、定石に反して主人公を生き残らせるための選択をせざるを得ないこともある。
    • それ以外にも「おおかみが来る」「おおかみなんているわけないじゃないか」等、ゲームの定番台詞も使われている。
    • ケムコ定番の暴露モードも「人狼ゲーム」の再現に一役買っている。
      • 爆発的に知名度が上がったネットでの「人狼ゲーム」ではゲーム終了後に全てのログが全員に見えるようになり、狼同士の裏でのやり取り、村人の独り言等が目に見えるようになるのだが、本作でもそれに近い形で主人公が知り得ない各人の思惑や裏での行動が明かされる。
  • 魅力的なキャラクター
    • 「人付き合いの苦手な屈強な猟師」「信仰心に篤い老婆」「村を司る一族の一人で初心な巫女」等、いかにも舞台となる寒村にいそうな人物ばかりで、雰囲気作りに一役買っている。
    • 「死に戻り」によって大きく行動を変えた結果、宴の参加人数や能力者の配役も変更されることがあり、それによりルートによって敵味方が入れ替わる。
      • 厄介な敵だった人物がルートによっては頼りになる人物になったり、参加者が増えた事で予想外の敵が出現したりなど、状況の変化による各人の多面性も描かれている。
      • どうしてもある程度メインとなる人物とそれ以外で差はあるが、色々な面が描写された結果、印象が最初から大きく変わり魅力的になった人物もいる。
    • 全体的に頭の回転の早いキャラクターが多く、そうでなくても全員が自分自身なりの性格や指針に従って合理的に行動するため、サスペンスドラマにありがちな「キャラが馬鹿なせいで話が進まない」ということが少ない。
  • クリア後のエクストラシナリオ
    • ギャグからガチのホラーまでシナリオによって様々だが、各キャラの後日談として楽しめる物になっている。
  • 価格以上の価値を見出せるボリュームの良さ
    • 本編シナリオだけでも十分な量だが、エクストラシナリオや暴露モードもあり、総合的には3000円台のミドルプライスゲームとしては異例とも言えるボリュームを誇る。周回プレイもより楽しめる。

その他

  • グラフィック
    • 元がアプリである為に最近のADVと比較すると少なめだが、CG自体は十分に多く、また作風にも合っている。
  • BGMも全体的に良好。

賛否両論点

  • 実は強烈なキャラクターである主人公「房石陽明」
    • 一見人当たりの良い好青年で、いつでも冷静で頭も回る人物……なのだが、それが行き過ぎており、むしろ落ち着きすぎて怖い人物である。
      + 房石陽明の性格について・多少のネタバレ注意
    • 「死に戻り」という超常現象で自身が幾度も死に、宴で何人もの死を目の当たりにしながらも、ひたすら真相に迫っていく鋼メンタルの持ち主。しまいには「必要な情報を得たので自ら死を選ぶ」ということまで平然とやらかすようになり、真相のために「あと百回くらい死んでも良かったのだが」などと胸中で考えだすぶっ飛んだ人物。とはいえ、だからこそ事件を解決できたのは間違いないのだが。
    • プレイヤーからは「サイコパス」「作中一番の狂人」とまで言われている*4。だからこそ好きな人もいれば、苦手に感じる人もいる。
    • 逆に洞察力に優れており躊躇もほとんどしないため、ADVでありがちな「プレイヤーが明らかな不審点に気づいているのに、それに主人公が気づかずに進む」と言う事がほとんど無いのはありがたい所。
    • それどころか、プレイヤーによっては気づいたかどうか微妙な情報すら早い段階で考慮したり推理することがある。
    • またごく一部、主人公が意図的にプレイヤーに明かしていない情報もある。宴の進行や勝利条件に関わらないことであるため、アンフェア感は少ないが。
  • 裏設定でケムコの別作品と世界観が繋がっている
    • 暴露モードで明かされるあるキャラの行動やエクストラシナリオには、ケムコの別作品の設定が盛り込まれている。
      • その作品を知っている人からすればニヤリとする要素だが、知らない人からすると置いてきぼりに感じてしまう。特に最後のエクストラシナリオの謎の人物同士の会話については、本作だけ読んだ場合は全くの意味不明で、完全に該当作品を知っている人向けである。これについては批判も多かったようで、amphibian氏も後にインタビューで反省点として挙げている。
  • プレイヤーが「人狼ゲーム」自体にほぼ干渉できない
    • 本作は「人狼ゲームを再現したコンピュータゲーム」ではなく、あくまで人狼ゲームをモチーフにしたストーリーを楽しむノベルADVである。
    • 人狼ゲームの醍醐味である推理・心理戦の要素は作中キャラが行い、そこにプレイヤーの意思を反映させることはほとんどできない。行動選択はあるものの二択・三択程度で、しかも正解ルート以外は基本的に死亡であり、雰囲気としては人狼ゲームを観戦している状況に近いだろう。
      • 人狼ゲームそのものを体験したいなら、肩透かしを食らうかもしれない。
+ 終盤におけるやや唐突な展開。ネタバレ注意!
  • 今作において主人公が解決する問題は主に「黄泉忌みの宴」と「死に戻り」の二つなのだが…
    • 「黄泉忌みの宴」にて起きる数々の怪奇現象の真相は、ざっくりと言ってしまえば 権力者が金に物を言わせ、人手と手間と科学技術を惜しみなく用いた事で成り立った壮大なゴリ押し に過ぎず、トリックとしてはあまりにも力業すぎる*5
      • ただし、宴の根底における「村における奇妙な因習」「おおかみ役の人物が陰惨な殺人鬼に変貌する」等については上記のようなゴリ押しとはまた別の要素が関係しており、超常的な存在に対しての解決も作中で行われている。
    • 「死に戻り」に関しては黒幕と言える人物が引き起こした純然たる超常現象なのだが、クライマックスで唐突に主人公(及びプレイヤー)の感知しない所で黒幕の能力が無力化されてしまい、これについての謎を最後まで残したまま、その他の諸々を片付けて事件が収束しまう。
      • この真相は暴露モードやエクストラシナリオで明かされるのだが、実は前述の別作品との繋がりを持つキャラの特殊能力により黒幕が無力化された…という物だった。当然ながら主人公はそのキャラが持つ能力を一切知らない状態で黒幕と対峙しており、該当作品を知らないプレイヤーから見ても真相を知ったところで唐突なものとなってしまっている。
      • ただしこの無力化についてはあくまで本来予定外のものであり、例えこれが無かったとしても主人公だけで解決できそうな状況ではあったことは付記しておく。
  • また終盤には、初対面に見えたある人物同士が実は既知の仲である…という展開があるのだが、通常ルートでの伏線は皆無に近く、さらにプレイヤーのミスリードを誘った二人の言動に関する暴露モードでのネタばらしがかなり強引な内容のため、人によっては反則的に見えるかもしれない。全ての真相を知った上でギャグとして見る分には非常に笑えるものであるのだが。
  • 「人狼ゲーム」をテーマに謳った内容でありながら、最終的には「黄泉忌みの宴」の開催そのものを阻止する方向で話が進むため、終盤は人狼ゲーム要素がかなり薄くなってしまう。
    • というのも、そもそも人狼ゲームは1日目に必ず誰かが死亡する以上、死に戻りをしてまで事件解決を目指すなら「ゲームそのものをさせない」がベストになるため。
    • もっとも結末は文句なしのハッピーエンドと言える内容であり、それまで数々の悲惨な終わり方を見てきたプレイヤーからすれば達成感はあるだろう。

問題点

  • (PSV版のみ)UI全般が重い
    • 元はUnityで開発されたスマホアプリでそれ自体は別に重くなかったのだが、Vitaに移植された際にUnityとの相性問題で異様なまでにUIのレスポンスが悪くなった。
      • メイン機能となるチャート機能やADVの基本システムバックログを開くだけで数秒待たされる。
    • スキップ速度も遅い。
      • 特に暴露モード解禁後は、暴露場面以外はスキップしたいユーザーも多いが、スキップ速度が遅いので、場合によっては結構待たされる。
    • UIとスキップの重さについては、後発となるPS4版、Switch版、PC版ではかなり改善されて快適になっている。
  • ボイス関連
    • 声優養成所である「ドワンゴクリエイティブスクール*6」所属の声優を起用しているため、一部のキャラクターの演技がやや拙い。
      • とは言え、先入観なしに聞いても違和感を覚えるようなキャラクターはごく僅かである。「そう言われればちょっと」ぐらいはあるだろうが、大半のキャラクターはほぼ問題なく聞けるだろう。
      • 一番気になるのは主人公の房石であろう。「棒読み」と断ずるほど抑揚がない訳ではないのだが、妙に一歩引いたようなフラットな口調はまるでナレーションのようであり、感情を出して話すシーンでは出しているものの微妙な違和感は拭えない。
        とはいえ、シナリオを進めていくに従って、上述した性格の件もあって人によっては「むしろ合っている」と思えるようになってくる。
      • 気にはなるとはいえ、次第に慣れる程度ではあるので、問題ない人もいるレベルではある。また、これでもアプリ版よりは改善されている。
    • また、演技力とは別の問題になるが、老人やおっとりとした性格の人物など、個性付けの一環としてかなりゆっくりとした口調のキャラが数名存在する。しょうがないことではあるのだが、ボイスをちゃんと聞きたいプレイヤーはいちいち待たされて鬱陶しいと思ってしまうこともあるだろう。
      • 特に、ヒロインの1人である回末李花子は話す速度自体がやや遅めな上、言葉を文節ごとに句点(。)で区切って話す。台詞の多さも手伝って、文字を追う速度との差が気になりやすい。
  • 実質ほぼ一本道のシナリオ
    • 基本的に選択肢の少ない状態でバッドエンドを迎えて死ぬ→その情報を元にキーを拾って新たな選択肢へ進む、という形のシナリオであるため、選択肢型のADVではあるがシナリオ進行はほぼ一本道である。
      • 基本は上にある選択肢がバッドエンド直行、一番下が正解というパターンとなっているため、プレイヤー自身が推理する要素も皆無である。
      • 例外は終盤の一部ルートでの情報集めの順番が前後可能な事*7と、一度トゥルーエンドを迎えた後のギャグ的な隠しエンドくらいである。

総評

人狼ゲームを題材に上手くサスペンスホラーに落とし込んだ一作。
伏線の配置や回収も上手く、一度始めるとのめりこんでしまいやすい。
人狼ゲームや閉鎖空間が舞台の伝奇、ループ物といった要素に惹かれる人に特にオススメである。
アプリ版であれば途中までは無料でプレイできるので、そちらから始めてみても良いだろう。
あくまでシナリオの体験と取り、もし最後までやろうと思ったならCS版を買った方が良い。
CS版についてもPSV版は上記に挙げたような問題があるため、今からなら後発のPS4/Switch/Win版が良いだろう。


余談

  • Steam版は当初「日本語のみ対応」という、英語中心のSteam上では珍しいタイトルになっていた。
    • 2019年10月にPS4/Switchで北米と欧州向けに英語版が発売された(UIとテキストのみ英語化、音声は日本語のまま)。パブリッシャーは日本のノベルADVの英語版ローカライズを無数に手掛けていることで知られるイギリスのPQube Gamesが担当。
    • 同年12月6日よりSteam版も英語対応。アップデートにより、タイトル画面で英語と日本語を切り替えられるようになった(セーブデータは言語別に独立)。
  • 「KEMCOのアドベンチャーポータル」において本作の裏設定等が明かされている。
    • ネタバレも多いので、見るのであればクリア後推奨。
  • PS4パッケージ版発売からしばらくして、設定資料集と短編小説を収録したムック『レイジングループ完全読本』が発売されている。
    • ケムコノベルアドベンチャーシリーズの過去作品についても触れられており、興味のある人は手にとって損は無い。
  • 作品の高評価を受け、2019年4月から星海社よりアンソロジーコミックと小説版が発売された。
    • 小説版は大筋は本編と同様で、一冊300ページ以上・全7巻とかなりのボリュームになる。加えて小説媒体に合わせて9割近くの書き直し・加筆が行われ、各巻には描き下ろし表紙と挿絵に加え奈須きのこや虚淵玄等著名人による解説付きとなっている。
  • 2019年6月20日にメビウスから発売された『グノーシア』は本作と似たような要素を含む。
    • 『グノーシア』のスタッフは本作のファンであり、開発時にamphibian氏からアドバイスを受けたことを公式インタビューで語っている。

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最終更新:2024年02月17日 09:44
添付ファイル

*1 Steam・DMM・ドワンゴジェイピー・DL Site

*2 本編全ルート+エクストラシナリオのパック販売。通常版は1章のみ無料。

*3 例えば、「Aと説明する」「Bと説明する」「??? (キー10)」というような形。

*4 なんなら「サイコパス」は作中キャラにも言われている。

*5 ただしこのような無茶がまかり通った理由に関しては、漠然とした推測と言う形ではあるが作中で説明が為されている

*6 現在は「SAY YOU LAB」に組織変更。

*7 ただしこれも前後可能なだけで、シナリオの流れとしては前後入れ替えると若干違和感が出る。