蒼色輪廻

【あおいろりんね】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Windows 98~XP
発売・開発元 美遊
発売日 2004年4月23日
定価 8,800円
レーティング アダルトゲーム
配信 2008年7月11日/2,880円
判定 良作
ポイント 最高のダメ人間主人公
YU-NOフォロワーの一作

また……キミに、会いに行くよ。



概要

美遊の5作目。
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』をリスペクトした作風であり、比較して評価されることも多い。


ストーリー

主人公は自殺を試みるが、インフィニティーと名乗る美少女が現れ、自殺を止められる。
彼女と出会ってからアパートが火事になるなどの不運が主人公を襲い始める。
恨みからインフィニティーを追うものの、ヤクザに射殺されてしまう主人公。しかしインフィニティーは走馬灯と鍵で別の人生を体験するように告げ、主人公は様々な人生を体験することになる。


特徴

  • 一般的なADVに採用されている選択肢は存在しない。
    • 文章はテキストウインドウに表示される一般的な仕様。
  • 主人公は以下のシステムを活用して、現世/異世界の両方で様々な人生を経験する。
  • 走馬灯システム
    • 主人公が死ぬとフローチャートが表示され、任意のポイントからやり直すことができる。
  • 時空跳躍システム
    • 画面右上に表示されているニルヴァーナボタンを特定のタイミングで押すことで、異世界へと移動できる。
    • ただし使用回数に制限があり、制限を越えると鍵を失うので注意。
  • 鍵システム
    • ストーリーを進めると入手できる。鍵を持って走馬灯を見ることで別の人生が始まる。

評価点

  • 主人公
    • 取り柄がなく汚部屋に住むダメ人間だが、独特な思考や発言により、魅力的なダメ人間として昇華されている。
    • 冒頭からして「断言しておこう、人間とは避妊ミスの産物である!」という遺書に始まり、決めた! 僕は「童貞バンザイ!」と叫びながら、あのカップルにダイブして死ぬ! と自殺前にも強烈なインパクトを残す発言。
      • 「目の前で行われている事に対し真剣になれない奴はバカだ! バカだっ!!」といった普通の印象に残る台詞も残している。
    • 化粧品ではなくパテが必要だと自称するほどのブサイクで、ヒロインからもけなされる。
      • ブサイク、童貞、頭が悪いとコンプレックスの塊だが、主人公はそれを自覚した上で受け入れているため根暗や不快さを感じさせない。
  • シナリオ
    • 展開が早く、登場人物の設定や舞台設定は自然と頭に入ってくる。
    • 主人公の自殺に始まり、謎の美少女との出会い、まるっきり立場の変わる異世界への移動……とスピーディに展開するため、ADVの序盤にありがちな説明くささや退屈さを感じにくい。
  • システム
    • シナリオと上手く噛み合っており、「ここで別の選択をしていればどうなっていたか?」とプレイヤーが感じる場所に分岐があるため、様々なif展開を楽しめる。
    • 能動的にイベントを起こすため、主人公との一体感も得られる。
    • 現世と異世界の対比が上手く、イベントを見比べるのが楽しい。
  • グラフィック
    • 和馬村政氏のCGは評価が高い。特に一枚絵に力が入っている。
    • 現世と異世界で対比されていることが分かりやすいキャラクターデザイン。
    • 主人公のCGは絶妙なブサイクで、自称ブサイク発言に説得力を持たせている。
    • 背景は汚部屋から異世界の幻想的な風景まできっちり描き込まれている。
  • その他
    • 異世界ではテキストウインドウなどに装飾が施されて、別世界に来た実感がわく。
    • BGMも評価されており、場面を盛り上げている。

賛否両論点

  • エログロ表現
    • 愉快な主人公に反してシナリオは重い。ヒロインが薬漬け後に射殺されたり、焼死体になったりと陰鬱な死に方をする。
    • なお、主人公も何度か殺されるが、持ち前の性格もあってあまり悲壮感はない。

問題点

  • スキップが遅い。
    • システム上の数少ない欠点。何度も同じテキストを読むことになる構成なので、結構深刻。
  • 終盤の鍵集め
    • 上手くイベントを発生させないと鍵が消失してしまうため、鍵を回収するために既読テキストを読む作業になりがち。
    • 現在なら攻略サイト等を参考にすれば済む話ではある。
  • システムの不具合
    • 既読スキップが機能しないなどの問題があった。現在は修正パッチで解決する。

総評

現世と異世界を行き来する良好なループもの。
テキスト、シナリオの面白さもあり物語に引き込む力が強く、システムも上手く噛み合っている。
そしてヒロインよりも魅力的な「ダメ人間」の主人公は大きな見所である。



余談

  • 前述したように本作のライターは『YU-NO』の影響を受けていることをブログで述べていた。
  • 続編『緋色梵鐘』を作りたいとライターは語っているが、実現はされていない。
    • ところが資金調達のペースが還暦までかかると言うぐらいの超スローペースで追い打ちにコロナウイルスで消費してしまう弊害や本作のタイトル名との仏教問題の妨げで当時のプランが白紙になった事を2021年10月に告白。事実上、当初の続編は消滅となった。(参考)
    • 無理な場合はノベルで展開するしかない事を告げているが別物になる可能性は高い。
  • 2016年に『15周年記念・感謝パック ミユウ大全集』がFANZAで発売された。
    • 本作を含む美遊の全作品が同梱されているので、このブランドに興味があるならお得なセット販売である。
  • 現在は公式サイトが消滅している。
    • パッケージ版の修正パッチはInternet Archiveでダウンロードする必要がある。

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最終更新:2023年07月09日 21:04