Mortal Kombat 3

【も-たるこんばっと すりー】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ミッドウェイゲームス
発売日 【国内PS1版】1996年6月14日
定価 5,800円(税別)
判定 なし
Mortal Kombatシリーズ


概要

モータルコンバットにおけるメインシリーズの3作目。北米ではAC版が1995年4月15日に稼働した。前作までの東洋的かつ魔術的な要素を一新し、魔界に侵食される地球を舞台としており、都会ステージも登場するなどより現代的な世界観になっている。前作同様に多くのハードで家庭用移植版が発売されているが、国内ではPS1のみ販売されている。一方、本作のAC版稼働日からおよそ半年後には本作のマイナーチェンジ版であるUltimate Mortal Kombat3(UMK3)が登場している。

ストーリー

長い世紀の間に地球は外界の皇帝であるシャオ・カーンから身を守ってきた。カーンは地球侵略に幾度となく失敗してきたことに苛立ちを感じていた。そこで一万年前から立てられていた計画を実行する。
その間にカーンはシンデルという名の王妃を持った。しかし彼女に不慮の死が訪れてしまう。このときカーンはシャン・ツンにシンデルの魂を外界でなく地球に復活させるように命令した。
この邪悪な行動により、カーンは王妃の奪還という名目で異次元のゲートを通り、最終的に地球に侵入することが出来た。
カーンは地球を少しずつ外界に変化させていった。カーンは、地球上の生き物の生命を奪い、魂を彼のものにしていった。
そんな彼にも奪えない魂があった。新しいモータルコンバットに選ばれた闘士たちの魂である。

キャラクター

  • リュウ・カン、クン・ラオ、ジャックス、シャン・ツンが前作から続投。
  • 『1』からカノウとソニアが復活。
  • サブゼロは前作のサブゼロの弟であり、マスクを取った姿で登場する。スモークはサイバネティックス忍者の一人としてロボ忍者の姿で登場。
  • ヌーブサイボットは忍者タイプが居ないためか、本作ではカノウのシルエットになっている。
+ 本作で追加された新キャラ
シンデル(Sindel)
紫色のタイツに身をまとった、髪と目が白い女性。現在ではシャオ・カーンの王妃であるが、実はそれ以前にエデニアを統治していたという過去があり、キタナの母親でもあることからストーリー上重要キャラになっている。恐ろしい叫び声と長い髪を使った技が特徴。
ナイトウルフ(Nightwolf)
ステレオタイプなネイティブアメリカンの歴史学者でありシャーマンの魔術を使用する。トマホークと光の弓を装備し、相手の飛び道具を反射する技を持つ。他キャラとの接点は聖地を侵略されたシャオ・カーン以外は現時点でほとんど無い。
ストライカー(Kurtis Stryker)
北アメリカの警察官で警棒や銃を装備する、いかにも都会的な本作を象徴するキャラクター。『4』から再び世界観が魔界寄りになってしまったせいもあり、以降のシリーズではしばらく登場しなかった。ストーリー立ち位置はナイトウルフ同様、むしろ彼の場合シャオ・カーンとの接点すら薄い。あまりにも地味だったのか『UMK3』から銃を使う技が追加されている。
サイラックス(Cyrax)
リンクェイによって作られたサイバネティックス忍者の黄色いプロトタイプロボット。UNIT LK-4D4。サブ・ゼロ暗殺の命令をプログラムされており、魂がないためシャオ・カーンの侵略にも動じない。後のシリーズで良心があったことが描写されており改心にも成功している。爆弾や相手を掴む網のような飛び道具を備える。FATALITYでは自爆できる。
セクター(Sektor)
サイラックスよりも前に作られた赤色のサイバネティックス忍者第一号。UNIT LK-9T9。彼もサブ・ゼロ暗殺がプログラムされている。リンクェイの計画に疑問を投じたサイラックスとは対照的に自らロボ忍者化を希望しているほどの冷酷な性格で、シリーズ通して悪側のポジションにある。技が2種類のミサイルとテレポートアッパーしか無いが、連発できるうえに追尾機能を備えたミサイルと撃ち分け出来るので長期戦が厄介になる。
シーヴァ(Sheeva)
ゴローやキンタローと同様のショカン族。カーンに仕えているが、カーンがショカン族の宿敵であるケンタウリアン属のモタローを従えたことに不信感を募らせている。全く華がないが本作の数少ない女性キャラの一人。ゴローたちのようなガード不能の踏み潰し技や地響きなどを備えているがスキが大きく見切られやすい。キャラ性能も微妙で人気もなく、『UMK3』ではSNES・GENESIS版で削られている色々と不遇なキャラクター。中ボスであったゴローやキンタロータイプのキャラクターを通常キャラクターとして使用できるという点では斬新だった。
カバル(Kabal)
フックソードを装備した元黒龍会のメンバー。シャオ・カーンの地球侵略の際に彼の軍隊によって重傷を負わされ、機械のマスクと生命維持装置を付けている。これをきっかけとしてカーンに復讐し、黒龍会を抜けて悪人から善人へと変化した経緯を持つが、ストーリーではその後再び悪サイドに戻ったりまた善サイドに行ったりと忙しい人。更に『9(2011)』での彼のストーリーも若干異なる内容になっている。仮面を脱いだ素顔で敵をショックのあまり幽体離脱させるFATALITYは必見。突進で相手を回転させる&相手の後方から足枷を引き寄せる技とコンボの絡みが圧倒的に強く、『3』ではスモークと並んで最強クラスだった。
モタロー(Motaro)
本作の中ボスで、ケンタウロスのように下半身が馬の体型になっているケンタウリアン族という種族である。ダウンさせようとしても多少よろける程度で飛び道具すら跳ね返すタフな身体と、4本足を生かしたフットワークの軽さ、リーチの長い尻尾攻撃、ワープ移動に威力の高い波動弾という凶悪な性能でゴロー・キンタロー以上に厄介な中ボスである。以前シャオ・カーンに仕えていたショカン族とは対立関係にある。名前の由来は桃太郎から。ゲームデザイナー兼グラフィックデザイナーのジョン・トビアス氏が子供の頃に遊んでいたフィギュアに出てくる敵がモチーフになっている。

システム

基本動作は『2』を継承しているが、新要素が追加されたことでよりゲーム性が増している。

  • RUNが追加されたことにより、キャラクターが前方向に走ることが出来る。相手との間合いを一気に詰めたり、奇襲をかけることが可能となった。その関係で本作からRUNメーターが登場している。
  • チェインコンボが追加された。キャラクターにより特定のコンボが使えるようになっている。また空中コンボも公式的に認められ、技のバリエーションが増加した。本作からコンボのヒット数とダメージ量(%)が表示されるようになった。
  • 一人用モードで「Choose Your Destiny」による難易度変更ができるようになった。3段階のコース(塔)があり、右→左→真ん中の順で戦う相手の数が増加し難易度が上昇する。
  • 対人戦でキャラ選択後、VS画面にコンバットコード(Kombat Kode)と呼ばれる公式の隠し要素が追加された。6桁(1Pと2Pそれぞれ3桁×2)の枠に9種類あるアイコンを組み合わせることで特殊なバトル(ブロック不能、投げ不能、ダメージ2倍など)が出来る。
    • これとは別に、ゲームオーバー時12桁のパスワードを入力するUltimate Kombat Kodeがある。こちらは隠しキャラクターのスモークを解禁するためのもの。
  • ステージは魔界に侵略されかけた都会を舞台にし、現代的な雰囲気が濃くなっている。また特定のステージは繋がっており、アッパーカットで敵を上方に吹っ飛ばすと上のステージに切り替わるという特殊効果もある。

FATALITY

従来のFATALITY、FRIENDSHIP*1、BABARITYに加えてMERCYとANIMALITYが追加された。

  • MERCYは試合が最終ラウンドにもつれ込んだ時に発動できる。相手にトドメをささずに若干体力を回復させ、チャンスを与える慈悲の技である。
  • ANIMALITYはMERCY後に使用できる。発動したキャラが動物に変化し、動物の野生本能で相手を殺傷する。なおMERCYをされた側が逆転勝ちしてもANIMALITYを行うことが出来る。
  • MERCYは勝敗には必要ないどころか逆に不利になってしまう可能性もあり、その後のANIMALITYと併せてパフォーマンス性が高い。 STAGE FATALITYは3ステージあり、The Subway(地下鉄ステージ)と、Shao Kahn Tower(シャオ・カーン・タワー)、そして恒例のThe Pit 3と3つのステージで使用できる。
  • The SubwayのSTAGE FATALITYは想像通り、相手を反対のホームにぶっ飛ばし通過する地下鉄にぶつけるという、実に都会的でインパクトの強いFATALITYである。
  • 今作のThe PitはCPU戦ではシャオ・カーンの最終ステージになっているので、対人戦でないと発動できない。

評価点

格闘ゲームとしての質が向上した。

  • チェーンコンボや空中コンボの組み合わせが容易になり、若干テクニックとシビアな操作が必要だったコンボの敷居をある程度下げている。
  • RUNの追加により、飛び道具で牽制される前に間合いを詰めたり突発的に奇襲をかけたりというようなスピーディな戦略も可能になった。

難易度が緩和されている。

  • Choose Your Destinyである程度の難易度変更が出来る他、全体的な難易度も若干落とされている。
  • 『UMK3』は再び超反応気味になっているため、ビギナーはこちらの方が遊びやすい。

多くの小ネタや隠し要素。

  • 対人戦で特殊ルールを設けたり隠しキャラとの対戦が出来るコンバットコード、ファン向けに用意された多くの小ネタ(後述)など、ユニークな仕込みが多い。
  • 対戦格闘において特殊条件を設けて対戦する方法は多くの場合CS機での裏技に限られる事が多かったが、本作ではコンバットコードによってアーケードでも多彩な特殊ルールでの対戦ができるようになっている。
    • 隠しキャラクターとの対戦もコンバットコードから行う。勝利した側がシューティングゲームを出来るおふざけコードもある。また北米ではコードのヒントメッセージを利用したピンボール筐体との提携もあった。(いずれも詳細は余談に後述する。)

問題点

世界観を一新した関係で、キャラクターが大幅にリストラされている。

  • トーナメントに招いたライデンが登場しない。ジョニー・ケージは本作の開始前にモタローに殺されているため未登場。バラカもリストラされた。
  • 男女ともに忍者タイプは(リニューアルしたサブゼロ弟とヌーブサイボット以外)全員リストラされており、レプタイル、キタナ、ミレーナ、ジェイドといったキャラクターは本作で登場しない。恐らく本作の都会的なイメージに合わなかったのだと思われる。
    • 特に人気であるスコーピオンも例に漏れず本作では登場しなかった。シリーズのメイン系列では本作のみ唯一未登場という無念な結果に。
  • 互換キャラやそれに似たキャラがいるわけでもないので、リストラキャラを使用していたプレイヤーは新規キャラの使用を余儀なくされた。
  • 既存キャラについてもマスクを取ったせいでミステリアス感が減少したサブゼロ、両腕が機械化したジャックス、完全にロボ化したスモークなど前作との違和感が大きい。
    • また、リュウ・カンについてはモデル俳優が変更されている。

ナンセンスさが増したFATALITY。

  • とくに爆発系の技が多く、骨を飛散させた簡素なエフェクトばかりになってしまった。
    • ばらばらになった骨の中には手足もあるが、マネキンのような無機質なビジュアルでリアリティに欠ける。それだけならまだしも、1人数分としてありえない数の手足や頭蓋骨が落ちていることもあり描写に手抜きさを感じる。
  • 追加されたAnimalityも、動物のカラーが一色塗りで地味。
    • 『UMK3』では追加キャラのみ動物が色塗りされ、よりリアルに改善された。
  • 前作・前々作と残虐さが社会問題になっていたためにソフトな表現にせざるを得なかったのだと思われる。

キャラ格差が激しい。

  • 即死級のコンボに永パ持ちのキャラクターもいるが、熟練していないと発動は困難。しかしそうでなくても瞬発的に相手の動きを止める技を2つ持つ上に飛び道具も地上空中で発動できるカバル、スコーピオンのスピアー+テレポートに姿を消す技まで備えたスモークはコンボが作りやすいこともあって他を圧倒している。

総評

前作までのシステムを一新し、コンボゲーとしてスピーディな格闘要素を盛り込み、様々な小ネタをフィーチャーし長寿化を図った意欲作。新しいシステムでシリーズを展開しようという意気込みが感じられ、北米では前作に続きヒットを果たした。
その一方であくまでも都会的なイメージを貫いたのが仇となり、世界観の崩壊や人気キャラクターのリストラといったマイナス要素が生まれてしまい、一部ファンの間では批判もあった。
とはいえチェーンコンボ技を中心として本作で定着したシステムは後のシリーズにも受け継がれており、今まで作り上げて来た柱をより強化したと言っても過言ではない。
後に世界観を再び魔界寄りに戻し、より洗練されたUltimate Mortal Kombat3が登場したことで本作の問題点は解消され、ようやく完成された作品となった。


余談

  • シャオ・カーンとシンデルはストーリー上で夫婦の関係であったが、それぞれの役者も実際に付き合っていたという逸話がある。但し既に破局してしまっている。
  • ナイトウルフのFRIENDSHIPで「I've Never Seen a Kano transformation, No, but know how to do a Raiden Transformation(カノウの変身を見たことがないが、ライデンの変身なら知っている)」という台詞がある。これは『2』のアーケード版のオペレーター用サービスメニューに「KANO TRANSFORMATION(カノウへの変身回数)」というダミー項目が存在していたことへのユーモア溢れる返答である。『2』稼働中、シャン・ツンが各キャラに変身した回数の中に未登場であるはずのカノウが表示されていたことからユーザー間で話題になっていた。
    • ちなみに本作では同様のお遊び要素として「JOHNNY CAGE TRANSFORMATION(ジョニー・ケージへの変身回数」というダミー項目があり、あるステージに彼の墓が登場する。
  • 対戦で100連勝する、もしくはコンバットコードを入力することによって「Rellim Ohcanep」という世界に突入し、ギャラガ風のシューティングゲームが遊べる。この名前は本作の開発者であるMark Penacho氏とKent Miller氏の名字を組み合わせて逆さ読みしたもの。
    • 20年後に発覚したアーケード版の隠しコマンドで選べるメニューには「PENACHO/MILLER GAME」という項目があり、恐らく彼らがこのミニゲームを手掛けたと思われる。
  • GENESIS版ではPongが出来るコンバットコードがあるが、このコードの効果名には「PREVIEW NEXT GENERATION FIGHTING GAME(次世代格闘ゲームを体験する)」という大袈裟なジョークが含まれている。
  • コンバットコードには謎のメッセージが含まれている。この内の2つはWilliams*2から同じ年に販売されたピンボール台のイースターエッグのヒントになっており、メッセージに従うことで別のコンバットコードを入手できるという仕組みだった。現在では該当するピンボール台自体がプレイ困難であることと、全てのコンバットコードが公開されているために意味を成さなくなっているが、コードを介したピンボール筐体との連携は北米らしいビデオゲーム文化の象徴ともいえる。

家庭用移植

後発の『UMK3』の方がメジャーになっているが本作も多くのハードに移植されており、北米ではSNES、GENESIS、PS1、MS-DOSやWindows、8ビット携帯機向けにはGBに加え欧州限定でGGにリリースされた。またPS2とPSPの「Midway Arcade Treasures」シリーズの一つに収録されている。国内ではPS1のみ販売された。

  • 本作の北米PS1は初期のPS1本体にバンドルされていたこともある。グラフィックやサウンドはAC版に近いが、ロードが長くサウンドが途切れるなど不完全な部分もあり完全移植とは言えない。ディスクの関係上シャン・ツンの変身も勿論ロードがかかるが、設定により変身キャラを限定することでロード時間の短縮が出来る。
  • 国内PS1版について、今まで国内での展開は暴力表現がカットされがちだったが、PS1版では北米と同様に規制もなくそのまま移植されている。更にOPとキャラ紹介が麦人氏によって日本語でナレーションされている。表記自体は英語のままながら上手にまとめられた翻訳で、日本語でモータルコンバットの世界観を楽しみたいプレイヤーにオススメできる。

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最終更新:2023年02月10日 11:26

*1 本作では2本目をブロックせずに勝利することでFRIENDSHIPが発動可能になる

*2 当時はMIDWAYと同じくWMS Industriesの子会社だった