GRAVITY DAZE 2 重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択

【ぐらびてぃ でいず つー / じゅうりょくてきめまい かんけつへん:じょうそうへのきかんのはて、かのじょのないうちゅうにしゅうれんしたせんたく】

ジャンル 重力アクション・アドベンチャー

対応機種 プレイステーション4
発売元 ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発元 SIEジャパンスタジオ
発売日 2017年1月19日
定価 通常版・初回限定版・DL版:6,900円(各税別)
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
廉価版 【PS4】Best Hits:2017年12月14日3,900円(税別)
判定 良作
GRAVITY DAZEシリーズ
GRAVITY DAZE / GRAVITY DAZE 2
SIEワールドワイド・スタジオ作品

概要

重力をテーマにした斬新なシステムが話題を呼んだ3D箱庭アクションゲーム『GRAVITY DAZE』の続編。プラットフォームをPS4独占へと移し、多くの謎を残したまま終わった前作の完結編を描いている。実に、PSVita版が発売されてから5年振りの続編となった。


物語

ドネリカ前市長の引き起こした兵器暴走事件からの復興が進む、空中都市ヘキサヴィル。 そこで或る日発生した巨大な重力嵐が、キトゥン、クロウ、シドーの三人を飲み込み、3人は辺境の異次元へと飛ばされた。 新しい舞台、ジルガ・パラ・ラオ空中港で、重力使い・キトゥンは再び冒険に出る。


新要素・変更点

重力操作を始めとする多くのシステムや特徴点は前作から引き継がれているので、こちらを参照。

アトリビュートチューン

  • ゲームを進行させると、新たにルーナチューン・ユピトールチューンという2つの形態変化を使えるようになる。
  • ルーナチューンはキトゥンの体を軽くし、重力操作無しでもまるで浮遊する様に通常移動を素早くしたり、アンチューン状態(何のチューンも装備していない、通常の状態)では立てなかった水の上や木の上などの脆い場所に立つ事が可能になる。また垂直・水平方向に大きく跳躍出来る他、空中で壁を連続で蹴って上昇する事も可能。これらの特殊能力は重力操作扱いではなく、重力操作が封じられるイベントで活躍する。
    • このチューンの重力キックでは、エナジーを大きく消費しながら標的に向かってワープ・自動追尾し、連続で攻撃を繰り出せる。ただし重力操作による速度が遅くなったり吹っ飛ばされやすくなる他、攻撃力も落ちる。
  • ユピトールチューンは逆に重くする事で、攻撃力を上げる。重力落下速度や重力スライドのスピードも上がる他、吹っ飛ばされにくくなる。このチューン時にのみ、攻撃のガードが可能。ただし、通常の移動能力は大幅に下がる。
    • このチューン時に発動可能な重力波動キックで、攻撃した周囲の敵や障害物もまとめて破壊する事が出来るので、混戦時に有効。ただし通常の重力キックは射程がかなり短くなり、ターゲット補正機能も大幅に下がる。落下中やスライド中の方向の微調整も難しくなり、特に素早い移動には他チューンとの上手い切り替えが要求される。
  • 終盤では、前作からボスへの止めで登場していた獣人形態「グラビティ・フェリン」への移行が可能となる。
    • この形態は変身条件が厳しく滅多に変身できないが、常に浮遊・HP回復という強力な特性を持つ。一方、空中移動の挙動が空を駆けるように移動するというとりわけ特殊なものとなる。
  • 前作ではスティックの向き+△ボタンで複数種の必殺技を発動したが、今作ではスティックではなくこのチューンの切り替えによって必殺技を切り替える為、暴発は少なくなった。
  • チューンの変更時にはコントローラーのスピーカーから、妙に発音のよい電子音声が流れる。彼女の立場や役回り、主力攻撃がキックな点も考えると、完全に仮面ライダーである

赤ゲージ

  • 今作では重力エナジーゲージの他、攻撃する・攻撃を受ける事で赤いゲージが溜まっていく。
  • 一定以上溜まった状態からグラブボタン長押しでゲージを少量消費し、それぞれのチューンの特性に合わせた強力な特殊グラブを使用*1
    • 他にも、このゲージを満タンまで貯める事で必殺技が使用可能になる仕様へと変更された。グラブ出来るオブジェクトがあるかどうか、大型ネヴィにどう対抗するかという戦略的な幅が広がっている。
    • ただし、ちょっと長押しするとチャージグラブが発動してゲージを消費してしまうので、重力グラブをするときは軽く押すだけにとどめるようにする必要がある。

タリスマン

  • 採掘やミッションクリア報酬、トレジャーハントクリア報酬で獲得可能な装備品。三種類の形状からそれぞれ各一種、最大三種を装備可能。一つのタリスマンにつき、最大三つのスキルがランダムで設定されている。
    • ステータスやアクションを強化するスキル、ジェム集めに便利なスキルなど、組み合わせと効果は様々。中には犬を呼び寄せるというお遊び的スキルも。
    • 重複させて効果を上げる事が出来るスキルがある一方、重複不可能なスキルは説明文に記載があり分かりやすい。
  • ストーリー進行で、途中から複数のタリスマンを合成したりリサイクルしたりといった事も出来るようになる。
    • 強力な固定効果が付与された、プレミアムタリスマンというものもある。こちらは分かりやすく使いやすい半面、3つ埋まっていることが稀な上に合成などの細工が不可能なため、より強力な効果を求める場合は向かない。もっとも、クリアするだけならこれだけで十分だが。

採掘

  • 上記のタリスマン(の原石)*2やプレシャスジェムを、一度に大量に獲得出来るゲームモード。ジェムは獲得量が少なくもっと効率よく稼げる所があるので、基本的にタリスマン狙いとなる可能性が高いが。
  • オンライン要素と連動しており、採掘状況によって状態が変化。例えば一箇所の採掘場で採掘すると、プレイヤーの数や採掘回数によって徐々に鉱石の数が枯渇していく。完全に枯渇すると大型ネヴィがその採掘場を占拠し採掘が不可能になるが、これを倒すとタリスマンの原石を落とすなどの見返りが用意されている。
  • 更にストーリーを進める事で、この大型ネヴィ発生とほぼ同条件にて、ダンジョン攻略型の採掘現場が発生する事がある。鉱石の数は増えるがネヴィの数も難易度も上がり、生半可なステータスやプレイヤーの腕では数階層下っただけでゲームオーバーになる事も珍しくない。
    • このモードで力尽きた場合、獲得した原石は半分をその場にロストする。もう一度ロストした場所に戻れば回収出来るが、一度力尽きてしまうとその採掘場からダンジョン型採掘現場に移動する事は出来ない他、ゴーストとして出現する他プレイヤーに奪われてしまう事もあるので、実質不可能。故に緊張感がある。
    • 奥の階層に進むには、階層ごとに決められた条件を満たす必要がある。中にはそのエリアのネヴィを全種類撮影する、という変わり種も。

住民とのコミュニケーション

  • 間接的ではあるが、NPCとジェスチャーコマンドを通してコミュニケーションが取れるようになった。挨拶関連のジェスチャーをするとNPCが手を振ってくれたり、驚かすコマンドを選択して持っている荷物や風船を落としたり飛ばしたりしてイタズラ出来るなど。 ヒップアタック超可愛い。

フォトモード

  • チュートリアルを兼ねた第1章終了と同時に、ボタン一つで主観視点のカメラが起動出来るようになる。元々街を歩くだけで雰囲気を満喫できる事がセールスポイントの本作であったが、このモードの追加により、散策要素に一層の彩りが加わった。
    • 三脚モードへの切り替えもワンボタン。ジェスチャーとの組み合わせで正にカメラマンの気分になれる他、インスタグラムの様に撮影時に画像エフェクトを掛ける事も可能。
    • 重力操作中でも使用できるので、重力ゲージによる時間制限こそあるがドローンのような空撮も可能。加えてこの場合でも三脚は使えるので、さらなるアクロバティック撮影にチャレンジするのもよし。
  • 前作では土管に戻らなければならなかったコスチュームチェンジも、このフォトモードから手軽に変更出来るようになった。
    • これに関連してか、コスチュームが大幅に増えている。ナースなどアレなものがあるが。
  • おまけとして、与えられたヒントから市民のスナップや観光名所を撮影するというものもある。複雑に作り込まれた立体的なマップと相まって、程よいやり込み要素になっている。
    • なお、中にはこの世界の成り立ちに関する話を知ることができるものもあるため、そういう意味でも重要。
  • このモードで撮影した写真は全てオンラインにアップロード可能*3。ランダムにプレイヤーへと送信され、相手プレイヤーのマップ上にゴーストが出現する。評価するとダスティトークンが貰える。
    • 後述のトレジャーモードの撮影もそうだが、何かしら問題がある写真を上げてしまうと違反報告を食らう可能性がある

トレジャーハント

  • 街を散策しているとリンゴの形をした宝箱を見つける時がある。これを開ける事で上述のフォトアイテムやジェスチャー、タリスマンや土管の家に配置する家具をランダムでゲット出来る。
  • 開いた後は、トレジャーボックスの在処を示す手掛かりとなる写真を撮影し、オンラインに投稿。ランダムで写真を受け取ったプレイヤーは、その写真を手掛かりにトレジャーを見付け、また次のプレイヤーへ…というシステム。
    • 自分の撮影した写真で発見した人が出るとダスティトークンがもらえるので、ちゃんとどこなのか分かりやすい写真の撮影が求められる。
  • 写真を受信してのトレジャーハントモードでは、そのマップ付近に自動で飛ばされ、ギブアップするか発見するかしないとイベントを進めることができない。
    • 言ってしまえばストーリーで飛び回るフィールドとは別領域のフィールドであり、それもあってかプレシャスジェムは別途配置されている。採掘とは違い、中・大のジェムもちらほら存在するので、それ目的で挑むのもあり。
    • 終了後は開始した場所とは一切関係なく、開始時のチャプターのスタート地点に飛ばされる。それなりに遠出してからだと戻るのが面倒になるので、その点は注意。

非同期オンライン

  • チャレンジミッションのスコア登録以外にオンライン要素の無かった前作から、上記のフォトモード、トレジャーハント、採掘場の採掘状況の変化など様々な要素が追加された。
  • チャレンジミッションでは他プレイヤーに挑戦状を送ったり、他プレイヤーのゴーストと同時進行でスコアを競い合ったり出来る。
  • こうした挑戦状に勝ったり、写真を評価したりされたり、或いはトレジャーハントで送った写真で誰かがトレジャーを見つけると、ダスティトークンが貰える。トークンを一定ポイント以上集めると専用コスチュームやタリスマンなどがゲット出来る。

その他

  • 能力強化に関して
    • 前作同様、プレシャスジェムを消費して能力強化するステータス性を採用しているが、上記のスキルやチューンによる落下速度の調整が可能な事から、「重力エナジー消費量減少」や、重力落下と重力スライドの「速度上昇」、体力や重力エナジーゲージの「上限アップ」などに関する強化項目が削除された。
      • 体力やゲージはストーリー進行によって上限がレベルアップ。重力エナジー消費量に関しては全体的に消費速度が遅くなった。
  • 難易度変更
    • プレイ中にいつでも三段階の難易度へ変更可能。
    • 通常プレイではゲームオーバーになる事が珍しい難易度だった前作から一転、敵が強化された事でノーマルモードでも歯応えを感じる程の出来に。難易度としては適正範囲と言える。
  • ミッションリプレイ
    • 土管の家が解放されると、回想という形で過去のストーリーミッション・サイドミッションをリプレイ可能になる。各エピソードの初めから好きなタイミングでリプレイが可能になった為、難易度を変更して二周目を楽しみたい場合も新規データを作る必要は無くなった。
      • 中にはこの回想でしか行えないことがあったりする。ストーリーに関わらないおまけ要素であるが。
  • 主観視点の仕様変更
    • 前作にも一応主観視点に変更する仕様はあったが、カメラ操作と重力落下操作以外の動作をすると通常の3D視点に戻ってしまっていた。
    • しかし今作では完全主観視点のまま全てのプレイが可能になった。正に異国の街を旅している気分に。

評価点

大幅なボリュームアップ

  • いかに散策が楽しい箱庭ゲームとは言え、前作ではストーリーミッションと特定市民との会話、チャレンジミッション、ジェム集め以外にする事が無く、DLCもボリュームはあるが数が少なくて物足りないものであった。
  • 今作では全体的なボリュームが大幅に増加。特にサイドミッションの数は非常に多く、バラエティも多彩。尾行ミッション、上記のフォトモードを生かした撮影ミッション、映画撮影の協力、引越しの手伝い等々。本編を補完したり関係するものもあるが、多くは市民の悩み事をキトゥンが解決していく話が中心になっている。
    • サイドミッション一つのボリュームは、大体5分~10分前後で終わるものが中心。一本の短編シナリオとしては十分な長さだろう。それが本編の倍以上の数で収録されている。
    • チャレンジミッションもバラエティ豊かになった。前作同様、能力を限定された重力レースやリミットバトル等の他、重力操作を使った新聞配達やチラシ配り、果ては能力一切使用不可の状態でアイドルの影武者など*4様々。
  • マップも、前作の舞台ヘキサヴェルの4都市全てを収録している他、それと同等以上の広さを持つジルガ・パラ・ラオの4都市+αの、公式曰く前作の2・5倍。しかしジルガ・パラ・ラオのマップの密度は圧巻で、体感だと3倍から4倍はある様に感じる。
  • 前作で挙げられていた「折角マップが作り込まれているのに、キトゥンと住民があまり関われていない」という不満点も、大幅に増えたNPCとの上述のジェスチャー、サイドミッションの大幅増加により解消されている。
  • フォトモードの評価は高く、ただ写真を撮る為に街を歩くだけで時間が潰れていく。上記のジェスチャーコマンドと組み合わせて三脚モードも使えるので、正に旅行気分の様に歩き回ってセルフィー写真*5を撮影したり、という遊び方も。
  • 元々散策が楽しい箱庭ゲームと言われていた事に加え、完全主観視点操作が可能になった事、フォトモードにより自分の好きな構図やキトゥンのポージングで写真を撮れるようになった事で、ストーリーもサイドミッションも全てそっちのけで街を歩き回るプレイヤーが続出。「プレイ時間10時間を過ぎても第1章が終わったところで止まってる」という声が多く聞かれた*6。誰が言ったか、「メインストーリー進めたくない病に罹患する」とは言い得て妙である。
    • 特にトレジャーハントは好評で、ジェム集めを含むこうした他のオープンワールド系ゲームにありがちな作業的プレイを作業と感じさせない仕様は引き続き支持されている。
      • 慣れてきたプレイヤーにより、ヒントとして送られてくる写真が徐々に意地悪になっていったが、そんな写真からトレジャーの位置を推測して発見した喜びもひとしおだったりする*7
  • また、このフォトモードを始めとした非同期オンライン要素のどれもが過剰に他プレイヤーと関わらない・競い合い過ぎないという緩いシステムだった事もあり、気軽に楽しめる事もプレイを楽しむ一助になった。写真を評価したり挑戦状に勝ったり、トレジャーハントをクリアする事でダスティトークンが貰えるが、評価しなかったり失敗したりしてもデメリットは無い。
    • ちなみに本作のオンライン要素は全て、PSplusに加入していないユーザーでも、ネット環境さえ整っていれば制限無しで遊べる。

ハード移行による変化

  • PS4独占になった事でグラフィックは格段に強化。街並みは細かな描画が可能となり、建造物の細かい凹凸もしっかり描かれているので、トゥーンレンダリング調のグラフィックでありながら、ゲームへの没入感はグッと増している。特に、何処か物寂しい印象のあったヘキサヴィルの街並みから一転、賑やかな活気ある本作の港町は見ているだけで楽しい。前作から引き継がれたヘキサヴィルも単なるリマスターではなく、細かい点が多く修正・加筆された。
    • グラフィックの描かれている箇所にはほとんど何処にでも立てる、と言われた前作よりも更に遠くの場所まで、シームレスで移動可能になった。前作プレイ済みのプレイヤーからすれば尚の事、そのマップ範囲の大幅な拡大は驚嘆の一言であろう。
  • NPCやオブジェクトの描写もパワーアップしており、活気のある港町で生活する人々の生活が丁寧に描かれている。
    • 前作ではオブジェクトを破壊すると残骸はすぐに消失したり、驚いて逃げるNPCはすぐにフェードアウトしてしまうなどしていたものが、ローディングが挟まれるまで残骸はその場に残り続ける仕様に。逃げるNPCを追ってもかなり長い間消えずに逃げ続けるようになるなど、なるべくゲームとしての没入感を消さないような工夫もされるようになった。
  • 重力操作の爽快感は今作でも健在。没入感を高める細かいエフェクトも、重力スライド時に火花が出るようになった、攻撃モーションや着地モーションが追加された等、磨きが掛かっている。CGイベントムービーの演出やクオリティ、本シリーズ独自のバンドシネ・コミック調イベントの絵柄なども、より効果的な演出がなされるようになった。
    • 後者のコミックイラストのタッチは、前作よりもポップスになり、より馴染みやすい絵柄に。
  • 上下左右前後の360度、グルグルと目紛しい視点移動が起こるゲームデザインだが、据え置き機で画面が広くなった事で視認性は上がった為、3D酔いは幾らか緩和されている。

キャラクターの魅力

  • 前作から引き続き、主人公のキトゥンは真っ直ぐで元気に溢れた性格の持ち主としてとても魅力的に描かれており、市民の為に奔走する姿には自然と強く感情移入してしまう。このキトゥンのキャラクター性が、ミッションの楽しさを引き立てていると言っても過言ではない。 このお陰で益々自撮り写真が溜まっていく。
    • サブキャラクター達も皆一癖ある個性を持っているので、ちょっとしたサイドクエストさえも楽しめるという声は多い。前作では放蕩警務官でしかなかったシドーの意外な特技や、かつてライバルキャラだったパートナー・クロウのコミカルな一面なども明かされる。
  • サイドミッションの各モブキャラは、(キトゥンの性格の良さに隠れて気付きにくいが)初めは中々のゲスとして描かれる場合もある。しかしそうしたミッションは順次解放されるミッションと一続きになっている場合がほとんどで、こうしたモブキャラにもまた愛着が湧く様になっている。
    • 続き物のサイドミッションを終えると、会話マークが表示されない該当モブキャラが街の何処かにいる。近付く事で後日談を聞く事が可能なので、探してみるのも一興。
  • 前作よりボイスの量も増え、漫画調のパートや吹き出しの会話シーンなどでもボイスが付くようになった。一言二言ながら数は多く、よりキャラクターの雰囲気をつかみやすくなっている。

アクション要素の拡充

  • 「作り込まれた高低差のある箱庭マップ」を「重力操作」で飛び回る、というコンセプトを第一に据えた為、重力キックだけで敵を倒す事がほとんどだった大味なアクションからは大きく進化。前述のアトリビュートチューンによる多彩なアクションやタリスマンの組み合わせにより戦略と難易度の幅が大きく広がった。
  • 全編通してメイン敵となる化け物・ネヴィは、特に大型ネヴィにおいてその種類が増えた他、人型NPCとの集団格闘戦や搭乗型兵器との戦闘も追加された事で新鮮味も出ている。
    • 中でも重力グラブが大幅に強化されている為、非常に使い勝手が良い。重力で物を掴んでぶつける、というこのゲームならではのアクション要素が強化された事は歓迎された。この他、敵が飛ばしてきたオブジェクトやミサイルを掴んで投げ返すという芸当も可能になる。しかし前述の通り威力の高い特殊グラブはゲージ消費技である上、どんな戦闘場面でもグラブ可能オブジェクトがあるとは限らないので、程良いバランスになっていると言えるだろう。
    • 採掘場の大型ネヴィや空を飛び回る敵など、キックだけではどうしても不利な敵がそれなりにいるのもグラブが活躍する理由。また、グラブ関連のタリスマンも、射程延長やグラブ数増加の他、被弾しても落とさなくなったりグラブしていなければ自動でグラブしてくれる、といった効果があるので諸々の難点を解消しやすい。
  • 自動追尾機能があるがエナジー消費量が激しいワームホールキックも、タリスマンのスキル組み合わせ次第では敵が居る限り無限にキックを繰り出す事も可能になる。
  • チューンの切り替えは、ルーナチューンが2章の途中、ユピトールチューンが2章最後で獲得出来る。ゲーム開始すぐに新要素を全て解放するのではなく、一つ一つ活用法をしっかり覚えた頃合いを見計らって能力が解放される為、操作面で見ても本作がとても丁寧に作られている印象がある。
    • この他にも、ストーリーやサイドミッションを進めると順番に新要素が解放される仕様が全編通して続き、そのチュートリアルも必要最低限の表示で留まっているので、プレイヤー側にとってもプレイ進行に際しての丁度よい刺激になる。
    • 操作やUIも向上し、L2ボタン一つで重力スライドが可能になったり、十字キーの右を押すだけでマップを呼び出せる。

更に磨きのかかったBGM

  • 音楽は引き続き田中公平氏が手掛けている。独特のグラフィックデザインと非常にマッチした各都市のBGMや迫力ある戦闘BGMなど、その完成度は高い。曲数自体も前作から大幅にボリュームアップしている。
    • 同じ曲でも状況に合わせ編成が異なったり、ゲームの展開に合わせて違う曲調へ展開したりと、演出としての効果もパワーアップしている。
    • 二人組のボスのテーマはそれぞれにパートが割り振られ、個別戦ではそのキャラのパートのみが、複合戦になると両方が一緒に流れる。別々でも合わせても曲として成立するというかなり凝った作りになっている。
      • こういった曲は、サントラではループごとに編成が変化していき、3ループや4ループで収録されている曲も多い。
    • また、今作を象徴する挿入歌となった『ア クゥ オーン トゥ ワ/赤いリンゴ』は、随一の人気を誇っている*8
  • ヘキサヴィル各都市のBGMも、前作からアレンジが加えられた。

コレクション要素・やり込み要素

  • 各ミッションのクリア報酬やトレジャーハント報酬で得られるタリスマンと、ジェスチャーコマンドやフォトアイテム、土管の家の模様替え用家具の他、フォトモードを活用したスナップショット収集など、収集要素は豊富。実績解除も前作の様に、適度な時間で本編を終えると同時にプラチナゲットも可能、という事はなくなったので、トロコンマニアにも好評。
    • 特に衣装は学生服、ナース、ウェイトレスなどキトゥンの魅力を引き出してくれると評価されている。無料のDLCにはNieR:Automataの2Bの衣装が用意されている。

DLC

  • 3/21に、無料大型DLC「時の箱舟~クロウの帰結~」が配信された。
    • 前作ラストで救い出した、50年前に行方不明になっていた子供達がその後どうなっていたかを補完するDLCで、キトゥンの相棒、クロウをプレイ出来る。
    • クロウを操作してオープンワールドを散策出来る訳ではなく、上述した様にあくまで前作で未消化かつ本作本編で語られなかった部分を補完する一本道ストーリーなので*9、そういう意味では自由度は少々低い。
    • ボリュームとしては2時間程度だが、プレイ初期のキトゥンよりも威力の高い重力キックとゲージ消費で何も無い空間からの重力スロウ攻撃が可能になるなど、DLCならではの楽しみもある。
      • 単純な能力の底上げでは無く、プレシャスジェムを使ったステータスアップができない、重力エナジーがすぐ無くなる、追加雑魚敵の攻撃が苛烈になっているなど、難易度の調整は比較的まとまっている。
  • DLCでのアップデートに伴い、デルヴール採掘海溝の最高レベルが30から50に拡充。特定条件を満たすと、本編でこのダンジョン式採掘にクロウをプレイアブルキャラとして操作が可能になる。

賛否両論点

ストーリー

  • それぞれの都市で繰り広げられる物語や展開は、捻りを加えつつも基本的には王道的展開で、パートナーキャラとの共闘もあり、熱い。サイドミッション含め個々のシナリオは良質だが…。
  • 解き明かされなかった前作からの謎は、物語として今作でしっかり完結している。しかしその真相解明は終章から始まる(メインストーリーの約80%が過ぎた辺り)為、駆け足感は否めず、詰め込み過ぎた印象を受ける。特に、或るキャラの正体が判明する瞬間は、幾つかの伏線を踏まえても「おお!」となると同時に戸惑いを覚えてしまう程。
    • 前半のジルガ・パラ・ラオのシナリオはほとんど終盤に繋がりがない。
    • 『2』の物語は実質三章で終わり*10、終章は投げっぱなしで終わった『1』からの完結といった内容のため、ストーリーの流れとしてもやや唐突。
    • 前作は開発上の都合でストーリーを途中で切ってリリースしたことが外山氏によって語られており*11、このあたりはその影響も大きいと思われる。
  • 上記の点にも関連するが、公式サイトでは「新規ユーザーでも本作からプレイして支障無い」と謳っているものの、中盤から前作の舞台ヘキサヴィルへ戻り前作のキャラが続々と登場するほか、終章も内容に関わる伏線がほぼほぼ前作にしかないため、前作をプレイしていないと後半ストーリーについていけなくなる可能性もある。
  • 本編に関する根幹の物語は完結するものの、所々明確な説明が無い箇所もある。
    • こちらはプレイヤーに考察の余地を残す、又は想像で補えるレベルの手掛かりはあるので、そこも含めて評価点とする向きもあるだろうが、「何もかもハッキリ描いて欲しい」という人は少しモヤモヤするだろう。
    • ちなみに、「剥き出しの特異点」という言葉も少し話に絡んでくる。分からなくても致命的ではないが、ラスボス戦後のやり取りが少しわからなくなる可能性も。
  • 本作の導入部を含む描写不足な点に関しては、発売前に放送された今作の前日譚を描いたアニメーションで少し補完されている。YouTubeの公式チャンネルで無料公開されているので、プレイ前に一度観ておくとよいかも知れない*12
  • ストーリー・サイド共にプレイ内容は非常にバラエティ豊富なものの、強制的に能力に制限のかかる一部ミッションは賛否両論。「一市民のトラブルバスターとして様々なプレイが楽しめる」と取るか、「制作側の都合で付け足した様なミッションを強制される」と取るかで意見が分かれると思われる。
  • 日本語音声ではない。
    • 前作と同じようにオリジナルの言語であるため、アクションの時に文字を追うことができない。

マップ

  • 空中都市一つ一つが作り込まれている事も売りの一つである本シリーズだが、発売から5年が経過した現在でも未だに道に迷うくらい複雑に入り組んだ前作の各都市に比べると、本作の新規マップは港街以外の都市は全体的に平たい印象がある。
    • 無論マップの作り込みと広大さは国内ゲームソフトとしてトップクラスなのだが、建造物の複雑さという一点だけは前作と比較して物足りない部分になっている。しかし普通にプレイしている分には特に気に掛かる点ではないので、人それぞれだろう。

問題点

オンライン要素

  • チャレンジミッションでは複数のゴーストとスコアを競える新要素として好評だったが、フォトレビューに関しては、「好きなタイミングで好きに写真を見たりレビューしたり出来ない」という声が多かった。
    • 数万人のプレイヤーが撮った大量の写真をサーバーで管理して、自由アクセスさせて閲覧可能にした日には非常に負荷が掛かるであろう事は推測出来るのだが、せめて写真が送られてくる頻度はもう少し上げて欲しいところ。
    • と言うのも、どれだけ渾身の一枚が撮れたとしても、プレイヤーがフォトレビューをする為には「撮影されたその場所で他プレイヤーのゴーストを自力で見つけなければならない」為*13、「どんな写真でもいいからミッションマーカーの付近で写真を撮って投稿する」事が最も効率的に評価をもらい、ひいてはダスティトークンをゲットする方法となってしまっている。
    • 「撮った場所>渾身の一枚」では残念だという事で、改善を望む声は多い。
  • 発売から間も無く、4日間に渡る大型メンテナンスが入りネットワーク機能が一切使えなくなった事で、全てのオンライン機能が停止。撮影した写真を投稿する事も出来なくなった。
    • これにより、ネットワーク環境の有る無しで本作を楽しむ幅が大きく変わってしまう事が判明。オンライン要素に依存したゲームプレイが増えた事もあり、十分に本作を楽しみたい場合には、本来シングルプレイである筈の本作にオンライン環境が半ば必須になっている。PS4所持者でネット環境無しというプレイヤーは少数だろうが…。
  • オンラインサービスが2018年7月19日をもって終了したため、当時の雰囲気を味わったりダスティトークンの入手が不可能となった。
    • 幸いにもプレイングそのものに支障をきたす訳ではないが、一部のタリスマンや衣装の入手が不可能となったことは、アイテムコンプや写真撮影を楽しむ人程影響が大きい。

マップ

  • ジルガ・パラ・ラオではエリア内を雲が通過する演出があり、初見では雲の表現力の高さに思わず感服してしまうが…。実際には濃くて分厚い雲が視界を覆い尽くし画面を真っ白にしてしまうため、トレジャーハンティングやコレクションのスナップショット収集や観光において深刻な視界妨害を引き起こすことになってしまった。
    • これに対してはプレイヤーの任意で雲の表示をオフに出来ればと惜しむ声が多い。
  • 前作では破壊可能だったオブジェクトが破壊不可能になっている。
    • グラフィックの向上の弊害と言えるだろう。柵、花壇、電話ボックス等色々なものが破壊不可になっており、街のものを壊す爽快感が無くなっている。まぁ、そういうゲームじゃないと言われればそれまでだが…

重力ケージ

  • 1と同じくスタミナ制であり、切れるとイライラする。

バトル

  • 以前からだが、調整ができていない。重力キックなどの発動に少々ズレる。
  • 相変わらずの単調であり、コアを破壊するだけである。ボス線などはただの作業である。
  • 終盤のある敵に対して無数のある弱点を 二回攻撃する というものがある。最早ただの苦行である。

3D酔い

  • 画面が広くなって少し緩和されたとは言え、元々アクションにおけるゲームスピードやカメラワークはかなり速いシリーズなので、他ゲームと比較した場合、今作もやはり目への負担は大きい。適度な休憩をお勧めする。
    • 特にカメラワークは壁際や天井付近では暴れることが多く、後述するエリアの視認性の悪さを引き起こす一因にもなっている。
  • 中でもユピトールチューン獲得のストーリーミッションで登場する狭い特殊エリアは、視界が狭く、前述したこのチューンの操作性の悪さも相まってプレイヤーの視力に掛かる負担は格段に大きい。
    • このエリアはストーリー上では一度きりの登場であったため一度クリアしてしまえば(エピソードリプレイを除き)もう訪れることはなかったが、アップデートにより拡充されたデルブール採掘海溝の34層と44層にて再登場。このエリア特有の視認性の悪さや操作性の悪さと戦いながら、デルブール採掘海溝の仕様*14により強化された敵を相手に戦わなければならない。

やりこみ要素

  • タリスマンの収集と合成は本作のやりこみの一つだが、必要性は薄い。
    • ストーリー攻略やトロフィー獲得のためなら、攻略中に入手できるプレミアムタリスマンで事足りてしまい、強力なタリスマンを用意しても活用出来る場面が乏しい。
    • デルヴール採掘海溝で手に入るタリスマンも、強力であるが凄まじいというレベルではない。
    • 裏を返せば、特定のスキルやタリスマンが必須というバランスでもないので一概に問題とも言い難いが。

総評

プラットフォームを移行して前作の不満点を多く解消する事で、「ただ歩くだけで楽しい」「ストーリーを進めるのが勿体無い」と思わせる程の魅力を詰め込んだ完結編。
不満点はあるものの、「ここがダメ」というのではなく「こうすればもっと良くなるのに」と思わせる程に満足度は高い。
重力操作による独特な浮遊感やゲームプレイの爽快感は唯一無二のものがあり、プレイの幅が広がった事も併せ、続編として正統進化を遂げたアクションアドベンチャーになったと言える。
ストーリーを含めた細かい部分に不満点は残るものの、独特なデザインの街並みを散策するだけで楽しめる雰囲気ゲーの要素を色濃く持ちながら、アクション要素も拡充し、物語も硬派なシナリオを完結させている。PS4を持っているなら是非ともお勧めしたい一本である。

余談

  • 月刊コミックアライブにて、コミカライズが連載される。作者はくつがえる氏。
    • ストーリーは本作の前日譚アニメから始まっている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 2017年
  • PS4
  • AADV
  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
  • SIEジャパンスタジオ

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最終更新:2023年11月12日 22:22

*1 通常グラブでもチューン毎に特性あり。

*2 採掘場から船へ無事に戻ってこなければ、原石はタリスマンとして使用不可。

*3 出来ない写真もあるが場所依存。

*4 これらはサイドミッションクリアで解放される。

*5 カメラアングルを工夫して「あれは何?」コマンドを上手く使うと…。

*6 実際トロフィーの取得状況を見ると、ゲームの難易度は特段高いわけでもないのに、発売日から二週間以上経過しても第2章をクリアした人数は第1章をクリアした人数の三分の一程度に留まっていた。

*7 一応、ハンティング中にトレジャーが近くにあるとシグナルが鳴るという措置はある。

*8 実は前作のOP曲『万有引力の発見』をジャズ風にアレンジし、歌詞を加えたもの。

*9 2から始めた新規プレイヤーにとっては完全に蛇足になるため判断した、と製作陣がコメントしている。

*10 実際ここで一度スタッフロールも流れる。

*11 前作は本来、今作における終章を含む内容で製作されるはずだったと思われる。

*12 本作初回限定版には日本語音声を含む、このアニメーションのブルーレイディスクが同梱されている。

*13 トレジャーは通知が来る他、マップにもアイコンが表示される。しかしフォトレビューは通知もマップアイコンも表示されない。「レビューされた」という通知だけ来る。

*14 デルブール採掘海溝ではプレイヤーの設定に関わらず層によって難易度が固定され、深層に行くほど難易度が高くなる。