貝獣物語

【かいじゅうものがたり】

ジャンル ロールプレイング
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2Mbit ROMカートリッジ
発売元 ナムコ
開発元 バースデイ (企画・デザイン)
イマージュソフト
発売日 1988年11月18日
定価 5,500円
プレイ人数 1人
備考 洋題:『SHELL SAURS STORY』
判定 なし
ポイント 連動マップやザッピングシステム等の時代を先取りしたシステム
ほんわかとした世界観
高い自由度と旅を満喫できる細かい配慮
致命的なバグや一部の調整不足が足を引っ張る
貝獣物語シリーズリンク


概要

ゲーム内容自体はごく一般的な『ドラクエ』型のRPG。
ソフト本体とは別に、冒険の舞台である「シェルドラド」の地図と、不気味なドクロが描かれ封をしてある「涙の密書」、そしてプレイヤーキャラクターとなる四人の勇者の小さな人形が付属している。
地図には縦横座標が振られており、ゲーム内のフィールド上で「ばしょ」コマンドを選ぶことにより、「たて12 よこN」などといった形で座標が参照できる*1。このコマンドで現在位置を確認し、地図上へフィギュアを置いて、各人の居場所を確認しながら旅を行うことが推奨されている。

シェルドラドの伝説(説明書より)

シェルドラドと呼ばれるこの世界には、昔から、背中に小さな貝をつけた「貝獣」という生き物が住んでおりました。
その昔、悪のかぎりをつくした暗黒大魔王を、不思議な4つの貝の力によって封じ込めた平和の守り神、それが貝獣なのです。そのときの戦いで使われた不思議な貝は、今でもシェルドラドに大切に祀られていましたが、ただひとつ火の貝だけは、戦いの中で、どこか遠くへ飛ばされてしまったということです。
いつしかシェルドラドにはこんな言い伝えが生まれました。
「いつの日か、再び大魔王が甦るとき、天空のかなたより、火の貝をまといし勇者が舞い降りる。そのときこそ火・水・大地・大気の4つの貝をそろえ、大魔王を封じこめよ」
そして今、大魔王ファットバジャーが封印を打ち破り、千年の恨みを晴らさんと復讐を開始したのです。たちまちのうちに魔物は世にはびこり、世界は闇におおわれてゆきました。
そんな中、シェルドラドでは選ばれし3人の貝獣の子供たちが、打倒ファットバジャーに立ち上りました。そして時を同じくして、シェルドラドに1人の少年がやって来ました……。
世界を暗黒の闇に包まんとする大魔王ファットバジャー。悪の化身ともいえるこの大魔王を倒すことこそ、キミにたくされた使命なのです。
迫りくる魔物の群れ、大魔王によってしかけられた罠、行く先々で待ち受ける謎また謎。キミは多くの困難に打ち勝って、打倒ファットバジャーを目指すのです!

システム

  • 「あう」、「わかれる」、そして「パス」
    • いずれも本作を象徴する独特なコマンド。「パス」は通常コマンド上にいつでも表示されており、「あう」「わかれる」は誰もいない方向か、目の前にいてまだ合流はしていない、他の勇者に向かって「はなす」と表示される。
    • 本作の冒険は、4人の貝の勇者がマップの四隅の城から1人ずつ、バラバラに旅立つという状態で始まる*2
    • 当初はいずれの勇者も一人旅からスタートするが、「パス」コマンドを選ぶことにより、ほとんどいつでも任意に操作するキャラを変更できる。
    • 他の勇者に出会った際は、「あう」コマンドを選ぶことで、パーティの仲間に加えることができる。またパーティを組んでいる際ならば、いつでも「わかれる」ことで、一人旅に戻ることもできる*3
    • 仲間とパーティーを組むことにより、強力な「合体魔法」が使用できる。仲間の組み合わせによって、使える合体魔法の種類も変わる。
      • 合体魔法は参加者全員のMPを消費するが、発動自体は個人のコマンドとして入力する。仲間は別の行動をとったり、あるいはMPが残っているなら、同じターンにみんなが合体魔法を使うといったことも可能。
    • 「パス」「あう」「わかれる」の併用で、いろんなチーム組み合わせや並び方を試すことができる。
    • 互いに旅を進めてまずは2人ずつ、そして2人と2人で4人へ合流するのが一般的な序盤の攻略目標となる。ただし最初の1人をずっと操作し、残り全員を迎えに行くなどといった遊び方も自由。
      • 無理して先まで進みすぎ、周囲の敵に勝てなくなって立ち往生している状態の勇者を近場の仲間で救助に行く、なんていうのは序盤によくある展開である。
+ 操作キャラクターとなる4人の勇者
  • 地球から来た少年
    • 最初に操作する主人公で、火の貝を持ち、魔王を倒すためシェルドラドに召喚された勇者。プレイヤーキャラクター中で唯一の人間。南東の城「マイヨー」から旅立つ。
    • 名前はひらがな4文字以内で自由に設定できるが、何も入力しないで決定するとデフォルト名の「リッキー*4」になる。*5
    • 攻撃力・守備力・VP*6の成長率が、いずれも非常に高く傑出している。武器や防具も強力なものを装備可能な肉弾戦のエキスパート。
    • 魔法は一切習得できず、MP*7も最初のうちはゼロ。ただし合体魔法の都合上、途中からほんの少しずつだけMPも伸びる。
    • 特技は「カンフー」。VPを少し消費して、通常攻撃よりも強力な一撃を放つ。レベルアップでより強力な技を繰り出すようになる*8
      • 旅立った時点ではまだ使用できず、最初の仲間と合流できるくらいのレベルで使えるようになる。なぜか特技は習得したというアナウンスが出ないので、いつの間にやら使えるようになっていたということが多い。
  • クピクピ
    • 大気の貝の勇者。ひときわ小柄で、桃色の体色を持つ貝獣。彼だけ貝のサイズが大きく、頭に被っているという独特な外見。マップ南西の端「ローラン」の城から出発。
    • 貝獣たちの中でも年少なのか、冒険を開始する際、王様から「そなたはまだ子供なのに勇敢な」などと感心される。
    • 主人公とは逆に「戦うのはちょっと苦手(説明書より)」であるらしく、攻撃力・守備力・VPがどれも低い。代わりにMPの伸びはトップで、早いうちから回復魔法が充実する。
    • 最終的には死者を生き返らせる魔法まで習得する。また最低限の攻撃魔法や、便利な補助魔法なども数多く覚える。
    • 特技は「セーブ」。戦闘中でなければ、いつでもどこでも旅の記録ができる。セーブ効果のオマケとして、パーティ内のメンバーがあとどれだけ経験値を稼げばレベルアップするのかもわかる。
  • ポヨン
    • 水の貝の勇者。緑色で丸くて少しずんぐりした体格。背中に小さな貝を背負っている。北西の「バンデルベルデ」が出発地点。
    • 説明書のキャラクタ解説では「少しぼんやりしていて頼りなさそうに見られがち」などと書かれている。旅立ち時にも王様から「ボーっとした顔をしている」とひどい言われよう。
    • 主人公に次いで肉弾戦が得意。MPこそあまり伸びないが、ピンポイントでかなり役立つ魔法も覚える。
    • 特技は「ランダムワープ」。目的地こそ定めることができずにランダムながら、各地の城や町へと一瞬にしてワープできる。フィールド上だけでなく町の中、祠の中でも使える。制限といえば習得レベルが高めでなかなか覚えないことと、船に乗っているときには使えないことくらい。特筆すべきはノーコストで何度でも使える点。
      • 説明書には「行ったことがある場所のみ」と書れているが、実際はまだ行ったことのない町へもワープする。
  • バブ
    • 大地の貝の勇者。色は白く、頭にツノが生えている。貝はポヨンと同様に背中。北東「レハレッタ」の城からスタートする。
    • 「力はあまりない」との触れ込み通り、肉弾戦はやや苦手。その分MPがよく上昇し、攻撃魔法を多く覚える。またクピクピよりは攻撃力が高い。
    • 移動や補助の魔法も得意としており、加えて回復魔法もクピクピとほぼ同様のものを習得する。ただし回復魔法の習得はやや遅めで、蘇生魔法もさすがに無理。
    • 特技は「エスケープ」。最初から習得しており、VPを消費して高確率で敵から逃げる。体力の消耗こそかなり激しいが、非常に便利。
  • 「目覚めの部屋」は冒険の拠点
    • 他の国産RPGでいう教会のような役目の施設。全滅した際は、体から抜け出したタマシイがここへ呼び戻されて復活する。
      • 復活するのは、操作している先頭の勇者が最後に記録をとった目覚めの部屋。1度もセーブをつけてもらっていない場合は、出発地点の目覚めの部屋へ帰還する。
    • 普通に訪れた際も仲間を復活させてもらったり、毒を消してもらったりできる。どちらも無料の親切設計。
    • 最も大事な機能が「セーブ」。ここで記録をつけてもらうことにより、次回も同じ場所からゲームを再開することができる。ただしクピクピが同じ効果の特技を持っており、いつでもセーブができてしまうため、この機能を活用する機会は意外と少なかったりする。
      • 全滅した際、復活するのが最後に記録をした部屋なので、たまにはここを利用しないと、いざというとき困ったことになるのだが。
  • 序盤の旅では「毒」に注意!
    • 初期から中期くらいまで、毒の状態異常にしてくる魔物が広く登場する。
    • 毒状態による悪影響は2つあり、1つ目はフィールド上を1歩歩くごとに1ダメージを受ける効果。キャラクターの初期体力が総じてあまり高くないので、序盤はこの効果だけでも死の危険がある。
    • もう1つは攻撃力が半減するという効果。厳密にいうと攻撃力そのものではなく、攻撃して敵に与えるダメージ量が半減する。敵を倒すのにかかる手数が倍増するため、一人旅のうちに毒を受けるとかなり厄介である。
    • 治療手段は「目覚めの部屋」か毒消しアイテムの「ポイズノン」、あるいはポヨンの魔法「ドクケーシー*9」。ポヨンが仲間にいない限り、序盤は毒消しが常に手放せない。
  • お泊まりは「ホテル」で
    • つまりは「宿屋」。泊まると体力・魔力が満タンまで回復する。MPを回復できる手段は、原則としてホテル宿泊のみ。
    • 宿泊する際、必ずサインを要求される。つまりは宿帳をつけているのだろうが、誰がサインをしたかで1人当たりの宿代が変わる。基本的には、サインをする勇者の出発地点から遠くへ行くほど宿泊料が高くなる。
  • 多数の道具が「戦士の友」
    • 一般的な回復アイテムや毒消しなどのほか、「さけ」「水筒」「シルバーキー」などといった汎用イベントアイテムも街で購入できる。
    • 「さけ」や「水筒」は各地で特定の人物に渡すと、重要な道具やヒントがもらえたり、道を通してもらえたりする。
    • 「シルバーキー」は使い捨てのカギ。方々に設置されているカギのかかった宝箱や、一部の扉を開けるのに使う。
    • 変わり種のアイテムとしては、「サンドラット」というものもある。これは荷物を運んでくれる家畜で、購入することにより余分に道具を持てるようになる。勇者各人が1匹ずつまで連れ歩ける。
    • 「ラッキーベル」というのもユニークなアイテム。鳴らすと敵が驚いて逃げるという触れ込みなのだが、実はラスボス以外のあらゆる敵に通用する。たとえボスでも、宝や拠点の番人でも逃げ出す。
    • 「ボート」は2人用、「プカシップ」は4人全員で乗り込める船。どちらも魔法で小さくなるらしく、アイテムとして持ち歩ける。
    • 「戦士の友」は、体力を完全回復してくれる飲み薬。序盤用には小回復*10の「カミダノミン」という薬も存在し、こうしたいかにも商品名らしい、独特のネーミングセンスがまた面白い。
      • なお戦士の友は最初期から購入できる薬だが、効果が完全回復なので、ゲームの最後までずっと頼りになる。全回復できる魔法はMPの低いポヨンがかなり遅くに覚えるだけなため、中盤以降はこの薬が手放せなくなる。ラスボス戦まで通して必須に近い、まさに「戦士の友」である。
  • 旅の関門「悪魔の罠」
    • 要所要所に設定された「悪魔の罠」では、チェス盤をナナメに傾けたような◇型状のボードの上へ、敵も味方も1体ずつのコマ扱いで配置される。
    • 味方全員と敵全員が交互に1歩ずつだけ盤面上を移動していき、どちらかが相手のコマに重なったら戦闘開始。1対1で戦い決着をつける。
    • バトルで敗北した側のコマは、ボード上から取り除かれる。同行している勇者みんなが敗北したら全滅扱い、敵のボス駒をやっつけたら勝利扱い。どちらかの陣営が敗北するまで、移動とバトルを繰り返す。
    • 独特の操作感と恐怖をあおる演出のため、なかなか怖い。

評価点

  • お伽話のような世界観
    • 近年に確立された中世ヨーロッパ的なファンタジーというよりも、もう少し古典的な、お伽話に近い ほんわかとした世界観となっている。
    • こうした古典ファンタジー的な世界を歩くゲームというのは、意外に珍しく希少といえる。
    • 中盤以降の、宝の地図や人々の会話を参考に世界中を渡り歩き、宝探しをしていく展開も楽しい。
      • 宝の地図そのものは初期に4人が1枚ずつ手に入れる形となるが、そこに示された財宝は、単純に4つ集めることで効果を発揮するわけではない。分類の違う財宝が2種類あり、それぞれに必要となる場所も利用法も異なる。
  • 「あなた」が旅するシェルドラド
    • 主人公の名前をプレイヤーが決めるゲーム自体は多々あるが、「キミ自身」が異世界に呼ばれ冒険する設定というのは、これまた意外に珍しい。
    • ただし主人公のデザインや能力は固定なので、このカンフー少年を自分自身と一体化して考えられるかは個人差が出る。また、彼が「地球から召喚された、キミ自身」であるという設定は、あくまでも設定のみの話であり、ゲーム内で言及される機会がほとんどない。というか、説明書ですら最初しかキミだと書かれていない。
  • 魅力的なキャラクターデザイン
    • 貝獣たちの可愛らしさは言うまでもなく、町の人々やサブキャラクターたちにも独自の個性と温もりがある。会話による個性化がちゃんとはかられていて、各地の人々と話すのが楽しい。
    • モンスター陣営も一枚岩とは言い切れず、個性の豊かな連中がいる。裏切り者が出ていたり、ゴブリン達はかなり強いが酒に弱くていい加減だったり、魔王とは無関係な場所で個人的な趣味を優先している魔物がいたり。
  • タイトル画面や戦闘のグラフィックスが美しい
    • タイトルはそこそこ凝った綺麗なグラフィックスで、貝獣島?を背景にしたタイトルロゴと、4人の勇者が大きく描かれている。
    • 戦闘シーンはいわゆるドラクエ型だが、ウィンドウに重なる形で、魔物の手前に勇者4人も表示される。ちまちまとだがきちんとアクションしながら攻撃をしかけ、魔法を使えばそのエフェクトもモンスターに向け放たれる。
    • 勇者たちのアイコンは、戦う相手を選ぶカーソル役を兼ねている。キャラクター自身を動かすことで標的を選び、そのまま各人きちんと自分が受け持つ相手の前に待機するので、視覚的にも分かりやすい。
    • モンスター側の攻撃はアクションしないし、敵の魔法も文字と効果音によるアナウンスのみ。ただし一定以下まで体力を削るとピンチ状態の外見に変化し、攻撃力が少し低下する。実質ほとんど全て*11の魔物に2種類のグラフィックスが用意されているわけで、これもFC時代のRPGとしては凝った作りこみといえる。
  • 冒険心をくすぐるゲームデザイン
    • 「本物の」地図を広げて挑む冒険は、従来のRPGになかった探求心を呼び起こさせる。マップの描き込みはかなり細かく作られており、まだ見ぬ土地へ思いをはせたり、一見すると行けない場所へどう到達をするのかといった期待感も抱かせる。
      • その一方、地図のみに依存しているわけでもなく、ゲーム中でも「どちらの方角に ほこらがある」とか、「宝はどちらの方角のどんな所に沈んでいる」とか、多数のヒントが提示される。そしてこれらの情報を、地図に照らし合わせて検討するのがまた楽しい。
    • ゲーム内の地形配置は、地図をほぼ忠実に再現している。このため画面に映っているもの以上の臨場感を楽しめるし、攻略上の助けとしても頼もしい。
    • 4人の勇者がマップの四方から出発し、それぞれ独自に旅を進めて合流を目指すという設計も、マップ+ミニフィギュア同梱というユニークなパッケージとうまくマッチしていた。
  • 自分だけの旅が追体験できる探索の自由度
    • まず冒頭、4人の主人公の誰を優先的に動かしてもいいという自由度がとても面白い。最初の少年ひとりで延々と旅を進めてもいいし、つまみ食い的にどんどんパスしてキャラを切り替えてもいい。気に入った貝獣ひとりを重点的に、ひたすら優遇してやるのもOK。
    • 中盤以降の宝探しも、何をどういう順序で探していくかの自由度が非常に高い。仲間集めを優先するのか、ボートを買って海へ出て、まずは近場の宝を探索するのか、それとも一気に遠くを目指すのか、あるいは海を後回しにして陸路をひたすら行軍するのか。世界中にちりばめられた、様々なイベントや要素を、プレイヤーごとのスタイルに合わせ自由に渡っていける。
    • 4人はそれぞれなりに独自の強みを持っており、誰をメインで優遇しても、あるいは均等に動かしていったとしても、きちんとバランスのいい冒険ができる。少なくとも序盤は。
+ 4人の初期条件について、一長一短
  • 火の貝の勇者
    • 単純にパラメータの成長率がいいので、少しレベルを上げればゴリ押しが効く。武器や防具も優れたものが持てる。
    • 魔法を一切使えないため、道具の取捨選択にはかなり悩まされる。
    • 4人の中で唯一、出発地点や近隣で兜が買えない。装備が全ては整わないまま次の大陸へ進む必要がある。ただし兜は防具の中で最も効力が低いことに加え、本人の守備力の伸びもいいので、購入できなくともさほど不自由はしない。
    • そもそも、近場に中継地点となるような町が存在しない。大陸を出るまでは、出発地点の城のみを拠点に探索していく必要がある。ただしその分、冒険の方向性はつかみやすい。また最初の大陸があまり広くないので、次の地域へ早めに到達することができる。
  • クピクピ
    • すぐに回復魔法を覚えるため、全体的なパラメータこそ低くても持久戦が可能。自力で踏破可能な範囲を拡げやすい。他の仲間にはほぼ必携となる、傷薬を持つ必要がない。
    • 出発地点や近隣で、そこそこ優れた武器や防具が、そこそこ現実的な価格でどうにか調達できる。きちんと装備を更新していけば、初期の戦闘力はポヨンにもさほど見劣りしない。
      • 合流した時点での攻撃力は、ポヨンより高いという事態すら珍しくない。これ以降は伸び悩むのだが。
    • 基礎能力が低く、こと素の体力が非常に乏しい関係から、強めの敵のエリアに入った途端、あっさりやられるケースは多い。
      • 特に辛いのが最初のレベル1期間。体力があまりにも低く、敵が複数で登場したらまず絶対に勝てない。たまに登場する単体のザコのみと戦い、勝っても逃げても毎回ホテルへ駆け込む必要がある。レベル2で回復魔法を覚え体力不足を補えるようになるが、そこへ行きつくまでの最初の苦労が4人の中でも特にしんどい。
    • 低い能力を穴埋めするのに、高価な装備を買う必要があるというのも大変。性能の割には安価かつ、他の仲間たちより早めに中級クラスの装備を購入できるが、序盤の買い物として負担なことは間違いない。
    • 回復魔法に頼っての持久戦が前提となるため、冒険の進行ペースが鈍くなりがち。
  • ポヨン
    • 主人公に次いで身体能力が高く、こちらもゴリ押し攻略に向く。
    • 魔法で毒を消せるため、ポイズノン(解毒アイテム)に荷物を圧迫される気遣いがない。前述の通り、本作の毒はかなり厄介なので、他の勇者と比べこの点は明らかに有利。
    • 多めの資金が入った財布を落とす魔物のペアと、出発点の近くで遭遇しやすい。おかげで当座の装備や道具はすぐに整う。
    • 出発点である北西地方に、原住民の村が存在しない。そのため「サンドラット」を購入するのが、他の仲間の地方へ到達するまでお預けになる。
  • バブ
    • 特技「エスケープ」を覚えているので、強敵と遭遇しても即座に逃げることができる。1人のうちなら体力消費も、そこまで激しい量ではない。出発地点の近くには、これを利用する前提のような個所も存在する。
    • 早期に「レビテート」の魔法を習得するため、遠出をしても、限界を感じた時点ですぐさま直前の町まで戻れる。帰還アイテム「ホーリー*12」を持ち歩く必要がない。
    • 「エスケープ」と「レビテート」の相性がとても優れており、強行軍でイベントを早く消化したり、仲間との早期合流を目指したりがしやすい。
    • 能力面の低さがたたって、ひたすら逃げ回りながらの旅になりがち。いざとなったらすぐ戻れるのは安心だが、他の3人ほどには無理がきかない。
    • 一人だけ出発点でも近隣でも「槍」が買えない。他の勇者にとっては75パールという、そこそこ安価で買える頼もしい武器。次点である「戦士の剣」に必要な200パールを、槍なしで貯めるのは少し辛い。エスケープでひたすら逃げるから要らない、という考え方もできなくはないが、やっぱり初期に多少の稼ぎは必要なので、槍が手に入らないのは苦労する。
  • 成長を楽しむゲームバランス
    • レベルを上げたり装備を更新することで、勇者たちは着実に強くなってゆく。強敵も多く、ことに最初は雑魚との一戦ごとが命がけだが、だんだんと勝てる範囲が広がって、遠出も可能になっていく。
    • 一挙にグンと強くなるわけでこそないが、「確かに強くなった」という手応えは感じられる、絶妙なバランスになっている。
    • 各キャラ専用装備には「ほのおのたて」「みずのぼうし」など、それぞれの貝の属性に関する名前がつけられている。売っている場所がバラバラなので装備できる仲間を連れて行くだけでも一苦労だが、各地を放浪しながらじっくりと最強装備を集めていける楽しさがある。
  • 「オート」モードで戦える
    • 各人がランダムに相手を選び通常攻撃を繰り出すだけだが、弱い相手と戦うのにはこれで問題ない。
    • ワンボタンで1ターン分の選択が終わるため、入力時間の節約として有用。毎ターン、そのままオートで戦い続けるか、「マニュアル」モードへ変更するか、あるいは逃げ出すのかも選べる。
    • ランダムといっても、可能な限りバラバラな相手と戦うように分散はする。このため、そこそこ効率よく戦うことができる。地味に便利で意外と優秀。
  • 「マニュアル」モードもそこそこ快適
    • コマンドもドラクエに似た構成なのだが、少し独特な入力系により手間を省いている。
    • 横入力で勇者を移動し相対する敵を選択、縦入力でカーソル移動しコマンドを選択するという形式のため、結果として決定ボタンを押す回数が少なくて済み、テンポよく行動を決定できる。
    • 手軽すぎて入力ミスも起こりがちなのはご愛敬。特に横方向でターゲット選択するのを忘れやすく、うっかり左端の敵ばかり殴るミスを誘発させてしまうが、これはこれでリアルといえなくもないか。
    • 勇者と敵を相対させる形式により、1対1にして「まもり」コマンドで防御させることで囮として機能する。
    • 複数の勇者が同じ敵と相対して敵が倒された場合、まだ行動をしていない勇者は何もしなくなる。味方への回復魔法もサボってしまうので注意。

賛否両論点

  • アイテム管理が面倒
    • 初期は道具が各人5つずつしか持てず、更にそこからイベントアイテムや汎用イベントアイテムで枠がつぶれる。傷薬や毒消し、町への帰還アイテムも必携なのだが、どう頑張っても持ちきれない。
      • 限られた枠をどう扱うかが醍醐味でもあるし、毒を使う強敵がいたから傷薬をあきらめて毒消しを持つとか、出先で鍵やら水筒、酒が必要と分かって買いに戻るだとかも、ゲームバランスの一環であるといえなくはないが。
      • 持ち物制限の都合上、売値と買値が同じであるという、全滅時の保険のためのアイテム「パールコイン」も利用しづらくなっている。ただしこのアイテムに関しては保険のための機能より、宝箱から入手する高額な換金アイテムとしての意味合いの方が強い。
      • なお、武器や防具は別枠であり、もちもの欄には入らない。新しいものを買う際には、古い装備が強制的に下取りされる。仲間に譲るようなことはできない。
    • サンドラットを手に入れて以降は、持てる道具が実質的に3つ増える*13。しかしサンドラットに持たせた荷物は、各キャラクターの持ち物欄から「サンドラット」を選び、さらにサンドラットの持ってる道具の中から選ぶ形なので、使うのに手間が増えてしまう。
      • サンドラットを連れ旅をしている臨場感こそ味わえるのだが、頻繁に使うコマンドだけにわずらわしさも募ってくる。
      • 悪魔の罠にはまろうと、2人乗りのボートに乗ろうと、絶対に傷つくことも はぐれることもなくついてくるサンドラットの姿は、冷静に想像してみると大変にシュール。
      • ちなみに一応、勇者たちは持てる限りの荷物をなるべく自分で持ち歩く。サンドラットには持ちきれない分のみが乗せられ、乗せた荷物も、隙間ができた端から勇者の手持ちへ移動していく。
      • ただし古いものほど上に詰めていく形式なので、勇者たちの手元にはイベントアイテムや使用頻度の低いカギなどがたまりやすく、頻繁に使う薬類などは結局、サンドラットの方へと行ってしまいがち。
  • 敵がいきなり強くなる
    • マップを歩いていると唐突に、それまでとは段違いの強さを誇る強敵たちが現れるようになる。
    • 敵の出現パターンは地域によって決まっており、同じ地域ならおおむね似たような強さの敵が出てくるのだが、その地域の境界線がはっきりしないため、いきなり強敵に襲われるようなことがある。
    • 敵の強さについても、地域をまたぐと一挙にぐんと強くなるので、なすすべもなく全滅するような羽目になりがち。
    • これはこれで、適度な緊張感があっていいという考え方もなくはない。
    • 強くなるといっても、体力さえ万全ならば逃げる猶予くらいは稼げたり、必死になって戦えば一戦くらいはなんとか切り抜けられるような場合もある。逃げられないまま、瞬く間に全滅するようなケースも多いが。
  • 「悪魔の罠」がほとんど機能していない
    • 設置されている個所が限定的で、序盤こそ何度も遭遇する羽目になるが、中盤以降は存在感がめっきり薄れる。
    • なおかつ序盤の悪魔の罠は、最初期の雑魚が単独で襲い掛かってくるだけであるため、苦戦させられるような要素もほとんどない。この地点まで到達できた勇者にとっては、敵が1体ずつしか出ない分だけむしろ楽勝。
      • 周辺に出現するモンスターたちはそこそこ強くなってきているのだが、初期の悪魔の罠の魔物の大半は、それらよりずっとグレードが低い。ボスのみワンランク上の魔物になるが、これも本来ならば複数で襲ってくるはずのモンスターが単独出現なのであまり怖くない。
    • 終盤の関門としてもう一度だけ、こちらは強力な魔物ぞろいの罠が待っている。ここではかなり緊迫し、勇者の側に犠牲が出たり、なすすべもなく全滅することさえありうる。
      • ただし実際のところ、終盤の関門としてではなく、もっと早くに最終仕様の悪魔の罠と遭遇してしまうケースが多い。この問題については後述。
    • 「悪魔の罠」は操作性や視認性の面でも劣悪であり、唐突に落とされた謎の盤面上で、何をどう動かせばいいか分からないまま戸惑ってしまうことになりがち。
      • 一応、罠なのだから困惑させて当然だという解釈はできる。また敵の方から攻めてくるため、勇者側がデタラメにしか動けなくても、時間はかかるが勝負はつく。
  • 初期の冒険がワンパターン
    • 最初の大陸を抜けるまでの展開が、4人の勇者全てほぼ似たようなイベント進行となる。4回も繰り返すとあってマンネリに感じやすい。
    • ただし各人の能力は違うし、マップ構造や出現する敵、購入可能な品の違いやサブイベントの配置などでも差別化はされている。よく似ているようで、実は違った冒険パターンを味わえるようにはなっている。
  • 「わかれる」コマンドの存在意義が怪しい
    • 合流した仲間と別れるメリットが皆無に近い。あえてコマンドを使い「別れる」としたら、3人以上の状態で、「ボート(2人乗りの船)」を使うときくらいだろう。
    • 気分の問題として、任意でチーム分割ができることに意味がある、という考え方もあるにはあるが。
    • 4人のレベルをそろえたいなら、合流後にレベルの遅れたメンバーのみを別れさせ、経験値を稼いで高レベルのメンバーに追いつかせるといった行為も可能。
    • 合体魔法の種類を変化させる目的でも、パーティー再編成の意義が考慮に入れられなくはない。ただし後述の難点により、大半の合体魔法はまともに機能をしていない。また仮に機能していたとしても、このためだけにチームの頭数を減らす価値があるのかまでは疑問が残る。
    • バブが「フーマ」の魔法を覚えた後なら、仲間をワープポイントとして利用することも一応は可能。この魔法はパーティーにいない仲間のいる地点までワープできるため、1人ずつ「わかれ」させ配置することにより、最大3か所までのマーカーになる。このテクニックを活用できる機会があるかは別問題として。
  • セーブが1つきりしか残せない
    • ゲームを開始する際に選べるのは、「はじめる」と「つづき」だけ。複数ファイルからの選択といった概念はない。
    • すでにセーブが作られていても、最初から「はじめる」ことにより、いつでもやり直しが可能。ただしゲーム内で新たなセーブをとってしまうと、当然ながら以前の旅の記録は上書きされて失われる。
    • 発売時期を思えば、バッテリーバックアップが搭載されているだけ優秀なのだが。しかし後述の難点を思うと、いっそパスワード方式のほうが、予備のデータを残せる分だけマシだったようにすら思われる。
      • ちなみにセーブのない初期状態で「つづき」を選んだ場合は、やっぱり少年の名前入力画面に移行する。つまりは最初から「はじめる」のと同じ。
    • またメッセージの送り速度も記録されておらず、「はやい」か「おそい」で遊びたいなら、毎回タイトル画面で設定しなおす必要がある。
  • BGMは優れているが難点も多い
    • 音楽の完成度はかなり高めで、特にタイトル画面やフィールド上で流れるメインテーマが秀逸。
    • ただし音質はあまり優れておらず、ループも非常に短いものばかりなので、曲によっては長く聞き続けると耳障りに感じられてくることもありうる。高音域の続く戦闘テーマや、ループが短く音域が高くリズムも忙しない、ほこらのテーマなどに顕著。
      • フィールド曲は例外的にループがやや長めで、後半のサビも美しい。ただし普通はそこまで流れる前に敵と遭遇するか、町なり何かの施設についてしまう。フィールド上で操作をせずに、しばらく放置でもしないと後半部分はあまり聞けない。
    • 曲そのものの数も少なめで使いまわしが多い。
    • 戦闘テーマは高揚感と緊張感、そして爽快さまで内包している良曲なのだが、1つしかなく、ボスやイベント戦はもちろんのことラスボス戦まで通して同じ。やっぱりループが短いので、いくら曲が良くても聞き飽きてくる問題もある。
  • 地図が必須に近い攻略
    • 付属の地図をなくしてしまうと、ゲームを攻略するのがかなり難しくなる。
    • 地上の冒険ならば、ゲーム内でもヒントがたくさん語られるので大丈夫……かと思いきや、あまりにも情報が多すぎるので結局は迷子になる。
    • 大半のヒントはその場所から近いエリアの話だが、距離の面では近くても、海や仕掛けで閉鎖され、その時点では行けない場所の情報が多い。地図を参照しながらでもないと、どの地方のどのあたりに何があるのかなんて、とても覚えていられない。
    • 広大な割に何もないエリアが散在していたり、存在しても ほこらや原住民の村は小さくて見つけにくかったり、入り組んだ地形の先が何もない行き止まりのことも多かったりと、地図がなければ迷うこと必至の世界となっている。これらの情報は地図にきちんと描かれているので、参照しながら歩けば困ることはない。
    • ワープ手段が限定的で、特定の町や地域を指定し飛ぶといったことができない点も、地図を必須に近くしている原因の1つ。こまめにメモを取ったところで、地図が参照できず任意のワープも不可能では、どこがどの場所だったか位置関係を理解しにくい。ポヨンの「ランダムワープ」でどこに到着したのかも、地図があるとないとで把握の手間がまるきり変わる*14
    • 冒険に地図を活用してもらうため、わざと不自由にしているのだとは思われる。地図さえあればきちんと旅を楽しめるので、地上の攻略だけなら問題点とも言い切れない。また所持してなくとも地上だけなら、手間と難度は大きく増すが、何とか攻略できるようにはなっている。
    • しかし「涙の密書」は、活用法がさらに難解で、なおかつほとんど必須にもなる。
+ ネタバレ。「涙の密書」及びラストダンジョンの構造について
  • 「涙の密書」とは、ずばり、ラストダンジョンの地図そのものである。そしてこの地図、見た目以上に重要で、きちんと読み解かなければ魔王の城を攻略できない。
    • イラストとして描かれている財宝やモンスターが、実際の部屋割りや仕掛けに対応している、なんてのは序の口。
    • 城内には進入口の存在しない、完全に閉鎖された状態の部屋や区画がいくつもある。これらの部屋の大半は、涙の密書に描かれた、微妙に色の異なるブロックの箇所を「さがす」ことで、壁が崩れて侵入できる。
      • ゲーム上ではノーヒント。これまでの冒険にもこんな仕掛けは登場していないので、普通は壁を調べることそのものに思い至らない。仮に何かの拍子で思いついても、画面上では他と全く違いのない壁を、1マス単位で調べなければ進入できない部屋が大半。密書なしでの自力攻略は、限りなく不可能に近いといっていい。
      • 涙の密書をきちんと持っている場合も、壁の色はごくごく一部のブロックが地味に違うというだけなので、よほどじっくり見ていなければ気づきにくい。明らかに入りようのない部屋がいくつもあるため、何か変だと感じよく見ようとはするだろうが、そこまで思い至らなかったり、思い至っても色の違いに気づかなければどうしようもない。
    • 城内には、「ダイナマイトを仕掛けることで破壊できる壁」もいくつか存在する。仕掛けて壊せる場所は同じく密書に描かれているが、「ヒビの入っている外壁」という、これまた地味なヒントであるため見落としやすい。なおかつ、やはり当然のように、ゲーム内では目印などなくノーヒント。
      • もちろん密書がないか気が付かなければ、これも総当たりで全ての壁を調べて回る他にない。
  • ちなみにあくまで魔王の城の地図でしかないので、ズルして早くに開けてしまったとしても、そこまで大きなネタバレ要素はなかったりする。
    • 普通に攻略できていれば、魔王の城へ入る直前に、必ず密書が手に入る。このため本来ならば密書を手に入れないまま、つまり真面目なプレイヤーが密書を開封できないまま、城へ入ってしまう心配もない。……ハズだった。この件に関する難点については後述。

問題点

バグ・ハマり状態

バグやハマり状態に陥る要素が非常に多い。これは本作における最大の難点である。
問題点の1つではあるが、数が多すぎる上に致命的なものも多いため項目を分ける。

  • 攻撃魔法が、味方の使うものに限ってまったく機能していない。
    • 勇者たちによる攻撃魔法は、何を使っても、自身が普通に武器で攻撃するのと同じか、それよりやや低いダメージしか与えられない。
      • 魔法の数値がそのくらいだというわけではなく、明らかに攻撃力と連動している。レベルアップはもちろんのこと、武器を買い替え攻撃力が上昇しても、それに伴い魔法ダメージが上がる。
    • このため敵単体への攻撃魔法は、唱える意味が全くない。弱い攻撃をするためにMPを消費するという、完全な無駄行動になってしまう。全体攻撃であれば「敵全体を殴る」効果になるため少しは活かせる場面も出てくるが、消費するMPに効果が見合っているかは疑わしい。
    • 何より魔法をメインで扱う設定のはずのバブとクピクピは、通常攻撃力がとても弱い。力自慢のポヨンが攻撃魔法を最も使いこなせるという、おかしな事態になってしまっている。ポヨンはMPがとても低いので、魔法を多用できないという意味では、どうにか役割分担が成立したりもするのだが。
    • さらにとんでもないことに、全体攻撃魔法を最初に修得するのも、レベルが等しく育っているならポヨンである。攻撃魔法を得意としているはずのバブは、ポヨンと比べ遅れる上に、「回復魔法の専門家」であるクピクピと同時。
      • バブの強みは本来ならば、他の2人より性能面で優れた攻撃魔法をいくつも使い分けられることだったのだろうが、実際はこのバグにより威力が全て同じになっているため、まるきり意味をなしていない。ただし便利な移動魔法や補助魔法、クピクピと比べかなり遅いが回復魔法も習得するため、攻撃魔法がダメでもどうにか面目を保てているのが救いではある。
    • そしてとどめに、敵の唱える攻撃魔法は、ちゃっかりと通常攻撃よりも高いダメージを与えてくる。本作の攻撃魔法は本当なら通常攻撃分のダメージ量へ、魔法ごとの追加威力を加算し与えるものであるらしい*15。味方側でも正しく機能していたのなら、本作を象徴するユニークな要素の一つとなっていたのだろうが……。
    • 説明書では一部の魔法に関して「空や海の敵に有効」だとか、あるいは「地上の敵に対して効果的」などと書かれている。また攻略本を参照すると、大半のモンスターは空・陸・海の三属性からどれか1つを持っており、また魔法については空と海には100%だが陸に対して25%などといった補正が記載されている。おそらく味方の使う攻撃魔法は、この適応値が実際には常にゼロ%で計算され、「魔法ごとの追加威力」が反映されていない。
      • ちなみにバブが覚える攻撃魔法は、クピクピやポヨンが修得するものと比べ、各地形への補正が高く安定している。圧倒的多数派である「陸」モンスターに対しては、すべての攻撃魔法が100%の効果を発揮する設定*16。またおそらく、攻撃力への補正効果も高めに設定されていたものと思われる。きちんと適用されていたならば、これらが大きな強みになったことだろう。
    • 合体魔法の大半も攻撃魔法であるため、この難点がしっかり適用されてしまう。合体魔法についてはこれ以外にも問題があるので、その他の問題点として後述する。
  • 悪魔の罠バグ
    • ある程度まで攻略を進めていると、高確率で発生する恐ろしいバグ。
    • 一部の町から外へ出ようとした時に、いきなり悪魔の罠へと落ちることがある。この悪魔の罠、なんとラストダンジョンへの関門として用意されたものと同一であり、最終エリアを守護する凶悪な敵のオンパレードとなっている。レベルと装備がよほど充実していなければ、ほぼ全滅が確定する。
      • 全滅して目覚めの部屋へ戻された後もバグは残っており、何度でも発生する。
    • 仮に攻略できたとしても、本当に「ラストダンジョンへの関門と同一」であるため、そのままラストダンジョンの中へ落とされてしまう。このラストダンジョンにも凶悪な仕掛けが待っているので、冒険の途中で落ちてしまったら、その後ゲームを攻略するのは極めて困難。ただ、ラスボス撃破に必須なアイテムは事実上存在しない*17ため、後述のラッキーベル使用や、ヤドカリ戦法を駆使すればクリアは可能。
    • 地上を攻略できないプレイヤーへの救済処置だとする説もあるが、地上の攻略をかなり進行させるまでは発生しないことや、結局はクリアがより困難になってしまうことから、ほとんど救いになっていない。
    • このバグの発生条件は、溶岩でダメージ無効化する「ひよけのころも」が原因。一度使うとダメージ無効化フラグがONになり、この状態のまま洞窟や町に入ると悪魔の罠フラグがONになってしまう。リセットでフラグはOFFになるので、溶岩地帯を抜けたら速やかにセーブ&ロードすることでバグを回避できる。
      • 逆にさっさとラストダンジョンに突入したい場合は、ひよけのころもを使用して町に出入りしていればすぐに発生させられる。
  • キャラクター消滅バグ
    • 一人旅の際にキャラクターが死亡すると、タマシイだけが抜け出した状態で、ほんの一瞬フィールド画面が表示される。この時すばやくボタンを押すとメニューを開くことが可能なのだが、ここで「パス」コマンドを選び他のキャラクターに交代すると、死んだキャラクターの方は死んだその場にタマシイ状態のまま固定されてしまう。タマシイは移動することも、他の勇者とパーティーを組むこともできない。
    • 本当ならば「目覚めの部屋」へ呼び戻されて復活するはずのシチュエーションだが、こうして固定化されたタマシイは、もはや復活することも、仲間と合流することもできず、消滅したも同然の存在となってしまう。
    • 再現性が高いうえに、狙わなくとも、うっかり発生させてしまいかねない危険なバグ。この状態でセーブをとってしまったりすると悲惨。
    • なお2人以上でパーティーを組んでいる際は、この現象が発生しない。死んでタマシイになった仲間は生存者の後をついてくるし、全滅したなら即座に目覚めの部屋へ戻る。1人の時だけ、処理が少し違っている模様。
  • エスケープバグ
    • バブの特技エスケープは低確率でだが失敗することがあり、半固定エンカウントの敵(墓場の「ほねおとこ」や人魚の祠の「ダゴン」など)や、イベント戦闘の敵(ゴブリンなど)相手に失敗すると、画面がフリーズしてしまう。
    • フリーズまでは若干のタイムラグがあり、敵が行動しようとした瞬間に止まるので、敵の攻撃で画面が止まったように見えてしまって恐ろしい。
  • ラストダンジョンの仕掛けにも致命的な難点がある
+ ネタバレ。ラストダンジョンの仕掛けについて
  • ラストダンジョンへ突入すると、二度と地上へ戻れなくなる
    • 前述した「悪魔の罠」バグにより、地上の宝探しを終える前でもラストダンジョンへは突入できてしまうのだが、入ったが最後、地上へ戻ることは最早できない。
      • 最強の剣の素材を入手しないで侵入できてしまうため、この状態で落ちてきた場合、魔王を討伐するのがとても難しくなる。また4人乗りの船「プカシップ」を所持していない場合も、ダンジョン内の探索が大変*18
    • 勇者4人の最強防具も、すべて地上の店売り品。こちらは正規の手段で到達した場合でも、未購入のままの可能性がありうる。ただし幸いにして、一部は城の中でも購入できる。
      • 城内に売っているのは全員分の鎧と、ポヨン以外の分の盾。全員分の兜と、ポヨンの盾のみなぜか購入できない。
    • 「悪魔の罠」バグで落ちてきた場合、「涙の密書」の入手ポイントもまず通っていない。ズルして開いていればここの地図だと気づくだろうが、そうでなければ、開封のタイミングすら見失う。そして前述したとおり、密書を見ずに自力で攻略するのは不可能に近い。

その他の問題点

  • ゲーム進行のテンポが悪い
    • 敵からもらえる経験値やお金が、強さの割には大して上昇していかない。一方で勇者たちの成長に必要な経験点や、強い装備を買うのに使うお金は、しっかり跳ね上がっていく。
    • そもそも序盤からしてのんびりペースの冒険なのだが、中盤以降は成長のための稼ぎ作業がどんどん辛くなっていく。
    • 特定の組み合わせの敵を倒すと財布やアイテムを落とすという要素があり、狙って稼ぎができるのだが、結局経験値も稼がなければならないため、最終的にお金が余るだけであまり楽にはならない。
      • それどころか、稼げば稼ぐほど装備品が早く揃い、そのぶん低レベルのまま先へ進めてしまってラストダンジョンで絶望することになりがち(後述)。
    • バグ以外では、おそらくもっとも致命的な欠点。序盤はバランスがとれているのだが、中盤以降の経験値稼ぎはどう考えてもしんどすぎる。
    • ただし本作は32レベルでカンストするゲームデザインであり、25レベルもあれば十分にクリアできる。このため実際のところ、そこまで過剰な稼ぎ作業は必要とならない。
  • ホテルの値段
    • 宿泊するときにサインする仲間によって宿泊費が変わるのだが、仲間が揃って以降は、いちいち誰が一番安く泊まれるのか確認するのが面倒になる。現在地の確認も一旦フィールドに出なければできないので、これも面倒。
    • 仲間と別れてボートで2人旅している時、メンバー構成によっては高額な宿泊費を請求されてしまう。
  • 海に沈んだ財宝を拾うのに条件がある
    • 宝の地図に示された財宝を回収する際、その宝の地図を所持しているキャラが仲間にいないと、適切な地点を探してみても見つけられない。
    • このことについてはゲーム序盤にはっきりヒントがもらえるのだが、序盤の話であるため、船を入手し探しに行くころになると大抵は忘却している。
    • とはいえ普通はアイテムとしての地図を使用し、地形を確かめながら探し回るので、この制限は自然と回避していることが多い。
    • ただし2周目の冒険や、攻略情報を参照しながらの旅などになると、地図と無関係にあたりを付けてしまっているため、逆にこの制限へ引っ掛かり詰まってしまう事態に陥りがち。
  • 処分できない持ち物がある
    • 宝探しは基本的に、いま持っているアイテムを、別の新しいアイテムと交換するような形で進行していく。このため要らなくなった道具の大半は、きちんと消えてくれるのだが……。
    • ボートや一部のカギなどは、役目を終えても消滅しないし処分もできない。数の限られている持ち物枠を、そのまま占有し続ける。
    • 「ボート」や「ゴールドキー」は冒険中に2つずつまで入手できるが、どちらも1つで間に合う上に、特定のタイミング以降は使わなくなる。
      • これらは初期から中期くらいのアイテムなので、勇者が2人ずつ合流し、ばらばらに冒険を続けられるよう配慮したのだろうとは思われる。
      • ちなみにボートは仲間に分散させて持たせておくと、終盤になってから、再び活用できる機会がないこともない。ほんの一瞬ほどの輝きではあるが。
  • 「素早さ」の概念がない
    • どれだけレベルを上げようと、勇者と敵の行動順序はランダムのままで安定しない。しかも本作の行動順序は、勇者側の全員または魔物全員のどちらかが、必ずまとめて一斉に動く。
    • このため弱い魔物と戦う際でも、五分の確率で敵の一斉攻撃を許してしまってテンポが悪い。また強敵相手の戦いで、敵側による一斉攻撃が2ターン続く局面も多い。
    • 実は一部の魔法や道具を使ったターンなら、勇者が必ず先行できる。これに気づけば少しはマシになるものの、「一部の魔法か道具」を使うのに1人は割く必要が生じる。
  • 「にげる」コマンドの成功率が低め
    • 通常コマンドによる逃走は、成功率があまり高くない。失敗すると敵全員から総攻撃を受けるため、「にげる」というのはとてもリスクの高い選択になる。
    • バブの特技「エスケープ」を使った場合は、ほぼ確実に逃げられる。ただし当人の体力を大幅に消費し、2人以上のパーティーであれば必ず「1」まで減ってしまう。1人の時でも最大値の4分の1を消費するのだが、2人以上になると一気に使用コストが高くなってしまう。なおかつ、一定以上の体力がないと実行できない。
  • マップ画面のグラフィックが稚拙
    • タイトルや戦闘画面は秀逸なのだが、マップ上のグラフィックスは今ひとつ。キャラも地形も、立体感のない、妙にのっぺりとした雰囲気で描かれている。
    • モブキャラの多くは子供の落書きのような外見。ほんわかしてこそいるが、第一印象としては不安のほうがはるかに大きい。また一部は、いったいどんなキャラだか分かりづらい。場合によっては、キャラクターがいることにさえ気づきにくいケースすらある。
      • 強敵のゴブリンもグラフィックが人型であるため、普通の人だと思って話しかけたらいきなり襲われそのまま全滅する危険がままある。
    • 全体的に淡い色使いでほとんど統一されており、立体感のなさも相まって、マップのどこが通れる場所か、どこがどういう風につながっているか、どこが小部屋や建物内への入り口なのかも判断しづらい。
    • こと街中やダンジョンの構造が分かりにくいため、一部の謎解きが必要以上に難しくなってしまっている。
  • クピクピとポヨンの体色
    • 設定ではそれぞれ桃色と緑色なのだが、ファミコンの同時表示色の関係上、それぞれ肌色と青色になってしまっている。
  • 合体魔法の使い勝手が悪すぎる
    • 前述のバグにより攻撃魔法はほとんど機能していないが、その難点を度外視しても使いにくい。致命的すぎて度外視するのは困難だが。
    • 合体魔法は、同行しているメンバー全員の力を合わせたもの1つしか選べない。2・3・4人の組み合わせごと、多数の合体魔法が用意されているのにもかかわらず、冒険の大部分では4人合体魔法の「レインボー」しか使えない。
    • この「レインボー」がまたハイリスクで、全員分のMPすべてを消費する。どれだけ残っていても、一発でゼロ。本来だったら一撃で大半の敵を消し飛ばすような高威力だったのかもしれないが、たとえそうだとしてすら滅多なことでは使用できない。まして実際はバグにより、通常攻撃をちょっと弱くして全体化するだけの効果である。
      • ご丁寧に、「全員が最低でも15MPを残していないと使用できない」なんて縛りまで持つ。ぎりぎりまで消耗している際には使えない。
      • ただし「レインボー」にはちょっとした抜け道があり、同一のターンであれば、仲間みんなが一斉に使用することができる。コストはどうせ全消費なのだから、みんなで発動させればちょっとお得。この用法ですら実態としては、「全員が敵全体を1回ずつ殴る」だけの効果でしかないが。
    • なお「レインボー」を含む全体攻撃の合体魔法には、「攻撃力の高い主人公に使わせることで、敵全体を殴ることができる」というメリットが一応、存在するには存在する。消費するMP量に見合った効果なのかはともかく。
      • ちなみに貝獣3人は、自前の全体攻撃魔法を唱えたほうがコストの面で明らかにお得。ただし習得がかなり遅いので、全体攻撃魔法を覚えるまでなら、合体魔法を使う機会もなくはない。全体攻撃のものでなければ無意味だし、レインボーを筆頭として、それ以外の合体魔法もコストは高いが。
    • また攻撃魔法ではない組み合わせには、そこそこ活用できる目が残る。少年とポヨンのペアによる「ボワン」、ポヨンとクピクピのペアによる「リラクス」の2種類のみが該当する。
      • 「ボワン」は数ターンの間、敵全体の通常攻撃を無効化する。効果は優秀なのだが、主人公+ポヨンという脳筋ペアのパーティでしか使えないのがネック。
      • 「リラクス」はパーティー外のメンバーまで含めて、勇者たち全員の体力を全回復させる効果。画期的な利便性かつポヨン+クピクピというそこそこ現実的なペアで使えるが、2人のMPを全消費してしまう*19。とはいえ、いざという時の立て直しになら有用だし、このペアをホテルで宿泊させる直前に、少年とバブをついでで回復してやるといった用法もある。
  • ラストダンジョンにも、しんどい要素が多数ある
    • 最終エリアなのだから大変なのは当然としても、神経をすり減らすような要素が多いのは事実。
+ ネタバレ。ラストダンジョンに関する、バグとハマり以外の難点
  • ラストダンジョンへ突入した時、勇者はみんなバラバラになって四方に落ちる。
    • ゲーム開始時の再現ではあるが、出現するモンスターが桁違いに強くなるため、最初の2人を合流させるのすら大変。ダンジョン内であるため、バブの「フーマ*20」やポヨンの「ランダムワープ*21」も使えない。全滅しても、復活地点がダンジョン内に変更されてしまっている。
    • 各人を一度殺してしまい、復活地点で再会させるという荒業はある。復活地点である「目覚めの部屋」は2つしかないので、それぞれ2人ずつが合流できる。
    • 主人公以外のキャラクターが死亡した状態で侵入すると、4人がそろった状態で、場所も本来の四隅ではなく、なぜか「目覚めの部屋」から出発になる。おそらくはバグにより、ダンジョン内で全滅したのと同じ扱いになっている模様。
    • もう少しマシな形で合流を目指すなら、バブの「エスケープ*22」と回復魔法を併用し、ひたすら逃げ回るのが手っ取り早い。
    • 「涙の密書」を開いて最短経路を模索し、相互に協力し合い合流を目指すというのも、もちろん悪い選択ではない。水路を船で渡ることによるショートカットなども駆使すれば、正攻法でも意外に早く再会はできる。決して容易な道でないのも事実なのだが。
  • そもそも異様に広すぎる
    • マップにして、これまで冒険してきた一地方分かそれ以上くらいの広さがある。この広大なダンジョンの中、これまでよりも格段に強くなった強敵たちから逃げ回り、いくつものイベントをこなし、最強の武器や必須アイテムを集めて回らなければいけない。
    • 「目覚めの部屋」やホテルもきちんと設置されているため、ダンジョンの1つと考えるのではなく、最終ステージとしてじっくり攻略する他ないのだろうが。
    • ただしハマり要素の項で前述した、「二度と地上へ戻れない」という要素との食い合わせが非常に悪い。バグで正規ルートより早く落ちてしまった際はもちろん、普通に到達できた場合でも、実力不足で身動き取れなくなることがありうる。
    • ホテルの宿泊料が高いので、連戦に耐えられるだけの実力はないと徐々にお金がすり減らされ、レベル上げすらままならなくなる。全滅すれば所持金の半分を失うのだから、戦力不足がなおさら堪える。そしてなおかつ、強い割にはいずれの魔物も、倒した際に得られる経験点と落とすお金が極めてしょっぱい。
  • 主人公の「二刀流」の仕様
    • ラストダンジョンにおいて少年は、2本の剣を同時に装備可能となる。だがこのとき、鎧を捨てさせられ、守備力が激減するためリスクが大きい。また、バグにより鎧欄に装備している剣の攻撃力は戦闘中に反映されないため、実際の威力は二刀流する前と同じ。*23
      • さらに、主人公の最強武器入手後にこのイベントを起こすと元々装備していた最強武器は消滅してしまう。再入手も不可。
    • そもそもの話、盾を所持したままで鎧を捨てさせられ、2本の剣を持つというのはイメージ的にかなり不自然である。鎧でなく、捨てるのは盾でもよかっただろう。
    • ちなみに二刀流を伝授してくれる人物と、2本の剣の入手は、いずれもすべて別地点。しかし二刀流について習わなくとも、2本目の剣を手に入れた時点で、防具を捨てて2つ装備ができてしまう。
  • ラスボス戦の凶悪設定
    • ラスボス戦では主人公の特技「カンフー」がなぜか使えず、攻撃魔法によるダメージも軒並みゼロになってしまう。
      • 全員のMP全てを投げ打つ合体魔法「レインボー」すら例外ではない。バグで攻撃魔法が機能していないため、使う機会もないとはいえど。
    • ラスボスを封印するための切り札「オーラのたま」で、全員の剣を強化し戦う*24という設定を尊重したためだとは思われる。
    • ただし、実は「オーラのたま」を使わなくとも殴り倒すことはできる。いずれにしてもカンフーは使えないし、攻撃魔法も無効だが。

総評

同封された地図を見ながら旅をする、という独特な要素を、システム面や世界観にもきちんと織り込んでいる意欲作。
キャラクターの魅力や世界の作り込みに関してもしっかりしており、異世界を旅する情緒が深く味わえる。

だがその一方、バグや奇妙な挙動の多さも目立つ。
戦闘バランスの悪さや一部の調整不足が大きなストレス要素となっているため、単純に良作としては評価しがたい点が惜しい。
せめて攻撃魔法がきちんと機能していたなら、全体的なゲームテンポや戦闘の辛さも、かなり改善されていただろうとは思われるのだが。

現在では地図の入手が困難という点も相まって、本作の魅力をきちんと堪能するのは難しくなってしまっている。
だが冒険の困難とそれを乗り越えていく楽しさは秘めており、またオーソドックスなようでいながら意外に希少な、童話や古典ファンタジーに近い世界観を持った佳作RPGとしての魅力も深い。

良くも悪くも一般的な国産RPGの形式が固まりきる前に作られた、荒削りにして挑戦的な作品だとはいえるだろう。
独特な世界観に魅せられたというファンは多く、2017年現在、この時代のゲームとしては珍しく攻略サイトもそこそこ充実している。
地図の不備については攻略サイトに頼ってしまう手もある*25ので、興味を持ったのならばぜひとも触れてみてほしい。


余談

  • 本作の「まもり*26」コマンドはとても優秀であり、敵からのダメージを軒並みゼロか1まで抑えてしまう。
    • 通称「ヤドカリ戦法」というのは、この「まもり」コマンドの優秀さと、モンスターの思考ルーチンのスキを突いた必勝法。
    • モンスターは、自分の目の前に来ている勇者を最優先して攻撃する。目の前に誰もいないなら、他の魔物と戦っている勇者の中から自由に選ぶ。ただしいずれの場合も、可能な限り、直前ターンに攻撃した相手とは違う勇者を選ぶ。
    • このため2人以上の勇者を同じモンスターの前に配置し、前ターンに殴られた勇者のみが攻撃、残りの勇者は防御とすれば、ダメージをほとんど受けることなく戦える。
    • 勇者側より魔物の数が多い場合は、フリーのモンスターが出てしまう。また全体攻撃が飛んだ場合は、誰が狙われようと全員がダメージを受けるので万能とまではいかない。仲間の多くが防御を選ぶ都合上、戦闘にもかなり時間がかかる。とはいえラスボス相手であっても効果の高い戦法であり、非常に強力。
    • ちなみに貝獣3人は、「まもり」を選ぶと貝にちょこんと閉じこもる。可愛い。
  • 2コンでも操作可能な数少ないRPGでもある。
    • 恐らくだが「パス」コマンドの使用でプレイヤーも代わってもらうことを想定していると思われる。
  • その後の展開
    • 本作の実質的な後継作品として、『じゅうべえくえすと』が開発されている。タイトルや冒険の舞台こそ異なるが、一部の用語やシステム等に共通点も多い。
    • 後にSFCにて、より直接的な続編『大貝獣物語』が発売された。『じゅうべえくえすと』から逆輸入されたシステムも持つ。
      • 続編のヒットにより多くの関連作品が登場し、結果的にGBAの『Vマスタークロス』までシリーズが続く事になった。
  • 『貝獣物語 シェルドラド伝説』というタイトルでゲームブック化され、双葉社の「ファミコン冒険ゲームブック」シリーズの1冊として1989年1月に出版された。
    • 媒体の違いを加味した変更点こそいくつかあるが、本作の世界観と冒険の展開を概ね忠実にきちんと再現しており、なおかつ単独のゲームブックとしても完成度の高い良作である。冒険中の細かい描写やエピローグ等、本編を上手く補完している要素も多い。
    • 挿絵をFC版本編のイラストレーターが担当している*27。多くの名場面が事実上の公式絵として描かれているため、ファンアイテムとしての価値も高い。
      • カバーイラストもゲーム自身のパッケージイラストがそのまま使われている。
    • なお本作中では、攻撃魔法がきちんと超強力な攻撃手段として扱われている。一部の魔法は効果がFC版の説明書と食い違っているのだが、そもそも本作の魔法イメージは媒体によって書いてあることが違うため、制作側でも基礎設定を統一できていなかったと考えるのが妥当だろう。
  • 2020年6月18日に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト『ナムコットコレクション』の有料追加DLC第2弾として2020年8月20日から配信開始された。
    • 内容そのものは忠実な移植。バグや不具合もそのまま。
    • 『コレクション』の共通要素として4枠分の状況再現セーブと、時間を少しだけ巻き戻す機能が搭載されているため、難易度は少し緩和されている。
    • 地図は説明書の一部として収録されているが、ゲームを中断しないと参照できないために使い勝手が悪い。解像度が低く、座標や地名が潰れていて読めない*28という難点もある。施設の所在や大まかな地形は判別できるので、ないよりはずっとマシなのだが。
      • 涙の密書に隠されたヒントも、あると知っていて探さない限り、まず分からなくなってしまっている。
      • 地図を確認する際、Switch本体側の機能による画面拡大は必須に近い。Switchの追加機能である画面拡大は、デフォルトだとOFFになっているので、本体設定からONに切り替えておきたい。
    • 本タイトルを購入した際のオマケ特典となるゲーム内フィギュア*29が、涙の密書というあたりは、なかなかよくわかっているチョイス。どうせなら4人の勇者のマスコットも付けてほしかった。
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最終更新:2023年12月06日 16:55

*1 ちなみに「縦12 横N」というのは、火の貝の勇者が最初に旅立つマイヨーの城の座標。

*2 厳密にいうと、残り3人を旅立たせないまま、最初の少年だけで延々と冒険を続けることも不可能ではないが、そのままではクリアできないので、どう粘ってもいつかはみんなが旅立つことになる。

*3 先頭にいる、操作キャラ1人だけが他の全員と別れる。

*4 このときのみカタカナ。

*5 説明書のサンプル画面では、「りるる」だったり「くわざわ」だったりする。

*6 バイタルポイントの略。他の一般的なRPGでいう「HP」。ダメージを受けゼロになったら死亡する。

*7 マジックポイントの略だろう。魔法を使うのに消費する。

*8 実は技の名前が変わるだけで、効果は特に変わらない。レベルが上がり強くなった分、より強い技を扱うようになったということなのだろう。

*9 文字通りに毒を治療する効果。

*10 初期なら実質的に全回復だが。

*11 ラスボスのみピンチ状態の外見をもたない。ただし効果音による瀕死アナウンスは他の魔物と同様に行われ、攻撃力も低下する。

*12 「レビテート」と同様、直前に立ち寄った城か町までワープする効果。持っているほうが圧倒的に安全なのだが、アイテム数の関係上、一人旅のうちはこれを所持することが難しい。

*13 サンドラットは4つの道具を持ってくれるが、サンドラット自身が1つの持ち物として枠を占有する。

*14 地図の外側に到着することもあるが、それはそれでマップの最も端に位置するエリアだとわかる。

*15 このため受ける側の守備力が術者の攻撃力を大幅に上回っていると、魔法ダメージ分も含めて軽減できるようになる。

*16 ポヨンやクピクピの攻撃魔法は、「陸」の魔物に対して適正が低め。

*17 攻撃がまともに通るようになるアイテムなどはあるがそれがなくてもダメージは通らなくはない

*18 下位の「ボート」は所持しているだろうが、2人しか乗れないために水路を挟むと戦力が激減する。

*19 なおかつ、2人とも最低10MPが必要。

*20 他の仲間がいる場所へワープする魔法。

*21 前述の通り、ランダムだが無消費で街へ移動する。

*22 VP(生命力)を消費して、ほぼ確実に逃げる特技。

*23 これとは別に「あくまのヨロイ」の攻撃力低下効果も反映されないため、実質デメリットなしの最強防具となってしまっている。

*24 最終的にポヨンは槍、バブは鞭、クピクピは杖を装備している可能性が高いのだが、ゲーム中のメッセージでは「全員の剣」がオーラの光に包まれたことになる。

*25 重要な醍醐味の一つは失われるが。

*26 いわゆる「防御」。貝で身を守り、受けるダメージを少なくする……という触れ込み。貝獣ではない少年にも使えるのは、火の貝の加護ということだろうか。

*27 当時のこの手のゲームブックや書籍化作品としては、とても珍しい。

*28 本体側の機能で拡大しても読めない。

*29 棚に飾れるだけで、特別な意味はない置き物。