玻璃ノ薔薇

【がらすのばら】

ジャンル サイコサスペンスアドベンチャー
対応機種 プレイステーション2
発売元 カプコン
開発元 CING
発売日 2003年11月6日
定価 6,800円(税別)
周辺機器 マウス対応
レーティング CERO:全年齢対象
判定 なし
ポイント 主演:松岡昌宏 (TOKIO)



戦慄の惨劇が現実になる



概要

実写ではないが、かなりリアルな3Dモデルを用いたTOKIOの松岡昌宏氏が主演のADVゲーム。
松岡氏は声優の他にモーションキャプチャも行っており、ムービーとゲーム内のそれぞれの3Dモデルの質に差がある。
ムービーの3Dモデルは松岡昌宏氏にそっくりなのだが、ゲーム中のものはやや微妙である。


特徴


ストーリー

駆け出しの新聞記者である影谷貴史が、「20世紀の未解決事件」特集にて昭和4年に起こった「キネマ屋敷連続殺人事件」の記事を書いた。
すると「キネマ屋敷連続殺人事件」の関係者の孫娘だという女性・片桐尚美が、彼女の祖父が残したという古い手帳を持って影谷の前に現われた。
さらに、影谷が事件現場のキネマ屋敷が事件当時のまま残されていることを突き止め、片桐尚美と共にキネマ屋敷へと足を踏み入れた。

  • 上記の経緯は取説には書かれているものの、OPで影谷が片桐尚美から手帳を見せられるシーンがあるだけで、屋敷の中でタイムスリップ(!)するところからゲームが始まり、タイムスリップ前のことはさらにプレイを進めた先の主人公の回想でうっすらと触れられるだけである。

システム

  • 基本的にはカーソルでクリックした所を調べる形式のADVだが、ウリが主演:松岡昌宏であるため、3Dモデルの松岡がクリックした方向に移動して調べる。
    • 本作は時間の制限があり、もちろん松岡が移動する間も時間が過ぎていく。
    • プレイヤーの探索時は特定のアングルでしか見られないが、会話イベント中はそれ以外のアングルが頻繁に使われており、カメラ移動機能があったら良かったのにと悔やまれる。
  • 時間制限がある
    • ゲーム内の時間は1時間毎に区切られており、その区切り内ではリアルタイムで1時間以内に探索を終えなければならない。
      • 東京トワイライトバスターズ』のように各動作毎に経過時間が決まっておらず、リアルタイムである。
        このため、1階⇔2階の移動は室内の移動より早いというおかしな事になっている。
  • マインドポイント
    • いわゆるMP。主人公が特殊能力を使うと減る。
    • また、後述のサスペンスイベントで失敗すると減る。
    • マップ内を飛んでいる蝶を捕獲するとマインドポイントが回復する。
    • マインドポイントが無くなるとゲームオーバーとなる。
  • 主人公の特殊能力
    • 閃光の誘惑
       アイテムを入手すると、そのアイテムの残留思念が読み取れる。自動で発動する。
    • 審判の右手
       登場人物にカーソルを合わせて△ボタンを押すと、相手の考えが読める。こんなチートな能力があれば即解決じゃん…。
       マインドポイントを消費する。ムービー中は使えない。
  • フリーワードシステム(会話のシステム)
    • 話し相手の発した言葉の中から、気になるワードを◯ボタンで反転して選ぶことで話の内容についてさらに突っ込んだ情報を得られる。
    • 同様に、相手の発した言葉の中から気になるワードを△ボタンで反転して選ぶと、そのワードに関する相手の考えが読める。
  • サスペンスイベント
    • いわゆるQTE。画面上にあらわれる吹き出し風のコマンドを制限時間内にクリックするだけ。なのだが…。
    • 失敗するとQTEの最初からやり直しになるが、マインドポイントが減ってしまう。
  • 難易度が選べる
    「お手軽」と「お薦め」がある。
    • お薦め
       こちらがノーマル仕様である。お薦めでクリアすると、チャプター選択ができるようになる。
    • お手軽
       こちらがEASY仕様で、ストーリーに関係ある場所にカーソルが近づくとカーソルが光る。
       フリーワードシステム(会話システム)でも、キーワード付近でカーソルが光る。ただし付近であるため、やや迷う場面がある。
       お手軽でクリアするとタングラムのミニゲームが解放される。
  • エンディングは4種類
    • 心のかけら
      • 一緒にタイムスリップしたはずの片桐尚美は"時空のはざま"に落ちてしまっており、主人公が心のかけらというアイテムを一定数集めないと元の時間へ戻れない。
      • 集めた心のかけらの数はエンディングに影響する。
      • ゲーム中で拾った、被害者によるやや暗号的なメモの通り行動すると、報酬として大量の心のかけらが得られる。

評価点

  • 登場人物の人物像の濃さ
    • 主人公を除くほとんどの登場人物が様々な秘密を抱えており、事件の内容よりも登場人物の過去に興味が湧く。
    • 問題点で述べるが、むしろ事件の解明はおまけとも言える。
    • 生き別れた母子、かつて交際していた男女が再び相まみえるなど、事件と関係のない人間関係も濃厚である。
    • 事件の捜査をせずに私事に没頭する刑事、こんな時に自分を売り込みに来た女優など、自ら棺桶に足をツッコミに来たとしか思えない人々も登場。
  • 審判の右手
    • 有りがちな内容ではあるが、登場人物の、言っていることと思っていることのギャップが面白い。
      • 会話前と会話後で考えが変わるという細かい調整がなされている場面もあるのだが…。
    • 貴重なマインドポイントを消費するため、気軽に試せないのが残念。直前でセーブして、使用後にリセット&ロードすることとなる。
    • また、ムービーやイベント中も使えず、言いたいことだけ言われて退散されると使えない。
    • 逆に、犯行前から犯人が分かるという信じられないデメリットもあるため、2周目からの使用をお薦めする。
  • 被害者のメモ
    • ゲーム中に被害者による暗号的なメモを拾うことがある。このメモの通り行動するとクリアランクが上げれるのだが、ストーリーの進行とは独立しており、普通にプレイしていてはどのタイミングでそれが実行可能なのか分からないため、本作において唯一骨のあるヤリ込みポイントである。

問題点

ストーリー

+ ネタバレに付き折り畳み
  • 主人公が犯人に初めて対面するのはエンディング直前であり、推理モノとは言い難い。
    • これは、「推理小説でやってはいけない展開」「望ましくないトリック・顛末」を述べた推理作家向けの法則「ノックス十戒」の1番と「ヴァン・ダインの二十則」の10番に抵触している。
      • この法則の信憑性には賛否あるが、それを抜きにしても犯人とエンディングの間際に出会うのはミステリーとしていかがなものか。
      • もちろん、これでは手口やアリバイによる犯人の絞り込みは不可能である。
    • エンディング分岐の条件に2時間前のQTEの選択結果が加味される。
      • 攻略本などの情報無しにこれに気づくことは流石に難しいと思われる。
  • サスペンスイベント(QTE)の難易度が高い
    • 制限時間がやたらと短い上に、ひっかけも出るため手間取る。
    • 失敗してやり直しの際に吹き出しの出現位置が毎回異なるため、吹き出しが出るタイミングは分かる。
    • だが、どこに吹き出しが出てくるのかわからないため繰り返しても決して楽になるわけではない。
    • しかも、何度も繰り返すとマインドポイントがなくなってしまい、最悪ゲームオーバーとなる。
    • マインドポイントはランダムで飛んでいるを捕獲しなければ回復できないため、かなり重いペナルティとなっている。
    • 直前でセーブして、1回でも失敗したらリセットしてロードした方が良い。
      失敗してリセット&ロードすると、吹き出しの出現位置が前回と同じである場合が多い。

総評

松岡昌宏氏のファン向けゲームという色合いが濃く、UIなどもセーブ画面が薔薇模様であったりと女性をターゲットにしている様子が窺える。
ストーリーは一本道で、推理する場面はなく、サスペンスイベントを除けばゲームとしては平易である。
そんな中、被害者のメモは「お手軽」でも所在場所のヒントが出ず、見つけなくともストーリーが進行する。
そのため、その解明は本ゲームにおいては難しい部類に入るが、そこ迄やり込んでやっと他のADVと同程度の難易度である。
ゲーム的な難易度とは逆に、登場人物の人間関係は複雑で全容が理解出来る程の情報が開示されるまでにかなりプレイを進める必要があり、先へ進めたいというモチベーションを失うことはない。
フリーワードシステムや主人公の特殊能力など、システム的には様々な試みがなされているが、それらをシナリオ側で活用しきれていない事が残念である。


余談

  • 本作以前にもカプコンは『鬼武者』シリーズで実在する俳優を3Dモデルとしてゲームに取り込んでおり、カプコンは日本のゲーム業界において実写取り込みの先駆者と言えるかもしれない。

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最終更新:2023年11月25日 11:00

*1 元は週刊少年マガジンで1996年~2000年に連載されていた同名漫画のTVドラマ化。