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人喰いの大鷲トリコ

【ひとくいのおおわしとりこ】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 プレイステーション4
発売元 Sony Interactive Entertainment
開発元 SCEジャパンスタジオ
発売日 2016年12月6日
定価 6,900円(税別)
レーティング CERO:B(12才以上対象)
廉価版 Value Selection
2018年11月21日/3,900円(税別)
判定 良作
ポイント 雰囲気作りは相変わらず最高
操作性と難易度の上昇
前2作よりさらに人を選ぶ出来に
開発難航で7年越しに日の目を見る
上田文人作品
ICO - ワンダと巨像 - 人喰いの大鷲トリコ
SIEワールドワイド・スタジオ作品


概要

ICO』『ワンダと巨像』で知られる上田文人氏の最新作。
2009年に発表されたが、開発は難航し、一時は完成すら危ぶまれ発売中止の噂さえ流れた。
元々はPS3用のゲームとして開発されていたが、上記の経緯もありプラットフォームはPS4に変更された。
ちなみに、海外版のタイトルは『The Last Guardian (最後の守護者)』となっている。

ストーリー

少年は目が覚めると大鷲の巣にいた。大鷲にさらわれたのだ。人を喰うと言われた大鷲「トリコ」だが警戒こそするものの少年を食べようとはしない。
それどころか、手探りでふれあいを重ねていく少年と次第に心を通わせるようになる。
少年はそんなトリコと協力し、さらわれてきた谷からの脱出を試みる。

特徴

  • 仕掛けを解きながら時にトリコに指示、誘導することで先に進んでいくのが基本的な流れ。
    • ただし、トリコは目玉をモチーフにしたガラス細工を恐れるため、少年が排除しながら進む必要がある。
    • 「ヨロイ」と呼ばれる敵が所々で登場する。少年は基本的に攻撃手段を持たないため自力でヨロイを倒す事ができず、トリコに倒してもらう必要がある。
  • 高所から落下する、溺れる、ヨロイに担がれ青い扉の奥に連れて行かれるなどするとゲームオーバーとなる。
    • ゲームオーバー画面と復帰の方法も独特。この復帰方法も攻略のヒントになっている。
  • 『ICO』と同様にパラメーター表示は存在しない。画面に操作マニュアルが表示されることがあるが、設定で非表示にできる。
  • 成長した少年による回想という設定になっており、元少年のナレーションがナビゲーションおよびヒントの役目を果たしている。
  • 道中には光るタルがあちこちに散らばっており、トリコに食べさせていく事で特典のコスチュームなどを開放できる。全て集めるには周回する必要がある。

評価点

  • トリコの描写
    • トリコの挙動は細かい仕草までリアルに作り込まれており、本作の大きな魅力となっており、時に健気で時にヒロイックなキャラクターもプレイヤーに愛着を持たせる。少年が落下しそうになる瞬間にトリコに助けられる場面も一体感を演出する。
    • 少年が何もしなくてもトリコはその時々の状況に応じてさまざまな仕草を見せてくれる。動物好きならばそんなトリコを眺めているだけでも楽しめるだろう。
  • 世界観
    • 上田氏ならではの独特な世界観は本作でも健在である。雄大な自然と巨大な遺跡が一体となったフィールドは探索意欲を刺激する。少年を攫おうとするヨロイ、蝶の群がる光るタル、随所で目にする紋様など考察の余地を残す要素もプレイヤーの想像をかきたてる。
  • ストーリー
    • 軸となる少年とトリコの絆が丁寧に描写されている。少年が危機に陥った時はトリコが駆けつけ、逆にトリコが弱った時は少年が介抱する。この助け合いによって絆を築いていく過程が自然だからこそ最後の展開に涙したプレイヤーも多い。
  • ダイナミックな演出
    • トリコの巨体から繰り出されるアクションと移動時の臨場感あふれる演出は迫力満点。塔が崩れるなどスリリングなシーンの連続でプレイヤーを引き込む。トリコがジャンプする直前の「溜め」の動作もアクションを引き立てる。

賛否両論点

  • トリコへの指示
    • 上記のようにトリコに指示を与えながら進んでいくシステムであるが、トリコが指示を聞いてくれないことがある。
    • リアルなリアクションではあるが、進み方がわかっていても進めないもどかしさがある。また、せっかく先に進んでもトリコが来た道を逆戻りしてしまう二度手間な場面も。
      • 怪しい場所をしらみつぶしに探索するにしても、指示に対するトリコの行動が一通りでないために「詰まった」と勘違いしやすい。無論、トリコの行動によって思わぬ道が拓けることもあるのだが。
  • 自由度の低さ
    • 謎解きの手順が固定されており、完全な一本道となっている。道中で出来ることも上記のタル集めぐらいである。
    • ワンダと巨像』にも通じる点だが、行けそうで行けない場所が多い。少年の身体能力が高いため「行けるかも」と思わせる場所は多いのだが、いざ行ってみるとあっさり落下しゲームオーバーとなるような箇所が多い。
  • 受動的な戦闘
    • あくまでトリコにヨロイを倒してもらうシステムであり、少年にできることといえば倒れたヨロイにトドメを刺すことぐらい。
    • 積極的に戦闘に関われないことに不満を感じる人もいる。もっとも終盤の戦闘では少年がトリコをサポートする場面が増えてくる。
  • フレームレートの低さ
    • 過去の作品と同様に意図的にフレームレートを落としているが、場面によっては処理落ちと区別が付かないところもある。

問題点

  • 単調な内容
    • 後半は謎解きや背景がややマンネリ気味になり、上記の自由度の低さもあり飽きやすい。マップが広大な上に目標となる地点が明確に設定されていないため、進んでいる実感が薄く達成感を感じにくい。
    • 同様のコンセプトの『ICO』に比べてボリュームは大幅にアップしているものの、それがかえって冗長な印象を与えてしまっている。
    • クリア特典も上記のコスチューム系のみで武器などは一切手に入らず、周回プレイの楽しみは薄い。
  • カメラワーク
    • 全体的にトリコに近く、視界がさえぎられることが多い。壁際でのカメラアングルも良いとは言えない。
    • また、自動的にカメラ位置が調整される場面がありかえってプレイヤーの混乱を招く。
      • その影響で絶景ポイントを見つけてじっくり眺める…というプレイも難しくなってしまっている。
  • グラフィック
    • 背景は細かく作り込まれているものの、人物の造形はPS4のゲームとしては物足りないレベルである。開発経緯もあり「PS3用のゲームのリマスター版」と揶揄する声も。
  • 手動セーブができない
    • オートセーブのみのシステムであり、直前のチェックポイント以外のやり直しはきかない*1。また、アップデート前は一度セーブされてしまうと最初からやり直すこともできない仕様だった。
      • この仕様が後述のトロフィーの高難易度化に拍車をかけている。また、印象的なシーンが多いだけに、気に入ったチャプターを選んでプレイできないという点でも残念。
    • チェックポイント自体は細かく設定されておりゲームオーバー時の救済に役立っているものの、通過時にアイコンなどは表示されないので発売当初はセーブの方法がわからず戸惑う声もあった。
  • 操作性の不自由さ
    • 「掴む」操作がなく「なでる」操作などで代用する必要がある。少年はトリコの背中に登ると自動的に立ち上がるため、タイミング悪くトリコが動くと振り落とされ最悪ゲームオーバーになる可能性も。
    • 逆にトリコから降りる際はジャンプしても掴み直してしまうことがあり、それを避けるには側面まで移動してから放さなければならず面倒である。
    • トリコに掴まりよじ登る際も、前述のカメラワークとあいまって意図しない方向へよじ登ってしまうことがある。
  • イベントシーンの長さ
    • ムービーとは別に飛ばせないイベントシーンがいくつも挿入され、中には4分半という長さに及ぶシーンも存在する。その間、プレイヤーは極限られた操作しかできない。これではムービーをスキップできても意味が無い。

総評

美しい映像とダイナミックな表現で描かれる少年とトリコの冒険譚はファンの期待を裏切らないものである。
その一方で雰囲気重視の演出がプレイヤーに窮屈なプレイを強いている部分もあり、これまで以上に好き嫌いが分かれる作品になっているきらいがある。
ボリュームとは裏腹に全体的にできることが少なく、開発が長期化した割にPS4のスペックに適応しきれていないのも惜しいところ。

余談

  • トロフィーの1つは発売から1週間経過しても取得率0%(世界の全プレイヤーで1人も取得者がいない)という高い難易度を誇っていた。現在では取得方法が解明されている。
  • 発売を記念し、電ファミの公式サイト「電ファミ記事置き場」では『空想科学読本』で知られる柳田理科雄氏がトリコの生態や少年の身体能力に関する考察を寄稿している。

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最終更新:2024年04月24日 14:44

*1 セーブデータのバックアップをとるなどの手段はあるが。