Fate/hollow ataraxia

【ふぇいと ほろうあたらくしあ】

ジャンル 伝奇ビジュアルノベル+ファンディスク

※Windows版

※PSV版
対応機種 Windows 98~XP
プレイステーション・ヴィータ
開発元
発売元【Win】
TYPE-MOON
発売元【PSV】 角川ゲームス
発売日 【Win】2005年10月28日
【PSV】2014年11月27日
定価 【Win】7,140円(税5%込)
【PSV】限定版:8,640円/通常版:6,480円/DL版:5,400円
レーティング 【Win】アダルトゲーム
【PSV】CERO:C(15歳以上対象)
判定 良作
ポイント 繰り返される四日間の日常と戦い
敵サーヴァント・サブキャラの掘り下げ
充実したミニゲーム
相変わらず"実用性"の方は微妙
Fateシリーズリンク


概要

Fate/stay night』(以下前作)のファンディスクとして発売された作品。
舞台は前作で行われた第五次聖杯戦争の終結から半年後の冬木市で、前作のどのルートからも繋がっていない。
前作で登場したほぼ全てのキャラが登場し、それぞれのキャラについての掘り下げがなされている。
なお本作のシナリオは、本筋こそ前作と同様に奈須きのこが担当しているが、日常パートは他のライターが担当している。
2014年に発売されたPSVita版は、ボイスが追加されたほか、Win版の18禁要素を含むシナリオ・CG等が削除・改訂され、OPムービー及び主題歌も変更されている。また、ミニゲームも一部差し替えられた。

ストーリー

“第五次聖杯戦争”終結から半年後の冬木市。
サーヴァントたちは現界したまま、穏やかな日常を満喫している。
衛宮士郎は何者かが聖杯戦争を再開しようとしていることをつかみ、調査のための夜回りを始める。

さあ、聖杯戦争を続けよう

夜。目覚めは苦痛から始まった。
不快極まりない痛みとおぞましさを耐え、私は蘇生していた。
胸を貫かれ、死んだはずの自分が…。
生き返った私の傍らには、“名前のない”サーヴァント。
残るのは曖昧で断片的な記憶。増幅していく嫌悪と不信。
斃すべき敵を求め、街へ。不吉な月の光の下、影が蠢く夜がまた始まる。

(PSV版公式HPより引用)

+ 主要キャラクター紹介
衛宮士郎
前作から引き続き主人公を務める、セイバーのマスター。
平穏な日々の中で聖杯戦争再開の兆しを察知し、阻止のために行動を始める。
バゼット・フラガ・マクレミッツ
もう一人の主人公で、第五次聖杯戦争開催の折、魔術協会より派遣された女性。
繰り返される4日の聖杯戦争を勝ち抜くべく、戦いに挑む。
アヴェンジャー
本来聖杯戦争には召喚されない第8のクラスのサーヴァント。
バゼットと契約し、彼女と共に夜の聖杯戦争に挑む。
カレン・オルテンシア
「教会」より、冬木市の教会に新たに派遣された銀髪の少女。

特徴

  • ストーリーは二つに大分され、一つは前作で主人公を務めた衛宮士郎の視点で、もう一つは本作で新たに登場するバゼット・フラガ・マクレミッツの視点で進行する。
    前者ではプレイヤーが冬木市上の各所に存在するイベントを選択し、それぞれの場所で起こる出来事を見ることができる。
    • 見たことがない、あるいはストーリー進行に関わるイベントと選択肢にはそれぞれ印が付いている。
      • 一日は午前・午後(場合によってはさらに放課後)・夜に分かれており、イベント一つにつき原則1つ時間を消費する。これを4日間繰り返すと、再び1日目の朝に戻る。
        ただし4日間までのどこかで死亡などの要因で打ち切られることもあり、この場合も1日目の朝に戻る。
    • ストーリー進行に関わるイベントを選ぶことでフラグが回収され、新たなイベントが出現する。
      • 特定のイベントを選択することでミニゲームが解放されるほか、『eclipse』にシナリオが追加される。
        なお一度見たイベントは、メインメニューから自由に選択して見ることが可能。
  • 後者は前者で行ったイベントの進行度合いによって、1日目の前に挿入される。本作の本筋は概ねこちらと言ってもよい。
    • 主人公バゼットと、彼女のサーヴァント・アヴェンジャーが夜の聖杯戦争に挑む物語。
    • バゼット編に選択肢は存在しないが、読了後、新たにイベントが出現した状態で1日目が開始する。これにより選択肢が広がっていくことで、物語はエンディングへと近づいていく。
  • 『eclipse』はタイトル画面から入る項目で本編から離れたエピソードを見られる。本作の18禁描写は一部を除きこちらに入っている。
  • そして、本作前後で型月と関わることになる、豪華ゲスト作家らによる壁紙イラストも収録。ファンディスクのお約束。

ミニゲーム

本作のミニゲームは3つ存在する。

開運 遠坂神社

  • 遠坂凛が巫女を、アーチャーが宮司を務める神社。ゲーム開始時より選択可能。
  • ゲームを進行していると自動的に入手されるお金を消費して、おみくじや絵馬を買うことができる。
    • 絵馬は本作キャラの設定画で、購入するとCGの項目に追加されるほか、それぞれの解説を聞くことができる。

風雲イリヤ城 ~とつげきアインツベルン~

  • あるイベントに仕込まれ、クリアした後は自由に選択可能となるゲーム。担当したのは『MELTY BLOOD』のフランスパン。
    • まずマスターを士郎・凛・桜の三人、サーヴァントをセイバー・アーチャー・ランサー・ライダー・キャスターの五人の中から一人ずつ選ぶ。
    • ステージは4つに分かれているが、基本的にクリックした箇所に進み、ゴールを目指す。
      • 他のサーヴァントに接触すると戦闘となり、クリックを連打することで勝負。勝つと相手のHPを削ることができる。
      • 魔力のゲージが満タンの状態で右クリックすると、先頭の敵に宝具を撃つことができる。敵も宝具を撃って来るが、クリック連打によって防ぐことが可能。
      • ステージ上には食べ物が存在し、これを取得することでHPを回復したり、移動速度上昇・無敵といった状態になったりできる。
    • 最後のステージでボスを倒すとクリア。それまでのタイムが記録される。
      • サーヴァントを倒したりすることで出現する宝箱を開けると、コレクションアイテムを入手することがある。これらをすべて集めるとボーナスCGが閲覧できる。
      • ステージの間にはなぜか○×クイズが出題されるが、本作とはまるで関係のない問題が出されることも。

トラぶる花札道中記(EX)

  • あるイベントをクリアすることで選択可能となるゲーム。拡張パッチを適用することでチームが追加されたEX(エクセリオン)になる。ストーリーモードのほか、フリー対戦モードやチュートリアルも完備。
    • こいこいルールを使用した花札であるが、加えてキャラ毎に設定された札をとることで蓄積されるMPを消費して、チームそれぞれ異なる『宝具』を使用することができる。
      • 一部チームはゲームバランスを崩壊させるどころか、最早ゲームを成立させない宝具*1を使ってくる。
    • 『Fate/stay night [Realta nua]』のPS2版初回限定特典に、またPSV版のRealta nua及び本作の購入特典に、このミニゲームのPSP移植版『とびだせ!トラぶる花札道中記』が前者ではパッケージ、後者ではDLコードとして同梱された。
      • 『とびだせ!~』はパッチ適用前を基本としてフルボイス化、オリジナルチームを一つ追加したもの。
      • またPSV版にはいずれも、システムを流用した続編『とびたて!超時空トラぶる花札大作戦』も同梱された。

評価点

  • ファンディスクの域に収まらない、前作の補完も行われるイベントを含むシナリオ。前作から引き続き「きのこ節」も健在。
    • 日常シーンでは、前作では基本的に敵として登場したサーヴァントとのイベントが大量に増えており、これまで知り得なかった一面を存分に見ることができる。
      • それぞれの過去を知ることができたり、それまでのイメージが一転するほどの壊れぶりが見られたりと、掘り下げが為されている。
      • 秋ではあるが、室内プールに行くというシチュエーションがあるため、ヒロインたちの水着姿を見ることもできる。
    • 他にも、前作では登場するシーンが少なかったサブキャラクターも登場する場面が増えた。
      • 特に前作ではプロローグのみの登場となった氷室・蒔寺・三枝の三人は出番が劇的に増え、氷室については彼女が主役を務めるおまけシナリオも存在している。
    • 夜の聖杯戦争に関わる戦闘描写も前作に引き続き好評。特に終盤は燃えること必至。
      • 燃えを削ぐとして批判された18禁要素についても、『eclipse』という別枠に収めることで解決している。
  • 本作で新たに登場した新主人公・バゼットと彼女のサーヴァントのアヴェンジャー、そして謎の少女カレンのいずれも、前作に登場したキャラクターと何らかの形で関わりがあるため、違和感を覚えることはないだろう。
  • なお今作のOPムービーは前作のようなアニメでなく静止画で構成されているが、流れるタイミング等も含め主題歌とセットで評価されている。

問題点

  • 四日間を繰り返すという設定上、同じイベントを何度も見る羽目になることが多く、テンポが異様に悪い。
    • スキップ機能が充実しており、見たことがないイベントやストーリーを進める選択肢にそれを知らせるマークが付いていても、やはり気になることではある。
  • 18禁要素こそあれ、実質おまけ扱いされているため実用性は微妙。
    • また、あるキャラクターとの濡れ場は例の如くシナリオ中(しかもほぼクライマックス)に挿入されているため、燃えを削いでしまっている。
  • 前作がなまじ完成された作品であるがために、本作での一部キャラの掘り下げが却って蛇足となっていると捉えられることも。
    • 掘り下げについても、日常パートはライターが異なるため、雰囲気の違いに違和感を覚えるプレイヤーも少なくない。
  • 前作のルートの一つで登場した『真アサシン』が、本編中では一度も姿を見せない*2
    • 登場するのはパッチ適用後の「トラぶる花札道中記EX」のみ。しかも移植版では登場しないというあまりにも酷い扱い。
  • 本作の主人公について
+ 核心に迫るネタバレのため注意
  • 実は本作に登場する主人公・衛宮士郎は厳密には本人ではない。
    • そして本物の衛宮士郎は本編エピローグにチラッと登場するのみ。主人公だったのに。
      『eclipse』内にもう一つ本人としての登場エピソードがあるが、そちらは完全な番外編である。
    • 補足すると、ややこしくはあるが「本物となんら変わらない偽者」と語られている通り「士郎」として登場している間は紛れもなく士郎である。なので「士郎のフリをして周囲を欺いている」のではなく「一時的に完全に士郎と化している」という解釈の方が正しい。

総評

ファンディスクでありながら、実質続編とも言える内容。
前作で主人公と敵対したキャラクターたちの日常の平穏、そして夜に繰り広げられる死闘。
それらを踏まえたうえでのクライマックスに向けての一連の流れは、多くのプレイヤーを魅了することだろう。
実用性については燃え描写からは切り離されたものの、ファンディスクとしては少々物足りないと思われる。
いずれにせよ『Fate』の本流を語るならば、前作に加えて本作も併せてプレイしておくべきだろう。
18禁のWin版と全年齢版のPSV版、いずれも好みで選んでも構わない。


余談

  • 2014年1月30日に本編とのセット『Fate/stay night+hollow ataraxiaセット』が9,500円で発売された。
    • パッケージが描き下ろしだが、ゲーム内容は変更なし。Windows 8まで対応している。
    • スマートフォンアプリ『Fate/Grand Order』の爆発的ヒットなどにより本作が再度注目され、初回版もセット版も定価を超えるプレミア値段となっていた。
    • 2019年6月28日に『Fate/stay night+hollow ataraxia 復刻版』が発売された。こちらはダウンロードカードであり、Windows 10まで対応している。
  • 『Fate/stay night』と合わせて2014年時点で約40万本売れている。(参考リンク

移植版の特徴

  • ミニゲームも含めて全てボイスが追加され、OPムービーと主題歌も一新された。
    • OPムービーはPSV版『Fate/stay night [Realta nua]』でも担当したufotableが制作し、主題歌は後にアニメ版『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の後期OP及び挿入歌を担当することとなった「Aimer」が担当。
      • ED曲はアップデートで追加されたが、Win版ED曲の英語版となっている。こちらも同じく「Aimer」が担当している。
  • 『eclipse』中の18禁要素を含むエピソードは削除されている(差し替えではない)。
    • そのため『eclipse』は前述の氷室が主役を務める話とゲームクリア後に追加される『後日談。』(というタイトルの番外編)のみと、専用のメニューがあるのに中身がスカスカになってしまった。
    • 本編ストーリー中の濡れ場については18禁要素を削り改変という形になっている。
  • トラぶる花札道中記が特典となったため、新たなミニゲーム『カプセルさーばんと』に差し替えられた。それによってストーリー中でのミニゲーム解放までの下りも一部変更が為された。
    • このミニゲームでも『真アサシン』は登場しないため、正真正銘彼の出番がなくなってしまった。
    • その他のミニゲームはそのまま収録。いずれも多数のボイスが収録されている。

カプセルさーばんと

  • 花札と同じ条件を満たすことで解放されるミニゲーム。所謂タワーディフェンス。なんかポ○モンっぽい
    • 主人公を「シロウ」と「リン」のいずれかから選びゲームスタート。リンのほうが敵のレベルが高い。
    • 登場するマスターやサーヴァントは前作『Fate/stay night』と本作のみならず、前日譚の『Fate/Zero』や外伝作品の『Fate/EXTRA』及び『Fate/EXTRA CCC』『Fate/Apocrypha』、原作のさらに原案の『Fate/Prototype』などなど、何気にオールスターを実現している。
  • バトルの方法は、時間経過で貯まるマナを消費してサーヴァントを召喚し、敵拠点を先に破壊した方が勝ちという、至ってシンプルなもの。
    • 召喚したサーヴァントは敵拠点へ向かったりその場に留まったりと、様々な行動を取る。それぞれの特質をつかむことが重要。
    • サーヴァントは敵の攻撃によってHPがなくなると消滅して、マナを放出する。これを入手することでもマナは増加する。
      • 原則倒した方にマナは移動するが、マナを横取りする能力をもつサーヴァントも存在している。
    • 強いサーヴァントほど召喚に必要なマナの量も多く、再召喚にかかる時間も長い。
      • 一度の戦闘で召喚可能なサーヴァントは事前にセットできる7騎までなので、よく考えてサーヴァントを選ぶ必要がある。
    • 加えてサーヴァントを召喚する場所は召喚陣の位置を変えることで調整できる。極端な話敵拠点手前にも召喚可能。
      • ただし召喚陣を一定以上敵陣に近づけるほど、必要なマナの量は2倍3倍と増加するので注意。
    • また一定時間経過することで、マスターごとに異なる必殺技を使用できる。これで戦局を一気にひっくり返そう。
  • バトルに勝利すると、召喚した回数等に応じて各サーヴァントのレベルが上がる。
    • レベルが上がるとHPや攻撃力が上がるほか、再召喚にかかる時間が短縮されたりもするため、育成は重要。
    • 同時にマスターのレベルも上がり、拠点のHPやマナの充填速度が上がる。
      • 経験値は「自分以上のレベルの相手マスターに勝つ」「拠点ノーダメージ」「一定以上のマナを消費して勝利」を達成するほど倍増。
  • そして勝利後はガチャを回す。レアサーヴァントが出るか、既に持っているサーヴァントが出てしまうかは運次第。
    • 排出されるサーヴァントは戦った相手が使ったものに限られるため、欲しいサーヴァントはそれを使う相手と出るまで戦い続ける必要がある。
    • ちなみにダブった場合はサーヴァントのレベルが1上がる。高レベルでは必要な経験値の量も増えるため、これでサーヴァントを育成するという手もある。
  • ちなみにいずれかの主人公でストーリーをクリアすると、敵マスターをプレイヤーとして選ぶことも可能。
    • それぞれのマスターで、特定のサーヴァントを召喚した場合の専用セリフがあったりするので、意外とボイスパターンは多様。
  • …最早おまけミニゲームの域を超えている。対人戦は不可能だが、あればきっと盛り上がったことだろう。
    • 更に後の2019年12月20日、このゲームのみを切り出した移植版がスマホアプリとして買い切り販売された。

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最終更新:2023年09月26日 17:19

*1 敗北時に自動的に発動し、3分の1の確率で勝敗を引っくり返す。

*2 バゼットと彼らしきサーヴァントが交戦した描写はあるが、厳密には第3次聖杯戦争のアサシン、つまり別人。