桃太郎伝説
【ももたろうでんせつ】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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プレイステーション Windows 95/98/Me
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メディア
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CD-ROM 1枚
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発売元
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【PS】ハドソン 【Win】メディアカイト
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開発元【PS】
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メイクソフトウェア
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発売日
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【PS】1998年12月23日 【Win】2001年4月18日
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定価
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【PS】6,090円 【Win】3,780円(各税5%込)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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【PS】1ブロック使用(最大15ファイル保存可)
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廉価版
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【PS】PlayStation the Best:1999年11月18日/2,800円 【PS】PS one Books:2002年7月11日/1,800円 (全て税抜)
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判定
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なし
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ポイント
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初代・II・新のいいとこ取り 色あせないゲーム性 色あせないエンカウント率
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桃太郎シリーズリンク
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概要
「桃太郎シリーズと言えば桃鉄」という時代、5年の年月を経て久々に発売された本家・桃太郎伝説。
物語の大筋はFC版『初代』を踏襲しつつ、後続の作品の要素が取り入れられた実質的なリメイク作となっている。
具体的にはゲーム性はいつもの3人の仲間と共にパーティバトルを行う『桃太郎伝説II』のものを採用し、システム面や豊富なミニゲームなどは『新桃太郎伝説』から取り入れられている。
いわばシリーズの集大成とも言える作品となっているが、メインメンバーは桃太郎+いつもの3人で固定で、入れ替え可能なのはサポートキャラのみ。
地獄王、伐折羅王やカルラといったリメイク元で登場した新キャラクターは登場せず、初代のストーリーの枠内で話が完結するように作られている。
2001年にWindows向けに移植された。
新システム
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カードアルバム
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キャラクターや鬼(モンスター)のカードを収集して集めるやりこみ要素。
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「鬼カード」は同名の鬼を10匹こらしめると入手できる。ボスは倒せば無条件で入手。
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それ以外は専用の施設「カード道場」でトレードやじゃんけん、村人との会話、隠されているものを発見するなどで手に入る。乙姫に花を贈る、寝太郎を二度起こすなど、意外な条件で入手できるケースも。
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ゲーム攻略には一切関係ないが、収集すると強力な武具が貰える場合もある。
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鬼カードにはHPなどのパラメーターが記載されているので、攻略の助けになる側面もある。
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期間限定ダンジョンにしか登場しない鬼も存在するが、取り逃がしてもダンジョンクリア後に町人から貰えるので安心。
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鬼の逃走
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エンカウントした鬼よりも桃太郎たちの段数が一定以上高い場合、戦闘開始直後に「うわあ桃太郎さんだ!これは、かないっこない!」と叫んで逃げてしまう事がある。
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心(経験値)や両(お金)や鬼カードはしっかり貰えるので損害は無い。
ギャグ鬼で遊びにくくなるが。
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それ以外のシステムは『新』の絶好調システムなどが取り入れられているが、ほぼ『II』と同様。大筋のストーリー以外は『II』のリメイク作品と見て良い。
変更点
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ストーリー自体がFC版初代を踏襲しているため、桃太郎が桃から生まれるところから始まるので当然ながら作中の相手とは全て初対面。それに合わせて配役もやや変更されている。
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例えば氷の塔では夜叉姫を仲間に加え、共に醜女(しこめ)に挑むという『II』『新』とは逆のパターンに。
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風神は『II』『新』と同じように仲間を吹き飛ばしてウサカメの村で決戦するが、雷神は『初代』と同じように黄泉の塔で戦うなど、若干出番で割りを食ったキャラクターもいる。
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地獄王や伐折羅王が登場しないため、夜叉姫については単に「鬼の王族の娘」となっており、えんまの部下に当たる立場になっている(えんまのことはえんま様呼び)。
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キャラの表示がマップによって変わるようになった。
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フィールドやダンジョンでは従来に近いチビキャラで、村や一部のダンジョンでは比較的大き目のキャラで描かれる。イベントによっては飛び跳ねて喜んだり泣き喚いたりとコミカルなアクションを見せる事も。
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金太郎は『新』と同じく体力を消費してすもう技を使用可能。夜叉姫は『外伝』で登場した「流れ星の術」を初期習得している。
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それ以外の術は『II』と同様。
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桃太郎以外も仙人から術を習得したり、段数を上げると強化版の術が使えるようになる点も『II』と同じ。
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『新』のメイン敵は登場しないものの、両鉄や竜燈鬼といったボスは所々に登場。カルラの手下だった右魂鬼と左魂鬼は鬼ヶ島の中ボスとして単体で出現する。
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カルラがいない事もあって『新』ほど残虐行為は行っておらず、『初代』や『II』のような和やかな王道ストーリー&ギャグが展開される。
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ボンビーの村やとこなつの村といった新しい村のエピソードも追加。
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ボンビーの村では貧乏神達の見窄らしい村を金ピカに変えると言う妙な悪事が行われている。鬼を倒せば村は元の貧乏な村に戻り、貧乏神達は喜ぶ。幸せはお金ではないと言うテーマなのだろう。…多分。
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一方で、ちゃがま村や月世界など一部の村やダンジョンは未登場。キャラも前述の『II』以降の悪役の他、でか太郎も登場しない。
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おともはキジ・イヌ・サルの3匹以外に1匹だけ連れて行ける。
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『II』では一時加入のみだったウンチや地蔵などから自由に選択可能。
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専用の術を会得する事でダッシュが可能になった。
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走れるようになるはやあしの術は序盤ですぐに会得可能。いだてんの術を会得すると更に移動速度が上昇する。
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希望の都では『新』と同じようにミニゲームを楽しめる。
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ミニゲームは出来が良く、『桃太郎電鉄V』や『ボンバーマンランド』にもガワを替えて流用された。
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『桃鉄』で数年に一回行われる、「サイコロを振って一直線に進む」いつものミニゲームもある。
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おなじみギャグ敵ももちろん登場。出現するや否や桃太郎の前に図々しく居座ろうとする「友達ん家の鬼」や、ギターを持ったイケメン「ビジュアル系の鬼」、携帯電話を持つ「ケータイの鬼」、何でもかんでもゲットしようとする「ゲットの鬼」といった時代に合わせた新規の鬼も。
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その代わりに実在の人物をモデルにした「ラッキィおにだ」や「オニしまなぎさ」などのパロディギャグ敵は出なくなった。
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「タカさんチェック」は一応登場するものの、戦闘中のネタ台詞が無くなってしまった。
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ましらとの対戦時のセリフも「さぱぐちやすこみたいじゃと」(II)→「ヌカミソが腐るじゃと」(PS)といった風に改訂されており、『新』でモロにビートルズのパロディだった経歴も語られない。
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あしゅらのデザインが大幅に変わっている。
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ソニーチェック対策の為に露出度が大きく落とされているのだが、それに留まらず腕の本数や髪型まで実際の阿修羅像に近い容姿になり、従来の美男子の面影は無くなっている。名前表記も漢字で「阿修羅」である。名残と言えば薔薇ぐらい。
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不評だったのか、後の『桃鉄』シリーズではいつもの風貌に戻った。後に発売された『桃太郎伝説1→2』でも露出度を抑えつつ従来の美男子に戻っている。
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女湯は4つに増量。ハードに合わせてグラフィックも強化された。
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絵柄も一定ではなく、可愛い系やセクシー系など複数のタイプの女湯が堪能できる。
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希望の都はともかく他の女湯は例によってほぼノーヒント。風呂上がりのNPCと竹薮には注意を払おう。とだけ言っておこう。
+
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ただし…
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1つだけおばさんと老婆のハズレ湯が存在する。
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しかも条件は『II』と同じで、希望の都の女湯に外周から入るというもの。既プレイヤーに対する恐ろしいブービートラップ。
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戦闘時に敵がアニメーションで動くようになった。
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非行動時のニュートラルモーションから行動時の各種パターン、エフェクトも作りこまれている。
評価点
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三作品のいいとこ取りだけあって上手く融合されており、話の展開も王道そのもの。
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演出も強化されており、特に花さかの村は画面に花吹雪の舞う美しい景色へと変貌を遂げた。
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ましら戦では前述の通り際どいネタは無くなったが、無理矢理歌を聞かされている村人を逃がす為に、一時的に50人もキャラを引き連れて歩けるようになる。
『II』の最大20人パーティーすら越える長蛇の列が主人公に付き従う様は小ネタとは言え圧巻。
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土居氏の絵に忠実に描かれたキャラクターが動きまくる戦闘グラフィックは圧巻。『桃太郎電鉄7』の色使いで懐かしい鬼が動き回る。
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この手のものにしては珍しく動きも速くテンポを削ぐ事も無い。
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後に2011年に配信された『桃太郎伝説モバイル』に今作のグラフィックは流用された。
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BGMも良好
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過去作のアレンジ、新規曲共にハードの性能向上に伴って高いクオリティを放っている。和楽器をふんだんに取り入れた旅情感溢れる和風曲は勿論、激しいロック調のボス曲など、シリーズのイメージを保ちつつジャンルに捕われないBGMの数々が魅力。
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希望の都ではサウンドテストが出来る施設も用意されている。
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前述した花さかの村はBGMも特に評価が高い。BGMと演出の良さや無料で回復できる牛がいることも相まって、この村を最終的な本拠地としてやり込みに精を出したプレイヤーも多いようだ。
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攻略には関係無い小ネタも非常に豊富。
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各地の村に用意されたちょっとしたお遊び要素、いつにも増して大ボリュームの希望の都、隠されたキャラカードの探索などのサブ要素が豊富に用意されており、村を回るだけでも楽しめる。
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PSのゲームにしては珍しくロード時間が2・3秒ほどと比較的短く、エンカウント後にすぐコマンド入力ができるので、一回の戦闘自体はスムーズに進む。
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後発のWindows版はフルインストールのためPCスペックに左右される点はあるものの、ロード時間はほぼ皆無。更に倍速モードも搭載されている。
問題点
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エンカウント率まで『II』や『新』と同レベル。非常に高い。
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おそらく本作で最も批判されたであろう点。加えてダンジョンなどが旧作に比べると総じて広い構成になっているので、とにかく歩くたびに敵がでてくるといってもいい程。フィールドでもダッシュ可能となった事でより顕著となった。CD-ROMメディアゆえに『II』や『新』よりも戦闘前の読み込み時間が長いことも手伝い、古参の桃伝ユーザーでもかなりストレスが溜まる。
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従来通り、術やアイテムなどのエンカウント率を下げる手段もあるが、今回は桃太郎達より弱い鬼にしか効かず、従来より性能が下がっている。
レベルを大幅に上げて段数に余裕を持つことが対策としては有効で、戦闘の即時決着と上述の敵回避の術やアイテムで比較的楽に進行できるようになるが、それはそれで戦闘の緊張感が大幅に減退するという問題にもつながってしまう。
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ちなみに、鬼を呼び出して即座に戦闘に入ることが可能な道具や術もあるのだが、エンカウント率の高さゆえ、経験値を稼ぐならダッシュで走り回った方が早いのでほとんど使われない。
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天下御免の札を使って鬼の笛やイヌの特技で敵を呼び出し続けたほうが圧倒的に早い。
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後にTwitterで元開発者のソンナユーミ氏が語った裏話によると、元々はランダムで4歩~8歩まではエンカウトせずに、そこからエンカウントの抽選に入るという仕様で、心の量も製品版より多く貰えていたが、『すぐにクリアされるから駄目!』という理由でハドソン社の上にひっくり返されてしまったという。
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レベルアップに伴う戦闘の強制終了の盲点
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前述のように鬼とのレベル差があると経験値と金を差し出して逃走するようになるのだが、それはつまり楽勝になった地域で歩いているだけでレベル上げが可能ということ。そしてエンカウント率が非常に高いため、このランニングレベルアップ作業はさくさく進む。
「次の地域に進んだ時、まだ鬼が抵抗するようなら前の地域に戻ってしばらく散歩。次の地域で敵が降伏するようになったら、またそこで散歩してレベル上げ」を続けていけば、ボスキャラ以外の全ての雑魚を無血で降伏させる事ができる。ラストダンジョンですら敵は降参していく。
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これに気づいたら、エンカウント率にまつわる問題は(悪い方に)一変する。ゲームの楽しみが全く無くなり、バランスは崩壊の一途をたどってしまう。
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無論、気づいたとしても行き過ぎればバランス崩壊に繋がることは容易に察知できることではあり、利用するかいなかはプレイヤー次第だが。
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ザコ鬼のカードは入手のために同一の鬼を一定数倒す必要があるので作業感が強い。
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特におなじみのギャグ敵は1匹でしか出ないものも多く、長い時間を費やす事となる。
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上述のように段違いに弱い敵は勝手に逃げるが倒した扱いにはなるため、過剰にレベル上げしてからの方が集めやすいが、作業感はより強くなる。
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豊富なやり込み要素が魅力なのだが、微妙に行き届いていない部分が多い。
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希望の都の遊技場や五重塔で遊べるミニゲームは完成度が高く楽しめるのだが、もらえる景品が全体的にしょぼいためモチベーションが維持しづらい。
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倒した鬼やゲーム中で歩いた歩数が一定数に達するごとに景品がもらえるという場所もあるのだが、肝心のもらえる回数が少ない。一応、景品自体はどれも貴重なものばかりではあるが、歩数に至っては3万歩歩いたときの1回しか景品が出ないというのはさすがに少なすぎと言える。
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シナリオは旧作のエピソードを上手く融合しているのだが、簡略化されたイベントもいくつかある。
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スリの銀次は登場こそするが、旧作で活躍したキャラの割にはかなり存在感が薄くなっている。
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『初代』同様に宝を奪って行くのだが、希望の都を解放すると何の脈絡も無く改心して宝を返してくれる(そもそも宝を奪われる事自体が必須イベントではない)。『初代』のように放屁を浴びせて懲らしめるイベントは無く、『II』『新』のように仲間になる事も無い。
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仲間が風神に飛ばされる際、発見した仲間は話し掛けて再加入させるだけになった。
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夜叉姫の毒を治療したり埋まった金太郎を助けるイベントなどは無い。この点は『新』と同じだが、『新』は仲間が多かった事や本作のベースが『II』である事を考えると、少々味気なくなっていると言える。
総評
古き良きRPGを体現したような作品であり、まさにシリーズ集大成といえる仕上がりとなっている。
一方で、ストーリー、システム両面で過去作の要素をまとめ直した作りであるゆえに目新しさに欠けることに加え、エンカウント率の高さが原因で評判を落とすこととなった。
ゲームの完成度自体は悪いものではないため、エンカウント率の高さ・じっくり稼ぎながら進む昔ながらのRPGという点を許容できるかどうかが評価の分かれ目となるだろう。
余談
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本作発売後にGBAでリリースされた『1→2』の後日談に当たる外伝作『桃太郎まつり』では、オープニングにPCE版『II』のラストバトルを再現したイベントバトルが挿入されるが、BGMやインターフェースのデザイン、アニメーションする敵グラなど、本作から流用されている。
最終更新:2023年01月06日 22:33