バンゲリング ベイ

【ばんげりんぐ べい】

ジャンル シューティング
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ハドソン
発売日 1985年2月22日
定価 4,900円
判定 なし
バンゲリング帝国三部作
チョップリフター (FC) / ロードランナー (FC) / バンゲリング ベイ (FC)


概要

  • 『チョップリフター』『ロードランナー』と並ぶ、バンゲリング帝国三部作*1の第3弾。元々はブローダーバンド社が制作したコモドール64用の作品だが、これをハドソンがファミコン向けに移植した。
    • ヘリコプターを操り、自軍の空母を護衛しながら敵バンゲリング帝国の「工場をすべて爆破する」ことが目的。
    • HP制のシューティングゲーム。ダメージが蓄積すると機体の挙動が鈍くなるといったリアリティある操作性。
    • 原題は『Raid on Bungeling bay』で「バンゲリング湾 強襲作戦」といったところになる。

特徴

  • 自機であるヘリコプターは十字ボタンの操作で16方向に旋回し、あらゆる方向に前進及び後退が可能。
  • ヘリコプターの武装はバルカン砲と爆弾。
    • バルカン砲は対空・対地両用で前方を攻撃できる。弾数は無制限だが連射はできない。
    • 爆弾は直下に投下する。工場や戦艦は爆弾でしかダメージを与えられない。一度に9発しか持てないが補給は無制限に可能。
  • 空母は海上を一定速度で直進している。自機が着艦すると戦闘で受けたダメージが完全回復し、工場を爆破するための爆弾を補給することができる。ある程度の回復、爆弾の補給ならば敵地の駐機場でも可能。
  • 空母が敵軍に探知されたら*2、すぐに空母の周りに群がる敵軍を撃退しないと空母が沈没してしまう。そうなると自機の残機は0になり*3 、次の面に進んでも失われた空母は戻ってこない。
  • 時間が経つにつれ工場の耐久力は上がり、兵器が次々と生産される。ゲームAでは2面以降、ゲームBでは1面から敵の戦艦が建造され、空母を破壊しに出撃してくる。
    • 敵戦艦は非常に強く、完成して出撃されてしまうと撃破するのは至難の業。しかも空母と同じエリアに入った瞬間に問答無用で空母を撃沈してしまう。その存在は強烈で「WARNING」の文字に焦り、絶望したプレイヤーも多いだろう。
  • 攻撃能力は持たないが、戦闘機を誘導するレーダーが存在。早めに破壊しないとピンチに陥る。
  • 自機は致命傷を負うと制御困難に陥った後に墜落するが、その時敵の工場などに特攻して最後の一撃を食らわすことができる。
  • 2人プレイもできるが対戦プレイのようなもので、2プレイヤーは敵軍を操作して1プレイヤーのヘリと戦う。

評価点

  • 敵機そのものではなく、それを生産する工場を叩くのが最終目的というゲーム性。敵軍の生産力や索敵能力といった概念がゲームにも反映されている。
  • マップを自由に移動できるので、攻略の道筋を自分で立てることができる。
  • 得点やダメージによって陸地や海の色が変わる。当時としてはなかなかダイナミックな画面効果である。
    • 陸地の色が変わるのは「昼→夕方→夜→朝」と時間の経過を表している。
    • 瀕死状態だと海は真っ赤に染まり、その画面はかなり衝撃的。

賛否両論点

  • 特殊すぎる操作性。
    • 操作方法は、十字ボタンの左右で自機の旋回、上下はスピード調整というラジコン的なもの。慣れないうちは思うように自機を操れず、かなり戸惑う。
    • 一般的なファミコンのシューティングゲームと異なりあらゆる方向に移動できるため、何をすればよいのかがわかりにくい。
    • 後にメガドライブやスーパーファミコンで発売された『デザートストライク』シリーズは本作と同一の操作法を採用している。こちらの評価は高い。
    • ジャンルは違うがウィザードリィなど3DタイプのRPGでは標準的な操作体系だが、当時のシューティングゲームの操作体系としては馴染みが薄かった事も困惑に拍車をかけたと思われる。

問題点

  • フレームレートが低めで、画面のちらつきが激しい。
  • 自分が何処を飛んでいるか分からない。
    • 空母が自機のどの方向にいるかは画面下に表示されるた矢印で把握できるが、コモドール64版と違いMAP上の何処を飛んでいるか把握するレーダーがない。10×10で形成された100画面の広大なMAPがどのような地形なのか記憶する必要がある。
  • シューティングゲームにもかかわらず、当たり判定ではなく確率判定でダメージを受ける攻撃がある。
    • 哨戒艇と戦車の攻撃がそれで、当時の攻略本では「見えない弾」と説明されていた。低次面ではダメージも命中率も低いのでさして問題ではないが、高次面となると視界に入ったら速攻で倒しに行かないと速攻でこちらが死ぬ。
  • 移動中に爆弾投下する際のレスポンスの悪さ。
    • Bボタンで投下する爆弾だが、移動中に投下しようとすると一度ボタンを押しても投下されない場合が多い。また、投下される場合もボタンを押してからだいぶ遅れる。
    • 工場を攻撃する際は停止して投下する場合がほとんどのため問題にならないが、戦艦出港後に撃沈を図る場合は停止して爆撃する事は自殺行為のため、必然的に移動しながら爆撃することとなる。戦艦自体の強さに加えてこの仕様のため、対戦艦戦の難易度の上昇を招いている*4
  • 2Pプレイの完成度が低い。
    • IIコンのマイクで叫ぶと、自機の周りに敵の戦闘機が集まる。既に存在している攻撃機は戦闘機扱いに変わり、協力プレイとして空母を守るための手段の一つにもなるのだが、対戦要素として見るとかなり2P有利である。特にゲーム開始直後にこれをやると離陸できずに自機が撃墜されることもある。
    • 一方でマイク以外では、固定設置である高射砲を操作するくらいしか2Pのできることはない。逆に言えば操作しなければ高射砲が無力化するので、これを利用して練習モードとして遊ぶ事もできる(戦艦は建造されるので要注意だが)。
    • 2Pプレイ機能自体はロムカセットの容量制約がそもそもの発端で、ロムカセットにプログラムデータを収めるには元のサイズを半分にまとめる必要があった。その苦心の末に余った残り8ビット*5を活用したアイディアだった。マスターアップ2日前の出来事である。
  • エンディングが無い*6。2面以降は同じMAPの繰り返し。
    • 当時のゲームに良くみられた事だが、やたら難しいゲームなのに達成感が得られないのは味気なさ過ぎ。満足する要素に欠ける事もクソゲー扱いされる大きな理由の一つ。

総評

ロムカセットの容量制約からプログラムデータを半分にまとめる必要があったが、ゲーム性はなんら損なわれていない完成度の高い移植作である。


余談

  • ハドソンが本作を移植することになった背景には当時社内でラジコンヘリコプターが流行していたことが原因になっている。仕事の合間を縫って飛ばすほどの熱の入れ様だったとのこと。
  • 後に任天堂が操作法などの変更を施してアーケード版を出したが、アーケード事業からの撤退もあって出荷数は非常に少ない。主な変更点は下記の通り。
    • 操作方法の変更。背後方向(後退)を除き、レバーを倒した方向に自機が向かうという一般的な仕様に変更された。
      • 下レバーは南向きになるまで旋回しその後加速。
    • 空母が沈められても残機はなくならない。ミス後に空母ごと復活する。
    • 2人用の対戦モードが削除された。
  • 本作の開発に携わったウィル・ライトは、マップや敵の生成アルゴリズム作成の経験を、後の『シムシティシリーズ』に昇華させたことで知られる。しかも、本作から『シムシティ』を発表するまでの数年間、他のタイトルは一切関わっていなかった*7という。
    • SFC版『シムシティー』の公式攻略本でも本作に言及しているが、FC版については「移植がひどかった」と評している。
  • ゲーム中や説明書に詳細なストーリーが描かれている訳ではないが、勁文社の攻略本にはアメリカンスピリッツ溢れる熱いバックストーリーが記載されていた(アーカイブ)。
    • このストーリーの中ではプレーヤーの拠点となる空母は ニミッツ級原子力空母4番艦の『ロナルド・レーガン』 と言う設定だが、本物のニミッツ級原子力空母4番艦は『セオドア・ルーズベルト』、本物の原子力空母『ロナルド・レーガン』は1994年に就役したニミッツ級原子力空母9番艦だったりする。
    • 操作するヘリコプターのモデルは、AH-1Wの更新用としてアメリカ海兵隊向けに提案されていたAH-64Bアパッチだが、戦闘機並みの値段がネックとなり採用されず、試作機の設計段階でプロジェクトチームごと別の改良型に転用されたため、実物は存在しない。
  • 本作を語る上では、ハドソンが行った一連の広告宣伝も忘れてはならない。
    • 移植元のハドソンはこのゲームを出すにあたって漫画雑誌「コロコロコミック」とのタイアップなど相当な広告宣伝を行った。
    • キャッチコピー「ファミコン初の16方向スクロール」「100画面にも及ぶ広大なマップ」の煽りと「IIコンのマイクに向かって『ハドソン』と叫ぶと何かが起こる」に騙された人も多いだろう。
      • 実際の所、マイクに向けて叫ぶ言葉は、別にハドソンでなくとも何でもよい。そもそもファミコンには音声の有無以外を認識する機能はない。
    • 売上は相当数*8だったらしいが、すぐに『燃えろ!!プロ野球』と並ぶワゴンセールの主になった。
      • この商業的な展開が、本作の風評に少なからぬ影響を与えたのは否定できない。
    • 上記のような事もあり、現在でもFCの代表的なクソゲーとして挙げられることが多いが、時を経て再プレイしたなどで本作を再評価するプレイヤーもまた多い。この事からも、ゲームシステムを理解できれば楽しめるゲームだといえるだろう。
  • ファミコン版では6つの工場全てを破壊した後、空母に着艦した状態で次の面を迎えると、開始画面→ゲーム画面(一瞬だけ表示)→残機を1機失って開始画面→ゲーム画面(一瞬だけ表示)→以降繰り返しとなり、全く操作できないまま最終的にゲームオーバーとなってしまう。
  • 「パッケージの絵は日本オリジナルで、とある出版社から、子供は本の表紙でも一発目に目を見るから、目が無い、顔が無いパッケージは見られないと言われ、骸骨を入れた」という裏話を高橋名人が語っている。
  • コロコロコミック連載の『ファミコンロッキー』では「『スパルタンX』で24周すると救出対象が襲ってくる」などの創作技、嘘仕様の数々を掲載していたが、その中にも本作のものがある。
    • 漫画で描かれた内容では、南のはずれに自機コントロール不能領域「バミューダトライアングル」が存在し、その中央部で自機を猛回転(コントローラーの上下左右を連打)させて竜巻を巻き起こすとバンゲリング帝王の顔こと最終兵器(パッケージに描かれている骸骨)が現れ、これを倒すと9千万点を超える最大得点を獲得し、帝国が水没・滅亡する、というものだった。ゲームにエンディングが無いだけに、せめて漫画の中では描こうとしたのかもしれない。
      • 理由としては、「バンゲリング帝国の切り札である最終兵器が建造されているが、どこの工場にもそれらしきものは無い」⇒「そもそもそんな重要な兵器を目立つ工場では作る訳がない」⇒「最終兵器の秘密工場は魔の海域に隠されていた!」という流れになっている。無論、実機には最終兵器の設定がそもそも存在しないが。
      • その最終兵器も「両目からプレイヤーを正確に狙うビーム攻撃を放ち、通常ミサイルではダメージを与えられないので眉間で一時停止して両目のビームによる同士討ちを誘発して倒す」というぶっ飛んだ設定になっていた。
    • ちなみにその回の内容は、バンゲリング・ベイ24時間耐久戦であった。
  • ファミコンネタが多い空知英秋のギャグ漫画『銀魂』では、同作が人気作『DEATH NOTE』開始の翌週に連載開始したせいで当初は影が薄かったことを踏まえて、神楽が「ドラクエの発売日にバンゲリングベイを出すようなもの」と語り、新八から「バンゲリングベイは名作だぞ!!」と斜め上のツッコミを受けるシーンがある。なお『ドラクエI』の実際の発売日は本作の1年後である。
    • また、ファミコンカセットを食べる蓮蓬族という天人(宇宙人)が登場した際、「上役はドラクエFFを、下っ端は『バンゲリング ベイ』や『エキサイトバイク』をカレーのようにご飯にかけて食べる」というブラックなネタもあった。
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最終更新:2023年11月10日 22:58

*1 この解説がwikipediaなどを含めて広汎に流布されているが、実はバンゲリング帝国の名が出てくるゲームは他にも『チャンピオンシップロードナンナー』『スターブレーザー』の2作品が存在し「三部作」とは言えない(ロードランナーのバージョンアップ版であるチャンピオンシップロードランナーをまとめてカウントするとしても四部作となる)、また各作品の設定がばらばらであるため統一設定の「○部作」とは言えない、という指摘が為されている。

*2 警告メッセージが出る。

*3 「残機は空母に搭載されている」という設定。

*4 本作の愛好者の中には、敢えて戦艦を出航させて撃沈するプレイを楽しむものも多いが。

*5 「バイト」ではなく「ビット」である。

*6 コモドール64版には存在する。もっともそちらは1面クリアで即エンディングだが。

*7 秀和システム社刊『パソコンゲームの達人』より。

*8 内容が何であれ、出せば売れるファミコンブームの真っ只中でもあったが。