武田信玄2
【たけだしんげんつー】
ジャンル
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シミュレーション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2Mbit+64KRAM ROMカートリッジ
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発売元
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ホット・ビィ
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発売日
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1989年8月21日
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定価
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6,800円
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判定
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なし
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ポイント
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念願のセーブ機能搭載 クソゲーだった前作を劇的に改善 やっぱり鬼畜な信玄 謎の李将軍
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武田信玄シリーズ 1 / 2
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概要
武田信玄を主人公とした歴史シミュレーションゲームの第二作目。
同名の大河ドラマに便乗したと思われる前作は、歴史シミュレーションゲームなのにパスワード(15文字)で中断するという前代未聞な仕様だった上に
そのパスワードが全くパラメーターを再現しなかった為に悪政の限りを尽くしてパスワードでなかったことにするという攻略が蔓延っていた。
さらには厳しすぎる初期パラメーターに加え、ランダムで敵に攻められて速攻でゲームオーバーになるような滅茶苦茶なゲームバランスであり、クソゲーとして名高かった。
大河ドラマも終わって久しい時期に便乗ゲームの続編という変わった立ち位置でうまれた本作は、前作と同様に武田信玄と共に全国統一を目指すのが目的となっている。
特徴
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ゲームは1545年から始まり、プレイヤーは軍師の「山本勘助」に様々な指示を出しながら「甲斐の国」や「信濃の国」を治め、そして出兵によって領土を拡大していく。
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主人公は武田信玄だが、志半ばで倒れる事もあり、その時は息子の武田勝頼が後継者となってゲームを続行する事が出来る。全20ヵ国を統一する前に勝頼が寿命を迎えるか、あるいは支配するすべての国を失うとゲームオーバー。
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前作と同様に一年は12ヵ月で表現され、一つのコマンドを実行する度にひと月が経過するという『信長の野望 全国版』に近いシミュレーションとなっている。
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全国と銘打ってあるものの京及び関東甲信越を中心とする20ヵ国が舞台となる。『信長の野望シリーズ』のうち『初代』か『全国版』の十七か国モードとほぼ同じである。
前作からの変更点
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全体的なUIがグラフィカルなものに変更。戦略画面は『独眼竜政宗』のようにコマンドアイコンから命令を選ぶ形になった。アイコンは「軍(軍事)」「城(城の改修)」「農(農業奨励や農民援助)」等の漢字一文字で表現され、全部で十二種類存在する。
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シナリオ仕立てではなくなり、最初から「織田信長」や「上杉謙信」といったすべての敵大名が登場しており、これらを滅ぼすのが目的。
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念願のセーブ機能に対応。セーブは本国でしか行えないが、当然ながら「領土の内政値」や「所持金」「敵大名の領地」などがリセットされることが無くなった。
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ゲーム内での演出面が強化されており、随所に信玄に関する歴史イベントが挟まるようになった。プレイ中に湖衣姫との結婚や世継ぎ(勝頼)の誕生、または登場人物の死などが起こる。
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特に信玄の死やエンディング、ゲームオーバー(滅亡)等はファミコンとしては大掛かりな演出が行われており、目を引く。
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先述の通り、時間をかけすぎると(史実に比べて長生きこそするが)信玄は死んでしまうし進行役の勘助にもやがて寿命が訪れて「きんすけ」なる後継者に引き継がれる。ゲーム内にも明確に時が流れていることを感じさせる演出である。
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勝頼に寿命が訪れるとゲームオーバーとなるが、史実に比べて非常に長生きする為、寿命によるゲームオーバーをみるには開始から90年かける必要があり、よほどのことがない限りはゲーム中に時間が足りなくなることはない。
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後継者(勝頼)が生まれると「世継ぎ」のコマンドを使用する事が出来るようになる。「武芸」「学問」「道徳」の三つのパラメーターにお金を投資する事で後継者の能力を育てる事が出来る。投資次第で優秀な後継者になるかボンクラになるかが決まる。
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また、乱破(忍者)を使う事で他国の後継者の能力を下げるといった珍しい要素もある。
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難易度の調整
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前作では兵士数が片手で数えれそうな程少ない甲斐の国一つから始まったが、本作ではパラメーターが改善されてある程度の軍勢は揃っており、さらには信濃の国をも占領した状態で開始される。
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意味があるかどうか謎だった「米」も「出兵」や「他国のかく乱」に使用するといった明確な意味を持つようになった。
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商人は「大雪」や「台風」の時以外は常時呼び出せるようになった。米を売りたいのに商人がいない…といった事はなくなった。
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また、一度に取引できる量も「99」から「999」までに引き上げられたので米が腐るほど余るような事は無くなった。
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内政値が上がりやすくなった。特に前作では所持金の60%以上援助しないと「裕福度」が上がらなかったが、本作では金額に応じて上がる。
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前作では何の前触れもなく敵に攻められるという問題があったが、本作の場合は敵国が攻めてくる前月に「狼煙」が発生する。
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「狼煙」が発生した国では出兵が出来なくなるが、他の支配国から軍を派遣して襲撃に整えたり、別の支配国から攻撃を仕掛けて敵兵力を減らしておく事等の手が打てるようになり、理不尽さが軽減された。
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ランダムに敵が攻めてくるのではなく、状況判断をするようになった。「狼煙」があがるような国は隣接する敵国に比べて軍備が劣っている事がほとんどなので急いで対応する必要がある。
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また、警告こそされないが他国の城にも「狼煙」が発生することがあり、弱っている国を攻めて漁夫の利をさらう事も可能。
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「狼煙」そのものは前作にも存在したが、何故か信玄がいる国では狼煙が上がらないという妙な仕様となっていた。本作ではどの国でもしっかりと狼煙が上がるようになったとみるべきか。
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戦争の特徴
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戦争は必ず「野戦」から始まり、攻撃側が勝利してそのまま戦争を継続すると「攻城戦」に移る。攻城戦を勝利する事で領土を奪う事が出来る。
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兵科などの基本的なシステムは前作を踏襲しているが、戦場マップは30×30マスで表現される広大なマップになった。
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撃破されると敗北になる兵科「本陣」が追加された。一般的なSLGではこういう役割のユニットは弱いものが多いが、本作の本陣は異様に接近戦が強いので油断すると返り討ちに遭ってしまう。
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前作では各ユニットは1ターンに1歩しか動けなかったが、ユニットごとに5~9マスの移動力が与えられ、移動後に攻撃もできるようになった。また、ユニットの行動順も自由になり、融通が利くようになっている。
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特に鉄砲隊は5マス移動した直後に7マスもの直線距離に鉄砲を発射できるので画面半分ほど離れていても攻撃が届くという強力なユニットになっている。
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また、出陣させる兵士を複数の部隊(本陣1部隊、足軽3部隊、その他2部隊)に分けるようになった。もちろん部隊を分けなくともOK。兵力を一部隊に集中させると攻撃力が高まるので格上の勢力に対する有効手段にもなりうる。
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部隊の攻撃力は「部隊のレベル」及び「兵数」が大きく影響するが、攻撃をしかけた方がより優位に立てる為、レベルでやや劣る相手にも先手を取られないように戦えば戦況をひっくりかえす事が出来る。
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部隊を一度に壊滅させた場合は攻撃側の損害が抑えられるので戦い方次第では全く兵を失わずに戦争に勝つ事も可能。
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戦争そのものを簡略化させる「自動戦闘」も追加。一切操作しなくてもよいが損害が大きくなる。
ネタ要素
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災害の中になぜか「武田信虎(信玄の父)」の来訪が存在する。
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ランダムで「腹が減った」と「米」を取っていくか、「女の一人でも紹介せんか」と「姫」を奪っていくマイナスイベント。
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しかし奪っていく「姫」はいずれも信玄の娘なので自分の孫をさらって行くというとんでもないオヤジになっている。
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ちなみに信虎にも寿命が存在しており、死んだらファンファーレとともに勘助に「お喜びください。信虎様が亡くなりました!しょーもないオヤジでしたなあ」と
仮にも主君の親が亡くなったというのにボロクソに切り捨てられた上に、住民が喜んで服従度が上がる。
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ゲームに登場する敵大名はおおむね1545年の勢力版図を再現しているように見えるが、よくみると11歳で髭面な織田信長(Lv54)、40歳の中年にされた松平広忠など妙な点もチラホラ。
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しかしなによりも目を引くのが能登に勢力を置く「明 李将軍」であろう。能登半島がいつの間にか明国に占領されている。ちなみに将軍が名前なので元ネタとなる人物が誰なのかは不明。
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本来の領主である畠山家は越中に追いやられてしまった。それに押し出される形で越中の本来の領主である神保家は存在そのものがなかったことにされている。
評価点
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基本的なルールは踏襲しているが、BGM、グラフィック、システム等は前作とは比べ物にならないほどパワーアップしている。
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前作は黎明期のパソコンゲームのようなグラフィックとUIだったが、本作では水準が上がり、ファミコンのシミュレーションゲームとしては高水準にある。
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前作ではマップと信玄の顔ぐらいしかグラフィックがなかったが、本作ではアイコンやイベントCGなどにもグラフィックが割り当てられ見栄えが良くなった。また敵大名などの登場人物にも顔グラフィックが追加されている。
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UIの改善によりコマンドが選びやすく、幾分か遊びやすくなった。
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BGMは『ダブルドラゴン』で有名な山根一央氏が担当。戦略画面や指揮を執った際の戦争画面のBGMは氏が得意とする勇ましさの中に哀愁が感じられる曲調となっており、非常にマッチしている。
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前作にあった要素の昇華
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前作から災害を下げる「信玄堤」や部隊そのものが成長していく「経験値」等、随所に面白い要素はあったものの、大半がパスワードでリセットされるためにほとんど意味がなかった。しかし、今作ではセーブ機能のおかげですべて機能している事を実感できる。
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バランス面にも調整が入ったのも大きい。
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レベルが上がりやすくなり、最初は近辺の小大名にも負ける程弱い軍団をだんだんと無敵の軍団に鍛え上げていくのも本作の醍醐味である。
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戦争による収入が減り、内政による収入が増えたため、
前作ではする必要がなかった内政は攻略に必須となっている。しかし、内政値のパラメーターは上がりやすいので煩わしさは少ない。
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前作は各地方の戦闘マップに史実の特色を持たせた部分があったが本作でも継続している。特に本作は各国ごとに野戦と攻城戦の専用のマップが用意されており、攻めやすさなどの違いも顕著で個性が強い。
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特に千曲川、犀川がマップ上で表現されており「川中島の戦い」を彷彿とさせる「北信濃」の野戦マップや「長篠の戦い」を彷彿とさせる馬防柵が張り巡らされた「三河」の野戦マップ等、歴史好きなら元ネタがわかるものも多く、戦略的にも演出的にも成功している。
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容量の厳しいファミコンゲームの中で、一切の使いまわしをせずにここまでこだわっている例も珍しく、特筆すべき点であると言える。
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後継者の育成や歴史イベントなどの独自要素の導入
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ややもすると単調になりがちなゲーム展開のカンフル剤となっている。特に後継者の育成は、軍事や内政に忙殺されるからと言って怠っていると、せっかく上げた能力が下がっていくのでしっかり行わなければならない。
問題点
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ランダム性が強い
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内政の実行効果等で上下するパラメーターの値にランダム性が強い。同じ条件で実行しても上下する量が2~3倍は変動する事がザラなので、運が悪いと「徴兵」や「災害」等であっという間に国がボロボロになってしまう。
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戦争シーンの難点
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戦争シーンはもっさり気味で、カーソルの動きやウィンドウの表示がもたつくのでかなり時間がかかるものとなっている。
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行動が完了した部隊の色が変わるなどの変化がないのでどの部隊を動かしたのかがわかりづらい。スタートボタンで未行動の部隊にジャンプする事は出来るが…。
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自動戦闘にすれば時間はかからないが、敵とのレベル差があまり考慮されておらず、楽勝できるような勢力相手でも消耗してしまうのでよほどの兵力差がない限りは使わない方がよい。
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この点を逆手に取れば、通常ではまったく歯が立たない高レベルの敵本陣の部隊にも損害を与えられるので、使いようによってはハイリスク・ハイリターンでもある。
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コマンドのキャンセル機能が不完全、部隊が移動した後はキャンセルが利かないのでうっかり攻撃位置を間違えてしまってもやり直しがきかない。
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まだ厳しい初期バランス
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今作もデモ画面では「戦国最強の将、武田信玄」と紹介されるが、信玄のLvは0と最弱なのは前作と変わらず、むしろLv0の領地を最初から二つ持っているおかげで隣接する国が増え、防衛が難しくなっている。
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そして甲斐の国が今川義元(Lv16)と北条氏康(Lv23)という強豪に隣接しているのも前作通り、最序盤でこれらに攻められると死を意味する。
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最悪の場合は国を一つ捨てる事になる。しかし、奪い取られた国のレベルは攻撃した国のレベルにあわされるので前作のように「敵が弱い国を取ったから、兵士が弱くなる」事は無く、結局はジリ貧に陥る。
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また、敵大名が他の敵大名を滅ぼす事も頻繁にある。特に織田信長(Lv54)のような非常にレベルの高い大名が勢力を拡大すると、上記の仕様もあいまってLv54の敵国が増える為に、非常に攻略しづらくなる。
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レベルを上げるには戦争を行うしかないので、レベルが低い内に小大名を滅ぼしてしまった場合は遥かにレベルの高い相手と戦うしかなくなる。レベルが十分に上がるまでは小大名を生かさず殺さず戦を繰り返さなければならない。
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収支バランスが厳しい
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前作に比べるとだいぶんマシにはなったものの普通にプレイするとやはり物資が枯渇してしまう。
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「足軽」は「徴兵」でお金をかけずに集める事が出来るが、引き換えに「石高」「服従度」「裕福度」が下がって収入が減少してしまい、他の兵科は「足軽」に加えて対応する武装を買う必要がある為、軍備を整えるのにはお金と国力がいくらあっても足りない。
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その為、本作では内政値を整えた状態から徴税100%で物資を根こそぎ搾り取り、下がった「服従度」「裕福度」を「農民援助」で補うと結果的にかなりの収入を残す事が出来る。
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「農民援助」はかなりの効果を発揮する為、お金さえあれば「徴兵」で下がったパラメーターも簡単に補える。つまり、システムが調整されても信玄がやる事は国民皆兵(徴兵100%)十公零民(税率100%)と変わりない。
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前作から改悪された部分
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物資の売買の際にかかるお金が数値入力が終わるまで表示されない。さらには数値の入力中は「兵力」と「お金」のウィンドウの切り替えが出来なくなった。
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おかげで金額ギリギリの買い物をする際にオーバーしてしまいがちになり、あらかじめ「お金」や「兵力」の数値を覚えながら計算をする必要がでるようになった。
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前作では数値入力の最中にも必要なお金が常に表示されていた上に、ウィンドウの切り替えも自由だったので煩わしさが増えてしまった
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出兵の際はすべての兵士を部隊に割り振る必要があるが、その際の数値入力が面倒になってしまった。
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前作ではパーセンテージで入力できた上に直前に入力した値が引き継がれる為、細かい操作が不要だった。しかし本作では一つ一つ数値を入力する必要があり、さらには過不足があると入れ直しを求められてしまう。
総評
クソゲーだった前作を劇的に改善する事に成功。各要素もより作りこまれて完成度が高まった。
歴史シミュレーションゲームとしてみても領土経営に加えて戦争や同盟など要素は一通り揃っており、加えて適度にシンプルなので遊びやすい良質なシミュレーションといえるだろう。
今までに『星をみるひと』等のクソゲーばかり発売していたホット・ビィだったが、ここにきてなかなかの力作を生み出した。
しかし、やや運の要素が強い事と、物資の調達やレベル上げ等に見られるこのゲーム特有のクセを知らなければ難易度は高く、万人にお勧めというには今一歩足りない惜しい作品でもある。
また、クソゲーとしてある程度の知名度を持つ前作に比べると本作は知名度が低く、知る人ぞ知るマイナーな作品でもある。
余談
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どういう訳けだか、海外では『Shingen the Ruler』のタイトルで発売している。
最終更新:2024年01月10日 01:59