本記事は2020年6月に内容を見直しました。

逆転裁判4』『逆転裁判5』の記事でも同様の見直しが行われており、過剰な粗探しは現在の記事で行わなくなったことをご理解いただけるようお願いします。


逆転裁判6

【ぎゃくてんさいばんしっくす】

ジャンル 法廷バトル
対応機種 ニンテンドー3DS
発売・開発元 カプコン
発売日 2016年6月9日
定価 5,800円(税抜)
イーカプコン限定版:9,100円(税抜)*1
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 良作
ポイント シリーズ15周年記念作品
シリーズ初の異国が舞台
豊富な過去作のオマージュ描写
前作からやりごたえ急上昇
『4』から続く王泥喜編の集大成
会話テンポ悪め(未読スキップON推奨)
ミステリーとしては粗が目立つ
逆転裁判シリーズリンク


概要

前作『逆転裁判5』から約3年ぶりの続編となる「法廷バトル」の逆転裁判本家シリーズ6作目にしてシリーズ15周年記念作品。シナリオは前作同様、山崎P体制による複数人制作となった(生みの親である巧舟氏は引き続き不在)。
本作では成歩堂龍一と王泥喜法介のダブル主人公となり*2、日本だけでなくシリーズ初となる外国も舞台となる他、旧3部作以来となる元祖ヒロインである「マヨイちゃん」こと綾里真宵の登場と霊媒要素の復活が大きく取り上げられ話題を呼んだ。
初回特典には2本立てのショートストーリーDLC「遊べる!逆転劇場」が付属していた。なお、後日配信の予定は無いと事前アナウンスがされている。


特徴

  • シナリオ
    • 本作は、「倉院の里」の霊媒の源流である「クライン王国」が登場。物語は成歩堂がクラインに到着し、とある殺人事件に巻き込まれることから始まる。エピソードごとに日本とクライン王国で交互に異なる事件が扱われ、最後は一国の未来とある主要人物の運命を変える大きな出来事が描かれる。
    • 舞台の一つとなるクライン王国は過去のある事件の影響で弁護士が存在しない法廷となっている。国民の多くから弁護士は敵とされ「弁護罪」により被告人が有罪にされると弁護士も同時に有罪という異常な法律まで制定されているなど、シリーズの中でも特に四面楚歌な状況となっている。
  • 基本的には前作『5』と同様のシステムとインターフェースであり「ココロスコープ」と「カンガエルート」なども引き継いでいるが、新たなシステムの追加や変更が行われている。
    • 「調べる」コマンドが復活し常時選択できるようになった。
    • 『蘇る逆転』『4』にあったカガク捜査が復活した。
    • 新たな裁判システム「御魂の託宣」の登場。
      • 主に成歩堂パートで登場。新ヒロイン・レイファの能力で「被害者が死の瞬間に映った光景」を映し出す。その映像にレイファがコメントを入れ、映像とコメントの矛盾点を指摘していくもの。映像だけでなく聴覚や嗅覚などの五感の矛盾点も指摘していく。
      • 過去作にも合った映像証拠の発展系ともいえる。
    • なお、「ココロスコープ」は主に王泥喜パートに登場する。特別編では心音側の事情で登場しない。
      • 本作では否定的な見解を向けられることもあるが、前作での実績を根拠に確かな信頼性を確立しており、逆に否定的な見解が一蹴される一幕も。
  • ペナルティゲージがゲージ形式から昔の回数制に戻った。日本では弁護士バッジ、クライン王国では勾玉模様になっており、ペナルティを受けると爆発して減るようになっている。1回のミスで2つ以上のペナルティを受ける場面もある。
  • 新キャラクター
    • クライン王国の王女レイファ
      • 弁護士に縁がないどころか敵視する文化の中で育ち、ナルホド達と交流を持つ中で悩みながら成長していくという今までシリーズにいなかったタイプのキャラクターながらも成長が掘り下げられていく。
      • 担当声優は早見沙織氏*3。託宣前の儀式や決め台詞「控えよ!」もあり、その他のキャラより声を聞く機会は多い。そして早見氏として非常に貴重なのじゃロリキャラである。
    • 本作のライバル検事・ナユタ
      • クライン王国出身ながら世界中で活躍している、「因果を見通す」と豪語する一見優男風の検事。
      • 声は浪川大輔氏が担当。決め台詞「サトラ!」やダイレクトアタック時のお経を読むシーンに専用ボイスがある。
      • その実は弁護人や被告人を頭から見下し、小学生レベルの悪口を吐きまくるギャップの激しいキャラクター(ある人物には「毒舌クソ坊主」と呼ばれる)。
      • ブレイクシーンは、怒りで力を加えすぎ、引きちぎられバラバラになった数珠が、スローモーションで自分の顔にヒットするというコミカルなもの。

評価点

  • 見せ場を多く盛り込んだストーリー
    • 今作は、各話の盛り上がりに特化したシナリオ構成が特徴である。プレイヤーを驚かせるような展開が所々に盛り込まれており、合致したプレイヤーから高い評価を得ることとなった。
      • ただし賛否両論点で後述するように、プレイヤー次第ではそこまで盛り上がらない点に注意。
    • また、第2話は事実上の『逆転裁判4』の第5話、つまり完結編とも呼べる内容となっている。
      • その真犯人についてもシリーズの歴代犯人たちの中でもトップレベルの悪辣・外道さを持つ一方で、そのポジションや性格と本性を露わにした際の不思議なカッコよさとのギャップから人気が高く「逆裁4の裏ボス(真のラスボス)」という意見すらもある程。
    • 本作の中でも、最終話は概ね評価が高い。
    • 最終話は前半と後半で異なる事件が舞台となるのだが、前半ではシリーズ初の「民事裁判」が描かれる。
      • 基本的にやる事はいつもと同じなのだが、これまでありそうでなかった弁護士同士の対決である他、「原告*4」等聞きなれないワードが多く飛び交うなど新鮮味がある。
+ 詳細(ネタバレ注意)
  • 戦いの相手は成歩堂、プレイヤーは王泥喜。つまり、新旧主人公対決が実現する事となる。
    • かつてプレイヤーが見てきた成歩堂の思考がブラックボックスとなり、彼と対峙する恐ろしさが垣間見えるなど、何かと斬新である。
  • ただし、賛否両論点や問題点で後述するようにキャラ描写でのマイナス要素もあり、プレイヤーによっては不満もある点に注意。
  • 最終話後半は、ストーリーの根底を覆す事実が次々と明かされる。ラスボスも強敵として立ちはだかり、反撃不可能な荒業をこなしてくる一方、最後はどんでん返しが待っており、打ち破るカタルシスも大きい。
    • 荒削りな面も指摘されてはいるが、盛り上がりに関してはシリーズ最高クラスの一つに数えられる事も多い。
    • 『4』と『5』ではラスボスが微妙だったと称されることが多いが、本作では人選や言動、犯行計画の周到さなどラスボスに相応しい相手になっている。ついでに愛嬌もある
    • 直接関わっているわけではなく結果的にだが、本作のラスボスの過去の悪行によって王泥喜の家族の運命が狂い、『4』の一連の事件が起こった*5という意味でも因縁深いボスでもある。
  • 歴代プレイヤーへのファンサービス要素。
    • 概要にある通り綾里真宵が久しぶりに登場し物語のキーパーソンとなる。生前の姉・千尋と同じくらいの年齢になり、美しい大人の女性に成長…したのは外見だけで、本質は旧作通りの天真爛漫な少女のままである。
      • 一応年相応に落ち着いてきた面もあり、レイファ姫を諭す場面もある。
    • 宝月茜が刑事役として再登場。本作でやっと念願の科学捜査官になり熱意のある仕事ぶりを見せてくれる。ナユタのせいでかりんとうは健在だが。
      • ちなみに真宵との初共演ということもあってか、PVや一部のアニメムービーでは井上麻里奈氏が担当*6。レイファ・ナユタと違って本編でのボイスが無いのが残念である。
    • 前作『5』から登場した心音が引き続き登場。今回は多くの場面において王泥喜の助手として活躍する他、4話では単独で法廷に挑む事となる。
      • ユガミ検事こと夕神迅も4話の依頼人として登場。心音のパートナーとしても活躍する。ナユタにはっきりと言い返し、ダイレクトアタックも自慢の手刀で迎撃するなど、頼もしいことこの上ない。当然ながら決め台詞「黙りなァ!!」は健在。
    • DLCである特別編では成歩堂&真宵コンビでの捜査、御剣との対決というある種の同窓会のような面構え。
      さらに成歩堂と御剣の幼馴染である矢張政志も登場。やっぱり事件を存分に引っ掻き回してくれる。実は成歩堂、御剣、矢張の3人が法廷で一堂に揃うのはこの特別編が初めて。
    • 王泥喜ととある人物との関係は成歩堂と御剣の関係に似ている、今作に登場するある姉妹の関係が過去作で登場した姉妹と似ているなど、所々の設定に歴代作品に登場したキャラへのセルフオマージュも取り入れられている。
      • また、とある場面では過去作に登場した多くの証拠品が背景として登場している。
  • キャラクター面
    • みぬきのキャラクターが大きく掘り下げられ「夢に向かって努力する頑張り屋」というキャラ付けがされ、親を亡くした際も笑顔でいたことについてなども理由が明かされた。過去作に無い意外な一面も見せるシーンも印象的。
      • 彼女の掘り下げは、本作が『4』の完結編と呼ばれる一因にもなっている。
    • 前作同様、証人や真犯人の強烈さは今作も健在。
      • 3章で呼び出される弁護側の証人は、逆裁を逆裁たらしめるフレーバーに対する最たるタブーとも呼ぶべき存在。しかし、それでも事件は解決するどころか更なる混迷へと向かい、シリーズ経験者が考えていた「○○すれば事件は解決する」という作戦は必ずしも通用しないことを示した。なお、その証人の風貌はギャグの域に突っ込んでおり、シュールな光景に。
      • 4章は心音主体かつ演芸場というニッチな舞台に加え、『2』3章のサーカスに匹敵する曲者揃いの登場人物達が一風変わった笑いを届けてくれる。外れ選択肢には実在する落語の演目にちなんだツッコミが飛んでくるなど落語要素がふんだんにちりばめられており、気になったセリフを調べれば教養が増すかもしれない。
      • 5章前半は証人も真犯人も人気が高い。証人は意外な正体がプレイヤーの心を掴み、人気を獲得。真犯人はほどよくプレイヤーの腹筋を刺激しつつ苛立たせる巧みなヘイト要因となり、小悪党としての魅力が大きい。倒したときの爽快感もひとしお。
    • 他、過去作でも見られた親子などの絆について、今作では特に強く描かれている。
  • 伏線の作りこみはシリーズ随一。
    • 過去の逆転裁判シリーズにもさりげない伏線描写が存在したが、本作は過去作と比べてもかなり多い。どのエピソードにも、事件の真相に関わる伏線が意外なところに隠されている。
      • 前作はネタの減少が難点とされていたが、本作はその反動と言えるかもしれない。
      • 作中で回収される物はもちろんのこと、劇中で説明されない要素も多い。張られた時点で想像も付かない場面から回収される物もあれば、巧妙なミスリードが用意されている物もある。
      • 最終話の作りこみはこの点において凄く丁寧。劇中では説明されていないものの、一枚絵のピンポイントな描写や何の関係も無さそうな背景小物がさりげなくトリックに組み込まれている。2周目をプレイすると、登場人物の言動は初見と違った印象を与える事だろう。
  • アニメムービーの改善。
    • 『5』では特に流すような必要性が無い場面でも流れた事に批判が多かったためか、本作では各シナリオにおいて1~2つ程度、それも各パートの最初と最後くらいに挿入される程度となっている。
    • また、字幕のオンオフが可能になった。
    • アニメに代わる要素としてか、本作では3Dキャラモデルを用いたムービーが多い。
  • 「カンガエルート」のビジュアルが大幅に強化され、さらに迫力と爽快感が増した。
    • 前作同様、間違えてもペナルティが発生しない。このシステムを利用してか、今回はネタ選択肢が増加している。
  • 現場が立体的な構造をしている場合、俯瞰図が途中で3Dモデルに変わり現場で起きたトリックの再現をムービーで行う場面が登場。『4』の棒人間による再現ムービーに近いため、状況が把握しやすい。
  • 他、3Dキャラモデルが手直しされたりとグラフィックの見栄えがさらに良くなっている。

賛否両論点

  • 難易度が高い
    • 本作は、歴代最高クラスだった『2』に匹敵する高い難易度となっている。直後に出た『大逆転裁判2』も難易度が高めだが、本作の方がより厳しい。
      • これは、前作の難易度があまりにも低かったことが一因と思われる。
    • しかし、「ゲームオーバー後にすぐ再開可能」「ペナルティが連発すると相談が可能」という親切仕様は前作と同様なので、極端な形でバランスが取れている。このため、前作とうってかわってやりごたえが向上したことを高評価するプレイヤーは多い。
      • 相談については、オプションでON/OFFの切り替えが可能。
    • ただし、本作の物語では、被告人の有罪判決が弁護士の人生に多大な影響を及ぼす裁判が多い為、過去作以上に一度たりとも有罪判決を受けたくないと思わせる場面が多く、無為なペナルティを避ける心理も働きやすい。決して「やりなおせるから良い」とまでは行かず、プレイヤーによっては十分難点である。
    • 難易度の高さには、滅多に回復しない心証ゲージも影響している。
      • 本作の裁判は3話と特別編を除き、全ての事件が1日で終了する。一回の裁判パートが往来の二日分程続くのだが、合間に探偵パートが入らない限り心証ゲージは回復しないため、長さも相まってミスが積もりゲームオーバーになりやすい。
      • そのくせ 本作の心象ゲージはたった5ポイントしかなく 、前作と違い1回のミスごとに複数のダメージを食らう箇所が多い。後述する「託宣」だけでもゲームオーバーになり得るのに、そこから更に尋問パートに移る点が厳しい。
    • 今回は詰みポイントも散見される。
      • 特に「託宣」の難易度が高い。映像とコメントから見られる情報が全体的に少なく、どこに矛盾があるのか解りにくい事がある。また、別の矛盾を発見しても突っ込みを入れられないことも一話に一つ以上ある。さらにココロスコープと異なり、指摘を間違えれば基本的にペナルティが発生する。特に、第3話法廷1日目は最難関とされる。
      • このほか、5話前半のパズルもヒントが少なく、詰みポイントになり得る。
  • シナリオ面
    • 本作はある意味、見せ場有りきのシナリオと言える。良くも悪くも荒唐無稽なところがあり、合う人はとことん盛り上がる反面、合わない人にはそれほど響かない。
      • 評価点に挙げた最終話も、プレイヤーによっては意外性を通り越して尻すぼみに感じるという意見もある。
    • 逆転裁判シリーズは型破りな作風が特徴の一つであるが、本作はやり過ぎ感も否めない。「弁護罪」「託宣を使った裁判」というイレギュラーな世界観に始まり、2話以降も良く言えば衝撃的、悪く言えば大げさな展開が次々と訪れる。
    • 前作のシナリオも激しいコント要素で人を選ぶ一面があったが、それに通ずるものがある。
    • 特に、その筆頭と言えるのが王泥喜の扱い。後付けであるのは間違いないのだが、それを掘り下げの範疇として許容できるか突飛すぎると許容出来ないか、プレイヤーによって大きく評価が分かれる。
      • この描写は成歩堂の扱いにまでしわ寄せが及び、本作において特に大きい賛否両論点の一つとなっている。
+ ストーリーについて(ネタバレ注意!)
  • 本作の全体的なストーリーは成歩堂ではなく王泥喜に大きく寄っており、さらにこれまで明かされていなかった王泥喜の過去が明かされ、最終話は彼が主役となりエンディングも王泥喜の独立で〆るなど実質的に王泥喜法介の物語の完結編とも呼べる内容となっている。
    • 成歩堂は『5』以上に弟子を見守る師匠としての側面が強くなり、出番は王泥喜と比べて控えめとなっている。
      • タイトルロゴは『5』同様、成歩堂であり1話も成歩堂の視点から始まっているなど成歩堂主体であるかのように思わせていたため*7、この展開には多くのプレイヤーが驚いた。
      • 王泥喜の成長も丁寧に描かれており、最後のラストシーンも王泥喜による「異議あり!」で幕を下ろす。これら王泥喜の活躍は『逆裁4』から王泥喜を見届けたユーザーにとって彼の成長を実感出来たとして評価が非常に高い。
    • しかし、前述の通り成歩堂が主体であるようなマーケティングが行われていたことや、ピンチに陥る場面も多く描かれた事もあってか、成歩堂に思い入れのあるプレイヤーからは批判も少なからず出ており、驚いたというより騙されたというような意見も多い。
      • その一方で、成歩堂の成長を描き切ってしまった以上こういう扱いになるのは仕方なしと肯定的な意見もある。
        また、成歩堂の活躍もしっかりと描かれており、特別編でも主役となるなど、決して扱いがないがしろにされているわけではない。
  • 本作で遂に謎に包まれた王泥喜の生い立ちが明らかになるが、それまでの伏線が全く無くやや唐突に明かされた上に成歩堂と比べて異様なまでに濃い設定である事から「後付け感が強すぎる」という批判も少なくない。もっとも、過去作でも後付けの設定は多くあったし、王泥喜の既存の設定との齟齬が出ないようになっているが。
    • 一方で『4』で軽く触れられていた王泥喜の父が明かされた点などは評価されている。彼の存在は物語においてラスボスを追い詰める重要なキーの1つとして機能しており、扱いは結構大きい。
    • 王泥喜の出生に関して、本人達はまだ知らない事実が1つ残されているのだが、それに関しては将来的に彼らに打ち明けられる事が本作のEDで示唆されている。
  • 大々的に宣伝された真宵も出番は控えめ。とはいえ、物語の重要人物となっており彼女も扱いは悪いとは一概に言えない。加えて、特別編では最後まで出ずっぱりなのでそこまで出番を少なく感じることは無い。それでも不満が出るのは「成歩堂と真宵のコンビが見たい」というシリーズファンの声が製作者側の予想以上に大きかった、そして彼らにそれだけの魅力があったということであろう。
    • ただ、「大々的に宣伝された」うえ、ジャケ絵すらも飾るほどの大がかりなアピールをしておきながらレイファよりも圧倒的に登場回数が少ない。名前自体は最初から出ていたが実際に登場するのが3話で、次に登場するのが最終話の中盤、そして発売してしばらく後で配信された特別編はストーリー本筋からは独立している。また、物語の重要人物といっても第3話・最終話どちらもただ運悪く巻き込まれただけに過ぎず、活躍したところもあったが代役が十分利く役どころであるためストーリーの中心にいたとは言いづらい。
    • ちなみに、特別編は最終話の後の話であるため、最終話より先にプレイされる可能性を考慮してか、ネタバレ防止のため王泥喜の存在は成歩堂の台詞で僅かに出る程度に留まっている。
    • これから『6』を遊ぶプレイヤーで、DLCの購入も検討しているという方は、最終話より前に特別編を遊ぶと問題が緩和されるかもしれない。ただし現在は有料。
  • このほか、霊媒に関して新たに付け加えられた設定に対し、後付け感が強いと見るユーザーも少なくはない。
  • テキスト面
    • 前作同様、巧舟氏は本作に関わっていない。巧氏の味があるテキストが好きなプレイヤーからは、ナンバリング不参加が決定づけられたことで残念がる声もある。
    • ナンバリングが『6』まで出ている2020年現在、逆転裁判シリーズの古参ファンの中には、「『5』『6』は別物」とみなすユーザーも多い。
    • 巧氏はナンバリング作品の裏で『大逆転裁判シリーズ』を担当しており、2013年~2017年は「生みの親不在の本編」と「生みの親が担当した外伝」が同時進行でコンテンツ展開される事となった。
  • クライン王国の法曹関係者・レイファとナユタ
    • 本作の主要キャラクターでありながら、好き嫌いが分かれる。
    • 二人とも、ゲーム終盤以外は周囲の人物に対して傲慢な態度を取っており、人によっては不快感を催す要因となる。
      • ただしキャラ付けの一環とも取れるので、プレイヤー次第では許容できるラインにもなる。
    • レイファは(ナルホドとの)交流の積み重ねが丁寧であるがゆえに、最終話で初対面のオドロキにあっさり打ち解けることに違和感があるというプレイヤーも居る。
      • 託宣の際毎回ムービーとボイス付きで再生される彼女の舞いはスキップできるとは言えテンポが悪く、必要性も疑問。
      • また、彼女がパニックに陥り過呼吸のような症状を訴えるシーンがあるのだが、あまりに『5』と同じでありワンパターンすぎるという声も。
    • ナユタは止むに止まれぬ事情があり検事をしているはずなのだが、その辺のフォローが少ない。
      • 彼の生い立ち・背景を抜きにして見る、というよりも諸々の事情が明かされるまでは上述の要素から単に腹立たしい相手に過ぎないため、相手の主張を突き崩した時の爽快感は中々の物。ご丁寧に毎回証人のブレイクに先駆けて絶叫と共に検事としてはダントツに派手なブレイクモーションも見せてくれるので、立ちはだかる敵として倒し甲斐はある。
      • ただしその他の場面においては、主張を突き崩されても論点ずらし・人格攻撃などを続け飄々とした態度は揺るがないシーンがほとんどで、ブレイクモーションだけでは溜飲が下がらないというプレイヤーと二分されている。
      • また、世界中で活躍しているという設定の割には裁判の進め方があまりに"クライン流"すぎる。世界中で大量に冤罪を生み出していることになってしまう*8
    • 劇中ではこの二人によって冤罪被害者が出ている可能性もあり、死刑判決が頻繁に行われている描写もある。にもかかわらず、終盤では救済対象のような立ち位置で描かれることもあり、キャラ付けと関係なく許容できないプレイヤーもいる。
      • 一応、レイファが死者を出していないだろうことはさりげなく示唆されている*9のだが、直接言及されるわけではないので分かりづらい。
    • 特に、最終話はこの2人がストーリーの軸となるため、感情移入ができるかどうかでシナリオの良し悪しは大きく変化するだろう。
  • 歴代に比べ少ない調査パートの数
    • 探偵パートの回数が歴代に比べ半分近くに減っており後述の綾里真宵との調査はDLCのみという不遇となっている。
    • また一つのマップに対しての調査する回数も一回きりが多く、同じマップを違う時に見てまた違う掛け合いを見る事ができるというのも逆転裁判の楽しみ方の一つであり、それを重視していたファンからは不評でもある。
    • その反面、調査を終わらせて早く法廷パートに移れるといった面もある。
  • 良くも悪くも「変わっていない」キャラクター達
    • 初登場時17歳だった真宵は28、8歳だった春美は18となっているが、顔立ちなどの容姿についてはおおむね年相応に成長した姿を見ることができる*10一方で、内面的には『1』~『3』時代に出てきた時とほとんど変わらず、真宵は相変わらず好奇心旺盛で前のめりだし、春美は相変わらず世間知らずで真面目だが子供っぽい。言い換えれば、真宵は十代後半の女子高生のような性格のままで、春美は小学生のような天真爛漫な性格のまま。
    • 久しぶりの登場ということでキャラクターとして違和感を出す訳にはいかなかったということも察せるが、比較的落ち着いた性格である成歩堂らと比べて年齢とのギャップが大きく感じられる場面も。

問題点

  • 弁護側に対する傍聴人の酷い悪口
    • 本作は傍聴人がヤジを飛ばすシーンが多く、プレイヤーに不快感を与えている。そのうえ、一部を除いてストーリー上の必然性が薄い。
    • クライン王国だけであればまだ話が分かるのだが、日本でも同様の扱いである。
      • クライン王国での描写は逆境として描いた事がスタッフから語られている。しかし、観衆が改心して応援するなどの描写がなく、マイナス面ばかりが強く残る結果に。
  • 会話のテンポが全体的に悪い。
    • キャラクターのアクションに凝り過ぎるあまり、アニメーションが全体的に長め。
    • よりによって1話が一番テンポが悪い。証言者のポットディーノが証言する度に楽器の音に合わせて歌うかのように喋るためである。
      • 今回はゲーム開始時から「未読スキップ」が可能になっており、これをONにしていれば問題なくプレイできるのだが、それについての説明はゲーム中で一切無く、不親切さが否めない。
      • それを認知していたとしても、テキストをじっくり読みたいプレイヤーからすれば、未読ONを強制されるのは問題である。
    • DLCで配信された「時を越える逆転」も同様の指摘が多い。被告人の雫、その夫である来人ともに、台詞の間に2~3秒程度のモーションを頻繁に挟むため会話が止まりやすい。
      • 汎用会話しか用意されていない証拠品を「つきつける」と、上記のモーションをいちいち見せられる。そのため、諸要素を全部調べて遊びたいプレイヤーにとっては厄介この上ない。
      • こちらは未読スキップをONにしてもカット不可能。
  • シーンの回想が過剰に多く、テンポを悪くしている。
    • いくら重要シーンだったり伏線の説明だったりするとは言え、プレイ時間で言えばせいぜい10分程度しか経っていないシーン、明らかに印象に残る決め台詞のシーンなど、存在意義の疑われる回想シーンも多い。
      • 全体的に安易な使用が目立ち、「その時点では重要だと思われていなかったが、実は非常に重大な伏線だった」というパターンも一応存在するが数は少ない。ちょっとした感動シーンにもすぐ使われるため、演出がやや陳腐化してしまっている。
  • クライン王国の関係者を始めとする、キャラクター描写の説明不足。
    • 過去作でも、『2』の御剣や『3』の黒幕やラスボスの行動などで描写不足が指摘されていたが、本作はそれが多め。
      • キャラクターの好き嫌いが生まれる要因には、こうしたフォロー不足も挙げられる。
    • 最終話では各キャラクターの背景事情が明かされるのだが、行動の一つ一つを裏付ける要因としては弱く、プレイヤー間で疑問・考察が紛糾する事となった。
      • 一部のキャラクターの行動は「大切な人を人質に取られていたから」で大雑把に片づけられている。しかし、これだけで全ての行動を自然に受け入れるのは無理があり、説明しきれているとは言い難い。
    • 第3話の真犯人は悲劇的な人物として描かれているのだが、その為に採った行動を考えると褒められたものではない。にもかかわらず、フォロー不十分のまま悲劇の人物としたうえで話が進む*11ため、同情できるプレイヤーと同情できないプレイヤーで感想が分かれる。
    • このほか、民事裁判における人物の行動も「もっとできる事があったのではないか」と思わせる一面があり、フォロー不足の例として挙げられる。
  • 本格的に形骸化したサイコロック。
    • 難易度低下や作業感は前作でも指摘されていたが悪化しており、ほぼ会話パートに過剰な演出を付けただけの状態になってしまっている。
  • 謎解きの完成度について
    • 本作は、ミステリー志向のプレイヤーから「ムジュンに気づいても指摘できない」という批判の声が挙がっている。
    • 『5』の記事にもある通り、逆転裁判シリーズはストーリーやギミックを重視して楽しむ層もおり、プレイヤーによっては気にならない要素である。しかし、本作におけるミステリー面の粗は過去作と比べて明らかに多く、見過ごせる問題とは言い難い。

例を挙げると……

  • 第1話では最終的な死因は後頭部の打撲とあるが、霊媒ビジョンの映像では前から殴ろうとしている。遺体の写真も後頭部より出血しているにもかかわらずその点を指摘できない。
  • 第4話の終盤では警察のとんでもなく杜撰な捜査が裁判の決め手となる。シリーズではこれまでも杜撰な捜査の描写はあったが、この事件では重要なポイントとなるために悪くも目立ちやすい。
    • そもそも第4話に至っては時間が無かったため捜査どころか被告人の話を聞く機会すらなく裁判に臨むことになっている*12。だが、いくらシナリオの都合とはいえ被告人が酔っぱらって法廷でも重要な証言をしなかったがために弁護人が追い詰められる羽目になっており、クリア後に振り返て見ると実は守るべき相手のために苦しめられていたという状態だったことが判明する。法廷で追い詰められた際にある人物に依頼人との関係性について叱責を受ける篤い展開があるのだが、これでは台無しである*13
  • 5話前半ではシリーズとしては珍しい民事裁判で争うことになるが、要点を挙げると。
    • 「クライン王国の重大な秘密に関わる遺物をある人物が所持している」「黒幕サイドの息のかかった人物がそれ狙っており、実際に現れる」「黒幕の刺客は遺物について『本来自分の持ち物であり、かつて盗まれた物である』と主張」「証拠として一年前に正式に受理された盗難届*14を所持している」
    • 結果として、着地点がみつからないので法廷にてどちらが正しいか争うこととなる。メタ的な視点込みで言えば当然ながらこの刺客は嘘を吐いている事になるが、それを証明するには一年も前に受理された本物の盗難届が障害であり一つの大きなポイントとなる。
    • では、どう解決するのか?結論から言えば何もしない。何故ならこれ以降盗難届が話題に出ることはないからである。
  • このほかにも、雑な論証のまま審理が進むシーンが散見されている。例えば、第1話ラストの論証は真犯人の決め手とは言い難い内容なのに、犯人が自白してしまう。
  • また、第2話のセリの移動、第4話のメモ書きの用紙の出所、最終話で真犯人が用意した衣装など、説明不足な箇所も多い。
  • 先述の通り、託宣も正しい順序でムジュンを指摘しなければ、たとえ不自然な部分を指摘してもペナルティを被ってしまう。
  • 難易度が高いとされる本作だが、ミステリーが得意なプレイヤーであれば事件の真相を推察できてしまい、「シリーズの中でも簡単」と評する声もある。
    • 総じてトリック自体は概ね単純、ただし正解として想定されている部分を指摘するという「ゲームとしての難易度」が高い。
  • 同じく高難易度だった『2』もトリックの雑さが指摘されており、難易度を急上昇させたことで弊害が生まれたものと思われる。
    • ただし、『2』はトリック面で難を指摘されているのに対し、本作は主に論証の方に問題が生じている。プレイに支障をきたす要素があまりない『2』に対し、本作は余計なペナルティを誘発させる場面も多いので、同列には扱えない。
  • 旧3DSでプレイしていると、探偵パートで処理落ちすることがある。
    • 2話のステージ、クライン王国での謁見シーンといったポリゴン数の多いシーンで顕著。
    • 前作『5』と比較すると、探偵パートのUIで動作が遅く*15感じたり、会話終了後に選択肢が出現するまで少し時間がかかることも。これらはNewでも起こる。

総評

『5』に続く、検事スタッフが送り出したナンバリングタイトル第2弾。
前作の難点であった「ネタの減少」「難易度の低下」といった部分にもフォローが入り、やりごたえのある一作となった。

荒削りな部分も多く、手放しで評価されているとは言い難いものの、カタルシス満載のストーリーは1話1話に盛り込まれた楽しさを存分に味わう事ができる。特に最終話の盛り上がりは屈指の出来栄えと評されており、ユーザーからの不安が大きかった新章・王泥喜編は有終の美を飾った。
その反響は、それまで停滞していた『逆転裁判4』の他機種移植が行われたことからもうかがえるだろう。

本作をもって、『4』~『6』は1つのシリーズとして区切りを迎えた。物議を醸した『4』から始まり、『5』『6』も(タクシュー降板も相まって)『3』以前のユーザーから好みが分かれがちなシリーズではあるが、1つの作品としては整っており、根強いファンも多い。
これから遊ぶユーザーは、様々な面で『3』以前とは別物であることを頭に入れておくと良いかもしれない。


余談

  • ある証人のブレイクモーションにまつわる小ネタ
    + ...
  • 本作のとある証人は、ラジコンヘリを通じた通信で登場する。しかし、ブレイク時には爆発し、墜落。
    • これ自体は何の変哲もないシーンなのだが、見方を変えると「とうとう逆転裁判シリーズでもカプコンヘリ*16が墜落した」という事になり、少し話題になった。
    • たとえADVでもジンクスからは逃れられないのだろうか。全くの余談だが、1年後の『大逆転裁判2』ではガス気球が墜落している。
  • 『6』発売の約1週間後の2016年6月15日、シリーズ初の児童向けノベライズ『逆転裁判 逆転アイドル』が刊行された。
    • レーベルは角川つばさ文庫。作者は『星のカービィシリーズ』でおなじみの高瀬美恵氏であり、内容は完全オリジナルストーリー。
    • ただし、内容は『6』というより『5』のノベライズに近い。
    • 2017年2月には、続編『逆転裁判 逆転空港』が刊行された。
  • 本作の登場人物の1人である旋風亭風子(せんぷうていぷーこ)は、その極めて個性的なキャラクターから海外で人気が高く、一種のネットミームにまでなっている。詳細はこの動画を参照(ネタバレ注意)。
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最終更新:2024年04月16日 10:21

*1 ソフト本体の他、ドラマCDを始めとするグッズ類を同梱。グッズのみの単品版も販売された。

*2 それを示すかのように「6」のロゴの色やカードのラベルシールでは成歩堂の青と王泥喜の赤が混ざったかのような紫色となっている。

*3 2018年のアニメ版『逆転裁判』でも別のキャラクターを担当。

*4 一言で表すと「裁判を起こす側」。普段描かれる刑事裁判では検察が原告に相当する。

*5 仮にラスボスが過去で事件を起こさなければ、『4』における事件の数々は登場人物が揃わないことで成立しなくなってしまう。

*6 これまで以前は真宵との兼ね役であった花村玲美氏がボイスを担当していた。

*7 発売決定当時に発表されたビジュアルも成歩堂とレイファの2人のみであり、王泥喜の出演自体が途中まで伏せられていた。

*8 特に第二話では警察が穏便に済ませようとしていた所に無理して突っ込んでいるので余計に問題がある

*9 最終話でとある場所を調べると、法務大臣の怠惰によりクラインでは長期に渡って死刑が執行されていない事が示されている。ナユタに関しては上述の通り国外での活躍がある。

*10 春美は高校生になっても140cmのちんちくりんという設定だが。

*11 補足しておくと、真犯人がかばった人間については完全な被害者なので、悲劇的な事件というのは間違っていない。また、真犯人が謝罪する描写は一応描かれている。

*12 そのため法廷パートしかないのだが、こちらは探偵パートを挟んでしまうと決定的な証拠がすぐ露見しかねない状態になっているからと言う可能性が高い。

*13 自身が犯人扱いされたショックでヤケ酒をしてしまったのが酔った原因なのだが、無実が証明されて仕事に戻った後も仕事前に酔っぱらっていたので、これではフォローにならない。

*14 司法の専門家である王泥喜等もそれが本物であると断言している。

*15 特に目的地移動を開いている時が体感しやすい

*16 カプコンのゲーム作品は、頻繁にヘリコプターが墜落することで知られている。『バイオハザード』シリーズなどが有名。