この項目では『Dying Light』と、完全版である『Dying Light: The Following Enhanced Edition』を紹介しています。なお、判定は共に良作です。



Dying Light

【だいいんぐ らいと】

ジャンル サバイバルホラー

対応機種 プレイステーション4
Xbox One
Windows
Linux
発売元 海外CS機版:Warner Bros. Interactive Entertainment
Win版:Techland Publishing*1
国内CS機版:ワーナーエンターテイメントジャパン
開発元 Techland
発売日 海外:2015年1月27日
国内:2015年4月16日
定価 パッケージ版:7600円(税別)
ダウンロード版:7100円(税抜)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 良作

概要

『Dead Island』や西部劇FPS『Call of Juarez (コール・オブ・ファレス)』シリーズなどで知られるポーランドのデベロッパー、Techlandが手掛けたオープンワールド型のサバイバルホラーアクションゲーム。
パルクールを移動システムに取り入れており、広大な都市型フィールドを立体的に駆け回るアクションが最大の特徴。
全世界における50以上のアワードで受賞あるいはノミネートされ、累計320万本を売り上げる大ヒットとなった。
特に北米・イギリス・オーストラリアなどのソフトウェアチャートでは1位を獲得している。

ストーリー

中東の海沿いに位置する都市、ハラン。
謎のウイルスの流出によりゾンビパニックが発生したこの街が外界から遮断されて2ヶ月が経過していた。
主人公である傭兵カイル・クレインは、世界救援活動会(GRE)からある任務を託され、潜入捜査のため街に降下する。
生存者が身を寄せる「タワー」に正体を隠して溶け込みつつ、任務遂行のため荒廃した街を奔走するクレインだったが…。

特徴

基本的なゲームシステム

  • 操作画面は一人称視点。三人称視点への切り替えは不可能。
  • メインクエストとサイドクエストからなるクエストクリア方式。クエストクリアで経験値や金が手に入る。
  • 3種類のレベルが存在し、それぞれ経験値を貯めてレベルアップすることで様々なスキルが取得可能になる。
    • サバイバーランク:クエストクリア、生存者救出、物資回収、協力プレイ時の他者回復などで上昇。死亡すると経験値(サバイバーポイント)が引かれてしまう。
    • スピードレベル:パルクールアクション、強敵からの逃走成功等で上昇。
    • パワーレベル:敵の殺害で上昇。

硬派な作風

  • 全編通してシリアスなストーリー展開が多め。任務と仲間との間で苦悩する主人公、極限状態での人間模様、親友の死等。
    • 息抜きとしてか、武器の名前やフレーバーテキストにはハジけたものが多い。NPCにもコミカルな変人がいるなど、シリアス一辺倒ではない。
  • ゾンビを中心に登場する敵は基本的に固い。攻撃にはスタミナ制限もあるため、最低難易度だろうとサクサク倒すことはできない。
  • 近接武器には使用制限があり、使い続けると破損して攻撃能力がほぼ失われてしまう。修理はできるが、その回数は武器ごとに限られている。
  • むやみに音を立てると強敵を引き寄せるため、銃器や手りゅう弾は使い所に注意が必要。自然と近接戦闘が主体となる。
  • レベルアップに伴い使えるようになるスキルの大半は、使いこなせて初めて真価を発揮する。素早いボタン入力や若干複雑な入力を求められることも多い。
  • 死亡ペナルティが存在する。死亡するとサバイバーポイントがごっそり減ってしまう。

舞台設定

  • 舞台となるハランには主人公以外にも多くの生存者がいる。
    • 彼らの頼みを聞くことで大抵はサイドクエストが発生する。目的を果たせばサバイバーポイントやアイテムなどを獲得できる。
    • ランダムで市民がゾンビや悪人に襲われているイベントが発生することもあり、そういった人間を助けることでもサバイバーポイントを獲得できる。
  • 世界救援活動会(GRE)による救援物資の投下もランダムで発生する。
    • それを回収して仲間に渡すことでサバイバーポイントが獲得でき、より多くこなせば強力な武器が販売されたりする。
    • 投下物資は敵対組織の人間も狙っており一筋縄ではいかない。敵を倒して奪う、時間帯を考慮して収集する、とにかく急いで先取するなど戦略が必要になる。
    • 完全に無視して1つも回収しなくとも特に問題はない。全てプレイヤーのプレイスタイルに委ねられている。
    • ストーリーが進むと救援物資の投下は行われなくなるが、隔離区域の調査クエストで救援物資を獲得できるためサバイバーランクを上げられなくなることはない。

パルクール要素

  • 前述のように敵が全体的に固いため、装備が整っていない限りは不要な戦闘を避ける必要がある。そのためにパルクール移動が役立つ。
  • 建物のヘリや電柱に掴まって高所に上ることが可能。通常のゾンビは高所に上れない為、高所から高所へ渡り歩くのが基本となる。
  • 掴まることのできる箇所は十分に設定されており、様々なルート取りが可能。敵に囲まれても素早く高所に駆け上がればピンチを脱することが出来る。
  • 1つ操作を誤れば転落死してしまうような危険な高所を進まなければならない場合もある。
  • 中には主人公と同様に建物に上って追いかけてくる強敵もいる。

昼夜の概念

  • 昼パートと夜パートに分かれており、夜パートでは、主人公を見つけると高速で追いかけてくる非常に危険な敵が出現する。
  • 夜パートでの行動は危険な一方で、昼と比べると各種経験値が多く手に入る。
  • 夜パートでなければ回収ができないアイテムや進行しないクエストも存在する。

マップ構造とセーフハウス

  • 複数のオープンワールドマップからなる。前半は比較的低い建物が多い初心者向けの貧民街マップ、後半は高い建物が多く強敵も多い旧市街マップ。
  • マップ内にはセーフハウスと呼ばれる安全地帯があり、敵に追われていてもそこへ逃げ込めば助かる。
  • セーフハウス内にはアイテムを収納できるボックスや安全に時間を過ごせるベッドもある。夜間を安全地帯で寝て過ごすには必須。
  • セーフハウスは当初は敵に占拠されている場合が多く、敵を一掃し電源を起動して多くのセーフハウスを解放しておけば、探索・戦闘面で戦略的に優位に立てる。

クラフト

  • 武器の多くは設計図と材料を元にクラフトして作製する。
  • 純粋に威力を高める他にも、火・電気・毒などの属性を付与することが出来る。
  • 前述のように武器の多くは使用制限が存在するため、十分な製作材料の確保は重要であり、その多くは家屋の棚や箱から回収する。倒した敵からも取得可能。

オンライン要素

  • 協力プレイ:最大4人で可能な協力プレイ。
    • メイン・サイドクエスト関係なく、ホストのクエストを共に進めることができる。
    • クエスト進行に伴うイベントの際は参加者全員が同じ場所にいる必要があるが、ワンボタン移動機能でどこからでもイベント地点に即移動が可能。
    • そのためクエストを完全に他人任せにして進めたり、他のプレイヤーとは全く別の場所に行ったりすることもできる。
  • 侵入プレイ:ナイトハンターなる高機動型ゾンビとなって他のプレイヤーを襲うことが出来る敵対プレイ。
    • 協力プレイ中のセッションに侵入できるため、最大で5人のマッチングが可能。
    • 夜の闇や高所からの飛び降りを物ともしないナイトハンターの強靭さや操作感は、シングルプレイでは味わえない。

評価点

リアリティとアクション性の両立

  • ゾンビはサクサクと倒せる雑魚敵ではなく、タフで手強い。単体ならばともかく群れを完全に壊滅させる無双プレイは難しい点でリアリティがある。
  • 一方でプレイヤー操作による爽快感や楽しさは主に移動面に集約されており、アクションゲームとしてのカタルシスは失われてはいない。
  • ゾンビ映画によくある「大量のゾンビの目前を通りつつ経路を確保する」スリルを滑らかなアクションと融合して精錬したゲーム性は、ありそうでなかったタイプ。
  • 現在地から目的地まで移動すること自体がアトラクションとして成立しており、時には建物の上からゾンビを蹴り落とし、しつこい追跡はゴミ捨て場にダイブして振り切り、大群に包囲されても逆に踏み台にして活路を見出す。紙一重で拠点に滑り込めば言い知れぬ達成感と安堵感を得られるだろう。

臨場感溢れるホラー演出と手に汗握るプレイ感覚

  • 街に一歩出れば、遠方から哀れな犠牲者の断末魔やゾンビの唸り声が聞こえてくる。この状況の中を一人称視点でサバイバルするのは臨場感抜群。
  • 誤って大きな音を立ててしまうと、プレイヤーに狙いを定めたかのように叫び声が街中にこだまし、強敵「バイラル」が出現し延々と追いかけてくる。
  • 高所で待ち構えていても背後から素早く上って急襲してくることもあり、気を抜くことはできない。
  • それらを迎え撃ったり、パルクールで逃げ回ったりといったアクションは白熱し、文字通り手に汗握るプレイ感覚をもたらしている。
  • 夜パートになるとそれはさらに増す。醜悪な変異体「ボラタイル」との"生きるか死ぬかの追いかけっこ"は、夜の本能的恐怖と相俟って心臓に悪いほど。
    • 夜間は電柱やかがり火などの僅かな灯りとプレイヤーが持つ懐中電灯しか光源がない。ボラタイルに加え、ゾンビも夜間はより攻撃的になる。真っ暗で何も見えずどこから襲われるか分からない夜の街は本当に恐ろしい。
  • 通常のゾンビ「バイター」も中々厄介で、個体によっては小走り程度のスピードで近寄ってくるため、気を抜くといつの間にか近付かれて奇襲を受ける事も多々ある。
  • 実際に自身の命を懸けているかのような臨場感溢れるホラー要素のおかげで、目的地間の道中がダレにくい。

高い自由度

  • オープンワールド、フリーローミング制を採用しているゲームの常で、いつどこで何をするかはプレイヤーに委ねられている。
    • ミッションの受注タイミングは任意。受けてから放っておいても失敗するミッションはなく、準備の時間は好きなだけ取れる。
    • 戦闘を強制される場面はミッション以外ではほぼなく、鍛錬・稼ぎのためのゾンビ狩りは任意に始めて任意に切り上げることができる。パルクールの自主トレや物資集めも同様。
  • 後半の「旧市街」マップを解放するにはストーリーを進める必要があるが、前半の舞台となる「スラム」は序盤から制限なく探索できる。土地鑑を付けるために駆け回るもよし、ストーリーを無視してコレクション品の収集に励むもよし。
  • 敵が強化される夜間の行動は獲得EXPが増すため、プレイヤーの判断でリスクと引き換えの成長ブーストを得ることもできる。昼夜はベッドで眠ることで切り替え可能で、ずっと夜間の自主ハードモードで遊ぶこともできる。

二面性を持つパルクール要素とそれに合わせた足場設計

  • パルクール要素は、環境を利用しながらスピーディーに駆け回る楽しさと、危険な箇所をルートを考えつつ慎重に進む楽しさという対照的な特徴を持っており、そのままアクション面の幅広さに直結している。
  • パルクール要素の導入によって生まれた縦横無尽な「移動の楽しさ」は、広大なオープンワールドと非常に相性がいい。
  • 咄嗟の判断でも安全なルートを柔軟に開拓できるよう、充実したマップの作り込みがなされている*2

探索の楽しさと快適なローディングが両立したレベルデザイン

  • 各マップは広すぎず狭すぎない絶妙な大きさ。市街地がメインであるため多くの建物が立ち並び、ロード無しで中に入れる建物も多い。
  • 普通の民家程度ならローディングを挟むこともなくシームレスに出入りでき、探索することで色々なアイテムを入手できる。
  • マンションや地下駐車場などの大きなエリアはローディングが入るが、その分結構な広さがありクエストに絡むことも多い。

フックショットによるアクション面の拡充

  • サバイバーランクがある程度上がると、スキルとして「引っ掛けフック」が取得可能になる。
  • いわゆるフックショットで、これを用いれば建物の屋上に一瞬で移動したり逆に屋上から地面に安全に移動したりと、よりダイナミックな移動が可能。
  • 射程も思った以上に広く、単なる移動手段としても非常に有用。
  • パルクールと組み合わせることでアクション面がより爽快かつ快適になる。パルクールのみの移動とは一味も二味も違うプレイスタイルを味わえる。
  • 「引っ掛けフック」自体は通常はゲーム中盤以降の解禁となり、クールタイム等の制限もある。そのためパルクール要素を食っておらず、上手に共存している。

オンラインプレイの熱さ

  • オンラインのマッチング制限は細かに設定可能。協力プレイのみ可能にしたり、ナイトハンターの侵入頻度を調整したりと好みの設定が効く。
  • 硬派な作風だけに、協力プレイの仲間意識やサバイバル感は自ずと高まる。
    • 強力な武器を譲ったり、一方が敵の攻撃を引き付けている内にもう一方が鍵開けをしたりと、協力関係を育むアクションゲーム的な土壌が出来ている。
    • 他のプレイヤーを蘇生させたり回復させたりすることでサバイバーポイントも得られるため、システム的な面でも協力関係はお互いのメリットになる。
    • イベント進行を考慮したワンボタン移動機能のおかげで、迷ってしまったり他の場所に居たとしても足を引っ張る・引っ張られることが起こりにくい。
    • メイン・サイド関係なく協力プレイが出来るため、ライトゲーマーでも高難度プレイに挑戦しやすい。
  • 非対称型PvPであるナイトハンターの侵入は、オフラインプレイに無い緊張感をもたらしている。
    • 1対1では強靭なナイトハンターに分があるものの、協力プレイのマッチングもリアルタイムで受け付けるため、途中で人間側の増員により2vs1や3vs1になって逆転できたりする。こういった即興的に変わりゆくプレイドラマが熱い。
    • 武器耐久値など、普段は有限なものでもナイトハンターの侵入中は無限となる。プレイヤースキルに自信が無くとも、大胆かつ開放的に楽しむことができる。

その他

  • グラフィックの美しさは最高峰レベル。夕暮れ時の沈む太陽や、夜を乗り切った後の朝日などの光源処理も秀逸。
    • ゲームエンジンにはTechland自社製の「Chrome Engine 6」が使われており、同エンジンの初採用作でもある*3
  • 未取得のスキルでもどんなアクションなのか確かめることができるプレビュー機能が地味に便利。
  • 倒した敵からアイテムを回収していない状態で死体が消えても、未回収のアイテムだけはその場に残る。こちらも地味に嬉しい要素。

問題点

パルクールの操作性

  • 掴まれる箇所を目標に選びジャンプすると、主人公がその場所を「自動で」掴んでくれるのが本作のシステム。
  • しかし掴める場所にも拘わらず、目線(一人称カメラ)が若干ズレているだけで掴み判定が出ず、転落死してしまうことがままある。
  • プレイヤーの純粋なミスによる転落死とは違い、システム的な融通の利かなさによる転落死は歯がゆさが残る。死亡時にデメリットが発生するためなおさら。
  • 引っ掛けフックが引っかかったにもかかわらず、掴んでくれなかったが故の転落ダメージと死亡が意外に多く、フックショットによる移動の爽快感を減少させてしまっている。
  • あまり想定していないのか、上る動作に比べると下る動作が非常にしにくい。鉄塔などの登攀時にルート取りを誤った際のリカバリーが困難。
  • 一部のスキルを開放するとパルクール能力が強化される一方で、ボタン入力による致命的ミスも起こりやすくなり、直感的なアクションがしにくくなる。
    • その最たる原因が、横や後方にジャンプして攻撃を回避するアクティブスキルの「ドッジ」で、移動時に小さく横や後方へジャンプしようとした際に暴発して転落、ということが起こり易い。
      • このスキルは「飛び越し」「ドロップキック」「スライディング」を習得するための必須スキルであるため、これだけ避けて習得ということができないのも厄介な点。
  • 鉄塔の送電回路や街中の電柱などは、同じオブジェクトでも掴まれるものとそうでないものが混在しており、しかも見分けにくい。

「移動」をフィーチャーした故の弊害

  • 異なるマップ同士のファストトラベルは可能だが同一マップ内のファストトラベル機能が無いため、同じ場所を何度も往復することになる。
  • イベント戦以外では死亡するとセーフゾーンからやり直しになるため、大分離れた場所から再び目的地へ向かわねばならないこともあり、面倒。
  • 移動の面倒さに加えてプレイヤーの意志が介在する余地が無いこともあり、サイドクエストのお使い感がかなり強い。

走るゾンビ「バイラル」の湧き仕様

  • バイラルは「変異してから日が浅く、身体能力が失われていない感染者」という設定の敵。凶暴化の影響か、身体能力は失っていないどころかむしろ強化されており、足が速く壁も登ってくる厄介な相手。聴覚も鋭く、「発砲などで大きな音を立てると追跡してくる」という設定になっている。
  • プレイヤーの行動だけでなく、敵の発砲と攻撃による爆発などでも出現フラグが立つのが問題。後半の旧市街マップへ移動すると、プレイヤーが一発も撃たなくても頻繁に湧く。また、ストーリーが進んだりレベルを上げるとランダム湧きなども増え、さらに出現頻度が上がる。
  • 頭を踏み砕く「ストンプ」などの一撃で殺せるスキルを覚えれば脅威度は大きく下がり、フックショット入手後なら素早く距離を取って撒いてしまうことも難しくないが、出現前に響き渡る絶叫をしょっちゅう聞かされるのは嬉しいものではない。
  • 何より銃や爆発物を使うと敵が増えるため、特に機動力も低い序盤にこれらのアイテムを使っても大抵は状況が悪化するだけであり爽快感を殺ぐ仕様であるため、不満の声は多い。

アイテム・製作関連の問題

  • 改造武器や回復薬のみならず様々なアイテムを制作できるが、使い勝手の良いものは一握りしかない。特に攻撃系アイテムは、片手武器・弓・火炎瓶・(製作可能になるのはほぼ終盤になるがサイレンサー機能の付いた)銃・(銃で武装した敵用に)シールドがあれば充分と言える。
    • 両手武器は一撃の威力こそ高く範囲もそこそこ広いものの、動作が遅く一度に消費するスタミナが多くて使い辛い。
    • 手裏剣や投げナイフ、投げ斧は、使い捨てなのに頭に当てても一発キルが難しい上に、人間の敵相手に正面から使うとほぼ弾かれてしまう。攻撃力を2倍に出来るスキルがあり、多く手に入れ易いのが救いか。
    • 手榴弾などの爆発物は、種類こそ多いが近隣の敵を集めてしまうため使い勝手がイマイチ。出現する敵の数が決まっているストーリーミッションではそこそこ有用。
      • 製作できる手裏剣及び爆発物には、属性を付与できるものがある。特に、一部の強敵を除いた敵の動きを一定時間止められる「凍結」は利便性が比較的高い。
  • アイテムの種類が多いため、製作時もリストから探す手間を食う。種類ごとのフィルタリングはできるが、製作ホットキーの設定などはできない。
  • 消耗品の製作をまとめて行えないのも地味に面倒な点。
  • 製作素材も多いが、作る物は限られているので在庫が偏る。素材の種類を減らし、1つの素材の使途を増やして欲しいところである。
  • 改造武器により付与できる属性のほとんどが、発動させた敵に接近しているとプレイヤー自身もダメージを受けてしまうのが困りもの。

その他

  • メインクエストは同世代のゲーム群と比較するとやや短めで、サイドクエストも数は多くない。ストーリーも意外性や独創性に欠けるとの評価が多い。
    • 「味方が暴走してそのフォローに奔走する」「非道な悪党に目的のためやむなく従う」「クライマックスで現実とは一変した精神世界に飛び込む」といった、よくある展開が多く見られる。
    • シリアス志向の近年のゲームには定番の展開ではあるが、ベタにやりすぎの感はある。
    • FARCRY』シリーズのプレイヤーなら、特に既視感が強いかも知れない。参考作品なのか、人物の雰囲気や演出手法がよく似ている。
  • クリア特典は限定衣装が追加されるのみで、クリア後に発生するクエストやアイテムといったものも無く、未消化のサイドクエストをクリアや未回収のアーカイブ集めぐらいしかやることがない。
    • サブキャラクターに会いに行っても、特に台詞を喋ってくれるわけでもないため、ちょっと寂しい。
    • ゾンビゲームには定番の「クリア後や条件を満たせば入手出来るチート級の武器」といったお楽しみ要素も皆無。
  • 固定武器で挑まなくてはならないボス戦があり、スキルの取得によっては戦術の選択肢が少ないため、アクションが苦手だと詰んでしまう可能性もある。
  • ストーリーの都合で縛りを強要される。
    • 上記の武器固定の話に近いが、何の説明もなくフックの使用を制限される場面がいくつかある。
    • 「シーケンスブレイクを防ぐため」かと言えば別にそうでもなく*4、スタッフのやりたい事をやらされている以外に説明のしようがない。
  • 鞄のアイテム整理が面倒。
    • どんどん縦にリストが増えていく、さらに製作と違ってソートもできない。
    • この仕様が重くのしかかるのが「ストーリー上でアイテムを奪われる展開」で。こういう時、大半のゲームでは普通に返却されるのだが、本作ではよりによって全部鞄に詰め込まれる。
    • 挙句、そういう展開が2回ある。
      • 2回目については奪われるのとは厳密には違い、上記の武器固定展開のことである。何の説明もなく唐突に持ち物が片手武器一つになる。ストーリーの都合で脈絡なく武器縛りにし難易度を上げ更に持ち物はすべて鞄へ…。
  • 唐突に湧くゾンビ。
    • 比較的頻繁にプレイヤー付近の視界外にゾンビが湧くのでかなり煩わしい。
    • 特に酷いのが自爆するボマーが湧くパターン。
  • ゾンビの攻撃判定が見た目より広い。
    • 掴み攻撃が顕著であり、明らかにこちらの近接攻撃が届かない距離で掴みが成立することがある。
    • また、すれ違い様に殴られた時は既に距離を離しているのに時間差でダメージが入ることがある。
    • バイラルやボラタイルは、転倒している様な状態でどう見ても攻撃モーションに入ってもいないのに何故かプレイヤーにダメージが入ることがある。
  • 敵の感知が異様に鋭敏。
    • どう見てもこちらを視認していない、どう考えても感知できる距離ではない、遮蔽物があるので視認しようがない状態でも平然とこちらの存在を察知してくる。
    • 本作はステルスキル要素があるのだが、この仕様のせいで無駄に成立し難い。
  • カモフラージュの問題。
    • ゾンビに擬態し襲われなくなる便利なスキルなのだが、攻撃してこないだけどんどん群がってくるのでかなり邪魔になる。バイラルは立っているだけでも喚いてうるさいので鬱陶しさも倍増。
    • あまり群がられるとテイクダウンも取り難くなる…下手に手を出すと一気に敵対されて危険になる…と微妙に不便。
    • たまに何故かカモフラージュ中でも襲ってくるゾンビがいる(何故か女性ゾンビに多い)。
  • ゾンビサバイバル作品ではあるが、敵対する組織の人間達との銃撃戦もそれなりに多い。あくまでゾンビだけにスポットを当てた作品を求めていると意外かもしれない。
  • 過去の規制(余談参照)で血の色が緑だった名残で、一部イベントの血や服についた血の色が緑色のままな箇所がある。
  • ボタン配置についてやや難がある。
    • 本作だけの欠点ではないが、欧米で作られたゲームは決定がXボタンなことが多く、○ボタンが決定の日本のゲームに慣れていると戸惑う。
      • 問題なのはオプションでキーコンフィグが出来ないこと。仕様に慣れるしかない。
      • ゲーム中はXボタンで決定しているのにPSボタンでメニューに移動したら×はキャンセルになるので混乱する*5
  • 強力な武器や有用なアイテムが手に入る箱を開けるのに必須で、ストーリーでも使用する機会の多いピッキングに関するスキルが存在しないため、自力で覚える以外の選択肢がない。
  • 用語の説明がない。
    • 本作には生存者たちの間で多用される用語が多くあるが、ゲーム中でそれらが詳しく説明されることはない。ほとんどの用語は造語ではない一般的な英単語*6であるため、原語(英語)ネイティブのプレイヤーにはそもそも詳しい説明の必要がなく、文脈からも何を指しているかの判断は容易だが、データベースのようなものはあっても悪くなかったか。
    • なお、クレインは終盤まで素性を隠しているため、他人からは「生存者の1人」と認識されている筈である。そのため、ハランの人間には死活問題かつ常識となっているだろう言葉が説明されないのは、演出としては自然なものと言える。

総評

ゾンビサバイバルアクションにパルクール要素という新風を吹き込み、アクションとホラーの両面に厚みを持たせた快作。
攻略上はアクションゲームに慣れていないと1人では辛い部分もあるが、広大なマップをひたすら駆け回って逃げるだけでも楽しめる。
絶望的な状況に置かれた街で命を懸けた追いかけっこを体験したいのなら、本作の世界に飛び込んでみよう。

GOOD NIGHT, GOOD LUCK...

余談

  • 本作の開発スタッフには『Dead Island』を手掛けた人たちが多数関わっており、Techland側でも『Dead Island』の続編を制作したい意向があったのだが、IPを保有しているDeep Silverとの意見の食い違いによりそれは叶わず、袂を分かつこととなった。
    • そして、『Dead Island』の開発で得たノウハウを元に『Dead Island』ではできなかったアイデアを盛り込むことなどを含め、全くの新規IPとして作られることになったのが本作である*7
    • YouTubeなどの動画サイトでは本作のことを「『Dead Island』の続編」や「『Dead Island』はこれの前作」などと平気で間違ったことをのたまっているケースが偶に見られるが、前述のように関連性のない完全な新規IP作品なので注意されたし。
  • 国内版は当初、発売元であるワーナーエンターテイメントジャパンによりゾンビの血がに修正された状態で発売され、物議を醸した。
    • 不評の声が大きかったためか、後にアップデートでに変更された。ただしゾンビや人間の断面や内蔵は不自然に黒いままになっている。
  • 一方、Win版についても日本のSteamページで購入した場合のみ、UIや字幕は日本語になるが「表現規制版」になるという代物。
    • 外部ストアでSteamキーを購入・有効化すれば無規制版になるが当初はUIや字幕は英語のままだった。その後、Win版はパブリッシャーがTechland自身に移行したことでグローバル版も日本語字幕/UIでのプレイが可能となった。
    • ちなみに、Epic Games Store版は無規制なのでグロ部分の黒塗りが嫌いな人はそちらをおすすめ。
  • イギリスでは『Dying Light: My Apocalypse Edition』が1本限定で発売された。
    • この限定版は、本作に加えて家が1軒丸々付いてくる。価格は日本円で約4600万円で、ゲームソフトとして史上最高額Saints Row IV Super Dangerous Wad Wad Edition*8』の100万ドルに次いで2番目に高額。
    • しかもこの家、ゾンビ対策が施された特別仕様で、武器格納庫や脱出用のハッチが備え付けられている。いつゾンビアポカリプスが起こっても安心!
    • 家以外にも専属講師によるパルクールレッスン、暗視ゴーグル、等身大フィギュアなど変わった特典が付く。

その後の展開

  • 2018年6月に続編『Dying Light 2』が発表された。『2』は本作から20年後が舞台となっており、マップの大きさは本作の4倍、昼夜サイクルなどにも大規模な変更が加えられている。
    • しかし、『2』は発表後にライターだったChris Avellone氏がセクハラの告発により降板した他、本作でアートディレクターとリードライターを担当したPawel Selinger氏が退職し開発が大きく停滞、発表以降しばらく音沙汰が無かった(参照)。
    • それから2ヶ月後となる5月に、正式タイトルが『Dying Light 2 Stay Human』となることが改めて発表された。
      • そして一度延期があったが2022年2月4日にPS5/XSX/PS4/One/Switch/Win(Steam/Epic Games Store)で無事に発売された。
    • Switch版は『HITMAN3』と同様にクラウド配信となる。パブリッシャーに関しては本作と異なり、Techlandによる自社パブリッシングとなった。
      • なお、日本語版はスパイク・チュンソフトからPS5/PS4版のみ発売された*9。国内における表現の規制は一切なし。

Dying Light: The Following Enhanced Edition

【だいいんぐ らいと ざ ふぉろういんぐ えんはんすど えでぃしょん】

ジャンル サバイバルホラー

対応機種 プレイステーション4
Xbox One
Windows
Linux
発売元 海外CS機版:Warner Bros. Interactive Entertainment
Win版:Techland Publishing
国内CS機版:ワーナーエンターテイメントジャパン
開発元 Techland
発売日 海外:2016年2月9日
国内:2016年4月21日
定価 パッケージ版:5980円(税別)
ダウンロード版:5480円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 良作

概要(TFEE)

オリジナル版に主要なDLCを同梱し、その他幾つかのバランス調整や修正が施された完全版。
特に新規マップと新規クエストラインが追加される大型ダウンロードコンテンツ「The Following」の同梱が目玉であり、タイトルにも冠されている。

主な追加要素

  • The Following
    • 新規マップ「ハラン郊外」
    • レジェンドレベル&スキル
    • バギーカーの運転&改造
    • ドライバーレベル&スキル
    • さらなる高難易度設定「悪夢」
  • 食事&貨物チャレンジパック
    • 高難度ハックスラッシュが楽しめる固有マップ。作中でも注意喚起されるが、中級~上級者向け。
  • ザ・ボザック・ホード
    • 高難度ハックスラッシュが楽しめる固有マップ。戦闘とパルクールの両方で高い技術が求められる。こちらも中級~上級者向け。
  • 最終兵器バンドルパック
    • クラフトできる武器を追加。「最終兵器」と付いているが、割と序盤から作成できて高威力武器までの繋ぎとして有用なものも含まれている。
    • 幾つかの新コスチュームも付随して含まれている。
  • カスタムマップ
    • 元々は『Dying Light』コミュニティのユーザー作成コンテンツで、その幾つかが楽しめる。
    • 「オリジナル版の世界観を保つため」という名目ことでほとんど日本語化されていない。
    • 変わった趣向のマップが多く、特にホラー面に特化したマップの出来は秀逸。『Silent Hills』の衝撃的なティザー作品として話題になった『P.T.』の本作風リメイク作品も含まれている*10

評価点(TFEE)

  • オリジナル版と同様のパートでは、前述の評価点は全て問題なく継承されている。
  • 「The Following」
    • 大型マップ追加とストーリーライン追加により、ボリュームはほぼ2倍。ストーリー自体もプレイヤーを引き付ける謎や驚愕の展開が盛り込まれている。
    • 平地と緑が多めで幾つかの小村が点在するマップ構成になっており、オリジナル版とは毛色の異なるオープンワールドを楽しめる。
    • 各地に固有の名前付きのボスゾンビが配置されており、強敵との戦いを楽しめる。
    • バギーカーを用いて大量のゾンビをガンガン轢き殺せる。オリジナル版では味わえなかった爽快感を味わえる。
    • バギーカーの導入に伴い、その運転や強化のためのレベル・スキル・収集要素・オンライン設定なども追加されており、ボリュームの一端を担っている。
    • 死亡した後のリスポーン箇所として、ハンティングタワーが追加された。割と多めに設置されているため、死亡後の移動の面倒さが軽減された。
    • スキルレベルやアイテムはメインストーリーの状態を引き継いでプレイできるので、武器集めやレベリングをやり直す必要がない。

賛否両論(TFEE)

  • アクション面に特化したコンテンツが多く、アクションゲーム好きはとことん楽しめる。そうでないプレイヤーは辛い。

問題点(TFEE)

  • パルクールの操作性に関する融通の利かなさは健在。特に「The Following」で追加された中型の鉄塔は、掴んでくれず転落死が起こりやすい。
  • 「The Following」
    • バギーカーの運転が特徴であり、それを前提とした平面的なマップ構成やクエスト構成がなされている。
    • もともと立体的なアクションが大きな魅力だっただけに、「The Following」の平面的なアクションにはがっかりするかもしれない。
    • パルクールアクションのみでもある程度は進めることが出来るが、バギーカーを操作しないと受注・クリアできないクエストも多い。
    • バギーカーによる移動自体も、乗り越えられない段差や進行を妨害する障害物もそれなりに多く、一部箇所以外は運転しにくい。
    • オリジナル版と違って岩肌の露出した崖部などの自然物を登る箇所が少なからずあるが、登れる場所が見分けにくく、ルート確保にストレスを感じやすい。

総評(TFEE)

オリジナル版であるハラン市街のパートについては、その魅力は全く削がれていない。
ただ「The Following」で追加されたハラン郊外パートは、バギーカーの利用・強化を前提としたクエスト構成やマップ構成となっている点がやや賛否両論。
オリジナル版とは違ったプレイスタイルを楽しもう、という心持ちで臨んだ方が良いだろう。

ちなみに本作に同梱されているダウンロードコンテンツは、「The Following」を筆頭に全て個別配信もされている。
アクションゲームが苦手なプレイヤーにとってはオリジナル版からはシビアな部分が多いため、一度オリジナル版のみで様子を見て、興味が湧いたらダウンロードコンテンツを追加していくという形をとることをお勧めする。

その後の展開(TFEE)

  • 『2』の発売日が発表された2021年5月に、『TFEE』の内容に過去配信されたDLCを追加した『Dying Light: Platinum Edition』が発表され、同日にダウンロード販売が開始された。
    • 2022年1月13日には同作のSwitch版が発売。グラフィック面は既存機種より劣るものの、Switchの性能を考慮すれば非常に高レベルな移植となっている。
+ Switch版とPS4版の比較映像
  • 2022年6月9日には、5つのDLCが入った完全版の『Dying Light: Definitive Edition』の配信が開始され*11、同時に足掛け7年間にも及ぶ本作の開発もこれで終了となった旨を公式に告知している。
    • なお、国内パッケージ版の発売元はPS版はワーナーブラザーズだったが、Switch版はパッケージ版ダウンロード版共に、スパイク・チュンソフトが担当している。
+ タグ編集
  • タグ:
  • AADV
  • ホラー
  • ワーナー・ブラザーズ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年12月09日 16:00

*1 2018年2月6日よりオリジナル及び『The Following Enhanced Edition』共にWin版のみテックランド自身がパブリッシャーとなっている。

*2 クッションオブジェクトやジップラインの配置など。

*3 『Dead Island』及び『Dead Island Riptide』のHDリマスター版である、『Dead Island:Definitive Edition』と『Dead Island Riptide:Definitive Edition』にも同エンジンが使われている。

*4 特別、豪快にショートカットができるわけでもない。

*5 ちなみに、欧米には「バツ」という記号がなく、「×」という形は「エックス」「乗算」「クロス」「10 (ギリシャ数字)」などと理解され、「非」や「不可」の意味合いはない。アメリカに至っては、○と×が日本とは逆の意味で捉えられることもある。

*6 「バイター」=「Biter(噛む者)」「バイラル」=「Viral(感染者)」「ボラタイル」=「Volatile(カンシャク屋)」など。抗ウィルス薬の「アンティジン」=「Antizin」は造語だが、薬品名の「Anti〇〇」が「抗〇〇薬」であることを知っているならイメージは掴めるだろう。

*7 一方、『Dead Island 2』のデベロッパーは当初『Spec Ops: The Line』のYeger Developmentが担当していたが著しい開発遅延が元で撤退を余儀なくされ、その後『Forza Horizon 2』などを手がけたSumo Digitalに開発元が変更されたものの、2018年2月14日にDeep SilverがTHQ Nordicにより買収されて以降は『Homefront: The Revolution』を開発したDambuster Studiosに引き継がれ、2023年4月21日にPS5/XSX/PS4/One/Winで発売された。なお、日本語が収録されるのはWin版のみとなっており、CS日本語版の発売は予定されていないことが公式に明かされている。

*8 『Saints Row IV』のソフトに宇宙旅行やランボルギーニ、美容整形手術(!)などが同梱された限定版。

*9 XSX/One/Win版もダウンロード版には日本語が収録されている。

*10 なお、『Silent Hills』自体は製作中止に至っている。

*11 『Platinum Edition』を既に持っているユーザーには無償アップグレードが提供。Switch版のみ他機種より遅れて配信となった。