ロゼと黄昏の古城

【ろぜとたそがれのこじょう】

ジャンル 古城探索アクション
対応機種 プレイステーション・ヴィータ
Windows 7/8.1/10 (Steam)
メディア PlayStation Vitaカード / ダウンロードソフト
発売・開発元 日本一ソフトウェア
発売日 【Vita】2016年4月26日
【Steam】2017年4月12日
定価 パッケージ版:4,298円
ダウンロード版: 2,857円(税別) 2,160円
PC版 1,980円 1,000円(各税込み)
プレイ人数 1人
セーブデータ 1個
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定 賛否両論
ポイント 奥の深さと粗が共存するパズルアクション
陰鬱な世界観と説明の少ない物語


概要・あらすじ

htoL#NiQ-ホタルノニッキ-』を手掛けた、古谷優幸氏が贈るダークな謎解きアクションゲーム。

少女ロゼが目を覚ますと、そこは呪いの茨(いばら)に覆われて色と時が奪われた古城だった。
彼女の背中にも茨の大きな花が咲いており、不死身の呪いがかけられていた。

登場人物とシステム

  • ロゼ
    • 本作の主人公となる少女。基本的にか弱くちょっとしたダメージで死んでしまう。アクションの面でも頼りなく高い段差はよじ登れない。
    • しかし背中の茨のおかげで、どんなに肉体が損傷しても、城に張り巡らされた茨から元通りに生き返ることができる。
    • 背中に生えた茨で周囲から吸血したり、逆に血液を与えることができる。
      • また血液を得ているもののみが、古城の中で「時間」を与えられ動くことができる。
      • 例外はあるが、ロゼが動かせるのは物体一個分であり、吸血して背中のバラが赤く染まっている状態ではさらに別の物体から吸血することはできない。
      • 吸血することでその血液の持ち主の死ぬ前の記憶を見ることもできる。
    • 本作には体力や残機という概念は無い。高所から落下したり、罠や敵に触れると基本的に即死するが、即時リトライとなりゲームオーバーがない。仕掛けで詰んでしまった場合は自殺することで、リスタート地点からやり直すことも可能。
  • 巨人
    • ゲームを少し進めると、城の中で出会うロゼのパートナー。茨の力によって血液と時間を与えられて服従するゴーレムのような存在。ロゼと出会う前は茨の呪いにより時を止められていた。
    • 操作できるのはロゼと巨人のどちらか片方であり、基本的に操作していない側のキャラはその場で待機する。
      • 巨人はロゼを抱えて運んだり、投擲することができる。ロゼでは届かない場所・登れない段差などの先にロゼを投げ込むことで攻略できる箇所もある。
      • 生身の人間では通れない茨を分け入って進むことが可能。しかしはしごを上ることはできない。
      • 血液が付着して「時間を与えられているもの」であれば、大きなアイテムを持ち歩くことができる。
  • マップ(黄昏の城)
    • 闇色の呪いの茨に覆われており、ロゼや巨人とは異なり血を持たない存在は時が止まっている。ロゼの血液を移動する能力や巨人の怪力と強靭さを駆使して、仕掛けをくぐり城からの出口を探すことが目的。
    • 攻略チャートは基本的に一本道だが、マップは小区画に分けられており、巨人がロゼをゴール地点まで抱えていくことでその小区画クリアとなる。
    • 各小区画には、特典要素を兼ねた隠しアイテムにあたるもの(手記・血の記憶参照)が存在するが、一度行った区画であれば途中の過程を飛ばして逆戻りや移動が可能なので気軽に回収作業が行える。
      • エリアチェンジすることでロゼの茨の血液のストックはなくなる。
    • オートセーブ形式であり小区画をクリアすると自動的にセーブされる。また城に張り巡らされた茨に咲く赤いつぼみは失敗した時のリスタート地点となる。
    • ロゼと巨人が互いに離れると同時に視認できなくなるが、カメラ移動でざっと周辺のマップを見回すことで2人の位置関係や先の仕掛けの確認をすることは可能。
  • 手記・血の記憶
    • 物語を補完する情報や攻略の仕方は、マップに点在する手紙や日記といった資料を回収することで入手可能。
      • また黄昏の城の中には死者の血痕も点在しており、これをロゼの茨で吸収することで物語を補完するエピソードも見ることができる。
      • 城を一定量攻略すると、未回収の血の記憶の位置を教えてくれるオブジェに出会える。
      • 一度入手した資料はメニューからいつでも内容を閲覧可能。

評価点

  • 世界観とパズル性の合致
    • 黄昏の城の設定から上手にパズルアクションを生み出している。
      • 空中から降ってくる瓦礫を空中で時間停止しそれを足場にする発想は、創作ではありがちだがゲームとしてはなかなか革新的。
      • 道中で比較的簡単に拾えるとある人物の日記は、ロゼ達の操作チュートリアルと世界観の説明を同時に行っており、ゲームへなじみやすくしてある。
      • 死にゲーシステムもロゼの不死身という設定のおかげで至極自然に成立している。
  • 凝ったパズル
    • ルールは比較的単純で強いアクション性があるわけでもないが、ステージの中にあるギミックの使い道はそれなりに奥深く、特に血の記憶の回収を阻む仕掛けはかなり複雑になっているのでやりがいがある。
    • ギミックも非常に多様。仕掛けがワンパターンではなく、操作の一環でキャラクターがとる思いがけないアクションが攻略のカギになることも。
    • ステージはどうしても窮屈に感じがちだが、ギミックの挙動の自由度自体は高く解法がひとつとは限らない。仕掛けを説いた時の感動は非常に大きい。
      • ただ中にはごり押しで解決できるギミックもあるため、やってみて物足りなく感じる場合もある。
  • 美術面
    • いまどきでは少し珍しい2Dのゲームだが、キャラのタッチはモノクロと赤を基調とした独特なデザインで、暗く穏やかなBGM、時折挟まれる小ムービーでゲーム独自の世界観を描き出すことに成功している。
    • 決してイベントや物語が多いわけでもない中で、巨人を含めた細かい仕草などにも情緒がみてとれるようになっている。
      • 一概に評価点に入れてよいかは迷うところだが、ロゼの死に様のパターンはそれなりに豊富。

賛否両論点

ストーリー

大まかな世界観はそれなりに存在するが、明確なストーリーは描かれておらず、書物で最低限な説明をしプレイヤーの考察で余白を補完させるというスタイル。

  • 世界観のテイストについて
    • ホラーゲームの要素もあるにはあるのだが、むしろ本作の世界観は怖いというよりは陰鬱で悪趣味な印象を受けやすい。一方でこういった世界観が好きなプレイヤーにはたまらないだろうが。
    • ロゼは齢10になるかならないかの少女だが、探索中の事故以外にもゲームを進めるための義務行動として作中で何度も死ぬことになり、その死に方も串刺しや絞首、断頭、圧殺などとえげつない。
      • 茨に触れた時の死に方が案外呆気なかったり、また隠せるものは隠す等極力グロテスクな表現にならないよう配慮は見られるが、ロゼが死ぬまでの過程はかなり具体的に表現してある。
    • 宣伝やお試しプレイの段階でそういった類のゲームだということは十分匂わせており、ホラーのテイストの一つとして高評価されている面もあるだろうが、人をかなり選ぶ表現であることには間違いない。
+ ネタバレ注意
  • 整合性と物語の帰結について
    • 雰囲気を押し出している作風なので、どうしてもシナリオやキャラの行動理念に関して理屈で考えたい人には不可解な展開はある。
    • 作中に登場する茨の呪いの設定が少しうやむやにされている。
      • ラスボスも茨に呪われて不死な存在でありながら、エンディングはラスボスの討伐に成功したような描写となっている。
      • 舞台となる城はロゼがかつて住んでいた描写があるのだが、その割にロザは城内に散在する死体に対してなんらリアクションを示さない。父親と思しき人物の死体もノーリアクションである。
      • ラスボスを討伐しても結局物語における諸悪の根源たる茨の呪いを終わらせるような描写はない。
      • ロゼは初めこそ城から脱出することが目的で一度は城を後にする。しかしその後ラスボスを永い眠りから目覚めさせてから退治する必要性が説明されていない。
    • 先に進むためにロゼ自身の血液を捧げなくてはならないシーンが存在するが、ロゼが出血するだけならまだしも、どうして処刑具によりむごたらしい死を迎えなくてはならないのかの理屈がシナリオ中で説明されていない。(大量の血液が必要とはあるが)
    • トゥルーエンド後の描写にもロゼ達のお墓が立てられているシーンがあるなど、一概に彼女たちが報われたとはとらえきれないのも本作の特徴。
      • もっとも実際は死んでいないが周囲の人間に死んだと勘違いされている、または逆に呪いから解放されて真の意味で安らかな死を迎えることができたという解釈も存在する。
    • よく言えば、好きに物語を補完できるし悪い展開になったと確定しているわけではないので、そこはプレイヤーの楽しみ方や想像力に左右されると思われる。

独特なアクション性

本作はいわゆる死にゲーに該当する。主にロゼが何度も死にながら先に進む道を模索していく。

  • 物理エンジンの弊害
    • 自然落下、投擲、弾き出された物体の運動には物理エンジンを導入している。投げられたロゼや落下する物体の挙動はこの計算が反映されている一方で、パズルもからんでくるためなかなか独特なゲーム性を作りだすことに成功している。
      • システムの粗の駆逐は困難だったとは思われるが、この粗により良い意味では予測不能、悪い意味では不自然な挙動をする時がある。特にラスボス戦では、このような独特な挙動のため著しく操作性の悪いだけのゲームに映りがち。
      • 物体の動きを止めるタイミングや巨人の待機位置に応じて、こちらがゲームを進めない状態でギミックが静止することもよくあるため、その場で自害することで小区画の仕掛けを再配置させるのを余儀なくされることも。尤も自害というシステムがあるおかげで、ゲームは基本的には詰みを回避できるようにはなっている。
    • 逆にシステムの自由度をつくことで多種多様な攻略法が編み出せる。粗を利用してショートカットができる一幕も存在する。
  • シナリオや攻略のテンポ・ボリューム
    • 静かな世界観やパズルと探索に重きを置き試行錯誤が前提とされているのでじっくり考えたい人には楽しめるだろうが、アクションのテンポが犠牲になっている面がありサクサクプレイしたい人には全く向いていない。
    • 登場するキャラやギミックの動きが妙にもっさりとしている。特にロゼはやや高いところから着地すると必ず転んで1秒ほど何も操作できない(その間巨人に交代することは可能)。傾いた足場だと立ち上がる前に転んだまま滑り落ちてしまうこともある。小区間内のワープ移動ができることを考慮してもこの挙動の遅さでかなりのタイムロス。
    • 仕掛けをクリアした時の感動は大きいが、周回クリア後の新マップなどは用意されていないので、その感動のボルテージを後のやりこみ要素で上回れない事は残念か。
    • 普通にプレイするとだいたい7時間ほどでゲームはクリア可能。挙動の軽さやシナリオなどと関連させると、ボリュームはこれで丁度いいという人もいれば少なすぎるという人もいる。
      • クリア後のやりこみ要素としてタイムアタックを導入している。

難点

  • 操作面
    • 血を出し入れできる物体ターゲットが密集していることも多いなか、切羽詰って操作すると間違った物体に血を出し入れして失敗になりやすい。
    • また巨人の操作でも、「持ち上げるボタンは□」「足元に置くボタンは○」なのに対し「投擲する際は□ “長押し”」となっているため、物体やロゼ自身を変なところに投げてしまうというミスが起こりがち。
    • 地面にある血だまりから、血の記憶を入手するために足場を運んでくる場面があるのだが、置く場所がシビア。血だまりの上に足場を置いてしまうと、血だまりにカーソルが出現せず記憶が手に入らない。血だまりに被らないようにズラした場所に足場を置けばいいのだがわかりづらい。
  • エンディングをスキップできない
    • ラスボス戦後はエンディング後にスタッフロールになるのだがスキップできない。
    • トロコンなどで再戦した際にもう一度長いエンディングを見るのは煩わしい。
    • 好きなステージを再挑戦できる仕様ではあるが、ラスボス戦にブレーキをかけることにもなる。
    • タイムアタックを選択した場合はエンディングは流れない。
    • ラスボスじゃないほうのボス戦は、クリア後はタイムアタックでのみ再挑戦でき、エンディングにもならない。
  • ゲームの粗
    • BGMがきれいにループしておらず、一旦ぶつ切りになった後に再度流れ出す時がある。
    • 足場になるかわからない本棚に飛び乗って透かされる、逆に茨の絵と当たり判定とが一致していないことで思わぬミスを招くなど視認性の悪さに悩まされる。
    • 一度入手した書物の内容はいつでも確認でき、新規に入手した資料も目印がつくのだが、攻略の頼りになる情報を入手と同時に開いてくれないこともある。中盤以降、そういった手記の資料を読んでそれをヒントにする一幕もあるためやや不便と思われる。
  • バグ
    • 巨人と出会った直後に鳥かご型の牢にロゼが閉じ込められるシーンで、キャラ切り替えを繰り返すとロゼが死亡し、その後のゲーム進捗は可能だがメニュー展開と自害ができなくなる。 他にも仕様上のバグとして、特定の場所で落下中のロゼと物体が壁と壁との間に変に挟まってしまい、ロゼが落下モーションから変わらず、上と同じくメニュー展開と自害ができなくなる。
    • 日誌や血の記憶といったキーとなるアイテムを拾ったもしくは置いた瞬間に死亡したりイベントが挟まれると、直前まで扱っていたアイテムが再出現しなくなりひどい場合はゲームが進められなくなることがある。
      • どちらも意図的に回避は可能で、再現性が高いかどうかもまだ分からないが、セーブデータが1つしかなくさらにオートセーブ方式をとっている状況下で、こうして本当の意味で詰むとなかなか取り返しがつかない。

総評

どこかファンシーだが血なまぐさくて陰鬱な世界観がこのゲームの大きな特徴であり、好きな人には薦められるが苦手な人にとっては本当に受け入れがたい内容。
さらにアクションでは、なかなか珍しいシステムを導入したことで他では味わいにくい面白みがあるものの荒削りで発展途上なところもある。世界観を反映した独特なテンポも総合して非常に人を選ぶゲームといえるだろう。

その後の展開

  • 2020年6月2日にSteam版が1,000円に価格改定された。

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最終更新:2023年02月06日 17:21