HEAVY RAIN 心の軋むとき

【へびーれいん こころのきしむとき】

ジャンル ミステリーアドベンチャーゲーム
対応機種 プレイステーション3
プレイステーション4(ダウンロード専売)
Windows(Epic Games Store/Steam)
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
【Win】Quantic Dream
開発元 【PS3/Win】Quantic Dream
【PS4】Virtuos*1
発売日 【PS3】2010年2月18日
【PS4】2016年6月1日
【Win】
 2019年6月25日(Epic Games Store)
 2020年6月18日(Steam)
定価 【PS3】5,696円(税別)
【PS4】3,148円(税別)
【Win】1,990円(税込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
廉価版 PlayStation 3 the Best
2011年3月10日/2,839円(税別)
判定 なし
ポイント 丁寧に伏線が張られた濃厚で意外性のあるシナリオ
Quantic Dream作品
Fahrenheit / HEAVY RAIN 心の軋むとき / BEYOND: Two Souls / Detroit: Become Human
SIEワールドワイド・スタジオ作品



愛は、どこまで貫けるのか 
人は、どこまで許されるのか―。



概要

連続誘拐殺人事件を巡り、4人の主人公がその謎に迫っていくアドベンチャーゲーム。
「折り紙殺人鬼」を軸に4人の視点が徐々に一点に収束していく、いわゆる「グランド・ホテル」方式を採用している(他社作品で言えば『428』の方式)。
本作には「折り紙」「日本刀」「エンコ詰め」など、所々に日本要素がある。


ストーリー

人間の本能、本質に問いかける、大人のためのサイコ・サスペンス。
4日間の拉致後、溺死させ、その手に折り紙を残す奇怪な「折り紙殺人鬼
事件の真相を追う4人の主人公達は、それぞれ過酷な状況の中で様々な選択と決断を迫られていく。

その決断を、人は許すだろうか? あなたは、許せるだろうか?
「ゲームオーバー」という概念を取りはらい、すべての言動、行動の結果、そして最後の結末を、
あなたはその心で受け止めなければならない。

(公式サイト引用)


主人公

  • イーサン マーズ
    • 事故で息子を失った父親。もう一人の息子まで誘拐され、「折り紙殺人鬼」と直面していくこととなる。
  • ノーマン ジェイデン
    • 折り紙殺人事件」解決の為にFBIから派遣された捜査官。
    • 巧みな心理プロファイリングと、最新捜査ツール「ARI」を駆使して事件に迫っていく。
  • マディソン ペイジ    
    • イーサンに接触してきた駆け出しのジャーナリスト。不眠症に悩まされている。
  • スコット シェルビー 
    • 元警察官という経歴を持つ私立探偵。被害者の家族たちから証言を聞き出しつつ、事件を追っていく。

特徴・評価点

  • シナリオ
    • 職業も境遇もばらばらな4人の主人公が様々な形で「折り紙殺人事件」と関わっていく。
    • 実際のサスペンスドラマばりの演出が随所に再現されており、あたかも本格的なTVドラマ、あるいは映画を観ているような没入感。
    • 濃厚な、時として残虐な展開で次から次へとスピーディーに物語が進んで行き、止め時が分からなくなるほど熱中するユーザーも。
    • 巧妙に伏線が張られており、真相が判明した時に最後にはあっと驚く展開も待っている。
    • 時に会話を変えるだけで大きく展開が、ひいてはエンディングが変わることもある。
  • 臨場感
    • モデルの俳優に体中にセンサーをつけて動きをつけて演技をしてもらう、いわゆるモーションキャプチャーという『The Last of Us』などでもお馴染みの手法によって自然な動きを実現している。
    • グラフィックは人物の皮膚感・表情・すれ違う人々・背景・雨しぶきなど、とてもリアルな仕上がり。
    • ゲーム全体に流れるアメリカの冷たい秋の雨が孤独で寂しい主人公達に非常にマッチし、本作独特の臨場感を醸し出している。
  • 会話
    • ムービーシーン以外でR1ボタンを押すと心の声が現れ、シナリオ展開のヒントや主人公の心の声が聞こえる。
    • 会話シーンで台詞を選ぶことができ、これによりシナリオが変化する。
  • サウンド
    • BGMは哀愁・焦燥など全体的に切ない感情を込めたトラックで構成され、物悲しさに満ちたストーリーを彩る。
    • 日本語吹き替えの声優陣も洋画吹き替え経験が豊富な声優(俳優)揃いなので、本当に映画を観ているような気分に浸れる。
  • ゲームオーバーが無い
    • たとえストーリー中に主人公が死亡したとしても、そのまま物語が進んでいく。
    • そのため本作にはエンディングが複数存在し、何度もやり直しても楽しめるようになっている。

賛否両論点

  • ラブシーン
    • 本作にはハリウッド映画でお馴染みのラブシーンが挟まれる。
+ ネタバレ注意
  • 主人公のイーサンがある女性と親しくなり、その女性とベッドインする。「自分の子供が死にそうになっている時にそんな事をするなんてどうなんだ」と言う意見がある。
  • アンフェア
    • ミステリー要素で一部アンフェアでは無いのか、という疑問がある。
      + ネタバレ注意
    • 時計屋マンフレッドを殺害した犯人が、選択肢で「可哀想に。こんな死に方…ひどすぎる」と呟く。
    • この発言を犯人に言わせるのはミスリードにしてもひどく、アンフェアであるという意見がある。
    • これについては「マンフレッドが帳簿さえ付けていなければ、こんな死に方しなかったのに」という第三者的視点からみた同情の念だという反論もあるが、何故その場面にしたのか。
    • ちなみにこのシーンでは犯人がプレイヤーの操作から離れる僅かな時間の間に殺人を犯しており、殺人の直前と直後を(その人物が犯人だとは知らずに)操作しているプレイヤーにとっては理不尽と言える。
  • 感情移入しやすい操作方法
    • シーン毎に実際の人間に似た動作に応じたボタン操作が必要になる。
      • 例えば扉を開ける動作一つもわざわざスティック上押し続けるなどの操作を取る必要がある。
      • 面倒くさい手順だが物語に感情移入するのを手伝うことにもなる。
    • バトルシーンなどではQTEが導入されているが、「一度失敗すると即死亡」と言うような厳しいものでなく、何度か挽回の余地があるのは嬉しい所。
    • 一方R2で移動、R3で動作というあまりに不自然なボタン操作は必要なのか疑問に思うユーザーもいる。
      • PC版では左スティックで移動、右スティックで動作と改善されている。
  • プレイ時間が少ない
    • 一周が大体10時間程度で少々物足りない。なら後述の伏線を回収したら良かったのでは…。
      • 周回前提のゲームの為、これくらいが丁度いいという意見もある。

問題点

  • 矛盾が多い
    • ミステリーを題材にしているとはいえ、矛盾が多く目立つ。
      + ネタバレ注意
    • イーサンが金属探知機が整備されているコインロッカーで銃を受け取るのだが、それなら犯人は金属探知機を通過しないと入れないロッカーにどうやって銃を運んだのか?また、どうやってイーサンが持ち出したのか?と疑問が残る。
      • わざわざ金属探知機を描かなければよかったのでは…。一応持ち込みに関しては犯人の経歴を悪用すれば不可能ではないかもしれないが持ち出しは銃が金属製以外の素材でもない限り擁護できないため。
    • 二番目の試練で狭い通路をイーサンが匍匐前進しながらガラスを通るのだが、犯人の体型で発電所のパイプにガラス撒くのは無理がある。
    • ジェイデンが警察に捕まったイーサンを逃がす展開があるのだが、それついてはお咎めを受けるような描写がない(録画カメラを切らなくても)。
    • 四番目の試練でイーサンが麻薬の売人を殺害しても、特にお咎めを受けるような描写がない。
    • スコットは模倣犯を探し求めていたはずなのに、何故放置したのかわからない。
    • 設定の矛盾もあり、スコットは説明書や本編で48歳と伝えられるが、EDの墓石には(計算すると)44歳であると刻まれている。 
      • 墓守の証言ではスコットの少年時代の事件が「1977年(34年前)で当時10歳」と語られているため、44歳が正しい。余談だが劇中では34年前の事件を「30年前」と略すため「30年前に10歳なら今は40歳?」という解釈もでき、ややこしい。
  • 明かされない伏線
    • イーサンの夢遊病、夢遊病から覚醒した際に見知らぬ場所で折り紙を握っていること、水死体の記憶の真相、マディソンの不眠症(悪夢)など。
    • 他にも何故犯行が線路の近くなのか、最後まで語られない。
    • これらに関しては補完DLCの販売をパブリッシャーのソニーが途中で打ち切ったのが原因。だが、伏線を本編だけで完結させずDLCで完結させようとしたQuantic Dreamにも責任があるだろう。
      • 理由はPlayStation Moveに対応させる為…と言われているが何故それで打ち切ったのかは不明。また、本作のディレクター兼Quantic Dreamの代表者であるデヴィッド・ケイジ氏によると「本編で全て語れることは全て語った」と言っている。
      • 後の『Detroit: Become Human』でのQ&Aによると「DLCではシェルビーが何故ああなったのか、ジェイデンが何故薬を飲むようになったか、マディソンの悪夢の原因を描くつもりだったが、2年同じゲームのストーリーを描くよりも新しいことに取り組む方がいいと思った(要約)」とのこと。やっぱり未完じゃないか
      • PS4移植版には途中で配信されたマディソンのDLCも収録・配信されていない。
  • プレイヤーの行動が無意味な場面が多い
    • 冷蔵庫を開ける、飲み物をコップに注ぐ…など些細な行動も含めて様々な行動がプレイヤーの操作によって行えることが本作の売りになっているが、一部の重要な選択を除けばそのほとんどが無意味で、結局はフラグになっている行動を取るまでの総当たりになってしまっている。
    • QTEイベントも成否によって結果が変わらないものも多く、例えばマーケットで逃走する人物を追跡するシーンなどは絶対に逃走されてしまうし、「高速道路を車で逆走しろ」というイベントはQTEを失敗し続けても別に主人公は死なずにそのままストーリーが進行する(最終盤のフラグには影響が出るが、そこまでの展開には何も影響しない)。
    • こういったケースが多いため、何も知らない1周目では自分の行動がシナリオを分岐させているように感じるが、2周目をプレイすると実は決められた展開だったのだと解ってしまう。
  • 周回が面倒くさい
    • セーブは1個のみでコピー出来ないので、途中から展開を変えるということが出来ない。
    • チャプターとシーン選択は出来るがスキップ機能が無いため周回が面倒。
    • 途中のシーンの内容を変更してシーンをいきなり終盤からプレイしても内容は変わらず、死亡したキャラを生存させるなど、途中からシチュエーションを変えた場合はずっとそこからプレイするしかない。
  • フリーズ・バグが多い
    • 2010年2月26日に公式サイトより、ゲームプレイ中の不具合としてフリーズ現象及び再起動後のゲーム再開が出来なくなる現象が発表された。
    • こちらはバージョン2.00で改善された。
  • 選択肢が分かりづらい
    • 複数の選択肢を超短時間で選択しなければならない。
    • しかも文字は小さく白色で背景に紛れやすく、キャラクターの周囲を揺れ動きまともに読めない。
    • また海外と日本とでは「○」と「×」ボタンの概念が違うせいで、OK!という選択肢が「×」になる
      • PSにおける○ボタンがキャンセル/いいえ、×ボタンが実行/はいという配置は海外向けゲームでは珍しくない。とはいえボタンコンフィグは欲しかったところ。
  • 規制
    • 女性の乳房やラブシーンなどが一部規制されている。
    • 海外版ではシャワーシーンで全裸の女性がじっくりと描写されている*2
  • 子供の笑い声が少々不気味
    • イーサンが息子と遊ぶ時の笑い声が少々不気味という意見もある。

総評

物悲しい雰囲気が魅力的で、手に汗握るサスペンスも味わえるミステリー作品。
だがシナリオ面は矛盾や明かされない伏線が目に付き、些か練られているとは言い難い。
シナリオメインのゲームとしては良作判定を出すのは難しい出来である。


余談

  • 元々これはMicrosoftとの企画だったが、「子供の誘拐」というテーマのせいで没になったところをソニーに拾われたことをデヴィッド・ケイジ氏が明かしている。
    • その時の縁からか、その後もQuantic DreamはPSハード向けにゲームを出している。
  • 雨が降っているのにキャラクターが傘をささない事が気になるかもしれないが、外国では日本と違い雨の日でも傘をささないといった文化の違いがある。

その後の展開

  • 2019年3月20日にGDC 2019のEpic Games基調講演の壇上にてQuantic Dreamから『HEAVY RAIN』『BEYOND:Two Souls』『Detroit:Become Human』の3作品のWin版を2019年中にEpic Games Storeでダウンロード販売されることが発表された。
    • なお、発売から1年間は同ストアでの時限独占配信になる。また、3作ともQuantic Dream自身がパブリッシャーとして販売することとなった。
    • 折しも、2019年1月に中国のポータルサイトを運営する企業、NetEaseのゲーム部門であるNetEase Games*3と業務提携を結んだ際、複数プラットフォーム向けの次世代タイトル開発を進めていくことがデヴィッド・ケイジ氏のインタビューにて明かされている。
    • 2019年6月25日にEpic Games StoreにてWin版の配信が開始。Win版は4K解像度、ワイドスクリーン対応、フレームレートも60fps対応となった。
    • 2020年6月18日にはSteamでも配信開始。前述の時限独占解禁による配信となった。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 2010年
  • PS3
  • ADV
  • ソニー・コンピュータエンタテインメント

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最終更新:2022年08月21日 11:44

*1 移植作業のみ

*2 Win版においては国外版を購入することにより日本語の入った無規制状態でのプレイが可能。

*3 主なものとして『荒野行動』『Identity V』といった自社IPのモバイルゲーム開発、『オーバーウォッチ』『ディアブロIII』『Hearthstone』といったBlizzardタイトルの中国版運営、Blizzardの新作『ディアブロ イモータル』の共同開発といった事業を手広く展開している。