レーシングジャム
【れーしんぐじゃむ】
ジャンル
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レース
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対応機種
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アーケード(COBRA+HDD)
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販売・開発元
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コナミ
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稼働開始日
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1997年12月末
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プレイ人数
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1人~8人
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判定
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良作
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ポイント
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セガのMODEL3をも凌駕するグラフィック
異常に高額なCOBRA基板&プレー料金
ある意味早過ぎた『バトルギア』
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概要
コナミが『ミッドナイトラン:ロードファイター2』及び『ワインディングヒート』の後継作として1997年に発売した3Dレースゲーム。
当時はタイトーから実車を収録したリアル路線の3Dレースゲーム『サイドバイサイドシリーズ』シリーズ(以下『SBS』)が登場しており、本作も前述の2作とは打って変わってリアル路線に転換。
『SBS』に競合しうる新たなリアル路線レースゲームの一角として注目されたのだが、あまりに高額な基板及びプレイ料金が祟り、結果的に不人気作への道を突き進んでしまった不遇な作品である。
筐体の種類
DX筐体
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当時のACレースゲームでは稀であった70インチものワイド曲面プロジェクターに高音質のスピーカーの他、可動シートを採用した大型筐体。
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視点切替ボタンや反力システム付きの大径ハンドルに加え、バックギア付きH型パターンシフト・クラッチペダル・サイドブレーキを搭載し実車同様の操作感覚を実現している。
ツイン筐体
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DX筐体版の2ヵ月後の1998年2月25日に稼働を開始した、29型ブラウン管モニターを2基搭載した2人用筐体。1台の筐体につき2人まで通信対戦が可能。
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ごく基本的な操作デバイスはDX筐体とほぼ同様だが、クラッチペダルは省略、シフトレバーも簡略化されシーケンシャル方式のみとなっている。
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基本形状も1996年の『GTI Club』と同じだが、本作でシートやコントロールパネルの色が緑から赤に変更、AT/MT切替ボタンも無くなった。
この仕様は以降のコナミ製レースゲームの標準筐体として長らく使われることとなる。
何れの筐体も最大8人まで同時に対戦プレイが可能。ただ圧倒的な出回りの悪さ故に8台通信可能な店舗はほぼ皆無に等しかったが…。
ゲームの進め方
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1.規定のクレジットを入れてスタートボタンを押して始める。
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2.空いている台の画面に対戦者を募集する画面が表示される。この時その台からゲームを始めると、自動的に対戦になる。
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3.次にコースを選択する。この時ブレーキペダルを踏むとレースかタイムアタックを切り替える事が可能。
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4.次に車種を選択する。
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5.最後にATかMT(DX筐体の場合はAT・セミAT<シーケンシャルシフトタイプ>・MT<要クラッチ操作>の三種類)を選択する。
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6.レースorタイムアタックが開始される。時間内にチェックポイントを通過し、完走する。
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完走時に筐体内最速タイムを出せた場合はネームエントリー。制限時間内に完走できなかった場合はゲームオーバー。
収録車種
6メーカー18車種の実車が全て実名で登場。但し馬力ごとのクラス分けの概念はない。また一部車種には社外製ホイール&エアロが装備されている。
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収録車種一覧
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メーカー
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車種
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色
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備考
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ホンダ
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NSX(NA1)
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赤
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前期型
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インテグラ TYPE-R(DC2)
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白
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シビック SiR-II(EG6)
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青
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マツダ
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RX-7 RZ(FD3S)
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赤 |
中期型
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サバンナRX-7 ∞(FC3S)
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藍色
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ユーノスロードスター(NA6CE)
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黄
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三菱
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ランサーエボリューション IV(CN9A)
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白
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FTO GPX(DE3A)
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赤
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ミラージュサイボーグ ZR(CJ4A)
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白
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N1耐久風ラリーアートボディステッカー付き
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日産
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スカイラインGT-R(BNR32)
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黒
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中期型・ニスモ製フロントスポイラー装備
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シルビア K's(PS13)
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白
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180SX(RPS13)
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黒
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スバル
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インプレッサ WRX Type-R STi Ver.III(GC8)
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白
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STI製WRフロントスポイラー装備
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インプレッサスポーツワゴン WRX(GF8)
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銀
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レガシィツーリングワゴン GT-B(BG5)
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緑
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トヨタ
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スプリンタートレノ 3door GTV(AE86)
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白
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前期型・TRD製風フロントスポイラー装備
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セリカ GT-FOUR(ST205)
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白
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MR2 III型(SW20)
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青
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収録コース
本作では初心者から中級者向けである公道をサーキットとしたコースと、上級者向けで低速コーナーが連続するワインディングコース・ジムカーナコースと3つのカテゴリで収録されている。
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収録コース一覧
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難易度
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コース名
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解説
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初級
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NIGHT COURSE
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夜の市街地の高速道路とその下道を周回するコース。 バイパス区間の高速セクションと市街地区間の高速バンクコーナーで構成される。 まずはこのコースでドリフト走行を始めとする本ゲームの基本操作を学ぼう。
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中級
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DAY COURSE
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初心者からステップアップしたい人向けの夏のシーサイド周回コース。 ここをクリアできれば中級者の仲間入り、レーシングジャムの登竜門と言える。
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上級
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HILL CRIMB
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低速テクニカルコーナーが連続する難易度の高い峠が舞台のヒルクライムコース。 高速コーナーとテクニカルコーナーが混在し、クリアするにはそれなりの腕前が求められる。 加えてライバルカーのレベルも高め。
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最上級
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DOWN HILL
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HILL CRIMB同様に峠が舞台のダウンヒルコース。こちらも高速セクションと低速コーナーが混在している。 下りコース故にスピードが乗りやすくヘアピンや複合コーナーも鋭利かつ不規則的と難易度は非常に高い。 ライバルカーの速さもかなりすばしっこくなっており、優勝するには相当な実力を要する。
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初級
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GYMKHANA BEGINNER
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ヘアピンコーナーが連続するジムカーナ場が舞台のコース。 サイドブレーキドリフトの使い所が攻略のカギとなる。
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中級
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GYMKHANA ADVANCED
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上級
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GYMKHANA EXPERT
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GYMKHANA OPENROAD
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規定コースが設定されておらず、ジムカーナの練習走行が可能。
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評価点
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DX筐体では使用基板に当時としてはパワフルなCPUやHDDを搭載した「COBRA」を採用し、他のゲームよりも美麗な画面と多彩な内容を実現。
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その美麗なグラフィックは、同時期に同じく美麗なグラフィックを売りにしていたセガの「MODEL3」を使用したゲームをも凌駕するほどだった。
その他の設備でも「70インチワイド曲面プロジェクター」等を採用し、約20年経った2018年現在の基準で見ても非常に豪華なものとなっていた。
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「MODEL3」のポリゴン処理性能は秒間100万ポリゴンであるところ、COBRAのポリゴン処理性能は秒間500万ポリゴンと当時最高峰であった。
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なお、1998年に稼働したツイン筐体版では、COBRA基板に近い性能ながらHDD非搭載でCPUも異なる「NWK-TR」を搭載している。
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6メーカー18車種の国産の人気市販車が実名で登場しているというリアル路線ぶり。
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非常に簡易的ながらポリゴン描写の車内視点も有り、ホイールは3Dで表現と、リスペクト元と目される『SBS』より細かい部分も再現されていた。
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壁などに激しく激突するとスピンする点も『ミッドナイトラン』や『ワインディングヒート』からそのまま引き継がれている。
但し車両の実名での登場に伴ってか、上記2作品で採用されていた「順位に関係しないアザーカー」の登場や「派手なクラッシュ表現」は廃止されている。
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アザーカーの存在・派手なクラッシュは下記の『チャプターII』では実装されている。本作では自主規制していたのだろうか。
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ドリフトしやすいお手軽かつ爽快感重視の挙動でありながらも、各種駆動方式の挙動特性も忠実に再現。
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これまた『SBS』シリーズとはまた異なる方向で、挙動のリアル感と爽快感を絶妙に融合させたスタイルとなっている。
スピード感も抜群で爽快感を感じやすく、高速コースなら最高速度は300km/hオーバーに達する事が可能で、エンジン音も比較的リアルに再現されていた。
また同シリーズとは違い、「イン側から敵車に接触した際に自車の曲がりやすさが一時的に低下する」といったリアルさの無い理不尽補正は存在しない。
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また『ワインディングヒート』からの昇華として、ジムカーナコース選択時のみ車種選択後に前後足回りや馬力の個別セッティングが可能。
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更にパワーアップした音響面。
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今作でも『ミッドナイトラン』『ワインディングヒート』に引き続き、Desper Products社による「SPATIALIZER 3D STEREO」なる立体音響を採用。
しかも本作では筐体デザイン及び基板スペックの進化により、サウンド周りの質が格段に向上している。
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BGMも前作同様、クラブミュージックを意識したような低音を強調したサウンドがプレイヤーの感情を程よく刺激する。
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上記のDX筐体での臨場感と爽快感は相当なものであった事は想像に難くない。後述のようにプレイ料金さえ高価でなければ本作は名実ともに「良作」と言えるものであっただろう。
問題点
ここまで見る限りは評価点が多い良作と呼べる内容だが、本作には単体のアーケード作品として見ても致命的なほぼ唯一にして最大の欠点が存在する。
それは、先行販売されたDX筐体とCOBRA基板の高額な価格設定による、プレイ料金の高額化・出回りの悪さ・業界での低評価に集約されている。
異常に高額な筐体による弊害
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COBRA基板に搭載されたHDD等のパーツ類は、現在と比べ物にならないほどに相当に高額なパーツだった。
その結果基板単体の価格だけですら、当時のアーケード基板としては破格の80万円と言う高額もいいところな代物に。
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追い討ちとばかりに専用筐体の本体価格も当時においては非常に高額であったため、まさにオペレーター泣かせの頂点ともいうべき程に大打撃を与えたと言われる。
その結果、筐体そのものの出回りがすこぶる悪かった上、プレイ料金は1プレイ300円設定もザラで、当然この現象はゲーマー離れを加速させてインカムが伸びなかった。
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尤も、当時の競合機種だった「MODEL2」「MODEL3」「SYSTEM22」等の3Dポリゴンゲー黎明期に開発された基板はどれも高価であり、「リッジレーサー」「デイトナUSA」の初期バージョン等のように1プレイ300円設定での稼働も、当時は決して珍しくは無かった。
しかしこれらの競合他社作が後に1プレイ100円設定に値下げしていったのに対し、本作の場合は上述の通り基板や筐体の価格が当時の競合機種と比較しても桁外れに高価だったことから、プレイ料金の値下げも困難であった。
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稼働開始から20年以上経過した現在においても現役稼働している店舗で1プレイ200円設定の筐体が多く見受けられるのはこれが理由とされる。
その他の問題点
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他の競合他社のレースゲーム作品ほどではないものの、やはり制限時間は短くCPU車のレベルも比較的高め。
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当時の例に漏れずと言ってしまえばそれまでなのだが、近年のレースゲーム作品に比べればはるかに難易度は高い。
総評
ゲームとしては良作の部類に入り、かつリアル路線のレースゲームとしても『サイドバイサイド』とは違った路線でリアルさとスピード感を良く融合させた挙動を実現しており、決して駄作ではない。
『SBS』をリスペクトしつつ、舞台としてサーキットや4つのジムカーナコースを追加する等、新たなリアル路線のレースゲームを作ろうとした心意気も評価できる。
だが基板・筐体価格の高額さがもたらした、1ゲームあたりのボリュームに対するプレイ料金の高さは結果としてゲームセンターの経営者・プレイヤーの両方が敬遠する結果を招いてしまった。
故に一部のユーザーの間では本作を「早すぎたバトルギア」として再評価する声もあり、各料金さえ安価であれば『SBS』や後の『バトルギア』と競合できる可能性を持っていた「惜しい」作品と言える。
後に筐体のほぼ全てが『スリルドライブ』シリーズにコンバートされたことや、基板や筐体の耐久性の低さによる損耗率の高さから、現在日本国内で営業稼働している個体は初代『スリルドライブ』と共に絶滅していると思われる。
故にこれから本作をプレイする場合、待ち受けるのは
修羅の道
。全国の中古基板屋に在庫として眠っている基板を個人購入し、自宅のTVやPCに接続して遊ぶレベルの覚悟が必要になる。
もし、中古基板屋で奇跡的に本作の基板を発見したら、是非とも出費を惜しまずに個人購入してでもプレイして貰いたい。他のリアル系レースゲームには無い独特の魅力的な要素の数々が、このゲームには詰まっているのである。
続編・その後の展開
1998年にはビッグマイナーチェンジ版とも言える『レーシングジャム・チャプターII』が稼働開始。
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1作目の反省か、機械面で更にコストダウンが行われ、使用基板を筐体タイプを問わず「NWK-TR」に一本化・新規のDX筐体も画面モニターを50型プロジェクションに一本化。
HDD非搭載故か、収録車種は同一ながらジムカーナコースは全削除。一方でコースをアップダウンの激しいものに一新、レース中にアザーカーが登場する等、『ワインディングヒート』に近い内容となっていた。
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1作目での「リアルさ」が薄れた点が受けなかったのか、同年に同じ筐体と基板を使用する『スリルドライブ』が登場して以降、本シリーズの筐体の殆どは同作にコンバートされて市場から姿を消すこととなる。
本作を最後に『ロードファイターシリーズ』の新作にブランクが生じていたが、2010年に12年ぶりの新作となる『ロードファイターズ』が稼働開始。
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目玉要素として、同社のアーケードゲームとしては初めて3D立体映像に対応。筺体に取り付けられている非接触型の3Dメガネで体感することができる。
緻密なカスタマイズやドレスアップが可能となり、「ロードファイターチャレンジ」や「全国対戦」など、モード数が増加。本作から引き続きスポーツカーを中心とした国内の車両が実名で登場する他、初の海外車種も収録されている。
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シリーズ初の試みとして、イメージガール「道端モモカ」が作中のレースクイーンとしてアトラクト画面などに登場するようになった。リスペクト元は言うまでもなく『リッジレーサーシリーズ』であろう。
余談
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そもそもCOBRA基板を採用したゲームはこれ以外だと3D格闘ゲームの『ファイティング武術(ウーシュ)』とその続編である『~2nd』の合計でたった3つしかない。
しかもそっちまで大コケしてしまった故に、COBRA基板は短命に終わる結果となってしまう。
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数ヵ月後に発売されたツイン筐体版はコストダウンのお陰かある程度出回ったものの、やはりDX筐体の悪評が影響してか、他社作品に並ぶほどのヒットには至らなかった。
当時のゲーム情勢による更なる追い討ち
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上記のハイコストぶりだけでも十分な痛手なのだが、同時期に運悪く当のタイトーから『サイドバイサイド2 エボルツィオーネ』が稼動、更にその約2年後には後継作の『バトルギア』も稼働開始。
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同シリーズは、グラフィックこそ本シリーズより粗めなものの、それ以上にリアル感と爽快感の融合を実現した挙動と、一般的なプレイ料金で取っ付きやすかったため、ヒット作となった。
結果として出回りの悪かった本シリーズは出来が良い割にあまり話題にされず、殆どのゲーセンから消え去ってしまった。
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『バトルギア』に至っては使用基板にCOBRA基板と同様のHDDを採用、1999年時点で最多の実名車両数とコース数を達成する事になるのは皮肉と言えるかもしれない。
最終更新:2024年03月23日 18:43