平成天才バカボン

【へいせいてんさいばかぼん】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 192Kbit ROMカートリッジ
発売・開発元 ナムコ
発売日 1991年12月26日
価格 5,800円(税別)
判定 バカゲー
ポイント もっさりしているが現実に沿った実にリアルなアクション
バカゲーというよりバカボンゲーといった方がしっくりくる
演出やセリフ回しなど原作への愛は感じる
少年サンデーシリーズリンク
少年マガジンシリーズ


概要

『おそ松くん』と並ぶ赤塚不二夫氏の人気漫画『天才バカボン』のゲーム化作品。『平成~』というタイトルは、当時放送していたアニメ第3期のもの。

ある日、バカボンのパパが家に帰ると、バカボンがかけっこをしているかの如く慌てふためいていた。
なんでも、バカボンのママとハジメが、何故かバカ田大学の人たちに連れていかれてしまったのだと言う。
ママとハジメを助けるため、パパは自身の母校であるバカ田大学へと単身乗り込んでいくのであった。


特徴

  • 傘1本を武器にバカ田大学に乗り込んだバカボンのパパを操作するアクションゲーム。この傘は本作のパパのアクションを支える独自要素とも言える。
    • 「棒高跳びのように壁を飛び越える」「綱一本しかないところでも傘をさせばサーカスばりに綱渡りが可能」「傘をさしてジャンプするとゆっくりと下降し、落下ダメージを防ぐ」「棒の付いたブロックに傘の柄を引っ掛けて振り子ジャンプ」などのアクションが可能。
    • 特定の地点で発生する中ボス戦では、フェンシングのように敵を傘で突いて戦う。
    • これだけ書くと万能のように見えるが、意外にも上からの攻撃を防ぐような機能は無い。とくに科学部では劇薬と思える雫が垂れており、まさに傘を開いて防げると思ってしまいそうなのだが、普通に貫通する。
  • 学部(ステージ)は「サーカス部」「忍者部」「体育部」「科学部」の4つ。それぞれが4エリアずつで、学部の最後にはボス戦がある。
    • 前半の学部2つがツッコミどころだが、バカ田大学は原作の時点で現実ではあり得ないような学部や研究会が無数に存在しており、サーカスや忍者が寧ろまともに思えるようなレベル。
  • 中ボス戦以外はこちらから敵に攻撃することはできず、敵や罠をかいくぐって学部を進む事となる。
    • 逆に、敵や罠もほとんどが規則正しい動きを繰り返すだけなので、タイミングを見計らえばキチンと抜けられる。
    • 例えば本作では敵キャラ扱いの本官さん(目ん玉つながりのお巡りさん)は、一定のペースで走り続けるだけであり、能動的に追っかけて来たりはしない。
  • ライフは初期は3目盛りで、ステージに配置されているアイテムの「牛乳」を取るとライフが3目盛り回復し、「ラーメン」を取るとライフの上限が増える(最大8目盛り)。
    • パッケージイラストでバカボンのパパがラーメンを頭に乗せ、牛乳を手にしているのはこのシステムに合わせたものと思われる。実際に飲み食いしようとすると中々に厳しい食い合わせだが。
    • 残機の概念はなく*1やられると即ゲームオーバーだが、コンティニューは無限でパスワードもある。

問題点

  • バカボンのパパは設定上41歳のオッサンなので、他のアクションゲームに比べると全体的に動きがモッサリしており制動がききづらい。本作がクソゲー扱いされやすい最大の難点
    • ダッシュ入力をすると少し間をおいてから加速する。ジャンプを入力すると少し「溜め」を作ってから飛ぶ。ブレーキをかけると「キキーッ」という音と共に止まる上、かなりスリップする。上れる壁などにつかまると、足をばたばたさせて壁の上に這い上がるが、この演出がまたもっさりしており時間を食う。
    • 高いところから飛び降りると、足を痛めた演出と共にダメージを受ける上にしばらく行動不能になる。また、ダッシュ中に壁にぶつかるとぺしゃんこになって潰れて同様にダメージを受ける。*2
      • 無論このダメージでも死ぬので、「扉を見つけてダッシュで近づく→壁にぶつかってダメージを受けて死亡」という流れになってしまうことも。実際の人間も同じような事をしたらこうなるであろうことは道理にかなっているのだが、もう少しゲームとしての匙加減が欲しいところ。
      • これらが要因で、『スーパーマリオ』や『ロックマン』などのポピュラーなアクションゲームのように操作しようとすると先ずうまくいかない。本作のようにキャラクターがリアル寄りの挙動をするアクションゲームは『プリンス オブ ペルシャ』を筆頭に散見されるが、その例に漏れず意図した通りに操作できるようになるまでには相応の修練を要するため、玄人好みのゲーム性となっている。
    • 立ち状態でBボタンを押すと腹巻きから傘をだして開き、もう一度押すと傘を閉じて腹巻きの中にしまう。問題なのはBボタンはダッシュボタンも兼ねているため、ダッシュをしたいのに傘を出してしまう操作ミスが起こりやすい。例によってこの傘を出し入れするモーションももっさりしている。
    • 攻撃を受けたときの無敵時間がかなり短いので、敵や罠が多いところでは、一度罠や敵にひっかかると連続してダメージを受けてしまってゲームオーバーになるという流れが多発しがち。
  • 本作独自の要素である傘を使ったアクションにも、一部やや癖がある。
    • 傘を使って棒高跳びのように飛べる場所は決まっているが、パパのアクションがもっさりしている関係と、判定が比較的シビアなので成功させるにはコツがいる。慣れないうちは失敗を繰り返して時間切れになるケースも多い。*3
    • 振り子ジャンプも、最大の飛距離で跳ぶためのタイミングはやや厳しめ。これが出来ないと地形の影響でダメージを避けられない局面が複数ある他、一部ボスステージにおいても攻略のカギになってくる。
  • 1ステージが結構長めな上に罠や敵も多く、おまけに制限時間もある*4
    • 制限時間そのものは長めで時間延長アイテムもあるのだが、パパのアクションのもっさりさや中ボス戦でも時間が共通な事から、実際にプレイしている時はとてもそうは思えない。
  • ボスステージも結構難しい。
    • 例えば、ステージ1のボスは玉乗りピエロで、ランダムに投げるジャグリングの玉を傘で20個受け止めればクリアだが、パパの操作性の悪さから玉がとんでもないところに飛ぶとなかなか回収できないことも。
      幸いにもボス戦まで行ければ、コンティニューしてもボス戦からリスタートできるのは救いかも知れない。
    • 最も難しいのはステージ3の陸上部員で、ハードル超えで競争するのだが、一回でもミスすると勝つのが難しくなるほど難易度が高い。

評価点

  • バカボンのパパのアクションの種類そのものはとても豊富。
    • 立ち状態や傘を出した状態で一定時間操作しないと、何気なく真正面を向く。
    • ラーメンを食べたり牛乳を飲んだりするときは実においしそうに味わっているさまが見られ、ダッシュ中にブレーキをかけると歯をくいしばって足でふんばって止まろうとする。
    • 他にも、ダメージを受けた時に目が飛び出んばかりに痛がったり、高いところから降りた時に足が痛くて動けない演出や、壁にぶつかってぺしゃんこになる演出も見ていて実に面白い。残り時間が少ないときなどには少々わずらわしく感じるかもしれないがご愛嬌。
    • とどめとばかりに死亡時には「♪ちゃーらーらーらーらー」という悲しげな曲と共に、バカボンのパパに天使のような羽と輪っかがついて、目を瞑って手をあわせて実に安らかに召されていく演出になっている凝りよう。ゲームオーバーになったとわかっていても笑いを誘ってくれるニクい仕様である。
      • 因みに前述の陸上部との競争に負けても天使のようになって死ぬ。遅れてゴールに飛び込んだ瞬間昇天していく姿は非常にシュール。
  • アクション以外でも笑える要素が多数。
    • ゲームを始めるとまずパスワード入力画面となり、パパが真顔のドアップでパスワードの催促をしてくる。
      • パスワードに用いられるのは16文字のひらがなであるが、この時使用する文字も「あいことばをまちがえたらだめなのだ」とパパの台詞風になっている芸の細かさ。*5
    • ポーズをかけるとポップな雰囲気で「レレレのレ!」とポーズ音がなる。
    • ラーメンを食べるときの効果音も、かの有名な「チャルメラ」が流れる。
    • コンティニュー画面では包帯ぐるぐる巻きになったパパが家のちゃぶ台の上に伏せっており(送り返されたらしい)、パパがプレイヤーに向けてコンティニューを促してくる。
      • その時のメッセージも「もういちど、やるのだ!」と、やはりバカボンのパパらしい台詞になっている。
  • 原作におけるいつものメンバーもチョイ役程度だが登場する。
    • レレレのおじさんは構内でいつも通り竹箒で掃除をしており、学部に入っていくパパに「おでかけですか?レレレのレ!」と言う。
    • 本官さんは敵キャラ扱いで、例によって銃を乱射しながらマンガ走りしているが、ゲーム上は弾が飛ぶ事はない。もちろん触れたらダメージだが。
    • ウナギイヌはエリアクリア時のリザルトで牛乳を持ってきてくれる。自動的にライフが3回復し次のエリアに進む。また、一定以上のスコアを獲得している場合、体力が0になった際に牛乳を持って助けに来てくれる。ウナギイヌのストック数はポーズ画面で確認可能。
  • ステージ内では、一見すると何もないようなブロックの上に乗ると回復アイテムや時間延長アイテムが結構な頻度で出現するため、アイテムの場所が分かれば多少は余裕のある攻略ができる。
    • ただ、アイテムを取って食べる演出中も時間が過ぎる上、無敵時間が発生しないので食べている間にも敵に接触されて容赦なくライフを減らされてしまう等の問題もあるが…。
  • BGMもコミカルな演出に貢献している。
    • 怪しいBGMや、やたら音程が外れたマヌケなBGM、ゲームオーバーの悲劇的な曲調もありバカボンの世界観を引き立てている。
  • 「自分から攻撃できないアクションゲー」と言うと聞こえは悪いが、逆に「作品の世界観を尊重し、過剰な暴力要素を排除した(本作はその成功例)」とも解釈できる*6
    • これがもし「パパが大学の後輩達を問答無用でしばき倒していくゲーム」になっていたら、それはそれで問題だっただろう。
  • ゲームクリア時のオチもバカボンらしさがある。
    + 以下ネタバレ
  • 実はバカボンのママとハジメは、バカ田大学にお手伝いに行っただけであり、バカボンが連れ去られたと勝手に勘違いしただけであった。
    • そして話を聞いたママは激怒してしまう。バカボンを信じてママとハジメを助けに来たのに逆にパパが怒られてしまうのは少々かわいそうだが、最後にパパの笑顔のドアップで「これで、いいのだ!」で〆るさまは、とてもバカボンらしい流れではある。
    • 尚、このエンディングでもレレレのおじさんと本官さんが少しだけ顔を見せる。

総評

赤塚先生の作品を元にしたゲームはクソゲー排出率が高かったが、本作は決してクソゲーではない。
難易度はファミコンゲームらしく相応に高いが、理不尽ではなく、頑張れば必ずクリアできるようになっている。
もっさりしたパパの動きに我慢しつつ、死んでも天使になって召されるパパを見て笑い飛ばしながら、広い心を持ってプレイするとよいだろう。
原作の雰囲気を変に壊さず、バカボンらしさを保っているところは、愛のあるキャラゲーともいえるかも知れない。

パパ「これでいいのだ!」


余談

  • 『平成天才バカボン』というタイトルの割には、バカボンの出番はほとんどない。オープニングとゲームオーバー時のみ。
    • もっとも、原作からしてバカボンよりバカボンのパパの方が出番が多いので違和感はない*7。エンディングにいないのは可哀相ではあるが。
  • 科学部ステージでは、ブロックや動く足場のラインで「ナムコット」「天才バカボン」と書かれている場所が存在する。
  • 本作にはゲームボーイ版も存在しており、基本的にはファミコン版と同一内容となっている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 1991年
  • FC
  • ACT
  • ナムコ
  • 少年サンデー
  • 少年マガジン

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月13日 22:48

*1 取扱い説明書でも「パパはひとりです」と書かれていたりする。

*2 この2つでのダメージは1目盛りの半分となっている。そのため、残りライフが1でもやられることなく生存できる。

*3 高跳びで前進できる距離は事前の助走に応じて段階的に伸びるが、最も助走が少ない段階では高跳びをしても真上にしか跳ばず、そこから目の前の壁に掴まることもできない。

*4 制限時間が0になっても即死はしないが、ライフが徐々に減っていく。減るペースも早いため、ゴール付近でもなければ制限時間が0になった時点でゲームオーバーはほぼ確定。

*5 文字を選択する際、五十音順ではなくこの台詞で使われる順に表示される。

*6 原作ではパパはよくバカボンを叩いたりするがそれは心を許せる家族だからであり、描写もギャグマンガ的な無難なものに留まっている。ましてや、見ず知らずの人間に理不尽な暴力を振るう人間ではない

*7 同じ赤塚作品の『おそ松くん』でも、実際の主人公はイヤミと言われている。