機動戦士ガンダム サイドストーリーズ

【きどうせんしがんだむ さいどすとーりーず】

ジャンル アクション
対応機種 プレイステーション3
メディア BD-ROM
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 B.B.スタジオ
発売日 2014年5月29日
定価 通常版:7,600円(税別)
Limited Edition:13,790円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 新作+過去作品の総集編
しかし内容は中途半端のガッカリメイク
使いづらすぎるロックオン
復活の『CROSS DIMENSION』
一部の原作改変と新規MSは好評
ガンダムシリーズ


概要

『ガンダム外伝』シリーズ11年ぶりの新作タイトル。
過去の『外伝』シリーズのシナリオに新作パート『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』をカップリングした変則リメイクゲーム。


特徴

  • 収録タイトル・原作のハードおよび発売年は以下の通り。
    • 『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』(SFC/1995)
    • 『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』(SS/1996~1997)*1
    • 『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』(DC/1999)
    • 『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』(PS2/2001)
    • 機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles』(PS2/2002)
    • 機動戦士ガンダム外伝 宇宙、閃光の果てに…』(PS2/2003)
    • 『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』(新規/2014)
      • いずれもゲームオリジナルの外伝パートのみを収録。『CROSS DIMENSION 0079』は第二部『死にゆく者たちへの祈り』のみ、『閃光の果てに』も『めぐりあい宇宙』の内容は含まない。
      • これら収録作品にはストーリーに多少の変更も行われている。
        例えば『THE BLUE DESTINY』ではライバルの「ニムバス」の視点で描かれるストーリーが収録されたり、明確な主人公が存在しなかった『ジオニックフロント』では部隊の一員である「ニッキ」が主人公に据えられていたりと、『ミッシングリンク』とのクロスオーバーとの兼ね合いもあって、大幅なリメイクが行われている。
  • 当初は『ミッシングリンク』単体での発表であり、各外伝シナリオの基本システムも『ミッシングリンク』ベースで統一されたものとなっている。基本システム自体は3人称視点のアクションゲームであり、ガンダムゲーとしては一般的なレイアウトであるのだが…。
    • 本作は最大3機の編成で出撃しミッション中に自由に切り替えられるのが特徴であり、ゲームオーバーの条件は自機の撃墜ではなく、味方部隊の全滅となっている。そのためチームで出撃しているステージでは、味方機が予備HP的な存在にもなる。
    • PS2版『めぐりあい宇宙』のようにSPゲージの概念もあり、それらを消費して強力な格闘技やマルチロック攻撃、EXAM等のシステム発動、無敵状態になった僚機による一斉攻撃指示が出来る。

問題点

パッケージには【過去の「ガンダム外伝」タイトル6作品も完全収録!】【PlayStation3のクオリティで「外伝」が蘇る】などと書かれている。
しかし、蓋を開けてみるとその実は、上記の文面からはかけ離れたものとなっている。

  • 「完全収録」とある割に、原作ではコックピットからの一人称視点だった『THE BLUE DESTINY』『コロニーの落ちた地で…』や半RTS操作の『ジオニックフロント』も本作のシステムに変更・統一されている。そのため、特に原作をプレイしていた層から戸惑いの声が上がった。
    • これでシステムが良ければ問題点にはならなかったのだが、そもそもジャンルからして違うジオニックフロントの再現が事実上不可能なのは仕方ないという部分を置くにしても
      ベースとなっている『ミッシングリンク』のシステムも後述するような難点が目立つため評価は芳しくない。結果として「コレジャナイリメイク」の烙印を押されることにも繋がっている。
  • 戦闘面では自機の操作性はそこまで悪くない。しかし…
    • 敵の回避性能・攻撃力・誘導性能は、ステージによっては理不尽なほどの高性能となっていることがある。
      • 特にVRミッション12で登場するボスの「グフカスタム」は、VRミッション序盤にしては高い機動力・攻撃力・防御力を誇るなど、プレイヤー達の語り草になっている。
    • 先に発売されたPS3『機動戦士ガンダム戦記』でもそうだったが、マップには味方は3機なのに、敵は山盛り存在し、僚機の挙動はのったりしている。さらには『戦記』で出来た細かい機体のカスタマイズや指示等が出来ないため、HPの予備タンク以外の役割は果たせない。ぶっちゃけ僚機機能としては、酷評された前作より退化している。
    • 「ロックオン機能」は評判が特に悪く、ターゲットの切り替えが思うようにいかないと不評を買った。
      視界に捉えないとターゲットに選べない仕様であり、背後から攻撃された場合は対応すらできず、その上で砲台などの細かいターゲットが多数登場する展開もあるため、使いづらさに拍車をかけている。
  • シナリオ面も、後述する一部の改変は評価されているものの、全体的には賛否両論~低評価である。
    • 『CROSS DIMENSION 0079』の原作は、マルチエンディング制で多少なりとも救いのある展開も存在する作品であったのだが、本作では一人消息不明&それ以外全員死亡という、ほぼ救いのない展開*2となってしまっている。
    • 『ミッシングリンク』は、本作の新規シナリオであるにもかかわらず、特に評価が低い
      • このシナリオのみ、UC0080/一年戦争の終結後、いきなりUC0090/『機動戦士ガンダムZZ』終了後まで時間が進み、その後もUC0096/『機動戦士ガンダムUC』の時代まで続く。
        進みすぎる時間軸、耐用年数を無視したかのようなモビルスーツの取り扱いなどの展開の強引さや、(後付けの宿命とはいえ)過去タイトルとの摺り合わせが取られていないことが主に批判される。
  • ストーリーで流れるイベントムービーは、ムービーと呼んで良いものかと思うほどにチープである。
    • 各シリーズ毎に、重要かつ見せ場と思われるような場面は、MSが派手に動き回る中々の出来の専用のムービーが流れる事もある。しかしそれ以外の場面では、ゲーム中のモーションをそのまま使いまわし、棒立ち・ゆったり歩行・その場に立ち止まってのんびり射撃等、スピード感や迫力も何も無い寸劇が繰り広げられる。プレイヤーが見るムービーの7・8割以上がこの雑多な寸劇である。
    • さらにムービー中に行われる会話には字幕こそあるが、名前や顔の表示がない。そのため、どの人物が話しているのかわかりづらい。
      極端な話ではあるが、機体が撃破される場面で誰が死亡したのかすらもわからないこともある*3
    • 映像特典のダイジェストムービーは、過去作品の映像集ではなく上記のムービーを用いたダイジェストであったことから落胆した者も多い。
  • 声はパートボイス仕様で、ステージ開始前の会話デモはテキストのみで進行する。
    • また、前述のように「完全収録」とあるにもかかわらず、実際のストーリーは一部省略されたダイジェスト形式となっている。
    • 収録作品の多くが元の会話デモでもフルボイスであったために違和感を感じやすい。また、このせいで折角のリメイクにもかかわらずボイスなしとなったキャラクターも多い。
      • 上記のように顔グラの表示がないため、『ガンダム戦記』の「クロード」のように、声付きのパイロットとして参戦しているのにビジュアルが確認できないキャラクターまで存在する。
    • しかし『ミッシングリンク』終章など一部ステージの会話デモはフルボイスである。どうせなら全てフルボイスで統一して欲しかったところ。
  • ストーリー中にMSをカスタマイズできない。
    • その為、中盤まで「ザクII」がメイン機体となる『ジオニックフロント』の一部の面が恐ろしい難度になっている。原作では半RTSの独特なシステムを搭載しており、それを駆使することでなんとかするのだが、今作では特殊な補助システムは無い。結果、戦艦「ビッグトレー」の群れの前に屍を積み重ねるプレイヤーが続出した。
  • クリアしても、ストーリーモードは決まったMS以外は使用不可能。他モードで入手した強いMSどころか、使えるMSは完全固定でIFプレイのようなものも一切不可能。この仕様で再プレイしようという気が起こるだろうか?
  • VRミッションは内容に焼き直しのモノが多く単調。
    • VRミッションでは編成数制限のある機体(ガンダム等のエース機)が存在するが、何故かホワイトディンゴ隊やマルコシアス隊仕様の量産機まで制限が存在する。その為、ホワイトディンゴ隊のジムを3機編成する等の原作通りの組み合わせが不可能。
    • ストーリーモードではパイロットボイスやパイロットスキルが存在するが、VRミッションではそれらの要素が一切なく非常に寂しい。夢の組み合わせやストーリーでは使えなかった敵パイロットを使用するなどの事は出来ない。
  • MSのモデリングはその多くが同じB.B.スタジオ製の『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』からの流用。
    • その為か、MSの挙動がネトゲ対戦を視野に入れたような、妙に硬くて鈍いものとなっている。PS3『機動戦士ガンダム戦記』と比べても差が大きい。
    • またMSがゴロゴロと前転回避する動作や、回転しながら勢いよく吹っ飛ばされる挙動も賛否が分かれる。
      • ただし、ゴロゴロ回避はアニメ『機動戦士ガンダム』のテキサスコロニーの戦闘で描写された動きであり、また『バトルオペレーション』にも存在する。回転吹っ飛びも、『ガンダムvs.ガンダム』以降の『ガンダムVS.シリーズ』で見られる挙動ではある。
  • PS3タイトルの宿命と言うべきか、ロードが長く、1分近くかかる事も多い。
  • 相変わらずDLCがぼったくり価格で合計5,000円程もかかる。

評価点

  • ガンダムゲーらしく、グラフィックやBGMを始めとするゲームのビジュアル面は良い。
    • 特に宇宙空間戦のビジュアルは非常に良く、素晴らしい雰囲気が醸し出されている。その分地上戦の演出が酷いが…
    • 新規の『ミッシングリンク』キャラをはじめ、声優陣は有名どころが揃っている。リメイク作品も、一部を除いて原作と同じ声優を起用している。
    • グラフィックは『バトルオペレーション』からの流用ではあるものの、本家シリーズでは使用不可能または参戦が絶望的な機体が操作出来たり、実装されていない武装が使用出来るなどの貴重さはある。
      • 『サイドストーリーズ』が0096年代にまで飛ぶおかげで、ゲームに登場すること自体が珍しいMSも使える。当然0079年代のMSに比べて性能も高いので、VRミッションでは大いに役立つ。
  • 『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』のシナリオを収録している事。
    • 外伝シリーズの草分けであり、後に派生機体も多く登場する「ガンダムピクシー」と「イフリート」の初出として作品名は知られていたが、『Gジェネレーション』や『ギレンの野望』といった他作品においては前述の2機の登場のみ、キャラクターやストーリーの内包が全くされておらず、漫画化なども行われずに日の目を見ない状態が続いていた。
    • SFCハードの耐用年数の問題もあって半ば絶望視されていたため、この作品にストーリーが収録されるというアナウンスを聞いて衝撃を受けたユーザーはかなり多い。
  • 一部作品のストーリー改変に関しては高評価。
    • 『ガンダム戦記』は漫画版をベースにしているが、連邦側パイロットの「ラリー」とジオン側オペレーターの「ユウキ」の死など不評の多かった展開が回避されるよう改変され、さらに小説版の要素も導入された独特なストーリー構成となっている。
    • 『CROSS DIMENSION 0079』では、連邦側に「ノクト」という高圧的かつ横暴な態度を見せる上官がおり、終盤にて友軍を見捨てて脱出するのだが、原作では無事に離脱していたのに対し、本作では脱出途中にとあるキャラの自爆に巻き込まれて死亡する。原作から一転して、典型的な屑キャラにプレイヤーの溜飲が下がる結末が描かれている。
  • 『コロニーの落ちた地で…』では、ラジオパーソナリティの「ジャクリーン」が音声のみで出演している。他の作品では名有りパイロットでも操作不可能だと声が付いてないことも多いため、演出面ではそこそこ恵まれていると言える。
    • また、同作品に登場する機体「アッザム・オルガ」は、本作にてセリフの字幕表示が付いたことで初めて正式名がプレイヤーに周知される*4など、地味ながら追い風を受けた機体となっている。
  • なんだかんだで、本作が初出のモビルスーツの人気は高い。いくつかの機体は立体化も果たしており、個々の設定や造形面では一定の評価を得ているのは間違いないだろう。
    • 主役機の「スレイヴ・レイス」は、陸戦型ガンダムをベースに、開発中の試作装備を多数取り入れたカスタムMSという設定。
      機体の外見から、頭部の開閉式バイザーがジム・スナイパーカスタムに、肩部のウェラブル・アーマーがジム・ストライカーに、ランドセルがジム改に転用・採用されるであろう事が窺える機体になっている。
    • もう一方の「ペイルライダー」は、ジム・スナイパーIIにG4計画の技術を盛り込んだという設定である。
      武装やバックパックは、M-MSVや本作にも参戦している『めぐりあい宇宙』に登場するガンダム4~5号機と同じものであり、搭載された特殊システム「HADES」はEXAMシステムのデッドコピー。この技術が、後のオーガスタ研とその研究成果「強化人間」に繋がる設定となっている。
      • この強化改修機である「トーリスリッター」も、バウのメガ粒子砲付シールド、ガ・ゾウムのハイパー・ナックルバスター、ドライセンのトライブレード、ドーベン・ウルフのインコム等で武装されたものとなっている。
    • 「イフリート(シュナイド機)」はイフリート系列の1機にして、OVA『機動戦士ガンダムUC』に登場したとある機体を彷彿とさせる外観を持つ。ゲームを進めることでそのとある機体との繋がりが見えてくるなど、この機体もまたひとつのミッシングリンクを補う存在となっている。
    • 1stの外伝や派生作品は、アニメや小説等を含め、UC0079の世界観に不釣り合いな新MSが登場する事もある。
      しかし本作はMSデザイン・設定共に従来作との辻褄合わせがしっかりと行われており、違和感なく溶け込ませている。

総評

「同じシステム上で過去シリーズのストーリーを再現する」というコンセプトは理解できるが、そのせいで基本システムが最大公約数的な薄味のものになり、それぞれのシリーズのゲームとしての持ち味を殺してしまった。
これだけなら「過去作リファインはあくまでサービス、オマケ」という見方も出来たのだが、本作は過去作品について「完全収録」「完全リメイク」等の文言が宣伝に使われたことで、過去作のファンと制作側の認識に大きなズレができてしまった。
このことを差し引いても単純にアクションゲームとしての出来が悪く、それに各外伝作品を合わせた事で結果的に各作品の既存ファンだけでなく新規ファンも落胆させる結果となってしまい、ダムゲーの中でも評価は厳しいものとなった。
一方で一部の原作改変や新規MSの評価は高く、何もかもが駄目だったというわけではない。何だかんだで以降のガンダムゲームにも参戦しており、少なくとも公式的には「黒歴史」ではないようである。


余談

  • 限定版の『Limited Edition』も発売されている。
    • ガンプラのHGペイルライダーが付属しているのだが、初立体化・新規造形ガンプラが高額な限定版の抱き合わせになっていること、その上で設定を無視した特別色のメタリックカラー、更にビームサーベルしか武装がない(マシンガンやシールドすらない)という点で、これもあまり歓迎されなかった。
      • (おおむね予想されていたが)後に設定通りの成形色で「陸戦重装備仕様」「空間戦仕様」の2パターンも発売されており、この他にも「トーリスリッター」や「スレイヴ・レイス」など本作で新規に登場したMSは度々ガンプラ化された。
    • この限定版にはCD2枚組のオリジナルサウンドトラックも付属しており、過去作のBGMは本作でのアレンジ版が収録されている。
      • ただし『ガンダム戦記』のみ、既に原作のサントラが発売されていることもあってか、BGMが一切収録されていない*5
  • 後に発売された『SDガンダム Gジェネレーション GENESIS』に、本作の『ミッシングリンク』シナリオが収録された。また、『CROSS DIMENSION 0079』も本作ベースでシナリオ初収録となった。
    • しかし、『ミッシングリンク』は何故か一年戦争で打ち切り同然に終わるため、後編の要素は「トーリスリッター」の収録のみに留まっている。
  • 同じく『ミッシングリンク』から「スレイヴ・レイス」「ヴィンセント専用ゲルググ」は『GUNDAM VERSUS』にも参戦している。同作では連邦側主人公の「トラヴィス」を演じた藤原啓治氏が当時休業中であったため、小松史法氏が代役を務めている。
    • 発売後には、有料DLCとして「ペイルライダー(陸戦重装仕様)」や「イフリート(シュナイド機)」などの機体も追加された。
    • 後に一部機体は『EXVS2』でも逆輸入的に継続参戦している。
      • ペイルライダーのパイロット「クロエ」は、『GUNDAM VERSUS』では名前に「前期」と付記されており、後継機の「トーリスリッター」の参戦も予想されていたが、後の『EXVS2』含めこちらの参戦は実現していない。
  • 『月刊ガンダムエース』にて、コミカライズ版も連載された。作者はおおのじゅんじ氏。
    • 後に『THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』を手がけることになるほどの安彦良和氏に寄せた作画、「ペイルライダー」の名前を独自に解釈して意味を持たせたりUC0090年代まで進まないオリジナルの展開から、おおむね原作ゲーム版より高く評価されている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • ACT
  • バンダイナムコゲームス
  • ガンダム

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月31日 13:50

*1 「ブルーディスティニー」を主役とした三部作シリーズの総称。

*2 原作のエンディング次第で生存が確認できる「とあるキャラ」も、本作では自爆を行うため死亡が確定している。

*3 そういった場面では撃破された人物の名前が叫ばれるので、大体の状況の把握はできるが…。

*4 原作にも登場する機体であるのだが、名前は字幕の無いボイスでのみ呼ばれており、当時の音質の都合もあって長らく「アッザモード」などと誤解されていた。

*5 本作の『ガンダム戦記』シナリオでも、BGMは原曲を使用している。