※本稿ではMS-DOS用ソフト『The Elder Scrolls: Arena』『The Elder Scrolls II: Daggerfall』を併せて紹介します。判定はいずれも「なし」です。



The Elder Scrolls: Arena

【じ えるだーすくろーるず ありーな】

ジャンル RPG ASINが有効ではありません。
対応機種 MS-DOS、Windows
発売・開発元 Bethesda Softworks
発売日 1994年3月25日
【Steam】2022年4月27日
備考 Steamで無料配布中
判定 なし
The Elder Scrollsシリーズ

概要

海外のMS-DOSで登場したフリーローミング3DアクションRPG。
タムリエル大陸を舞台とし、非常に自由度の高い冒険を楽しむことが出来る。
2004年に発売10周年を記念して公式サイトから無料ダウンロード可能になった。その後公式のランチャーがサービス終了したため、2022年4月27日よりSteamで無料配信されている。

ストーリー

第3紀389年。
皇帝ユリエル・セプティム7世は帝都の魔闘士ジャガー・サーンによって別次元*1に幽閉され、サーンは幻惑魔法で皇帝へとなりすまし帝国を支配した。

それから10年後…サーンの元部下であったリア・シルメインは陰謀に加わらなかったため殺害されたが、自身の霊を現世に繋ぎ止め、帝都牢獄に捕らえられていた主人公を助け出す。
リアの助言に従い、皇帝を救い出しサーンの陰謀を暴くために、タムリエル全土に散らばった「混沌の杖」の破片を集めに主人公は旅に出る。

特徴

  • メインクエストに縛られない自由な探訪
    • 20年以上続く『The Elder Scrolls』シリーズ最大の特徴となる自由度は本作からすでに確立されている。
    • ゲームクリアに必要なダンジョンは17箇所であるのに対し、100以上のダンジョンが用意されている。
    • 簡単なお使いからアーティファクトの探索まで、サブクエストも豊富。メインクエストを放置してタムリエルで日々を暮らすこともできる。
  • 広大なマップ
    • 後のシリーズ同様にタムリエル大陸を舞台にしているが、タムリエル全土を一挙に渡り歩ける作品は現段階では本作のみ*2
    • スカイリム地方のリバーウッドやホワイトランなど、最新作にも出ているような町や村も、既に本作の時点で登場している。
    • 町は広大だが、NPCから店の場所などの情報を得ると、マップに書き込みが増えていく。情報収集すればするほど迷いにくくなっていくという面がシステムから強調されている。
  • キャラクターメイク
    • 自分で一からキャラメイクする方法と、複数の質問に応えることで適性を選んでくれる2つの方法でキャラメイクが出来る。
    • 本作でプレイヤーが選べる種族はインペリアルとオークを除いた8種族となっているが、インペリアルもオークもゲーム内には登場している*3
      • カジートは今作では亜人ではなくほぼ人間の外見をしている*4
      • アルゴニアンも爬虫類の肌を持つと説明されているが尻尾がない。
  • 自由度とリアリティの高いシステム
    • 戦闘は画面切り替えのないシームレスバトル。武器を構えてマウス右ドラッグで自由に剣を振れる。
      • 横にドラッグすれば横薙ぎ、縦なら縦斬り、下から上なら突きといった形で、現在のシリーズよりもアクション性がバツグンに高い。
    • 時間の概念があり、夜になると店は扉を閉め、町中にも魔物が徘徊するようになる。
    • 魔物がいない場所ならどこでも休んでHPなどを回復できる。ダンジョン内でも場所によっては休める。
    • 魔法の合成やスリ、宝箱、扉のピッキングなど後のシリーズの要素は確立されている。

問題点

  • ファストトラベル
    • 後のシリーズでは目的の場所へ素早く到着できる便利機能程度だが、本作に限っては移動に必須。
    • というのも『Daggerfall』までは町の外は常にランダム生成され続ける仕組みになっており、しかも本作だけは道を直進し続けても次の町へ辿り着くことはない。下手にうろうろすると元の町に戻ることすら困難に。
    • さらにこのファストトラベルにも制限が有り、長距離を移動するときにレベルが足りないと死亡する。近くのダンジョンを攻略し、マップの中継点を増やしながら徐々に行ける距離を伸ばしていくしか無い。
  • 序盤の難易度が高い
    • ダンジョン攻略にかかった時間に比例してより強い敵が出現する仕組みのため、慣れずに迷いがちな最初の帝都牢獄のクリアが特に難しい。
    • 最初こそまともに太刀打ちできる小動物ばかりだが、暢気に探索しているとまともにやりあうのが難しい敵も平然と出没しだす。
    • シリーズの生みの親の1人、ケン・ロルストンですら牢獄脱出に20回はやり直したと言われている。
    • また、ダンジョン脱出時に説明書に書いてある内容の入力を求められる。当時の不正防止策の一つであった。
      • 当然無料ダウンロードできるバージョンにも搭載されている。付属のDocsフォルダ内にパスワード一覧が入っているので問題にはならないが。
  • 文字が読めない、読むのが辛い(Steam版)
    • Steam版をWindowモードで起動した場合、正直文字が読めない/読みにくい。
    • MS-DOS当時のドット全盛時代のプレイヤーや、ネイティブ英語話者ならこれでも押し切れるのかもしれないが…。一般的な日本人で頑張って英語を読んでいる程度のプレイヤーにはかなり読みにくい。
    • 滲み文字を再現したかったのだろうか?頑張れば判別は可能だがぼやっとしてて読むのに時間がかかる。フォントも書き文字書体に近いもので、雰囲気はいいが読みにくさを助長している。何気に時限スクロールが多いのも厳しい。
    • システム上改善の余地もあんまりないので頑張って読むしかないのが辛いところ。

総評

現在まで続く人気RPGシリーズの源流。
バランスの難やバグは既に多く、発売当時は辛辣なレビューも多かったが、世界観の作りこみや大胆な自由度がカルトな人気を呼び、20年以上続くロングシリーズになった。
最新作にまで登場する町やロケーション、神々などは今作でほぼ出揃っている。

英語でしかプレイできない点はハードルが高いが、Steamで無料配布中なので興味があればとりあえずDLするのもいいだろう。
『Skyrim』でのMOD活動の参考にもなる(『Arena』時代をモチーフにしたMODアリ)。

余談

  • タイトルになっている『Arena』だが、開発段階では文字通り「闘技場(Arena)」で戦う闘士となるゲームだった。
    • 世界中から強者が集まるという設定だったのだが、その出身地として現在も続くタムリエルという世界やシロディール、スカイリムといった地域が生み出された。
    • 開発していくうちに試合の合間に行えるサイドクエストが膨らんでいき、今のようなRPGの形式になったという。
      ただ、発売前のプロモーションが済んでしまっていたためArenaのタイトルのまま発売するに至った。
      • その闘技場でのクエストは本作には存在せず、実際にシリーズで闘技場で戦えるようになるのは『Oblivion』の発売を待つことになる。
    • 現在では「Arena」とはタムリエルを指して「(まるで闘技場のように)闘争の絶えない地」という皮肉を込めた呼び名という設定が後付されている。
  • 日本語には未対応。日本未発売のため当然だが、まだMODに対応していないこともあり日本語化も不可能。
  • 日本では未発売ではあるが、実はソフトバンクからSSで「Arena」というタイトルで日本語版の発売が予定されていた*5
    • 紆余曲折あって立ち消えになった影響が尾を引いてか、ベセスダがセガとの間に確執があることを窺わせることの一因になっているようだ。

The Elder Scrolls II: Daggerfall

【じ えるだー すくろーるず つー だがーふぉーる】

ジャンル RPG
対応機種 MS-DOS、Windows
発売・開発元 Bethesda Softworks
発売日 1996年8月31日
【Steam】2022年4月27日
備考 Steamで無料配布中
判定 なし

概要(II)

『The Elder Scrolls』シリーズのナンバリング第2作。今作は大陸西北方のハイロック地方とハンマーフェル地方の一部が舞台になっている。
建物やダンジョン内部を除くフィールドが1つの空間になった、いわゆる「オープンワールド」となり、その広さは現在までも語り継がれている。
『Arena』と同じく公式サイトで無料ダウンロード可能になり、2022年4月27日からSteamで無料配信されている。

ストーリー(II)

第3紀405年。
囚人だった主人公*6は皇帝ユリエル・セプティム7世と元老院主席オカトーに謁見を許され、恩赦の条件に2つの仕事を依頼された。
1つは戦死したライサンダス王の霊がダガーフォールの町で夜な夜な徘徊している原因を調査すること。
もう1つは皇帝がダガーフォールの女王へ宛てた手紙が届いていないので見つけ次第破棄すること。
早速ダガーフォールへ向かう船で旅に出たが、途中で船が難破。主人公は命からがら逃げ延びた洞窟から脱出することを試みる。

特徴(II)

  • 『TES』らしい世界観は健在
    • 後のシリーズでおなじみになる戦士ギルドや魔術師ギルドの他、暗殺者ギルドである「闇の一党(Dark Brotherhood)」のクエストも登場。
    • 後作でタムリエルの随所を度々騒がせる事になる異界の神々「デイドラロード」達も今作から登場している。
      • 現在まで続く世界設定の基礎を築いた作品と言えよう。
  • マルチエンディング
    • 最終的にどの勢力に協力するか、という選択によってエンディングが大きく変化する。
      • 意欲的な試みではあったが、シリーズを継続するにあたってマルチエンドが足かせになった。
      • このため後のシリーズでは「(時空の神の介入により)エンディングでの事象が全部同一世界上で起こった」という強引な事態が起こった事になっている。
      • そのうち1つにエンディングの1つに主人公が死亡する結末があるため、後のシリーズで死亡したことが確定している唯一の主人公になる。
      • この設定は「西の歪み」あるいは「平和の奇跡」と名付けられており、書籍として続編シリーズのゲーム内で読むことができる。

難点(II)

  • 広すぎて平坦なマップ
    • 現在でも数々のオープンワールドゲームが発表され、広さを競いあうように拡大していくが、本作は1996年にして既にその遥か頭上を行く広さを誇っていた。
    • その広さ、実に6,3000平方mile(約160,000平方km)。日本の国土の半分程度にあたる。そしてその中には15,000以上の町やダンジョンがあり、75,000以上の人々が生活している。
    • 実質無限に広がり続ける『Minecraft』や、1800京もの惑星が自動生成される*7『No Man’s Sky』などと言った例を除けば、この記録は23年もの長期間破られることはなかった(余談で後述)。
    • ただし、そのマップは現在のように完全に作られた世界ではない。
      • 広野の大半は自動生成された、高低差もない平坦な道のりものにすぎないことを考慮しなければならない。
      • 本作から直進してもどこかにたどり着くようにはなったが、とにかくただ広すぎるだけで退屈なマップなので、まともに遊ぶにはやはりファストトラベル前提。だが、前作同様、FTで距離が長すぎると死亡する危険性がある。
    • 次回作『Morrowind』が25平方km、『Oblivion』や『Skyrim』が41平方kmの完全固定マップになったことを考えると、広すぎる自動生成マップは「遊ぶには現実的でない」と反省したのであろう。そういう意味でも特徴的な要素だったといえる。
  • やっぱり難しい初期ダンジョン
    • ランダムに手に入る初期装備によってはインプやスケルトンが強敵に。もはや運ゲー。
  • またしても読みにくい文字(Steam)
    • MSDOSのソフトなので仕方ないことではあるのだが、日本人が頑張って英語を読むというシチュエーションにおいてはハードルの高いフォントや文字表示である。
    • 次項の日本語未対応問題と同様改善不能の問題なので、解決策はこの文字で差し支えなくなるほど英語に習熟することただ一つである。
  • 日本語未対応
    • 『Arena』同様日本未発売。MODの概念もないため、英語でプレイするしかない。

総評(II)

MODがなく日本語化不能なので、『Arena』同様プレイするためのハードルは高い。
破格の広さを誇るフリーローミングRPGやTESの原点を無料で体験してみたいのであれば、勇気を出して踏み出してみよう。

余談(II)

  • 長らくオープンワールド最大面積の記録を保持してきた本作だが、2020年に初めてそれ以上の広さの作品が登場した。
    • その作品は『Microsoft Flight Simulator』(XSX/Win)で、衛生データやAIの機械学習アルゴリズムを用いて地球全土をフィールドとしている。
    • フライトシミュレーターなので地上に降りて冒険するのは不可能で、正確にはオープンワールドとは異なるものの、宇宙でも自動生成でもない地上のフィールドで本作を上回ったのはこのゲームが初である。
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最終更新:2023年08月23日 14:50

*1 後のシリーズでは「オブリビオンの領域」と呼ばれるようになる。

*2 『The Elder Scrolls Online』では最終的に全土を開放予定。

*3 オークは『Morrowind』までプレイヤーキャラとして選べなかった。

*4 後付だが、カジートには生まれた時の月の満ち欠けによって外見が変わるという特徴がある。

*5 ちなみに、日本語版でのメインイラストはMDの『シャイニング』シリーズや『フェーダ』シリーズの玉木美孝氏が担当。

*6 ゲーム中では囚人であったことは説明されないが、説明書に主人公の経歴が載っている。

*7 ただし、このゲームの場合は「同じ惑星でも1箇所だけ地形が異なれば別惑星」として扱われるため、実際には「天文学的な数の水増し」だという指摘もある。