ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ

【どらごんくえすとびるだーず あれふがるどをふっかつせよ】

ジャンル ブロックメイクRPG



対応機種 プレイステーション4
プレイステーション3
プレイステーション・ヴィータ
Nintendo Switch
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 PS4/PS3/PSV 2016年1月28日
Switch 2018年3月1日
定価(税別) PS4 7,800円
PS3 6,800円
PSV 5,980円
Switch 4,800円
廉価版 アルティメットヒッツ
全機種2016年12月1日発売
定価(税別) PS4 3,800円
PS3 3,480円
PSV 2,980円
判定 良作
ポイント ドラクエ版『Minecraft』
初心者にも遊びやすい作り
ドラゴンクエストシリーズ


概要

「物作り・町づくり」という新しいテーマのドラゴンクエストシリーズ作品。
ドラゴンクエストの世界観と、広大なフィールドを自由に駆け回って冒険するサンドボックス要素を融合させたゲーム性を持つ。
サンドボックスゲームに代表される自由度と、RPGに代表されるストーリー性の両方を兼ね備えており、ドラゴンクエストシリーズの名を冠するにふさわしい作りとなっている。

「ブロックメイクRPG」という公式ジャンルが示すように、サンドボックス系ゲームの著名作『Minecraft』の「ブロックを積み上げて物を作る要素」が取り入れられている。
全てがブロックで構成された広大なフィールドでアイテムを集め、それを組み合わすことで新たなアイテムを生み出し、ブロックを積み上げて街造りを行うことにより、ストーリーを進めていく。

本作の物語は初代『ドラゴンクエスト』のIFストーリーとなっており、同作の最終盤において発生する「竜王の勧誘」イベントにて、主人公が竜王の誘いに乗ってしまいバッドエンドを迎えてしまった後のアレフガルドが舞台となっている。

プレイヤーは『物創りの力』を持つビルダーとなり、荒廃したアレフガルドを復興させつつ竜王討伐を目指す。


ストーリー

アレフガルドに侵攻する竜王の魔の手を食い止めるべく旅立った勇者ロトの血を引く若者は、
竜王の罠にはまり行方知れずとなった。
竜王の手に落ちたアレフガルドはモンスターが跋扈する闇の世界と化し、
人々は物を創造する力を奪われ、年月と共にその数を減らしていった。

それから数百年後。精霊ルビスの加護の下、絶望にまみれた大地に一人の若者が降り立った。
アレフガルドから失われた「創造する力」を備え持つ存在「ビルダー」であるその若者は、
持ち前の能力を駆使してアレフガルドを復興させ、世界を支配する竜王を打倒すべく奮闘していくのであった。


特徴

物作り

  • プレイヤーは、作業台でアイテムを使うことで別のアイテムを作り出すことが出来る。これこそが、本作のプレイヤー最大の能力である。
    • 作れるアイテムは武器や防具、食料など多岐にわたる。
      • おなじみの銅の剣や鉄の盾など店で売られていたものの他、最終的には魔法の玉などの本編シリーズでは非売品だったアイテムも作れたりする。
      • 作るアイテムによって必要な作業台が異なり、場合によっては複数のアイテムを必要とする場合もある。
    • イベント用など、1つしか作れないものもあるが、フリービルドモードなら旧作では一品物だったアイテムを結構作成できる。
  • 素材や作成したアイテムは、収納箱や大倉庫に入れて保管することができる。
    • 特に大倉庫は作成まで一苦労な分、どこからでもアクセスできるという4次元ポケットのような便利アイテムに。収納量も多いが、流石に1つしか設置できない。
    • 一方、収納箱は設置可能な数に上限はなく、1つでも結構な種類が入れられるのでカテゴリ別に分けて収納しておくと便利である。
      • どちらの場合も、作成を行う際は勝手に収納箱に入っているものも参照してくれるので、わざわざ取り出す必要がない。
      • とあるアイテムを作成して使用すると、原作のBGMが流れるようになる。
      • カラフルなブロック素材もあり、これでドット絵を描くなんてことも可能。

街作り

  • ゲーム中では拠点と呼ばれるエリアポイントが決められており、NPCの住人はこの拠点で生活する。
  • 拠点内にブロック等を使って部屋を作ることで、住人は部屋を使って生活する。
    • 部屋は照明と2マス以上の壁と一定範囲内の広さがあれば形状は問わない。また、その中に色々な家具を設置することも可能。
      • 部屋内部に設置したアイテムによって、工作部屋や台所のような特殊な効果を有する部屋に変化したりする。
    • 部屋によっては様々な特殊効果を持ち、ゲームが有利になる場合もある。
      • 作製系の部屋ならば住人がその部屋に応じたアイテムを作成して箱に入れておいてくれたり、衣装系の部屋ならNPCが着替えてパワーアップしたりする。
      • こういった部屋に必要なアイテムの一覧を作中では「レシピ」という。部屋のレシピは人に教えてもらうケースは少なく、自分で手探りで探す必要がある。
    • 部屋にベッド類を置くことで、住人は夜になるとそこで眠るようになる。なくても別に文句は言われないが、少なからずキャンプレベルに影響する場合も。
      • 部屋で寝る場所はそのキャラが最初に寝た場所で固定されるが、個室を作ってやると指定キャラを任意の部屋に移動させられる。
      • 衛兵タイプのキャラは例外で、寝ることなく拠点内を見回ってくれる。
  • 部屋の中にアイテム等を置くことでキャンプレベルが上昇し、これに応じてストーリーが進行していく。
    • 部屋の種類によっては、特に機能を持たないがキャンプレベルを上げやすい、というものもある。
  • 拠点はちょくちょく敵に襲われるため、防衛する必要がある。
    • 基本的におおきづち系やよろいのきし系といった、頑健な装備を持ったキャラは脆い壁なら容易に破壊してくるので注意が必要である。
    • 敵が襲来してきたときのために、トゲ床や大砲といった防衛装置を設置することもできる。
      • 大砲などのアクティブな装置はスイッチによって触れるだけで発射できるようにもできる。
  • 特殊効果を得られないが、寝るだけであれば拠点でなくてもいい。
    • なので、照明もしくはそれを作れる作業台を持ち運んでいれば、出先で簡易宿を作ることも可能。
      • 夜に出てくるゴースト系モンスターは結構うざいので、時間を気にしないならさっさと休んでおくのも手である。
  • フィールドに存在するものは、大体が破壊することでアイテムに変化する。ただし、イベント上破壊できないものは除く。
    • 一部、特定の装備を使わないとアイテムに出来ない場合がある。
    • 廃墟となった砦などから、タペストリや燭台といったその時点で作製不可能な家具をごっそり持っていった、という人は多いはず。
      • ただし、時折建造物がサブイベントの舞台となっている場合があるので、手当たり次第かっさらっていくと重要な個所を破壊してあとで後悔する可能性もあるので注意。

戦闘

  • サンドボックスらしく、戦闘はシームレスとなっている。
    • 敵に近づき武器で攻撃することでダメージを与えることが出来る、アクションRPG寄りの戦闘となっている。
      • 武器は一度に5つまで装備でき、ワンタッチで変更できる。掘削用・伐採用・戦闘用・強敵用、と用意しておくと便利。
      • 武器は攻撃を当てると・防具は攻撃を受けると、それぞれ耐久度が減少していき最終的に壊れてしまう。アクセサリは一品物ばかりなので破壊されない。
    • 敵によってはこちらを認識して積極的に攻撃し、ダメージを与えてくるてくる場合もある。逆に、ぶつかりでもしないと襲ってこない敵もいる。
      • ちなみに、攻撃してこない敵で代表的なのはおおきづち。襲ってこないのは「最近竜王軍に加わったため、特に人間への恨みなどがないから」だが、これは原作(『DQ1』)で敵として登場していない事が由来。
    • 敵から距離を取ったりすることによって戦闘は回避出来るし、ごくごく普通に逃げ出すことも出来る。
      • 同様に、従来なら回避不可能である敵の呪文も、発動音を聞いてから回避行動をとることで十分当たらないようにできる。むしろ、毒矢などの特殊攻撃の方が発動音がない分厄介である。
      • 爆弾岩のメガンテはメ・ガ・ン・テとカウントダウンのように唱える仕様。初接触時、恐々としながら殴り、「メ」の吹き出しを見て慌てたプレイヤーは多いはず。
        なお、メガンテなどの大爆発を伴う攻撃や、ギガンテス等の大型モンスターの攻撃は周囲の地形を大きく破壊するという厄介な性質を持つので要注意。『Minecraft』でいうクリーパーなどに近い仕様。
    • 馬鹿正直に正面から殴り合う必要はなく、事前に穴を掘ってトゲ床を仕込んでおいたり遠距離から大砲で一方的に攻撃したりと、アクション要素込みの戦闘にふさわしく戦略的な立ち回りが可能。
      • ご丁寧に、大砲はある程度敵をサーチしてくれる。
  • 敵を倒した時、アイテムは落ちやすくなっているが、代わりに経験値を入手することだけは出来ない。結果としてプレイヤーの成長要素は第一章の中盤で特殊な技を一つ覚えること以外は、「命のきのみ」による章ごとの最大HPアップに集約される。
    • これは「本作の主人公はあくまで「物を作るビルダー」であって、敵を倒して経験を得る「戦士」や「勇者」ではない」という設定のため。
      • 一方で、自分で作ったものだからか装備は勇者キャラ・前線職並みに重厚な装備までなんでも可能。「ありがたいけど、それは本当に装備できてしまっていいのか」と思うものもあったりする。
    • これに伴いレア敵・メタルスライムの存在意義が根本から変化。結果、キャラを「危ない水着」に着替えさせるという何ともアレな家具の素材を落とすようになった。
    • 他にも特定のモンスターが稀に落とす素材を使うと、キャンプレベルを上げやすいレアな家具を作製できたり、あるいはそのレアな家具そのものを落とす場合もある。
  • 敵から攻撃を受けたり、落下したりすることでHPが0になると死亡し、装備以外のストックアイテムの半分を失って拠点に戻される。失ったアイテムは死んだ地点に戻ることで確実に取り戻せる。
    • これ以外にも、取得しなかったドロップアイテムや捨てたアイテムも、永久にその場所に残り続ける仕様。セーブ&ロードを経ても消えないし、『Minecraft』と違い時間がたっても消えないため、うっかりミスしても安心である。

章構成のストーリー

  • ストーリーモードは4章構成となっており、1章がメルキド編、2章がリムルダール編、3章がマイラ・ガライヤ編、4章がラダトーム編となっている。
    • それぞれの章毎にマップもセーブデータもプレイヤーの状態も独立しているため、前章で手に入れたアイテムや素材等を次章に引き継ぐことは出来ない。
    • 4章というと少なく感じるが、各章はそれぞれ「資源豊富な初心者向け」「一面毒の沼&状態異常攻撃のオンパレード」「序盤は食料希少だがメカニカルなアイテム多数」「一面灰色で条件を満たさないと素材採取すらできない絶望的世界」と特色がかなり際立っている。

知られざる島

  • 自由にクラフトを楽しむことが出来る「フリービルドモード」が用意されている。
    • フリービルドモードは1章クリア後に解放され、章をクリアするごとに要素が追加されていく。
    • 自分が作った街に人間、モンスター問わず住民が来てくれる事も。なお、住民は話しかけることで同行者になってもらうことが可能。
      • モンスターに同行してもらった場合、敵として使用してきた能力も使用してくれたりする。
  • 『Minecraft』のクリエイティブモードのように、自由に空を飛んだり全てのブロックを自由に出す事はできないが、素材を拾っては島を発展させていくというように、冒険のように楽しめる。
  • 拠点となる島の周囲の島は、ストーリーモードの各章の舞台がモチーフとなっている。周囲の島を壊して素材を集めていく事になるが、これらの島は自由に再生成する事が可能。素材は実質無限に手に入る。
  • 自分の作品をネット上に公開する事もでき、他の人の作品も呼び出す事ができる。
    • 「じぶんのビルド石」を使えば、縦横奥行きそれぞれ32ブロック分の大きさの建物を登録でき、「みんなのビルド石」で、それらをランダムもしくはパスワードで任意の作品を呼び出せる。

Switch版の変更点

  • 後発のSwitch版では一部要素が追加・変更されている。
    • チャレンジの「○○日以内にクリアする」が「アイテムを○○種類入手する」に変更されている。
    • フリービルドモードではベビーパンサーが登場。
      • 背中に主人公が乗って移動でき、素早く移動するうえに2段ジャンプも可能。
      • 敵を踏みつけるとダメージを与え、初代ドラクエのドット絵シリーズのパーツを作れる材料が手に入る。
      • 攻撃力は、主人公が乗る際に装備した武器に依存する。
    • フリービルドにおいて、ドット絵シリーズをクラフトするための作業台があり、なんと初代ドラクエのカセットの形をしている。
      • タイトルラベルはもちろんの事、背面の注意書きのシールや端子も忠実に再現されているという、こだわりよう。

評価点

RPG×サンドボックスという試み

  • 街作りなどはある程度の指示はあれど高い自由度をもって望むことが出来る。
    • 一方、ストーリー性に基づいて各種クエストをこなしてクリアしていくという明確な指標・目標を導入したことにより、それまでのサンドボックスにありがちだった自由度の高さや説明の少なさから来るとっつき難さを払拭して遊びやすくなっている。
  • 初回プレイだと色々な発見が出来るため、中毒性が高いという探索要素もふんだんに用意されている。
    • 特に出来ることがどんどん増えていく1章は、まさに冒険しているという感覚を存分に味わうことが出来る。
  • ストーリーモードのNPCはしっかりとしたキャラ付けがされており、単純なNPCというわけではない。
    • 部屋の種類によってはプレイヤーが不在の時にアイテムを作ってくれたりもするのも、ただの住人といったイメージに収まらないことを印象づけてくれる。
  • 自由にあらゆる場所に到達できる
    • 本作では、そこら辺の土を削って階段状に積み上げることで、RPGなら進行不可能な山なども容易に突破できる。おかげでフィールド内では基本的に行けない所はない。
      • 装備に余裕があるならむしろ山を掘ったっていい。足を滑らせるのが怖ければ、階段&柵で舗装するのもよし。
      • ちなみに、設置した土などは地面から切り離しても浮きっぱなし。なので浮遊物体も作れるし、重量制限などない。
    • この関係上、フィールド上にはストーリーに関与しない様々な寄り道要素が隠されている。時には頼まれごとをされたりする場合も。
      • こういった隠し要素があるため、フィールドを探し回るのが楽しい。
      • 脱出不可能な状況に陥っても、アイテムを失うが強制的に拠点に戻ることができるコマンドが存在する。
  • 装備は製作出来る物がストーリーの進行に合わせて順番に解放される形になっており、次にどの装備を作れば良いか分かりやすい。
    • 装備自体もシリーズ馴染みの物が登場し、序盤は「たびびとのふく」などを装備して、そこから「かわのよろい」や「てつのよろい」に乗り換えていくため、強くなっていく感覚を味わえる。

クラフトゲー初心者にも優しい作り

  • クラフトゲーは基本的に目標どころかチュートリアルも用意されないことが多かったりするが、
    本作の導入部はクラフトゲーに馴染みがないプレイヤーにも分かりやすいチュートリアルがしっかり用意されている。
  • 地面に設計図をおいて建物を作るため、初心者でも必要な素材やブロックの置き方が分かりやすい。何も思いつかなくても指示に従っていけばとりあえずはどうにかなる。

街の設計等の自由度の高さ

  • 作るものは時折指示される場合もあるものの、基本的には自由に作ることが可能。
    • 空中都市にするなり水中に沈めるなり、ストーリー進行に関係しない範囲で好きに弄り回せる。どんな街でも苦情は来ない。
  • 街以外にも面白おかしいオブジェクトを自由に作るのもあり。ドット絵を再現してみるのも一興。
    • 高さに制限があるので、あまり縦に大きいものは作りづらいのが難点。十階建ての塔などは諦めよう。
  • ツボやタル、壁掛け等の小物も豊富であるため、プレイヤーが好きな街を作ることが出来る。
    • 原作の街もある程度であれば再現することが可能。もちろん、無視して全くオリジナルの街を作るというのもプレイヤー次第。
      • 原作再現要素の最たるものは、かつてのメルキドにあった庭園のパーツを再現した「メルキドガーデン」という部屋が存在している。
      • 原作再現のレシピはこれしかないが、代わりにメルキド以外にも置くことが出来、そして獲得できるポイントが非常に多い。
    • 3章やフリービルドで登場する、機械系アイテムなど便利且つ楽しいアイテムもあり。
      • トロッコは線路で結べば任意の場所まで楽に移動できる。何なら、トロッコの名を借りたジェットコースターにしてもいい。ループはできないけど。
      • 車のような乗り物もあり、体当たりで大ダメージを与えられる。ドラクエの世界観に合うかはアレだが。

可愛らしいキャラクター

  • プレイヤーやNPCをはじめとしたキャラクターは3頭身ほどのポップでかわいらしいデフォルメで描かれており非常に愛らしい。
    • モンスター側も通常サイズ・巨大サイズ(ギガンテスやトロルなど)含めて元デザインを忠実に再現しつつ、プレイヤーやNPCと同じポップなデフォルメで統一されており、巨大サイズのモンスターは巨大らしく迫力満点に描かれている。
    • よく見ると各種モーションは概ね『ドラゴンクエストX』から流用されているのがわかる。同作に登場していないリカント系、ドロル系などは例外だが。
  • 自分が作った建物を使ってくれる様子を見ると、うれしく感じられるはず。

違和感のない綺麗なグラフィック

  • ブロックで景色を表現する本作だが、ドット絵を強調したフィルタリングなしのテクスチャではなく、ブロックの角に丸みを感じさせるように見せたり、隣接する異なるブロックとの境界線を、やや浸食させるように表示したり、ブロックの置く位置によって、同じブロックでも模様や濃さがやや異なるようにしたりと、自然に見せる工夫がなされている。

初代ドラクエのプレイヤーをにやりとさせる演出

  • 本作のストーリーは、メルキドから始まって、リムルダール、マイラ・ガライヤと、原作本編の勇者の辿った道筋を逆に遡っていき、全ての始まりの地であったラダトームが最終章の舞台となる。
    • また、各章ではDQ1の登場人物の子孫と思われるよく似た名前の人物が多数登場する他、初代ドラクエの説明書のストーリー紹介で名前しか登場しなかった預言者ムツヘタもキーパーソンとして登場する。
  • 本作のストーリーの発端を作ってしまった元勇者こと『I』の主人公も驚きの形で再登場を果たす。
    + ネタばれあり
  • 「仲間になれば世界の半分(闇の世界)を譲る」との竜王の誘いに乗った結果、文字通りの意味で世界を闇に陥れられた挙句、薄暗い建物に閉じ込められてしまい、長い幽閉生活の末に狂気に堕ち、自分が世界の王と思いこむようになってしまった。
    • ロトの剣なども装備しているのだが、よく見ると宝玉が抜き取られてなくなっているなど、勇者の資格を失ったという描写がなされている。更に、作中の登場人物は誰も彼を「勇者」とは呼ばず、一部を除くほとんどの人が世界を闇に包んだ元凶と見なして忌み嫌う態度を見せる。
    • 過去の勇姿も見る影もなく変わり果て敵味方双方からも悲惨な扱いを受けてしまっているが、その行動に至るまでの経緯に関しては「旧作で世界を救ったはずの勇者が闇に堕ちた」という設定への救済的な内容になっており、プレイヤーにとっても納得し易いものになっている。
      • ちなみにそのいで立ちはFC版シリーズをプレイした人ならニヤリとできる「パンツマスク姿」。である*1
    • なお、彼との戦闘で勝っても完全に倒せぬままどこかへ逃げていくが、その後の顛末については劇中では描かれていない。
    • ストーリー進行に合わせて、ベッドで寝ると当時の彼の視点を追体験することができる。
    • シリーズものの主人公が闇落ちする展開は、本編ストーリーでやられると批判されることが多いが、本作が外伝作品であること、シリーズの作風上、明確な人物像もなく、原作本編で実際に竜王の誘いに乗ることができる(原作ではバッドエンドとなりゲームが強制終了する)という展開に基づいたストーリーであったため、むしろ驚きの声の方が多かった。
  • 四角いブロックを積み上げて作る街の外観はどことなく、森や岩などの模様を描いた四角形のマップチップを敷き詰めることで作成するファミコン時代のグラフィックを思い起こさせるテイストがあり、美しいながらもどこか懐かしさが漂う。

賛否両論点

おつかい要素が多い

  • ストーリーの大半で「いずれかのNPCのお願い事を聞き、それをクリアすることで新たなお願い事がでる」といった流れになっている。
    • 良くいえば、サンドボックスという自由度の高いゲームにおいて迷うことなくプレイ出来るのだが、悪くいってしまえば最初から最後までやらされている感があるのは否めないところである。
    • ただ、これまでサンドボックス系作品に触れたことないプレイヤーにとっては、このシステムの御陰で迷うことなくプレイすることができ、その点を鑑みればメーカー側の配慮であるともいえる。
    • 初心者に馴染み易いよう手厚い配慮を施すのがドラクエシリーズの伝統であると共に、ストーリー性も重視された作風であるため、一概に悪いとも言えない
  • クリアに必要なアイテムも手に入れるのに時間がかかってしまう事もある。アイテムや素材によっては特定の敵を倒した際に手に入るドロップ、特定の地域で釣りをするなど入手条件も厳しい。
    • 木や食料アイテムを苗から育てることも可能だが、育つまで一定時間掛かるためテンポが若干悪い。特に、ストーリーイベントで必要なアイテムを育てるシーンでは、数日要するので急ぎたい場合はより億劫に感じやすい。
      • ただし、どちらも通常の素材程度ならそこまで重要ではない。

最序盤のストーリー展開とモチベーションへの配慮不足

  • 本作はドラクエらしく、シビアな人間関係がストーリーの根幹に敷かれた章が存在しているが、スタート直後の第一章から「お使いして町が立派になり町民の頭数が増えていく度に人間関係に不和が生じる」という展開が長く続く。
    • これ自体は舞台となる町のストーリー背景上*2のことなので仕方ないのだが、クラフトに不慣れなプレイヤーにとっては懸命に町を作ってもその度に険悪の度合いを深めていく様を見せられることになり、モチベーションの減退にもつながってしまう。
      フリービルドの解禁がその第一章のクリア後でもあり、最序盤にプレイヤーのモチベーションを削る事への配慮不足の感は否めない。

防衛戦や竜王軍バトルの存在

  • ストーリーの節目で発生する竜王軍バトルや時折発生する防衛戦では拠点を守るために敵と戦うことになり、敵を撃退し拠点を守ることが目標である。
    • 熱い展開であるのは確かなのだが、クラフト好きのプレイヤーにとっては、これが発生する度に拠点が敵(或いは自分自身)の攻撃によって破壊されることとなり、ストレスとなる。ボスなどはプレイヤーへの攻撃半分、拠点への攻撃半分といった感じで攻めてくるため、慣れないと終わった後に廃墟になっているなんて場合も。
      • 特に3章ではギガンテスなどの巨大かつ、攻撃力が高い敵が相手となる竜王軍バトルがあるため立ち回り次第では拠点が半壊することも十分ありえる
      • この辺りは「クラフト要素を取り入れたRPG」として考えれば、ストーリー的に仕方ない点でもあるのだが。
    • 前述した車型の乗り物を使ってボスを倒すステージがあるのだが、扱い方に癖があり慣れが必要。
    • 4章では、爆弾岩が何もしないうちからメガンテを使ってくるという初見殺しをかましてくる。発見した時点で既にメガンテの「テ」だった時の絶望感は相当なレベル。

チャレンジの存在

  • それぞれの章にはチャレンジと呼ばれるいわゆる実績のようなものが用意されており、クリアすることでフリービルドモードでクラフト出来るレシピが増えていく特典がある。
    • それぞれの章を一度クリアするとチャレンジの内容が確認可能となるため、実質はクリア後にチャレンジの項目達成を目指すことになるのだが、唯一「○○日以内にクリアする」というチャレンジの場合は未達(日数超過)の場合は再度その章を最初からやり直す必要がある。
      • 日数制限のチャレンジはスピードクリアを意識してプレイすればそこまでシビアな目標ではないのだが、このプレイングを行うと折角の世界をゆっくり見ている余裕はなくなってしまう。
        1周目は普通に堪能して、2周目以降に日数制限にチャレンジすることを想定しているのかもしれないが、それはそれで手間である。 いわゆるヤリコミプレイにあたる部分とみなせるが、ゲームの根幹との背反性があまり考慮されなかった要素なのは否めない。
  • チャレンジをクリアすることによってフリービルドモードで作れるレシピが増えるという仕様である。そのため、「フリービルドモードで自由に楽しみたい」というプレイヤーにとってもチャレンジは重要。
    • そして、チャレンジクリアで作れるものの中にはオシャレな屋根や、硬いブロックでも採掘出来るビルダーハンマー、建築に便利なそらとぶくつなど有用性の高いものも多いこともあって、チャレンジを完全に避けることは難しい。

章ごとにデータが分かれている

  • 本作では章ごとにセーブデータが独立しており、章ごとに行き来をすることは出来なくなっている。
    • たとえば1章で手に入れたアイテムはおろか、成長したHP等も一切持ち込むことは出来ない。
    • 要は、それまでの積み重ねがリセットされてしまうのだが、他章のアイテムや素材を自由に持ち込めてしまうとゲームバランス面に影響を及ぼす可能性も考えられるため、一概に問題点とは言い切れない。
    • ちなみに、事前情報がなくても勘のいい人なら1章の終盤でそのことに気付く。何故なら、見るからに過去シリーズで貴重な品(オリハルコンなど)がいきなり手に入るから。

問題点

カメラワークが悪い

  • 屋根のある部屋や洞窟内などに入った場合のカメラワークが非常に悪く、一言でいってしまえば全く中が見えない。
    • カメラリセットをすることでカメラの位置がリセットされるようにはなっているが、3Dアクションの作品では自動で切り替えするのがほぼ普通なだけに、この点の配慮不足は首を捻らざるをえない。
    • 一応、カメラの位置を無理矢理ひっかけて一人称に近い視点のすることは可能。が、裏技に近いので、説明書などには当然載っていない。
      • そのくせ、一部には割と複雑なダンジョンが登場しており、この方法を使わないと間違いなく迷う。
    • ただ、発売当時の時点ではカメラが壁を透過するようなカメラワークはKONAMIが特許を独占していたためできなかったので仕方のない面もある。
    • この問題については、後発のswitch版で改善された

ストーリーモードの物作り、街作りの自由度の限界

  • 防衛戦や竜王軍バトルの存在や、素材が有限という難点があるため、街づくりの自由度にも限度がある。
  • そもそも章ごとに作れるアイテムに差がある。特徴的なアイテムはまず1,2つの章でしか作れない。
    • ボスを倒しても、拠点のランダム襲撃が存在するため、常に拠点を壊される可能性がある。
      • これに関しては、固い岩などを周囲に配置したり町の周囲を穴で囲んだりすることで破壊されることは防げる。しかし、外見にこだわりたい場合は厳しい。
  • 本作の素材は時間経過によって復活しないため、ずっとプレイしていると素材は減る一方である。
    • 結果として最終的には素材が枯渇することもあり得、調子に乗って素材を使いすぎて、必要なアイテムを求めて延々さ迷い歩く羽目になったりすることも起きうる。
      • 後のアップデートで『ストーリー進行に必要な素材をモンスターが落とすように変更された(素材自体が復活しない点は同様)
    • フリービルドモードの場合は素材を復活させる手段があるため、この問題は起きない。

公式ジャンルがあくまで「ブロックメイクRPG」であり、元からストーリー性を重視している作風なので、上記の点はストーリー展開の都合上の措置であるとも言え、仕方ない側面もある。
「ストーリーモード=クラフトスタイルのドラクエを楽しむモード」「フリービルドモード=クラフトを楽しむモード」と割り切った方がいいだろう。

痒いところに手が届かない仕様

  • アイテムを作る時は1個作るか、持っている素材を全て使って作るかの2択。任意の個数を作ることが出来ない。
  • 昼夜の流れがあるのだが、時間の流れが速い。
    • 夜は拠点で休んだ方が良いとアドバイスされるが、昼の時間が短いので軽く遠出をして色々なことをしているとすぐに夜になる。
    • 夜は基本的に休むことを前提としているためか非常に暗くなり、環境次第ではかなり見づらくなる。その上、ゴーストが執拗に追いかけてくるため面倒。
      • ゴーストは(3章や4章で出現するものを除けば)強くはないがとにかく邪魔といった印象。チャレンジのタイムアタックをやる上で夜更かしは避けて通れないためストレスがたまりがち。
  • 制約が多い。
    • フリービルドモードの自由度は高いが、それでも収納箱などの設置数に上限があったり、一部の地形に手を加えられなかったりするため、果てしない拡張や思った通りの建築を出来ない場合がある。
    • 部屋の判定には広さと高さも含むため、あまり大きな部屋や高低差のある部屋を作る事は出来ない。
  • データ量が多いため、セーブやロードが長め
    • 前述の通り、このゲームは広大なシームレスなフィールドに加え、配置されたドロップアイテムが時間経過やセーブ&ロードで一切消滅しない。そのため、データ量が結構なことになっている。
      • セーブやロードもさることながら、新しいフィールドを作る際も少し待たなくてはならない。フリービルドでは何度もフィールド生成をすることになるので特に。
    • 一方で、よほど同一フィールドに大量にブロックを置かなければラグが出たりしないなど、プレイ自体は快適である。
    • 据え置き機のPS3/PS4と携帯機のPSVで同時発売されたが、この膨大なセーブデータ容量が仇となり、売りの1つになるであろう機種間でのセーブデータ共有(クロスセーブ)は実装することができなかった。

住民のAIの性能が悪い

  • 「はしごの上り下りができない」「建物まで橋があるにもかかわらず最短距離を行こうとして池に水没」「通常の武器では倒すことのできない敵にも殴り掛かる」など、全体的に住民が謎行動を取る事も多い。

総評

『サンドボックス系ゲームの有名作『Minecraft』の要素を取り入れたRPG』という試みに賛否両論が多数上がった本作。
ドラクエそれ自体が入門者や初心者に馴染み易い作りを心がけているシリーズだけあり、サンドボックス系ゲームに馴染みの無い層にも受け入れられ易くなるよう、ゲーム性の要となる土台をしっかり作りこんでいる。

第1作ということもあってやはり細かい不満点が多々存在し、改良の余地が多分にある事は否定できない。
だが、異なるジャンルであるこの2つの要素をしっかりとまとめ上げており、ドラクエとしてもマイクラ作品としても違和感や破綻のない仕上がりと言える。
少なくとも「RPG+クラフト系ゲーム」という化学反応の結果として、成功と評価可能な作品であることは間違いない。

ストーリー性を含んだサンドボックスゲームということで、自由度の高さの面では本家に一歩譲る点はあるが、その分、初心者や興味のないプレイヤーにも入門編的な位置づけでおススメできる。
サンドボックスゲームに興味のある初心者や、マインクラフトが好きでドラクエも好きというプレイヤーにはぜひとも触れてみていただきたい1作である。


余談

  • 続編『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』が2018年12月20日にPS4/Switchで発売された。
    • 内容は『DQ2』のその後となっている。本作を進めることで入手できるトロフィー(Switch版はセーブデータ)が存在すると引継特典を入手可能。詳細は作品ページを参照。
    • 今作での問題点が一部改善されている
  • 2024年2月14日にSteam版がリリースされた。2022年リリースのスマホ版準拠となっており、遠方にブロックを置く機能や、『2』に登場した一定範囲内を一気に壊せる機能等が搭載されている。

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最終更新:2024年02月14日 20:26

*1 FC版『III』における主人公の父親のキングヒドラとの戦闘中のグラフィックが「盗賊カンダタ(グラフィックは殺人鬼系モンスターの流用)」の流用だったため。ROM容量の不足による代用だったが、海外版やリメイク版では新規のグラフィックが作られている。

*2 第一章の舞台となるメルキドは「魔物の侵入を許さぬ堅牢なシェルターを作って閉じこもったため作物すら作れぬまま飢えに苛まれ、疑心暗鬼から互いに醜い争いを繰り返した末、城壁の門番であったゴーレムに街を脅かす敵と認識され滅ぼされた」という顛末を辿っており、その経緯を知っているあるNPCが序盤から街の発展に反対している。