CROSS†CHANNEL

【くろすちゃんねる】

ジャンル 学園青春アドベンチャー
対応機種 Windows 98~XP
発売・開発元 FlyingShine
発売日 2003年9月26日
定価 9,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 DLsite:2019年5月31日/6,264円
判定 良作
ポイント 明るい青春劇に萌えも完備
本編内の移り行く雰囲気
テーマは普遍にして重い


概要

  • 群青学院放送部に所属する8人を中心に描かれた青春劇ADV。
  • シナリオライター・田中ロミオによる初作品でもある。

あらすじ

生きている人、いますか?

夏。学院の長い夏休み。崩壊しかかった放送部の面々は、個々のレベルにおいても崩れかかっていた。
初夏の合宿から戻ってきて以来、部員たちの結束はバラバラで。今や、まともに部活に参加しているのはただ一人という有様。
主人公は、放送部の一員。
夏休みの閑散とした学校、ぽつぽつと姿を見せる仲間たちと、主人公は触れ合っていく。
屋上に行けば、部長の宮澄見里が、大きな放送アンテナを組み立てている。
一人で。
それは夏休みの放送部としての『部活』であったし、完成させてラジオ放送することが課題にもなっていた。
以前は皆で携わっていた。一同が結束していた去年の夏。
今や、参加しているのは一名。
そんな二人を冷たく見つめるかつての仲間たち。
ともなって巻き起こる様々な対立。そして和解。
バラバラだった部員たちの心は、少しずつ寄り添っていく。
そして夏休み最後の日、送信装置は完成する―――
装置はメッセージを乗せて、世界へと―――

公式サイトより抜粋。

登場人物

CVは左側が18禁版、右側が全年齢版

  • 黒須 太一 (CV:なし)
    • 本作の主人公で群青学院二年生。地毛の白髪が目を引く美少年だが、自身の容姿を醜いと思い込んでいる。
    • その独特な感性や言動から、普段は学院の問題児として有名。
  • 山辺 美希 (CV:榎津まお / 野中カオリ)
    • ウェーブがかった金髪と慎ましい胸元が特徴の一年生。無邪気で明るく、太一のノリについていける数少ない人物。
    • 太一からは、親友の佐倉 霧と共に「FLOWER'S(お花ちゃんたち)」と命名されている。
  • 佐倉 霧 (CV:中瀬ひな / 沢野冷果*1)
    • 大人しく無口で、中性的な容姿の一年生。普段は控えめな性格ながら、時に頑固な面や辛辣さを持ち合わせている。親友の美希とは頼ったり頼られたりで、頭が上がらない。
  • 宮澄 見里 (CV:鳩野比奈 / 及川ひとみ)
    • 巨乳と眼鏡が特徴の三年生。温厚で面倒見もよく、太一を放送部へ誘った張本人。通称みみ先輩(「みみみ」と呼ぶと何故か怒る)。
  • 桐原 冬子 (CV:楠鈴音 / 鳴海エリカ)
    • 太一のクラスメイト。名家の娘で意地っ張り。太一曰く「反転属性付き勝気娘」。
  • 支倉 曜子 (CV:児玉さとみ)
    • 長い黒髪と無表情が特徴の三年生。一人暮らしをしている。
    • 周囲に無関心だが、太一には心を許している。その様は常軌を逸しており、彼の「姉的存在」「婚約者」で「一心同体」と称している。
  • 島 友貴 (CV:牛久京也 / 山口勝平)
    • 放送部部員で太一の友人。機械知識に明るく、放送部で扱う機材もお手の物。
    • ある事故をきっかけに足を患っている。
  • 桜庭 浩 (CV:十文字隼人 / 山崎たくみ)
    • 放送部員で太一の友人。あだ名はラバ。実家は大富豪でその出自や感性故か、普段は太一以上に奇矯な言動が多い。
  • 七香 (CV:理多 / 平井理子)
    • ある時を境に出会う謎の少女。明るくノリのいい性格で、太一とも意気投合する。
    • 出会いの度に意味深なことを口走る。
  • 堂島 遊紗 (CV:鵜乃瀬朱香 / 東風たまこ)
    • 太一の近所に住む後輩。
    • 母親は群青学院の学食に勤務している豪快なおばちゃん。
  • 新川 豊 (CV:間寺司 / 堀川りょう)
    • 佐倉霧の従兄妹。実の兄妹のように仲がよく、二人揃って群青学院に転入してきた経緯を持つ。
    • 太一とは出会い頭から、強く結び合っていく。

評価点

  • よく練られたシナリオ
    • 明るく騒がしい学園モノとして始まる本作だが、これは前置きに過ぎない。
      その最後に明かされる衝撃的な事実で、世界は一変する。
    • その事実とは群青学院放送部部員を除いた人類が消失した世界*2が、現在の舞台であること。 この事実は公式において伏せられており*3、当初とは違った面を覗かせていく。
    • さらに物語が進行すると、同じ一週間を繰り返すループ現象が起きていることも明かされる。
      • この構造はプロット段階で構想が書かれている。
        ループものの問題点として、2周目以降に飽きが出てしまう。それに対しての強い引きとして、計算されたものである。その為に1周目は時間軸を往き来しながら、物語が構成されている。人類消失世界のネタばれ防止の措置である。
      • さらにループ現象はプレイヤーに気づかせつつも、太一が知るのは2周目以降となっている。これによって謎解き要素も帯びてくる。また、太一の目的が明確化されていく。
    • このように1、2周目から凝った構成が、全編通して発揮されている。巧妙に張られた伏線も、徐々に回収されていく。何気ない文章でも後から真実に気づき、驚かされる事が多い。
  • メッセージ性の高さ
    • 群青学院放送部の面々によって織りされる物語は、青春劇には普遍的なことがテーマである。普遍的が故に、プレイヤーの深い共感を呼び、本作の人気や評価に繋がっている。
  • ADVの特徴を活かした「ループもの」
    • 従来のループ作品との違いとして、個別ルートを経る度にループ世界に影響を及ぼす仕掛けとなっている。これも、繰り返しプレイの飽き対策である。
      • この世界への影響が本作独自の終末感、寂寞感の一助になっている。
    • ADVでお馴染みの選択肢や個別ルートも「ループ世界の可能性の1つ」として、組み込んでいる。作中でもプレイヤーの見ることの無い展開、結末を迎えた世界線の存在が示唆されている。
      • 一週間を満了することなく終了することもあるが「初期化」され、無かったことになる。これもプレイヤーは誤選択したことを理解し、正解ルートに戻れる作りを活かしている。
  • ギャグ要素
    • 主に主人公の太一がぶっ飛んでいるので、全編通してもギャグの数は多い。パロディも盛りだくさん。

賛否両論点

  • 一部の過激な描写
    • 物語の展開によって、こういった場面が起こることがある。
    • 立ち絵や一枚絵にも描写が出てくるが、表現そのものは比較的控えめ。
      • しかし不可避なものとして出てくることもあるので、嫌悪感を抱く人もいるだろう。
  • 太一のギャグ、セクハラ発言
    • 評価点でもあるギャグだが、突き抜け過ぎていて人を選ぶ面がある。特に女の子へのセクハラは、不快に思う人もいるだろう。
  • 作中に出てくる曖昧な描写
    • 明確に解答される謎がある一方、説明不足を感じる部分がある。示唆だけで終わったものに関して、はっきりと決着や描写があることを望む声もある。
    • 一方で、その考察を楽しむ者もいる。ゲーム外にはなるが、本作の公式設定資料集*4が発売されている。この中で提示された手がかりもあり、考察が盛んに行われている。また、この考察要素に本作たらしめる魅力を感じる者もいる。

難点

  • 答えの出ない謎
    • 評価点に挙げた巧妙な伏線回収や賛否両論点に挙げた手がかりも無く、そのまま残されてしまった謎の数々がある。一部の人物の存在、所在が明かされていない問題も残っている。
  • Hシーン
    • 成人向けとして期待される要素であるが、シーン自体が少ない。
    • 一方でシナリオに深く関わってるものもあるので、削除・修正された家庭版では解りにくい部分が出来てしまった。
  • 群青学院の描写
    • 一般校とは違う成り立ちを持っているという設定。しかし、その役目が果たせているかと問われると、疑問符がつく。*5
    • 舞台である上見坂市は「都会」と言われる区域と、丘という言葉に騙された人が、ハイキング気分で行くと遭難するほどの山を越えた区域に分かれている。
      群青学院があり、関係者が住んでいるのは後者。その役目・目的の為、同一市内であることを建前としている。
      区域内に発電所が設置されていたり、資材に乏しいなど、舞台設定自体に整合性は取れている。
    • そもそもの設定に難色を示す声もある。
  • PS2/PSP『CROSS†CHANNEL ~To all people~』の問題点
    • ハード由来の部分でもあるが、解像度が低い。
      • 文字が潰れやすく、漢字の識別がしにくいことも。特に「血」という文字は「皿」に見える。
    • 難点に挙げた削除・修正されたシーンにより、解りにくい部分がある。*6

その他

  • 没シナリオ「トモダチの塔」
    • 公式設定資料集などで明かされた没シナリオ。
    • ループ現象が始める前の話で、本編にも繋がる謎が盛りだくさんとなっている。にもかかわらず没になったのは、過激な内容故と思われる。
      • PS3/PSV移植版以降は、このシナリオが追加されている。

総評

発売当初は無名のメーカー*7の発売ということもあって、売上は振るわなかったものの、プレイヤーの口コミが広がり長く愛されたゲームである。
思春期の障害や葛藤、恋愛を通して描かれる物語とその結末には、きっと胸を打たれることだろう。
2003年発売であるが、現在もその魅力は色褪せていない。作風に抵抗がなければ是非、一度プレイしてもらいたい。


移植の変更点

  • Win『CROSS†CHANNEL』
    • オリジナル。
  • PS2/PSP『CROSS†CHANNEL ~To all people~』
    • 家庭用に修正された部分は、田中ロミオ自身が担当。
  • Xb360『CROSS†CHANNEL ~In memory of all people~』
    • 公式設定資料集から起こされた本編エピソード、アフターストーリー、新作カット追加などがされた家庭用増補版。
  • Win『CROSS†CHANNEL 復刻版』
    • オリジナルの解像度を改訂したもの。
  • PS3/PSV/Switch『CROSS†CHANNEL ~For all people~』
    • Xbox360版にヒロイン視点のシナリオなどが追加されている。
  • Win『CROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE-』
    • 増補された家庭用に成人向け表現も備えた完全版。2019年にDLsiteでダウンロード版も配信。2021年にはFANZAでも配信された。

余談

  • 『NANACA†CRASH!!』
    • 自転車に乗った七香が太一を突き飛ばし、タイミングよくクリックし、その飛距離を競うFrashゲーム。
    • 完成度が高く、Flashゲーム全盛期ということもあって非常に人気であった。
    • 二次創作物なのだが、2014年5月16日には公式化。同時にAndroid/iOSアプリとしてもリリースされている。
  • シナリオライターの田中ロミオの初作品なのだが、「田中ロミオ」とは『加奈 ~いもうと~』や『家族計画』を手掛けた山田一の別名義であり、新人ライターのデビュー作という訳ではない。
    • 当初から両名を同一人物と類推する情報が出ており、現在では同一人物であると公表している。
  • 月姫』『Fateシリーズ』で有名な奈須きのこは、本作を「絶対に超えられない壁として君臨する作品」と評している。
  • 2007年、ケータイ小説文学賞「モバゲー小説大賞」第1回において、優秀賞を受賞した『メビウスの輪』が本作の盗作ではないかと話題になった。
    • 複数の類似点が認められ受賞を辞退、書籍化が中止になった。
  • 田中は眼鏡っ娘好きを公言しており、本作にはメインキャラに一人、中盤までそれなりに登場するキャラに一人、序盤で退場するキャラに一人と、計三人登場させている。少数の登場人物で展開する作品としては多めと言えるだろう。
  • 2019年6月19日に「(有)フライングシャイン」が、東京地裁から破産開始決定を受けた。DL版販売から1ヶ月も経たない内の発表である。(参考リンク
    • FlyingShine及び派生ブランドの公式サイトは消滅しているが、『CROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE―』のサイトは現存している。*8
    • 田中は自身が関わったブランドや会社が、いくつも解散している事を自虐ネタにした事がある。それが本件で、また一例を作ってしまった。

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最終更新:2023年09月23日 01:08

*1 PS3/Vita版なかせひな名義

*2 それ以外の生物も消失してしまっている。

*3 そもそも説明書やパッケージなどで、核心に触れる記述が一切無い。

*4 原画や用語集、ショートショートが所蔵された副読本。本作を補完するものとして、ファン必見の内容となっている。しかし現在ではプレミア化している。

*5 太一の独白でも、その部分にはつっこみがされており、狙った設定であることは窺える。

*6 Xb360版以降から一部描写がPC版寄りになり、改善されている部分もある。

*7 FlyingShineとしては、本作以前からゲーム開発を担っていたものの、自社ブランド販売としては初であった。

*8 それは販売がウィルプラスに変更されているからである。メーカー表記が「WillPlus/CROSS†CHANNEL」と解りにくいが、作品名をブランド名として残している為である。