黄昏のオード ‐ODE TO THE SUNSET ERA‐

【たそがれのおーど おーど とぅ ざ さんせっと えら】

ジャンル シンフォニックRPG
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 トンキンハウス
発売日 1996年12月27日
定価 5,800円(税別)
廉価版 BEST PRICE
2000年8月3日/2,500円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 前世代的なグラフィック
シナリオはお使いの繰り返し
とにかく不便なシステム
ひたすら太鼓が響く戦闘シーン
純粋な評価点はイラストだけ
黄昏のオードロイド


概要

ライトファンタジー』で 悪くも有名 なトンキンハウスが世に送り出した「シンフォニックRPG」を自称するゲーム。
イラストレーターの弘司氏を起用した美麗なキャラクターデザイン、プレイヤーが呪文を設定できる「ルーンソングシステム(歌魔法自動作曲システム)」など音楽を前面に押し出したシステムや世界観が魅力の作品。

…となるはずが、その実態はPSのRPGとしては『里見の謎』『アンシャントロマン』に匹敵するネタクソゲーであった。
OPからして文字がびっしりのプロローグとひどく不気味なポリゴンのムービー、そして予想の遥か斜め上を行く超展開を見せつけ、(クソゲー愛好家としての)期待を感じさせてくれる迷作である。


特徴

  • 「ルーンソングシステム(歌魔法自動作曲システム)」
    • 魔法の呪文の内容を最大7文字までプレイヤー自身が決めることができ、実際にボイスつきで詠唱してくれる。
  • 「ギルドシステム」
    • パーティメンバーを4人まで任意に雇用することができる。
  • 必殺技
    • 仲間キャラにはそれぞれ固有の必殺技が存在し、戦闘中にランダムで指定した行動をキャンセルして発動する。

キャラクター

強制加入キャラ

リュッケルト(主人公)

  • ただの人間の吟遊詩人。
    • 力の歌い手としての能力を偶然継ぐことになり、世界の運命をかけた戦いに繰り出されることになった。
    • 主人公なのに重要な場面でシャキっとした発言をしていることがあまりない。
  • 全キャラ中唯一プレイヤーの意思で魔法を出すことができるが必ずターンの最後に回され、通常攻撃は武器の弱さも相まって与えるダメージが1桁ということもよくある。

アイリス

  • ヒロイン。
    • 血の薄い龍族で、ほとんど人間の姿をしている。
    • 恋のライバル出現、元彼との再会など物語の恋愛面を担っており、最終的に主人公といい感じになって終わるもののいまいち盛り上がりに欠ける。
  • 主人公に対してしか使わない回復技を持っている(その段階で贔屓がひどい)が絶対ではないので彼女をあてにしていると死ぬ。
  • 絶対に逃走せず、攻撃力、素早さも高く使いやすいが重要な場面を前に離脱してしまう。

ホイヒュー

  • ボビン(後述)の部下で、お調子者。
    • 一人称がボクだったりあっしだったり安定しない。
    • ボビンとの信頼や忠誠や主従といった仲間同士のイベントもなく、シナリオ、戦闘面どちらを見てもいいところがない。
  • 効果が3ターンある防御魔法を毎ターンのように使い、攻撃してくれない。彼は最初に仲間になるためこの段階では主人公も弱く、パーティも2人で、貴重なアタッカーであるにもかかわらず、だ。

クイクイ

  • 男の子。
    • 女友達(彼女?)が崖で立ち往生しており、助けるために森の中で木にくくりつけてあったいかにも怪しいロープを勝手に外して使った。
      • そのせいで部族に捕まり、下手するとパーティ全員殺されていたかもしれないのに一度も謝らず、悪びれない。
  • 仲間になる理由も「探している人のところに案内するから森で行方不明になった友達を探してという交換条件」で、典型的なお使いイベントの主。

ライオネル

  • 反乱軍の重鎮。
    • 登場した理由は、反乱軍首領から「監獄に捕まっているライオネルを助けてくれたら楽譜探しに付き合う」という典型的なお使い(ry
    • 裏からこっそり侵入して独房から助け出したのに「ここの正面扉ぐらいなら俺が難なく開けられる!ははは…」とか言いながら1人で正面から帰っていく。
      • ちなみに独房送りにされた理由は、監獄からの脱走に失敗したから。一度失敗したのに何故慎重にならないのか
    • 離脱時に「また会うこともあるだろう」と再加入を匂わせてくるが、加入どころか以降一切の出番が無い。
  • 戦闘でも問題児で、一目惚れしたショウコを必ずかばう。自分のHPが1、ショウコのHPがMAXの時でも必ずかばいに行き、戦闘不能になる。
    • 命をかけて惚れた女を守る漢というならまだ許せるが、残念ながら彼女を置き去りにして逃げる。
  • 全キャラ中必殺技の威力が最も高いので攻撃面に関しては頼れる仲間。

ショウコ

  • 王様の許嫁。
    • 王宮への侵入に協力してくれる。
  • 問題はシステム面で、彼女が加入するときパーティが固定メンバー4人で埋まってしまうのでそれまで育てていた大事なギルドキャラを強制的に解雇しなければいけない。

トラビス

  • 猟師。
    • 楽譜が眠るとされる島の内奥の地までの案内を名目に仲間になるが、立ち寄った町の町長から言われた頼みごとを勝手に受け、長大なお使いの引き金になる。
      • しかも、依頼を受けた理由が報酬。
      • その後知り合いの女の子と「遊びたくなった」という理由で目的地まで案内することなく離脱する。
  • 戦闘面でも弱さが目立ち、彼と入れ違いに離脱するライオネルは必殺技の威力が3倍なのに対しこちらは2倍なので目に見えてパーティが弱体化する。

フィデレ

  • 魔術師。
    • ただし出来は悪い。「陽キャ」という言葉が似合う女の子で、「えへへ★」といった感じで全く自分の失敗を悪びれない。
      • 何を失敗したのかというと、場所を尋ねた主人公を全く関係のないダンジョンへ2回も案内する。
      • ボスに対する封じの呪文も最初の1回目は失敗し、そのせいで手下を呼ばれてしまう。
  • 戦闘では炎の魔法を使用するが、炎に耐性のある相手にも連発し、当然のごとくミス。運良く当たっても耐性によってかなり低いダメージしか与えられない。

マキバ

  • 牧場の主。
    • 動物と会話ができる。
  • シナリオ、戦闘、システム、どこにも問題がない奇跡のような人。ビジュアルも好青年。強いて言うなら加入期間が短くて愛着がわかない。

アロン

  • 家族を城主に殺され、復讐に燃えている青年。
    • 城主(エド)を殺すか殺さないかで最終的に踏みとどまり、その結果2人は共闘してラスボス戦に挑むことになるがいまいちシナリオが盛り上がらない。
    • 加入のきっかけは情報の提供と復讐の協力を交換条件(ry
  • ラスボス戦に強制参加メンバーだが、貰えるEXPが1になるまでレベル上げをし、最強装備を与えてもラスボスに与えられるダメージがたった2桁しか出ない。

エド

  • 岩の島の城主。
    • ラスボスの手下(のような怪物)に操られて村民を虐殺した。
    • 非常に反省しており根っからの悪人ではなかった
  • 問題はシステムで、ショウコ同様、育てたギルドキャラを強制解雇に追い込む。
    • それだけではなく、パーティ平均レベルに比べて明らかに低いレベルで加入する。

ボビン

  • 港町の顔役。龍族。物語根幹に関わるネタバレあり。
    + ...
  • 序盤、悪神の名前に「様」をつけて呼び、中盤には主人公たちの見つけた楽譜を盗んでいく。
    • 意外性のある行動でシナリオを盛り上げる重要なキャラクター。
  • 龍族とはラスボス側についている種族であり、彼もまたそうだった(と思われる)。ところが、人間と共に仕事をしているうちに情が移り、人間側についてラスボスと戦う。
    • その流れ自体は非常に良いのだが、この話の最中に「詳しい話はあとで」というセリフがあり、その後詳しく語られることはない。
    • 誰が、何がきっかけで龍族を裏切ることにしたのか、あるいは守りたい人間ができたのか、そういった部分は何もないまま終わる。
    • 部下のホイヒューも、彼が人間を敵として見ていたなど露知らずのままに終わってしまう。
    • シナリオの根幹の部分は良くできているが、表現が薄いせいで重厚なストーリーを作り損なった印象。

ギルドキャラ

スリム

  • 口調がオカマっぽいがビジュアルは口ひげ。
    • ホイヒューと面識があるようだが詳細は不明。
  • HPがMAXでも逃走する。

ドムカ

  • 無口。会話でも「…。」というセリフがよく出る。
  • 「敵全体に通常攻撃と同威力のダメージ、自分にも20ダメージ」という諸刃の剣の必殺技を持っているのだが、敵が1匹しかいないのに使うので無意味に傷つく。

ジョーイ

  • 活発な女の子。
    • 「旅芸人の兄を探している」というサブクエ感を漂わせてくるが、そんな人物は登場しなかった。
  • ギルドキャラの中で唯一回復呪文を持っている
    • ただし発動はランダムなのでHP1の仲間がいても、使ってくれない時は使ってくれない。
  • 絶対逃走しないのでそこは頼れる。

エニクラウド

  • スカイヘッド(部族)の男。
    • 村の外に出たことがなく、外に連れ出してほしくて仲間を探している。
    • 村の外で様々なものを見るたびに細かくメモを取り、逆に本で読んだという情報(攻略とは無関係)をよく喋る。
  • アンデッドモンスターを一撃で倒せる呪文を持っていて非常に役立つ
  • 町3つ先まで上位武器が売っていないせいで通常攻撃の弱さがだんだん際立ってくる。

ヴェラ

  • パッケージ左に写っている黒髪の女性。よく喋る。
  • さぞ重要な人物かと思いきや、宿屋に泊まるとお金を持ち逃げしてパーティから離脱してしまう。
    • その後詐欺師として指名手配される。
    • 全ギルドキャラ中唯一の「サブクエ」だが、感動的なシナリオであるわけがない。

トリリア

  • 若い女性。
    • 女性であることを軽視されたくないと言っている。加入時にしかセリフが無い。趣味思考経歴など一切不明。

ヘンケン

  • 貴族っぽい服装の男。
    • ドット絵の顔色が目に見えて悪く、「はぁ…」というセリフが目立つ。とはいえ喋るのは加入時の数行だけ。趣味思考経歴など一切不明。

グラム

  • 裸に鎧を付けている筋肉質な男。
    • 「オレ強い!雇え!」とのことだがここしかセリフが無いので(ry

ピックマン

  • 絵描きの男。
    • 芸を高めるためのさすらいの仲間を探している。
    • 初会話の一行目で「灰色の絶望の景色は至上の美味」と言い、いかにもヤバそうな雰囲気を匂わせているが何もイベントは起きない。

パストラン

  • 冒険詩人。
    • 相変わらず加入時にしか喋らないが、詩的な言い回しが特徴的。
    • 「死によって生を体験す」「我輩を死出の旅に誘え」「生と死の輝きを体にて詠む」と、少ない文章の中で生死に関する話題が多いが、例外なく逃げる。死出の旅とは

ドロシー

  • 無口な女性。
    • 句読点が多く、後に登場する泥族の話し方とよく似ているが彼女がそうなのかどうかは一切不明。何のサブクエも無かった。
  • 必殺技を持っていないが絶対に逃げない。

ドンキー=レインフォース

  • 会話時にフルネームを名乗る。
  • 「極めて紳士的」「女性に優しく」「優雅華麗、勇猛果敢な騎士」と言っているだけあってアイリスを必ずかばう。ただし逃げる。
    • 「オールライト」や「ミ・レディ」といったカタカナをよく使う。
    • 後半のギルドキャラはシナリオに絡まないせいで、アイリスが石になってしまった時も無言(無視?)を貫く。

サザシイ

  • 立って歩いて人間の言葉を喋るかわうそ。
    • 「サザシイはサザシイ かわうその魂」と言うが特に何のサブクエも無し。分家のかわうそであり、シナリオで本家の場所に立ち寄った際にほんの少しだけ喋る。それだけ。
    • 彼(?)が登場した段階で「かわうその懐」という地名が登場しており、関連があるかもしれないと思って期待を込めてこれまで育ててきたキャラを解雇してまで雇った人も多いのでは。

問題点

システム面

  • 戦闘が非常に冗長かつ退屈
    • 攻撃力と防御力の計算方式が甘く、攻撃失敗の頻度を高くすることでゲームバランスを調整している節がある。そのため物理攻撃の命中率がとにかく低く設定されており、敵も味方も攻撃を外してばかりで無駄に戦闘が長引きがち。
    • 回復や特殊攻撃のエフェクトも全体的に長いためテンポが悪く、そもそものエフェクト自体もショボい。特殊攻撃をミス連発した時の時間を無駄にした感は相当なものである。
    • 必殺技も基本的に戦闘の邪魔。
      • プレイヤーの任意のタイミングで使用することができない。しかも発動する場合は、直前のプレイヤーの指示がキャンセルされて無理やり発動する
      • また効果も攻撃技とは限らず、効果の薄い補助魔法であったり、自爆技であったりするためなおさら厄介。
    • 敵の素早さが軒並み高く設定されており、自然な育成をしている場合は普通に探索しているだけでも先手を取られて消耗しやすい。そのため、小まめに宿屋で回復する必要がある。
  • その他戦闘システムの問題
    • 仲間は残りHPが少なくなると戦闘から勝手に逃亡してしまう事がある。
      • しかも主人公*1が戦闘不能になった時点でゲームオーバーとなるため、事故率を上げる要因になっている。ゲームオーバーの場合、セーブ地点からやり直しとなるため、テンポの悪さに拍車をかけている。
    • キャラごとの性能差も酷い。
  • エンカウント率が両極端。
    • 出るときはほんの少し足を踏み出すだけで出るのに、出ないときはいくら歩いても出ない。
  • ギルドシステムに反する強制加入
    • ストーリー上強制加入するキャラでパーティー枠4人が埋まってしまうと、雇った仲間は問答無用で解雇されてしまう。
      • 加えてそうして加入したキャラも頻繁に入れ替わるため、育成も感情移入もしにくい。
      • シナリオは一本道かつ一方通行なので、プレイヤーの任意のタイミングで街を訪れることは出来ない。したがってイベント後に仲間にしたいキャラを再加入させることも出来ない。
    • 仲間がくだらない理由で加入・離脱を繰り返すシステムは『里見の謎』等、この時代のクソゲーとしては珍しくない。だが本作の場合、任意で加入できる仲間がいるにもかかわらずそれを強制的に離脱させられるというのがかなり厄介。しかもそこまでして加入しておいてあっさり離脱することが多いので、新たな仲間を得た喜びよりも以前の仲間を失う喪失感の方が大きくなりがちで、キャラの育成要素すら楽しむことが出来ない。加入・離脱の回数もそれらのゲームよりも圧倒的に多いので、ストレスが溜まる仕様となっている。こんな有様なら最初からギルドシステムがない方がマシだっただろう。
    • なんと最終決戦ですら強制加入するキャラで埋まってしまう。それぞれのキャラ自体は悪くないのだが、ギルドでスカウトしたキャラを育てたプレイヤーは泣きを見ることになる。
  • インターフェース面も不便
    • アイテムのまとめ買いができない、パラメーターを参照しにくい等、不便さが目立つシーンが散見される。

演出面

  • 貧相なグラフィック
    • 前述の通り、OPのムービーは船に乗った主人公が登場し、突然沈むだけの意味不明且つシュールな内容。それも低品質かつ不気味なポリゴンで描かれた主人公がどんどんズームアップしていく場面があるため、見るに堪えない。このムービーにおける主人公はその見た目を揶揄して「顔面バイオハザード」と呼ばれている。
      • 服や船の書き込みが浅く、海でさえゼリーのような質感で、貧相さが際立っている。
    • ドットは特別出来が悪いという訳ではないが、当時発売されたゲームの中でも色数が少なく、SFCかMD並。 戦闘画面などは正に前時代的…というかどう見てもスーパーマリオRPGの戦闘画面を左右反転させただけにしか見えない。
    • 後述するように本作唯一の評価点と言えるキャラデザインだが、ステータス画面の全身画はゲーム内のドット絵で打ち直されたというより、イラストをそのまま取り込んだような感じであり、ステータス画面内で浮いて見える。
      • また、顔グラフィックは解像度やコントラストにばらつきがあったりなど、せっかくのイラストを台無しにしている部分もある。男性キャラが特に顕著。
  • 音楽を題材にしながら出来の悪い歌魔法
    • ボイスは指定された文字をそれぞれ予め決まった音階で読んで繋げるだけという仕様のため、ハッキリ言って出来は酷い。
      • せめて文字ごとに音階を設定できれば、ゲームの出来の悪さを置いても音楽(ネタ)ツールとして少しは使えただろうが…。
      • 主人公のグラフィックは若いイケメンなのに、やたら野太い声なのも合っていない。
      • ただ、本作が発売されたのは、「VOCALOID(ボーカロイド)」などの歌声合成やフリーの「SofTalk(ソフトーク、いわゆる「ゆっくりボイス」)」といった音声読み上げの個人向けソフトが世に出るよりも前のこと*2。合成音声技術のゲームへの実装はほぼ無い頃であり、この点は致し方ないと言える。
  • 歌魔法もさることながら、仮にも音をテーマにしたゲームにもかかわらず音楽もひどい。
    • 特に戦闘曲はエンカウント音、通常戦闘、勝利のテーマ、そしてボス戦ともにティンパニとスネアドラムの音だけ*3。おそらく歌魔法がメインであるため戦闘BGMは控えめになったと思われるが、音質がチープ&構成が単調という二重苦がただでさえ苦痛な戦闘に拍車をかける。主人公の歌が流れる時だけBGMのボリュームを一時的に下げる等、色々とやりようはあっただろう。
    • 唯一の例外はラスボス戦である。曲自体は単調だが、打楽器のみに比べれば…。

シナリオ面

  • ツッコミ所ありありなストーリー。
    • 主人公の乗っていた船が難破する所から始まるのだが、最初の村で「悪神が復活した」という話を聞いて特に根拠もなく「船が沈んだのはその悪神の所為では?」と決めつけるなど、ラスボスへの因縁付けが安易過ぎて、結果超展開と化してしまっている。
      • その後も異変がある度に「悪神が復活した影響では?」として片づけられるため、主人公一行と悪神ガリハアクとの間に直接的な因縁は無いまま、旅の目的がガリハアク討伐へと仕向けられていく。とにもかくにも「だいたいガリハアクのせい」でシナリオが進んでいくため、「このゲームがクソゲーなのはガリハアクのせい」というネタが囁かれることも。
    • 酒場で酔っぱらいを止めに入れば即外の海に放り出される。かと思ったら流れ着いた先で拾ったオールの破片を武器に再び挑み、今度は逆に酔っぱらいを海に放り投げるという、まるでコント番組のような展開が続く。バカゲーのつもりか? ひょっとしてバカゲーと割り切れと言う事なのか!?
    • 台詞回しも独特、悪く言えば変なものが多く、口調が安定しなかったり、おかしな事を口走るキャラが多い。これは主人公とて例外ではなく、最後まで一人称が安定しなかったり、キャラクターが定まらなかったりするままストーリーが終わってしまう。
    • 悪神、善神と呼ばれている存在が絶対的な善悪ではなかったりと、単純な勧善懲悪では終わらず物語を奥深くできそうな背景は存在するのだが、正直活かされているとは言い難い。
    • 最終決戦にて「(リュッケルトが持っていたであろう)タクトが避雷針になったおかげで悪神の放つ雷を回避できた」という突っ込み所満載の展開が出てくる。
      • まず曲がりなりにもファンタジー世界において唐突に出て来る「避雷針」と言う科学ワードもどうかと思うが、避雷針になるものを持っていたが故にその人物に雷が落ちた、と言う描写は古来よりギャグ漫画でも描かれるほど一般的な描写であり、むしろ「タクトが避雷針になったせいでリュッケルトが感電した」が正しい描写であろう*4。多分名前から「針さえ持っていれば雷を避けられる」と脚本家が勘違いしていたのだろうが、スタッフは誰一人としておかしさに気づかなかったのであろうか?
    • 最終決戦ではまずラスボスに挑むも全く歯が立たないという展開になる。それ自体はRPGでよくある展開であり、この場合は仲間たちの力が集結する等の展開でラスボスに攻撃が通るようになるというのが一般的。だが本作の場合は仲間の1人が反動ダメージ有りの捨て身攻撃をした程度で攻撃が通るようになってしまう。
  • お使いイベントが無駄に多い。
    • というかストーリーのほとんどがアレを取ってこい、アレを探して来いという内容ばかり。しかもつまらない理由*5で延々と歩かされるケースばかりで、本筋のストーリーがなかなか進まない。
      • ダンジョンに進んで結局入れなかったため、一度戻ってから再度挑戦するという水増し感漂う場面も非常に多い。エンカウント率の高さから来るストレスフルな戦闘システムと重なり、途中で投げ出したくなるほどイライラさせられる。
    • お使いの途中に別のお使いが挟まれることも珍しくなく、何が目的だったかを見失いやすい。
    • タイトルにもありお使いの主軸となるオードだが、集めた後はほとんどシナリオに絡まなくなる
  • キャラクター自体は薄い訳ではないのだが、トラブルメーカーがやたらと多く、プレイヤーをたびたび困惑させる(イラつかせる)イベントが発生する。
    • 中には適当な事を言って無駄なダンジョン探索を2回も行わせるとんでもない輩まで居る始末。しかも3回目も当たり前のように嘘をつこうとしており、非常にタチが悪い。
    • 加えて前述したような仲間の入れ替わりの激しさも相俟って、キャラに感情移入しにくい。

評価点

  • 弘司氏によるイラストは好評。主人公は(イラストで見る限りは)イケメンで、女性キャラもヒロインのアイリスを始めとして美女揃いである。
    • ドットではいまいち魅力が伝わってこないが、(前述した問題はあれど)メニューや戦闘では顔グラフィックが表示されており、ステータス画面では全身画が見られる。
    • これでキャラの個性がもっといい方向に働いていて、思い入れも湧きやすい作りだったのなら、キャラクター面は純粋に評価されたかもしれないが…。
  • 任意加入の仲間キャラでもストーリー中に固有の台詞が用意されており、誰を仲間にしているかに応じて会話内容に変化が生じる事がある。
  • 最終決戦で戦う仲間に限っては比較的良キャラで固まっている。本作にしては珍しく旅の目的が終わったはずなのに最後までついて来てくれる仲間*6、その人物と因縁があったがその後共通の敵と戦う目的で和解する仲間、長年暮らしていくうちに情が湧いて悪党から寝返った仲間と、ここだけはキャラづくりはしっかりしている。
  • 本来の意味での評価点ではないが、任意に声を設定できる歌魔法はネタとしてなら存分に笑える。
    • 決まった音階で読んで繋げるだけという仕様のせいで酷い物が出来るのは前述の通りだが、それが突き抜けすぎていてもはや笑えるレベルになっている。
      • 1音ごとに「ぼ~ん♪」というリュートの音色が混ざるのもシュールさに拍車を掛ける。
    • デフォルトの呪文も「おおいわおちろ」「こおりのや」「なぞなぞふしぎ」「どくどくあめだ」等々小学生が考えたような変なものばかり。
    • 本作を代表するネタであることもあって、黄昏のオード関連の動画ではこのシステムを使ってテキストを読み上げているものもある。通称「黄昏のオードロイド」。
    • ちなみに、とあるダンジョンでヒロインが主人公の歌にツッコミを入れるシーンがあるのだが、その時の主人公の反応は「…ふん。もともとヘンな歌なのさ!歌がヘタなわけでは決してないぞ」である。どうやら自覚は無いようだ。
  • 独特の台詞回しやおかしい掛け合い、なんでもガリハアクのせいという超展開も、バカゲーとして見ていれば妙な愛嬌を感じるかもしれない。(恐らく)狙ってバカゲーとして作られている訳ではないので、これも本来の評価点とは言い難いが。
    • キャラが安定しない、矛盾、超展開、誤字脱字と言ったものに目を瞑れば、文章が稚拙で読みにくい『里見の謎』や、台詞が悉くスベっている『アンシャントロマン』よりはテキスト自体は整っている為、(広い心を以ってすれば)バカゲーとして楽しみやすい。
    • とはいえ無駄に冗長な展開や、プレイしていくうえで非常にストレスが溜まる仕様があるので、その苦痛に耐えられる人でなければプレイすることはお勧めできない。
  • 前述のとおり戦闘曲はドラムスの音だけだが、ストリングスを生かしたクラシカルなBGMもあり、それらは聞きごたえがある。
    • 街のBGMはアカペラ曲「Now is the month of Maying(邦題:今や五月の季節)」のアレンジで親しみやすいメロディー。

総評

キャラクターデザインを除けば、ほぼクソ要素で塗り固められた紛れも無いクソゲーであり、今も尚『里見の謎』と並んでPS屈指のクソRPGと名高い迷作である。
作業ゲーの極致たる作品であり、クリアを目指す上での苦痛度ではPS1作品において頂点を争うものとなっている。
ストーリー・システム共に不便で不可解ではあるが、一方でどことなく憎みきれない絶妙な愛嬌(=クソさ加減)を誇る要素も多く、逆に熱狂的なファンを生み出すまでにも至っている。
単なる駄作では終わらず、(ネタとして)愛される側面も持ち合わせており、RPGとして最低限の体裁が取れているあたり、クソゲーとしては充分恵まれた立場にある作品と言えなくもない。


余談

  • 「黄昏のオードをプレイする奴は悪の手先」という2chのスレタイから、本作のプレイヤーを「悪の手先」と呼ぶネタが存在する。 最後まで遊ぶと実はこの表現が正しいことが分かる。
  • こんなクソゲーだが、2000年8月3日には『ベストプライス 黄昏のオード』としてベスト版が発売されている。
  • 本作のプレイ動画について弘司氏がTwitterでコメントを残している。
    • ネタ扱いされている事を楽しんでいる様子。以下、原文まま。
    • 「悪い気はしていない(笑)。ある意味ボーカロイド超えたのでは。この仕事やって良かったなぁ。続きはよ。」(コメントその1)
    • 「続き来てた。その昔キャラデザインで参加したゲームです。今になってもこうしてネタにして貰えるのは、ある意味愛されてるなーと(笑)。」(コメントその2)
  • 有志が作製したオードロイドの音声シミュレータが存在する。
    • 2020年末にFlash Playerがサポート終了となった為、利用できなくなってしまった…。
    • と思いきや、2021年9月頃に簡易かつ暫定的であるが、JavaScript版が公開された

参考動画

+ プロローグとOPムービー
+ タグ編集
  • タグ:
  • 1996年
  • PS
  • トンキンハウス
  • RPG
  • クソゲー
  • KOTY始動以前の伝説的作品

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最終更新:2024年04月12日 05:52

*1 デフォルトネームは「リュッケルト」だが、開始時に最大6文字の好きな名前に変更できる。

*2 参考までに、史上初のVOCALOIDである「LEON」「LOLA」が発売されるのは2004年、音声読み上げソフト「AquesTalk」が発売されるのが2006年。

*3 そのため「ケツドラム」という通称すらある。

*4 避雷針とは、自身に雷を誘導する事で「周りの人間」を落雷から守るものであり、タクトが避雷針になったのなら、当然それを持ったリュッケルト目掛けて雷が飛んでくる。

*5 鍵となる「ある歌」を探すためにダンジョンに入るが、知っている仲間が「酒でも飲めば思い出す」と言われて街へ帰り、やっと思い出したら実は隠し通路が有ったので歌は要らないというオチ。

*6 身寄りが無くなったのも1つの理由かもしれないが。