ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還

【ろーど・おぶ・ざ・りんぐ おうのきかん】

ジャンル アクション
対応機種 プレイステーション2
Windows 98/Me/2000/XP
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 エレクトロニック・アーツ
開発元 EA Redwood Shores
発売日 2004年1月8日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1~2人
レーティング CERO:12歳以上対象
廉価版 【PS2】EA BEST HITS:2004年9月16日
【Win】EA BEST SELECTIONS:2004年12月16日
各2,980円(税別)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント グラフィックとボリュームの改善
要所でヌルゲー・運ゲーに
シナリオ省略は相変わらず
指輪物語シリーズ
旅の仲間・二つの塔 / 王の帰還 / 中つ国第三紀 / ホビットの冒険 / ゴラム

本項目ではPS2版の『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』について記述する。Windows版やGBA版は割愛。



概要

J.R.R.トールキン作の大ヒットファンタジー小説『指輪物語』を原作とする映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の最終章をアクションゲーム化。
前作『二つの塔』と同様、キャラを操作しながらステージを攻略することが目的。
操作方法やキャラの成長システムはそのままに、前作の不満点だった使用可能キャラとステージが増加し、ステージ自体も広くなる等改善がなされ、またそれなりに好評だったグラフィックはさらに強化された。

今作からの追加点として、戦場に散らばる小道具を利用した特殊アクションと2人による協力プレイが可能になり、攻略のヒントをプレイ中に見られるようになった。

評価点

  • グラフィックとモーションが大幅進化
    • 顔も映画と謙遜ない仕上がりになり、走るなどのモーションもキャラの個性を活かした自然なものに。
    • ステージが広くなった事(後述)も幸いして、前作で生じたキャラを見失う事態はあまり起こらなくなった。
    • 小道具を用いて行える様々な動作も、映画で見られるようなスタイリッシュなアクションを彷彿とさせる。
  • BGMとSE
    • 前作でも好評だった映画の楽曲の挿入が秀逸。
    • キャラの雄叫びや敵の叫び声、刃がぶつかる音など細かい効果音が臨場感を高めている。
  • 前作で不足とされたボリュームの改善
    • 操作キャラは前作の3人に加え、ガンダルフ、サムが追加。隠しキャラも4人いる。
    • 原作およびゲーム本編ではアラゴルン達3人、ガンダルフ、サム(とフロド)は別行動をしており、それを反映した3ルートに分かれたステージが用意されている。
    • マップが大幅に広くなった。またそれにあわせてチェックポイントも数多く配置されるように。
      • これだけ広いマップでもロード時間が短く、あまり頻繁に発生しないのも評価点。
  • 映画に無かった内容を補完もしくは改変する戦闘の追加
    • 死者の軍勢を配下に引き入れるまでの描写から、映画には存在しない戦闘要素を見出している。
    • 映画本編ではあまり登場せず、戦闘も行わなかった「東夷」*1という勢力も登場する。
  • ゲーム展開の選択
    • 出てくる敵を力業で倒す方法もあれば、各所にあるギミックを操作し効率的に倒していくなどパズル的要素がある。
      • 一例として、オーク達に気づかれないよう戦闘を避けて2階に上り、シャンデリアを切り落としてその下のオーク達を一網打尽にするなど。
  • 協力プレイの搭載
    • 家族や、家に遊びに来た友達と楽しくプレイすることが出来る。
    • 画面分割制ではないので、お互いに離れることはできないがその分良質な画質は損なわない。

賛否両論点

  • ステージのボリュームと数のバランス
    • ステージ自体は使い回しなどは無く変化にも富んでいるが、プレイヤーがやる作業自体は敵を倒すか走るかの2択であり冗長になりがち。
    • ステージ1つ1つのボリュームは増えたが、全体のステージ数が前作と特に変わらないという不満点も見受けられる。
  • 操作方法の使い回し
    • 細かいアクション、コンボにはモーションや性能にかなりバリエーションは存在するのだが、基本的な所は同じ。
    • これは操作のしやすさには貢献している要素なのだが、身体的にも能力的にも差があるアラゴルン、ガンダルフ、サムなどでも概ね同じ立ち回りを求められてしまうのは現実味に欠ける。

問題点

ゲームバランス

コンボゲーやARPGの存在意義を崩壊させかねない要素が潜んでいる。

  • 弱攻撃連打によるハメが可能
    • ザコ敵のひるみが小さく修正されたほか、こちらの攻撃が一定回数当たると敵のノックバックがリセットされる仕様が追加されたため、大半のザコ敵は死ぬまで転倒させずに斬り続けることが可能。
      • 中ボスクラスや怯まない敵などにはこのループは効かず、また難易度を上昇させると敵の体力が上昇するので、ハメに遭っていない敵からの妨害も起こりやすくなるが。
  • 難易度の落ちたスキル習得
    • 本作でも、素早くダメージを受けずに敵にダメージを与え続けると戦闘の「評価」ゲージが高くなり、評価ゲージが高い状態で敵を倒すほど得られる経験値が高くなる。
      --ここでのゲージが最高に達すると、一定時間最高評価が得られるという一種のボーナスタイムに突入する。本作はこのボーナスタイムに突入する難易度が激減してしまっている。
    • カウンターによる一撃必殺技が成功すると、(それまでの評価ゲージの高低は無視して)必ず一定時間のボーナスタイムになり経験値が稼ぎ放題である。
      • コンボを妨害されることなく決めると評価ゲージが高くなりやすいのが本来のつくりなのだが、上記の技を覚えてしまえばわざわざスキが大きくハメ性能も低いコンボを使う理由が無くなる。
    • さすがに終盤になってからでないと修得できないが、弱攻撃の連打および強攻撃の連打だけで発動できるコンボがある。
      発動もラクなうえ決まればほぼ確実にボーナスタイムになり、戦闘の緊張感が薄れてしまう。
      逆に弱攻撃の連打コンボを覚えると弱攻撃のハメができなくなるという弊害もあるが。
    • 旅の仲間モードでコンボやパラメータ強化を行うと、登場キャラ全て(戦闘に一度も出していないキャラ含む)に技を覚えることが出来る。
      通常よりも高いスキルポイントを消費することになるが、せいぜい単体修得の1.6~3倍ぐらいの範囲で6人以上を同時に強化できるのでコスパが良すぎる。
  • 攻撃手段の優遇不遇
    • これによってゲーム本体の難易度が大幅に左右される事はないのだが、一部の攻撃手段が強すぎる。
    • 先述の通り、一通りカウンター技を覚えてしまうとその他のコンボが殆ど必要なくなってしまう。
      カウンターの唯一の弱点に、キャラのアクションがやたらと長く何かを守らなくてはならないステージの障害になるというものがあるが、このような切羽詰まった状況ではコンボを決めている余裕もあまりない。
    • 飛び道具の活躍の場を作るための調整と考えられるが、一部の敵が接近戦に強すぎる。逆に飛び道具で攻撃したらしたで、向こうには対抗手段がないことが殆どなので一方的な展開になりがち。
    • 設置アイテムである「バリスタ(手投げ槍)」は各ステージの最終ボス以外であれば、基本全ての敵を一撃必殺出来る。体力ゲージが表示されている中ボスクラスであっても装甲破壊さえすればこれが可能。
      • 「バリスタ」自体には「どこでも使える訳ではない」「長めのスパンを置く必要がある」という弱点もあるがそれさえ守れば無制限に投げ続けられることもあり、弓矢などの飛び道具の立場が弱くなってしまった部分がある。
      • もちろん上述のボーナスタイム時に「バリスタ」で倒した敵にも最高評価が下される。
      • ただし、レゴラスの弓を最強にまで鍛えると、本来ならバリスタでないと倒せないオリファントを弓で倒せてしまうなんてこともできる。
    • 逆にその「強すぎる」攻撃手段に頼らないと倒すはおろかまともに戦う事すらできない敵もいる*2

その他

  • パラメータ成長ではどうにもならない要素
    • 操作キャラが転倒すると起き上がり時に反撃するという前作にはあったアクションが、今作では削除されている。
      • もっとも「広いマップ」かつ「敵の行動が緩慢」なこともあり滅多な事では起こる事でもないが、運が悪いと敵に囲まれて長時間ハメられるケースがある。
    • ラスボスは接近戦しかしてこないものの、特定の方法*3でしかダメージを与えられず、防御貫通の攻撃を持っておりマトモにやりあうと勝ち目がない。
      恐らくそれを見越しての配置なのだが、お供のNPC(無敵)に戦わせて隙が出来た時に攻撃を仕掛けるスタイルが基本となってしまう。
  • 進め方が分かりづらい
    • ゲーム展開の運び方がノーヒントな事も多い。またこの運び方を少しでも間違えるとプレイヤーが断然不利になるケースも。
    • 「ミナス・ティリス」で押し寄せてくる攻城塔は敵の大規模な増援を招いてしまうのだが、この撃退方法に気づきにくい。操作キャラが「カタパルトを使え」と発言するものの、カタパルトの適切な操作方法はわからず結局飛び道具を何回か当てるのが安全な方法になる。
    • 「ペレンノール野」では、まずオリファントという巨大な敵を倒し、次にオリファントを倒すと一定確率で出現する章ボスの体力をゼロにするとクリアというルールなので攻略が難解。
      • オリファントが登場して一定時間経過するとNPCがオリファントに押しつぶされてしまいゲームオーバー。またオリファントは特定の向きからでしか攻撃できない。章ボスもNPCを攻撃してくる。NPCの体力がゼロになったらもちろんゲームオーバー。
      • このオリファントの倒し方や章ボスを攻撃できるという事実は、プレイヤー自身で気づかなくてはならない。マップもやたら広いので少しでも無駄な行動をすると一挙にゲームオーバーに近づく。オリファントの登場パターンに応じてこちらが移動しなくてはならない距離も段違いなため、運も絡んでくる。
  • 難易度調整モード
    • 難易度を敵の攻撃力や耐久力が上昇する程度の差異しかなく、偏ったゲームバランスを埋めるには至っていない。
    • 最低難易度で挑んでも、慣れていない人は初見殺し要素にやられたり、ゲームの攻略法が分からず行き詰ることがある。全体的な難易度は前作よりも低下したが覚えゲーとしてのいやらしさが加わった。
      • なお、ゲーム中に見られるヒントはステージの攻略度合いにあわせてそれなりに適切な指示を与えてくれるのでそこは好評。それでも分からない人もいるが。
  • 特典要素
    • 隠しキャラの存在意義が弱い。
    • ゲームをクリアし条件を満たすと隠しキャラが解放されるが、その頃にはスキルを開放などのゲームの目的をやり尽くしていることが殆どであり、彼らの使い道がこれといって存在しない。半ばネタ要素であることも否めない。
    • 彼らを使ってステージに挑むと、正史で操作するはずのキャラとモデルが入れ替わりになる。
      しかし、シナリオのセリフが変わったり独特の掛け合いがあるわけでもなく既存のセリフが使い回される。またイベントシーンだと操作キャラのグラフィックが消失してしまう。
    • モーションに至っては完全に他のキャラの使い回しだったりする。
    • 隠しキャラに本編で大活躍するはずのエオウィンが選べないのも問題点に挙がる。
    • 本作にもクリア後特典の隠しコマンドが存在するが、「全スキル習得」というこれまた育成の価値を損なうものがある。
  • 移動のしにくさ
    • マップが広いものが大半となり、それに移動速度が見合ってないのではという意見がある。
    • チェックポイントが配置されたことは評価点なのだが、一本道ではないステージも多いにもかかわらずマップの機能が全く備わっていないので、地形を覚えるのが苦手な人にとっては難関となるステージもある。
      • 上でも紹介した「ペレンノール野」というステージは、クリア条件の都合上早く移動しなくてはならないので、移動速度はどうしても気になるところである。
        また初見時は「どこに移動するべきか」で悩み、ゲームオーバーになる事がほぼお約束。
    • 「死者の道」というステージの霧が立ち込めているエリアでは強制的に歩行することになるので、急いでいる時にはイライラする仕様である。
      • なおこの時バックステップは可能なので、進みたい方向に背を向けてこれを連発することでそれなりの速度を出すことは可能。
    • 協力プレイでは、2人がそれぞれ操作するキャラが互いに離れすぎると問答無用でゲームオーバーになる仕様がある。
      • 画面分割ではないので仕方のないことではあるが、広くなったマップになった今作では互いの意思疎通をしっかりしていないと起こりやすい。
        また上述の「死者の道」の霧が立ち込めるエリアでは、移動のしにくさがこの仕様に大きく影響する。
  • オリジナル要素の多い本編
    • 前作同様、雰囲気は損なわずに原作にはない部分もステージ化している意欲は見られるのだが、根幹となる出来事は省略されているケースが多い。
    • 特にキャラの出で立ちについては説明が全くない。
    • ゴラムがフロドとサムを仲たがいさせるシーンもカット。そもそもゴラムの行動原理がこのゲームからは不明。

総評

前作の不評点を受け止め大幅な改善を試みたことが認められる本作。しかし快適性向上の代償として、全体的なアクション偏重と一部のヌルゲー化を招いたという問題が大きく、純粋なアクションゲームとしては前作よりも大味になり、シナリオの説明不足という問題点は依然として解消されなかった。

一方でステージ配置のテコ入れやグラフィックやサウンドは十分改良された。また全体的な難易度が低下した事は事実なため、前作よりは映画が好きなアクションライト層には優しいつくりになったといえるかもしれない。

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最終更新:2024年01月03日 06:25

*1 自らの意思でサウロンの配下となった、或いはモルドールに征服されて奴隷となった生身の人間。

*2 キリス・ウンゴルの章ラスボス、黒門に出てくるナズグルなど。

*3 ラスボスが崖つかまり状態になっているところに止めアクションで剣を突き立てて落とす。