【ねっとはい】
レッツ炎上!!
カプコンの『逆転裁判』シリーズのフォロワー作品を目指して製作されたマーベラスの新規アドベンチャー(*1)。
ネット世界を舞台にした討論バトルで、「リア充の嘘を暴く」ということをテーマにしており、インターネット上の様々な媒体を通してゴシップを集め、リア充たちの嘘を暴いて爆発炎上させていく。
…と聞くと、現実世界の「炎上」のような不愉快でバカそのものの内容を想像されるかもしれないが、本作の物語はそういったものとは全く異なる、まさに「王道」と呼ぶべき内容になっている。
キャラの造詣や演出などは、アニメ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』などを思い浮かべるデザインとなっている。
プロデューサーの田中氏は元々『閃乱カグラ』シリーズで雑務スタッフを行っていたため、ゲーム中にシリーズのポスターなどの広告がちょこちょこ登場する。
主題歌はアイドルグループの「仮面女子」が担当し、実際にモブキャラでも出演している。
インターネットが高度に発展した日本の架空都市が舞台。
そこでは「健全なコミュニケーションの推進」を目的にして、政府公認SNS:「ツイイッター」のフォロワー数によって市民権が決定される階級システムが導入されていた。
弱者が這い上がる唯一の希望は、自分と特定の他人のどちらがより社会的に貢献しているかを本人同士で議論して、最終的に観客に勝者を決めてもらう公開討論ショー「ENJ(エンジョイ)バトル」のみ。
これに勝利すれば相手のフォロワーを根こそぎ奪えるため下克上も夢ではない。しかし負ければ基本的人権さえ奪われ社会的に抹殺される。
万人に公平なチャンスを与えるというお題目のENJバトルであったが、実際には他人の弱みを晒して貶めることが横行する「炎上社会」が訪れることになった…。
そんなディストピアにおいて、フォロワー数4という被差別民の主人公「俺氏」は、ある事件をきっかけに立ち上がり、高性能ナビゲーションAI:「シル」と共に、格差社会の享受者たるリア充たちを全て倒すべくENJバトルを挑んでいくことになる。
基本的には、『逆転裁判』と同じものであり、いわゆる調査パートと対決パートを繰り返しながら、物語を進めていくことになる。
数々のミニゲームをクリアすることから、『ダンガンロンパ』的な要素(*3)も存在すると言えよう。
「リア充を爆発炎上させる」というフレーズからは想像も付かないほどの、まさに「王道」というべき推理アドベンチャーである。
システム面は、要は『逆転裁判』なのであるが、そのメインテーマの特殊性から、単純な模倣作と切り捨てることはできない。
決して粗が無いわけではないが、それを乗り越える熱さ・勢いを持った作品であると言える。
…やはり、「ネット世界を舞台にした討論バトル」ということで、どうしても人を選ぶ作品ではあるのだが。
加えて、このゲームのウリとなる「第一印象から想像が付かない部分」を全くアピールしない斜め下の広報ばかり行っていた(*7)こともあり、正しいファン層にアピールされず、売上も芳しくなかった。
この記事を読んで興味を持たれたのであれば、ゲーム冒頭の1章ほぼ全てが収録された体験版が配信されている(*8)ので、是非とも遊んでみてほしい。
それで何か感じるものがあるならば、プレイをされてもまず後悔することは無いはずである。それでいて、購買意欲を刺激するといういい意味で凶悪な体験版である。
*1 一応、発売前に『ファミ通』で『ネットハイ』と『逆転裁判』のプロデューサー同士の対談が行われたくらいはカプコン側も公認。
*2 ただし、本名はちゃんと裏設定として決まっているらしい。
*3 ちなみに、『ダンガンロンパ』に影響されたような要素として、「マスコットキャラの担当声優は国民的人気キャラの声優も担当したことがある」というものがある。
*4 もちろん、元ネタはユーチューバー。
*5 テレビ番組のスポンサー紹介の「提供」の文字が、たまたま出演者の目に被りネタにされる。
*6 デフォルト設定は10分。
*7 例えば「炎上」がテーマなので、ネット上で炎上しやすい芸能人を宣伝に使う、など。よりにもよって、このゲームを最も楽しめるであろう「ネット上のオタク」が最も嫌うタイプの人物を呼んでいる。作中で「オタクはにわかを嫌う」と言っているのに…。
*8 しかも製品版にセーブデータの引き継ぎが可能。