ワールド・ネバーランド ~オルルド王国物語~
【わーるどねばーらんど おるるどおうこくものがたり】
ジャンル
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リアルタイムシミュレーション
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対応機種
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プレイステーション ドリームキャスト Windows プレイステーション・ポータブル
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発売・開発元
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リバーヒルソフト
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発売日
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【PS】1997年10月23日 【DC】1999年7月15日 【Win】1999年10月29日 【Win・DL】2004年09月16日 【PSP】2008年6月26日
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定価
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【PS/DC】5,800円(税別) 【Win・DL】1,944円(税込) 【PSP】UMD:3,990円/DL:2,800円(税5%込)
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廉価版・配信
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PlayStation the Best:1998年08月06日/2,800円(税別) ゲームアーカイブス:2018年10月24日/617円(税込)
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備考
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DC版の正式タイトルは『ワールド・ネバーランドプラス』 PSP版は『ワールド・ネバーランド2in1Portable』として『2』と併録
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判定
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良作
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ワールド・ネバーランドシリーズリンク
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概要
架空の国家の一員となり、そこでの人生を謳歌する人生体験シミュレーション『ワールド・ネバーランド』こと『ワーネバ』シリーズの記念すべき第1作目。
特徴
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プレイヤーは移民として「オルルド王国」という、大陸の半島に位置する国に降り立ち、そこで自由気ままな生活を送る。
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仕事の鬼となるもよし、訓練に打ち込み最強を目指すのもよし、片っ端から異性に話しかけて最低人間を目指すのも、はたまた引きこもったりその辺をぶらぶら歩くだけのニート生活を満喫するのも、全てプレイヤーの自由。システム全般含め、オンラインRPGに極めて近い要素を持っている。
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ざっくり言ってしまえば、自由度の高さがウリのゲームであり、のちのシリーズでもこの点は変わらない。
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新規で始めると、まず執事のライアルから王国の説明をフルボイスで受け(長いため飛ばすことも可能)、その後キャラメイクや性格質問を行なうことになる。
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その後、所属オルグ(オルルド王国の成人した国民が必ず配属される組織のこと。簡単にいえば武術と仕事を両立させた組織)を決めて、いよいよゲーム開始である。
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オルグには、剣術を磨き野菜生産を生業とするピートオルグ、格闘術を鍛え牧畜を営むバンオルグ、魔術を究め化学工業(に近い仕事)を行なうユリウスオルグの3つの他、国王直属の組織であり国民の憧れの存在でもある親衛隊オルグというものが存在する。
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結婚して子供が生まれると、その子供の成人の儀式に参加していた場合、子供にプレイヤー権を引き継ぐことが可能。
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これを利用することで、長い間このゲームを遊び続けることができるようになっている。
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この世界では1年が30日であり、「月」という概念は存在しない。キャラクターはプレイヤー・NPC問わず、平均寿命は30歳前後となっている。
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プレイヤー権の引継ぎを行なわなかった場合、寿命が来るとそこでゲーム終了となり、エンディングとなる。
評価点
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とにかく高い自由度と、プレイヤーに対する充実したフォロー
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上述したが、このゲームは自由度の塊でできていると言っていいほどに、何をするのもプレイヤーの自由に任せられている。
初心者は戸惑うこと間違いなし。
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しかし、それでいてまるっきり説明不足でプレイヤー突き放しというわけでもない。
基本的にいつでもメニューから「王国マニュアル」でゲームの説明が見られるほか、国内の至る場所にワンポイントヘルプがちりばめられているため、慣れるのも早い。
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「王国マニュアル」は中身が非常に充実しており、中には「攻略本に片足突っ込んでいるんじゃないか」と思えるほどに踏み込まれた内容の説明も一部書かれていたりする。
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マニュアルの「王国ギャラリー」のページでは、国内の要所をフル3Dのプリレンダ画像で載せてある。
そのグラフィックのクオリティは当時のPS作品としてはかなり良い出来。
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事細かに形作られた奥の深い世界観の設定
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ある意味、『ワーネバ』シリーズを象徴する特徴の1つ。初代であるこの作品から既にその片鱗を見せており、プレイヤーを独特の世界観へと引き込む。
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まず、この世界の仕組みからしてやり過ぎと言うほどに細かい設定が存在している。
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王国ができる前に存在した超巨大帝国の伝説や、その帝国があっという間に滅んだ大事件。そしてその後長きにわたる人や龍と、異世界からの侵略者たちとの厳しい戦い。
戦いに勝利したのちに生き残った龍が世界各地を見守り、人々が王国を誕生させたことなど。
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また、オルルド王国の西方には広大な砂漠が広がっており、独自の文化を持つ少数民族がいることや、軍事大国が存在することなど、地理の方に関しても設定に手は抜かれていない。
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こういった設定は普通に王国で暮らしているだけではなかなか気づきにくく、後述する「残されたメモ」や、先ほど述べた龍の生き残りから聞く話などを拾い集めていくことで、だんだんと詳細な全容が見えてくるようになっている。
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生き残りの守護龍「バグウェル」は、4年に一度オルルド王国にやってくる。
その年には「ドラゴンドロップ杯(通称:DD杯)」という武術大会が開催され、優勝者がバグウェルに挑戦できるという仕組みになっている。
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バグウェルは非常に手強く、たとえレベルをカンストさせて全必殺技を取得し、なおかつ最高のコンディションで試合に臨んだとしても、勝率はかなり低い。
しかし、もし勝利すると様々な強力な効果を持つ「ドラゴンドロップ」をはじめとする数々のご褒美や名誉が得られるほか、バグウェルの昔話を聞くことができる。
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また、バグウェルに勝利するごとに聞ける話の内容が変わっていくという仕組みになっている。
ただでさえ4年に一度しかチャンスがない上に勝利するのも非常に困難だが、興味があるのならば頑張って何度も勝利してみるのをお勧めしたい。
それほどまでに、彼の話は世界観を深く掘り下げてくれるものなのだ。
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その圧倒的な強さや存在感故に人気が出たためか、シリーズの後発作品においても「バグウェル」と名乗る龍がほぼ毎回登場するようになった。
ただし、作品ごとにそれぞれ別の個体という設定になっており、本名はそれぞれ別に存在している。
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本作独自の要素として、「残されたメモ」と言うものがある。
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これは王国の歴史を紐解く手がかりのようなものであり、これを見つけることでゲーム中ではあまり語られない裏設定のようなものを知ることが可能。
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見つけたメモは数に応じて自宅にあるリーダーという家具に保管されるため、いつでも自由に見ることができる。
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また、大半種類のメモは一定数見つけるごとにフルボイスで語られる特殊なメモを見ることができる。
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メモがある場所はたいてい小さな丸で目印がされているが、見つけるために条件が設定してあるものも多い。
中には非常に困難なものもあるため、やり込み要素にもなっている。
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メモを発見した際にはご褒美として、お金や経験値、アイテムが手に入る他、疲労とストレスが回復することも多い。
一部の種類のメモは逆に疲労やストレスが増えたりするが。
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そして、メモを全て見つけることができると…
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メモを全て見つけると、なんとオルルド王国の国王になることもできる。
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ただしこの場合はエンディング直行。また、断ることも可能。
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キャラクターの育成が行ないやすい。
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オンラインRPGをやった人なら分かるとは思うが、自由度の高いゲームと言うのは往々にして、育成が非常に困難なゲーム設計になっている場合が多い。しかし本作はそのようなことは一切なく、ライトユーザーにも優しいレベルが上げやすい環境に仕上がっている。
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金銭面がかなり緩くなっているため、訓練効果を上げる類のアイテムを使った効率の良い訓練を行ないやすい。
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また、一言に訓練と言っても手段が非常に豊富に用意されている。大きく分けるとスピード・スタミナ・スピリット(以下、「3S」と表記)の各レベルを1つだけを上げるものと、2種類を同時に上げるものの2つ(こちらはオルグの訓練場を使う)。
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ただ走るだけでも、3Sの経験値が少しずつ溜まっていくという点もうれしいところ。
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特筆すべきは、「友人と協力しての合同訓練を行なう」と言うもの。この場合3S全ての経験値が入るのだが、相手のレベルが高ければ高いほどもらえる経験値が多くなるという要素がある。そのため、親衛隊オルグ員のような高レベルの友人を作ってひたすら合同訓練を繰り返すだけで、みるみるレベルが上がっていく。
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その他、ランク外のうちのみ行える練習試合や、葬式でのお別れのあいさつなどでも経験値が入る。
葬式が起こるたびにニッシィを飲んで棺の前で必死に○ボタン連打した人は多いはず。
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3Sの上限レベルはそれぞれ255。こう聞くと途方もない高さに思うかもしれないが、レベル自体はかなりハイペースで上がっていくため、レベルアップの爽快感が楽しめるというプラスの評価を受けやすい。
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様々なバグや設定ミスが目立つ『2』と違い、バグの類が少ない点もポイント。
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キャラクターの顔グラフィックは藤原カムイ氏が担当。年齢による差分もきちんと描かれており、好評との意見が多い。
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公式ガイドのインタビューによると、開発当初は年齢差分が一切ない仕様だったらしい。もしそのまま出ていたらかなり残念がられたことだろう。
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BGMがゲーム開始時のOPから途切れることなくずっと流れるという特徴がある。場面が変わっても自然な流れでBGMが切り替わるため、雰囲気も崩さない。
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この点に関してはシリーズ共通の特徴として、後発作品にも受け継がれている。
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セーブデータが入ったメモリーカードをやりくりすることで、他のプレイヤーキャラクター同士と対戦が行なえたり、他のプレイヤーキャラクターがいるセーブデータの王国に移住して生活を送る、といった遊び方もできる。
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特に移住に関しては遊び方の幅が大きく広がり、無限の可能性を秘めていると言ってもよい。
他プレイヤーキャラクターと結婚したり、自分の祖父母が若かった頃の時代にタイムワープしたりといったことまでできてしまう。
賛否両論点
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レベルを最大まで上げてしまうとやることが少なくなる。
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最大まで上がり、必殺技も全て習得してしまうと、それ以上訓練する意味がなくなる。
すると経験値が溜まりやすくなる訓練用アイテムを購入する必要も一切なくなる。
このゲームではお金の使い道の大半が訓練用アイテムの購入に費やされるため、その結果お金を貯める、つまり仕事をする必要性もかなり薄くなってしまう。
仕事と訓練以外にできることはかなり限られてくるため、このような状態になると一気に暇になってしまうのである。
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一方で評価点でも述べた通りレベルは比較的上げやすく、育成のしやすさはシリーズでも随一。『2』のようにレベルが下がるようなこともないため、この点は賛否両論か。
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通りを歩いていると、他のNPCとすれ違うたびに吹き出しで噂話を聞く。
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パターンはそれなりに多く、中には笑えるネタ的なものもあるのだが、いかんせん頻度が多いためうっとうしく感じる人も。
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余談だが、後述するイムの根に関する噂話も用意されており、「イムの根が一番効果ありそう」などということを聞くことができるが…はっきり言ってデマである。
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一応、カルビン市場に売られているものの中では最も強力な効果を持つアイテムではあるが、黒の港の舶来ショップではもっと強力で費用対効果も高い訓練アイテムが売られている。そちらはそちらで日替わり商品故に好きな時に買えないという欠点があるが。
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結果としては不評意見が多かったのか、『2』以降はこの要素はオミットされることとなった。ただし、移植作品ではきちんと残されている。
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NPCの特権
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プレイヤーキャラクターとの格差を埋めるためなのか、本作ではNPCにはアイテムの効果時間が通常より長かったりエリア移動の際に時折ワープするといった、特殊な補正が掛けられている。
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アイテムの効果時間に関しては、プレイヤーキャラとは違うエリアにいる間は効果時間がほとんど減らないという反則級の補正が掛けられる。同じエリアにいれば通常通りの時間で効果が切れるのだが。
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ワープに関しては更に強力で、なんとNPCと一緒にエリア移動したにもかかわらず、当のNPCはたまに全く違うエリアへと瞬時に移動してしまうというもの。これが原因で追いかけていたNPC見失ってしまう、と言うことも多い。
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おそらく、どちらもAIの設定がまだ未熟だったが故の苦肉の策でこのような仕様になってしまったのだと思われる。
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結果的にプレイヤーキャラとNPCの格差を少しでも埋めるようには働いている調整にはなっているものの、やはりこの仕様に納得がいかないという人も多い。
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次回作以降は開発陣のAI周りの技術が成熟したのか、このような仕様は見られなくなった。
問題点
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親衛隊オルグ。おそらくこのゲーム一番の問題点。
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親衛隊オルグとは国王直属の組織であり、欠員が出た際には国民から選抜が行なわれて補充される仕組みになっている。
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選抜の際にはレベルの高さや性格の良さと言った様々な点から考慮されて決められる。
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問題は、選抜された際に絶対に断ることができない点。
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親衛隊オルグに所属してしまうと、その他オルグのAランクでのみ行える高収入の仕事ができなくなってしまう。
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また、DD杯に参加できなくなり、バグウェルの話を聞くのも難しい。
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一応、親衛隊長になればNPCのバグウェル戦勝利後のイベントに立ち寄れるため、彼の話を聞くことが発見条件である残されたメモを見つけることは可能。
ただし、聞ける話の内容は勝つたびに増えていく仕組みのため、その方法ではまず間違いなく1つ目の話しか聞けない。
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選抜されるのを防ぐには、「レベルを上げ過ぎない」、「ラムサラを飲みまくって性格を意図的に悪くする」などが有効。
とはいえ、どちらにせよ行動が制限されてしまうのはつらいものがある。
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ショップ周りの不満要素
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アイテムの価格設定が、一部おかしなことになっている。
例えば、一時的に全ての経験値を稼ぎやすくなる「イムの花」が300ピィ、ストレスを全快させる「龍酒」は200ピィなのだが、その両方の効果を持つ「イムの根」は1,000ピィもかかる。一応本作ではアイテムは一度に1個しか持てないという制約があるにはあるが…。
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このあたりはシリーズ1作目と言うこともあってか、こういった練り込み不足が結構多い。
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イムの根を手に入れたら開き直って換金アイテムとして売却してしまう(この場合半額の500ピィもらえる)、というのもありか。
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黒の港の舶来ショップでは「日替わり商品」や「売切れ」の概念が存在している。一部の訓練用アイテムは特定の日でないと買えず、高級品は入荷数が少ないらしく一定数購入するとすぐ売り切れになってしまい、数日間買えなくなる。
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特に、売切れに関してはNPCが購入した商品の個数も合算した上で発生するため、「自分は全く買ってないのに、欲しいときになかなか買えない」という現象がしばしば発生する。心の友やセシルの香り、ラムサラあたりは売切れが起こりやすい。
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リアリティはあるがいまいち不便な要素と言える。それらを踏まえてか、後発作品では完全に撤廃はされずとも、ストレスを感じさせにくい形に変更されて続投している。
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セーブデータの容量がPSソフトとしてはかなり大きく、メモリーカードを10ブロックも消費してしまう。
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PSのメモリーカードは1枚15ブロックの規格が一般的なため、基本的にはセーブデータの数だけメモリーカードが必要になる。
やり込んだり上述の「移住」「対戦」で遊ぶとなると必要な枚数はかなりの量になってしまうのが悩みどころ。
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なお、この点に関してはのちの各種移植作品では容量の増加に伴い改善されている。
総評
粗削りな部分は多いものの、その高い自由度で多くのファンを生み出した作品。
好評だったために発売後間もなく『2』の製作・及びシリーズ化が急遽決まり、さらに本作自身も後にドリームキャストやWindows、PSPに移植されるという快挙を挙げている。
移植版
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ドリームキャスト版ではNPCとの会話台詞が追加された他、ユーザー同士の交流ツールである「オルルド通信局」が存在した(現在は終了)。
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Windows版ではドリームキャスト版準拠の内容に倍速・オートモードが追加。
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PSP版も倍速機能が無い以外はWin版準拠の内容。DL版も発売されている他、後続作品への移住も出来るため、入手のしやすさと快適さを求めるならこれがオススメ。ただし、特定の条件で文字化けしてしまうケースが確認されている。
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PS3のゲームアーカイブス配信版は原作であるPS版準拠。現行機で遊びたい、あるいは原作の雰囲気を味わいたいと言う人にオススメ。
余談
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本作は企画段階で内容が何回も変わり、開発に難航したことでも知られている。
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公式ガイドのインタビューによると、1年に一度のイベントで屋台が出回ったり、誕生日パーティが行なえたりと言ったことも計画されていたようだ。
結果的にそれらは技術的な問題でオミットされたのだが、のちの作品では似たような要素が取り入れられるようになっている。
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本作には攻略本が何冊か出ているが、このうち「公式ガイド」に関しては誤植が非常に多いため、購入の際は要注意。
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特に、残されたメモ関連の部分に誤植が集中している。誤字脱字の他、他のメモと情報が入れ替わっていたり、発見した際にもらえるご褒美の内容が間違っていたりなど。
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2018年7月26日にSwitch版『ワールド・ネバーランド エルネア王国の日々』の大型アップデートが施され、本作のWindows版のプレイヤーキャラクターはパスワードを用いることで、Switch版のエルネア王国へと直接移住できるようになった。
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それ以外の機種に関してはパスワード機能が無いため直接の移住はできないものの、それらについても『プルト共和国』を経由させることで間接的に移住させることができるようになった。
最終更新:2022年09月02日 11:49