このページでは『メディーバル 甦ったガロメアの勇者』(良作)と海外専売のリメイク『MediEvil: Resurrection』(判定なし)について紹介します。
メディーバル 甦ったガロメアの勇者
【めでぃーばる よみがえったがろめあのゆうしゃ】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション
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メディア
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CD-ROM 1枚
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発売元
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ソニー・コンピュータエンタテインメント
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開発元
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SCEケンブリッジスタジオ
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発売日
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1999年6月17日
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定価
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5,800円(税別)
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配信
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ゲームアーカイブス 【PSP】2007年11月28日/500円 【PSV】2012年9月4日/572円(共に税別)
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判定
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良作
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ポイント
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骸骨が戦うユーモアたっぷりの中世ファンタジー
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概要
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SCEケンブリッジスタジオ(現:ゲリラケンブリッジ)製作の3DアクションADV。『プレイステーション オールスター・バトルロイヤル』に参戦したフォーテスクの初出作。
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原作である『MediEvil』は北米にて1998年10月1日に発売された。日本語へのローカライズの際、一部設定に変更が入った(後述)。
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当時としては美麗なグラフィックと軽快な操作性が特徴。フォーテスクの強化を兼ねた聖杯集めなどのやりこみ要素も。難易度も高すぎず低すぎずで良好なバランス。
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主人公がゾンビ(というよりスケルトン)なのをはじめホラー系だが、自分の腕を取り外して棍棒のように振り回せたりとどこかコミカルな世界観やキャラクターも魅力。
ストーリー
ガロメア王国を魔物を率いて、王国支配を企むザロックと言う名の妖術使いがいた。王に仕えていた騎士ダニエル・フォーテスクは王国軍を率いてザロックの魔物と戦い、勝利するが深傷を負い、静かに永遠の眠りにつき、「ガロメアの勇者」と称えられていた。100年後、ザロックが復活し、ガロメア王国は危機にあった。墓地から復活したダニエル・フォーテスクは再びガロメア王国を救うため立ち向かう。
特徴
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ゾンビや幽霊と戦うホラーベースのアクションゲームでありながら、主人公も骸骨。
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悪の魔術師ザロックが墓地からアンデッドの軍団を甦らせた際、うっかりフォーテスクも甦らせてしまう。
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どういうわけか顎の骨がなくなっているため、モゴモゴとしか喋ることができない。
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各所でザロックの軍団を倒しながら、ガロメア王国を救うためにザロックを追うことになる。
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道中、あるいは聖杯を集める(後述)ことで、新たな武器を入手可能。ロックマンシリーズさながら、さまざまな武器を使い分けて戦っていく。
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設定だけ見ればさながらシリアスな王道ファンタジーでありながら、ユーモラスな戦いを繰り広げていく、ホラーコメディ。
北米版(原作)と日本版との相違点
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北米版では、フォーテスクはザロックとの最初の戦争にていきなり矢を片目に受け何もできずに死んでしまったとされているが、日本版では実際にザロックを自ら倒したということになっている。
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もっとも北米版でも、フォーテスクはあくまでも伝承上ではザロックを倒した英雄ということにされており、ガーゴイル達には一笑に負されている。
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日本版でも、冒頭のムービーでザロック軍に突撃したフォーテスクがいきなり射殺されたシーンがそのまま残されており、プレイヤーは矛盾を感じずにはいられない。
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北米版ではガーゴイルや英雄の館にいる英雄たちから、(一部を除き)皮肉や呆れのニュアンスで行われている会話が、日本語版ではほぼ一貫して「一目置かれた戦士」として扱われた真面目な会話へと差し替えられている。
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これにより日本版ではユーモア度が下がってしまい、ホラーコメディとしての性質が控えめになってしまっている。
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例えば「竜の涙」を得るためにドラゴンと戦うシーンでは、日本語版では「英雄としての力を示せ!」とステレオタイプな威厳のあるドラゴン憮然としているが、北米版では「その骨から肉を焼きはがしてくれよう(骸骨な主人公を一瞥)――あー、いや、で、ではその両目を抉り出してくれよう(片目の欠けた主人公を一瞥)――あー、と、とにかく覚悟せよ!」とお茶目な会話になっている。
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CVも北米版でおちゃらけた声であてられていた人物(ティムなど)も真面目系の声があてられている。
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なお、フォーテスクはモゴモゴとしか喋れないため、北米版にはフォーテスクの台詞にも字幕があてられている(日本版にはない)。
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日本版ではどういうわけか、フォーテスクが北米版にはなかった金色の兜をかぶっている。
評価点
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ダークかつユーモラスな世界観
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中世ヨーロッパを舞台に、呪術師ザロックの魔法によって浸食されたシリアスなようでどこかコメディな雰囲気を見事に醸し出している。
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時折入るムービーは極めて美麗で、かつおどろおどろしいホラーテイストを余すところなく演出。
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ゾンビ出現時はまず地面から棺桶が湧き出、棺桶が開いて出てくる、と細かい演出も多い。
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一見はちょっとしたゾンビ退治ものの無双ゲームのように見えて、会話やギミックにはコメディ要素も満載。それでいて、コメディとホラーがミスマッチすることなく共存している。
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『眠れる街』というステージでは、図書館のような建物内でこの世界設定を詳しく読むことができる。
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生命ボトルによる残機制
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各所で「生命ボトル」というものを入手し、これを生命の泉で満たしておくと死んでしまった際に復活できる。
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生命ボトルは、所々で湧き上がってくる回復ポイントである「生命の泉」で満たすことができ、入手できる生命ボトルの数はクリアするために過不足のないちょうどよい数が用意されている。
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特に困難な足場ジャンプを行う場合(後述)、失敗して死んでしまってもほぼその場で即座にやり直せるので非常にテンポが良い。
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「聖杯」システムと遠近揃った多種多様な武器
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ゲーム中では、敵を倒すごとに「聖杯」が満ちてゆき、100%になると聖杯が実体化して取得可能となり、ステージクリア後に「英雄の館」へと招待される。英雄の館では新しい武器を1つ入手することができる。
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英雄の館で入手できる武器は剣、斧、槌、弩、弓、雷など遠近満載。それぞれ特徴が違うのでゲーム中は状況に応じて使い分けていくことができる。
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武器によっては残弾数や制限時間などが存在するが、途中のショップで補充することが可能。
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聖杯を取らなかった場合は新しい武器はほとんど入手できないが、それでもクリア可能なように設計されている。
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自由度の高いゲームシステム
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一度クリアしたステージは何回でも再挑戦でき、どのタイミングでも中断して即座にマップに戻ることができる。これを利用して金を稼いだり、生命ボトルのストックを補充して直ぐにマップに戻ったり…を繰り返して万全の状態に保つことが可能である。聖杯をとらないままクリアしてしまったステージの再挑戦も容易。
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各ステージの難易度が高めなので救済措置ともとれる。
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多彩なギミック
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ステージをクリアするにおいて、進行するためには多種多様なギミックを解いていく必要がある。
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障害物をどける、パズルを解く、なぞなぞに答える、特定アイテムで修理する、特定の箇所を破壊するなど、バリエーション豊富で飽きさせない。
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近くに配置された書物に、特定のギミックを解くヒントが載せられており、謎解きの要素も多い。
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当時としては美麗なキャラクターデザイン
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3Dゲーム初期にしては、グラフィックとデザインが秀逸。特にステンドグラス・デーモンはその外観や散り様には定評がある。
問題点
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各ステージの所要時間
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場所にもよるが、ステージ1つの攻略に非常に時間がかかるものがあり、謎解きをするステージの場合は1時間近くかかる可能性もある。
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ポーズはあるものの、途中セーブやチェックポイントの類は無いのである程度の時間を作ることが必要。
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遠距離武器の照準合わせ
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遠距離武器の照準は、緑の光点が照準を合わせた敵に飛んでいくという形で表示されるが、基本的にフォーテスクの正面直線状にもっとも近い位置にいる敵にロックオンされ、制御が非常に困難。
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特に飛行する敵が複数出現するようなステージや、攻撃してはならないキャラが入り混じるステージでは、微調整しにくいこともあって非常に鬱陶しい。
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謎のクリア条件
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『封印の地』というステージでは、何の理由もなく封印された悪魔を解放することになる。特にその必要があるわけでもなく、ただクリア条件だからというだけの理由で封印を解いてしまう。
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この行動を取らなければならない理由は一切説明されず、あまつさえ直後にガーゴイルに一方的に非難される。
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PSPへの移植作である『MediEvil: Resurrection』(国内未発売)では、一部の設定変更と共に封印を解かざるを得ない理由が追加された。
賛否両論点
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軽快な(軽快すぎる?)無双アクション
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キャラクターの動きが俊敏で、移動も攻撃もサクサクと進んでいく。
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一部のボスキャラクターは攻撃するタイミングが重要であったり、特殊な倒し方をしなければならないなど、観察して考えることも重要。
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ただし攻撃にバリエーション自体はほとんどなく、基本的に近づいて武器を振り回すだけという点が少々見劣りするという意見も。
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ジャンプ制御が極めて難しい。自らの位置を把握するのが難しく、また着地時に「滑る」ため足場から落下すること多々。生命ボトル(残機)が多いのが救いと思われる。
総評
痛快かつクスッと笑えるアクションアドベンチャー。
当時としては斬新な主人公設定で、謎解きやギミック満載のホラーコメディゲームを制作したSCEケンブリッジスタジオには脱帽。
大ヒット作のように光る部分や濃いやりこみ要素は無いものの、総合的にボリューム、難易度、ストーリー展開などバランス良くまとまったゲームであると言える。
好評を受け、北米では続編である『MediEvil 2』及びPSPリメイク作である『MediEvil: Resurrection』(後述)が発売された(何れも日本未発売)。
現在はPS storeにてお手頃な価格で配信しているので、気軽にプレイを始めることが出来るだろう。
MediEvil: Resurrection
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売元
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ソニー・コンピュータエンタテインメント ヨーロッパ
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開発元
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SCEケンブリッジスタジオ
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発売日
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2005年9月1日(ヨーロッパ)
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判定
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なし
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ポイント
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前作の要素をほぼ全て引き継いだリメイク
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概要(PSP)
北米及びヨーロッパでのみ発売された、『メディーバル 甦ったガロメアの勇者(MediEvil)』のPSPリメイク作。開発は同じSCEケンブリッジスタジオ(現:ゲリラケンブリッジ)。
グラフィックと一部設定が刷新されたが、内容は原作とほぼ同じ。より美麗でディテールに凝ったグラフィクスと、ユーモラスなサイドキャラクターである「アル」の追加など、リメイクでありながら新鮮なゲームとなった。
原作からの追加・変更点
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ここからプラットフォームがPSPになったことにより、グラフィクスが大幅に進化。造形やステージのディテール・キャラクターの動きなどPSPの性能を余すところなく利用した。
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新キャラ「アル」の追加。要するにゲームの説明役であり案内役、MediEvil2におけるウィンストンと同じポジション。ザロックによってフォーテスクの頭蓋骨内に封印されたジーニーらしい。
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一部ステージが排除・統合され、代わりにいくつかの新ステージが追加。現存のステージもところどころの微修正が入っている。
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武器数の追加。英雄の館にて武器以外のものを入手する機会が大幅に減り、新武器を得る機会が増えた。
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一部の武器種は、それまでの武器種の上位互換。剣やクロスボウに「英雄の剣」「英雄のクロスボウ」などの上位武器が追加された。
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空中攻撃や、弱・強攻撃両方に溜め攻撃が入るなど武器アクションも追加された。
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現実世界の武器では倒せないザロックの「亡霊兵」を倒すために、「アヌビス・ストーン」が必要であるというプロットが追加された。
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これにより、「封印の地」で悪魔封印の鍵となっているアヌビス・ストーンの欠片を持ち去る必要があり、これが悪魔解放につながってしまうという辻褄合わせがなされた。
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原作では最終ステージで唐突に出てきた「生命の光」だが、アヌビス・ストーンにこれと同じ効果が付加された。
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一部会話とムービーの追加。
評価点(PSP)
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極めて美麗となったグラフィック。ムービー中もフォーテスクの表情が豊か(!?)になり、ガーゴイルのデザインも刷新された。
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特に大きな変更を受けたのは英雄の館。空に浮かぶインド宮殿のような作りであり、その華麗さは一見の価値あり。
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相変わらずのユーモラスな会話、そしてそれに対比するようなホラー然とした設定と風景。
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聖杯が実体化せずとも入手可能となり、回収が非常に楽になった。
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ストーリーは会話や進展が増え、より深みが増した。
問題点(PSP)
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カメラ操作がおぼつかない。PSP時代になりながら、アナログスティックは方向キーと同じ役割しかはたさず、Lボタンによる視界リセットしかない。そのため、特にジャンプ操作などの難易度は原作よりも難しくなった。
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ジャンプ攻撃など複雑な武器アクションが増えたが、そのほとんどが宝の持ち腐れ。基本戦術は原作同様、近づいて振り回すだけでもよい状態。
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PSPゲームとしてはあまりにもボリューム不足。原作に比べると、減ったステージの方が追加されたステージより圧倒的に多く、結果としてボリュームが半分近くまで減った。
賛否両論点(PSP)
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新キャラクター【アル・ザラム(Al Zalam)】
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主人公フォーテスクの頭蓋骨内に住むジーニー。ザロックによって封印されてしまったらしい。
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特にストーリーに関与するわけでもなく、口うるさいだけの余計なキャラクターと言われる声が多い。事実、彼はごくごく一部の状況でしか役に立っていない。
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反面、ユーモラスなその声と言葉遊びは間違いなくメディーバルの系譜であるとし、評価する者もいる。
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ガロメア平原(Gallowmere Plains)
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Resurrectionにて追加されたステージの1つ。正直ミニゲームがあるだけの、ただ素通りするためだけのステージである。
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ここに入って鍵を使わなければ、封印の地(Enchanted Forest)に行くことができない。その点はゲーム内でほとんど説明されないため、封印の地へ行く方法がわからず詰まるプレイヤーが少なからず居た。
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ここでプレイできるミニゲームはお祭りの露店でやるだけの本当のミニゲームであり、射的であったり羊飼いであったり鼠退治であったりと、PSPでやることかと言いたくなるようなシンプルすぎるもの。それでいて、クリアしたからといって特にシナリオに関与するわけではない。
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ミニゲームを全てクリアすることでとある武器を購入できるようになるのだが、この武器がバランスブレーカーで、以後手に入る近接武器の大半を空気にしてしまいかねないもの。
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ただし、もともとボリュームの少ない本作においてはやりこみ要素と言える唯一のもので、難易度もそこそこなので「このゲームで最も楽しめるステージだ」という声もあがっている(参考:GameFAQs)。
総評(PSP)
良くも悪くも「リメイク」作品。
リザレクションの名のごとく、昔からあったものをある程度現代水準に押し上げて復活させた作品という印象。
グラフィックやストーリーの整合性などは時代に追いついているが、カメラ周りの操作性がPS時代のものと変わらない(どころか劣化)している。
ただし、あらたなメディーバルとしては優秀な作品でもあり、そのコメディホラーな作風は未だ健在で、かつ飽きない作りになっている。
惜しむらくは、もっとボリュームのあるゲームだったならば…。
余談
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前述の地面から棺桶が湧き出る演出やナイフや斧や槍を投擲する動きなどがカプコンの『魔界村』に酷似している。これは本作のコンセプトを制作したChris Sorrell氏が『魔界村』と映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の大ファンであり、両方を融合させたゲームとして制作されたため。
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『プレイステーション オールスター・バトルロイヤル』にフォーテスクがプレイアブルキャラとして参戦し、DLCで「墓地」ステージが追加された。原作の再現度は全体的に良好である。ライバルキャラには『KILLZONE2』のラデック大佐が割り当てられているが、対決前の会話では「我こそは偉大なるガロメアの勇者!」と言ったもののお馴染みのモゴモゴ喋りだったため「まったく分からんな」と一蹴されてしまった。
最終更新:2022年09月05日 00:18