The Elder Scrolls III: Morrowind

【じ えるだーすくろーるず すりー もろううぃんど】

ジャンル RPG
対応機種 Windows 98~XP
Xbox
メディア 【Win】CD-ROM 2枚組
【Xb】DVD-ROM
発売元 ベセスダ・ソフトワークス
開発元 Bethesda Game Studios
発売日 【Win】2002年5月1日
【Xb】2002年6月6日
完全版 Game of the Year Edition
【Win】2003年10月31日
【Xb】2004年2月20日
備考 日本未発売
判定 良作
The Elder Scrollsシリーズ


ストーリー

第3紀427年。出生不明の囚人が、皇帝の恩赦により条件付きでモロウウィンドに送られ釈放された。
促されるままに囚人船を降りたあなたに与えられた使命は「皇帝の密書をバルモラという町にいる帝国の工作員・カイウスへ届け、彼の指示に従う」こと。
セイダ・ニーン港から、あなたの旅は始まる。


概要

広大なオープンワールドを舞台に自由に旅を出来ることで好評を博した『The Elder Scrolls』シリーズのナンバリング第3作。
The Elder Scrolls II: Daggerfall』から対応OSをWindowsに移してゲームエンジンを一新し、現在のシリーズに続く下地を作り上げた名作RPGである。
「シリーズ共通のテーマ音楽」「錬金術や付呪等のクラフト要素」「DLCによる拡張」「MOD作成ツールの公式提供」など、本作から始まり後の作品に引き継がれていった要素は多い。

シリーズで初めてMODや拡張パックに正式対応し、家庭用向けゲーム機にも発売された*1


特徴・評価点

  • グラフィックの大幅強化
    • 『Daggerfall』までは3Dフィールドに2Dキャラクターという『DOOM』などのFPSと同様の疑似2D仕様だったが、今作はスピンオフ『The Elder Scrolls Legends: BattleSpire』から引き続きキャラクターも全てフルポリゴン3D化され、グラフィッククオリティ自体も大幅に強化されている。DOS → Win98というハード自体の進化に鑑みても、当時の最先端を往くには十分。
    • イベント関連でもこの要素を活かし、視覚・聴覚的な演出が大幅に増えた。
      • これがもっとも発揮されるのが序盤で発生する「空中浮揚の巻物」に関するイベント。突然空から人が降ってきて落下死するという衝撃的な始まり方をするためプレイヤーに強烈な印象を残した。
    • フィールドも1つの島が舞台ながら非常に広大であり多数の街、ダンジョンなど充実したロケーションが存在する。
  • 音楽面もパワーアップ
    • 楽曲のクオリティは大幅にアップしており、名曲も多い。世界観にマッチした楽曲は多くのファンに絶賛されている。
      • 『Daggerfall』まではEric Heberling氏が作曲していたが、『Morrowind』以降はJeremy Soule氏が作曲している。
    • トレーラーでも使用されているメインテーマ「Nerevar Rising」などは特に人気が高く、シリーズを代表する曲となっている。
      • その後のシリーズでもこの曲をアレンジしたものがメインテーマとして使われている。
  • ワールド構築方法の刷新
    • 『Daggerfall』まではランダム作成されたダンジョンや人物が多数を占めていたが、今作では全てが手作業により作成されている。
    • これにより過去作と比較してマップは狭くなったものの、密度が格段に向上しており、何百時間遊んでも新たな発見があるクオリティを実現している。
  • 基本システムはこれまで同様の一人称視点のアクションRPGに近い方式であるが、グラフィックの完全3D化をはじめ様々な部分が変更されている。
    • 基本システムは『Daggerfall』に近いが、完全3D化に伴いジャンプやそこら辺に落ちているアイテムを拾ったりする事が可能になった。
    • また、完全FPSの形式だった前作までと異なり、ボタン1つで三人称視点に変更できるようになった。これにより以前はステータス画面でしか見られなかった自キャラを自由に見られるようになった。
    • アイテムの売買システムが変更され、Goldを含む物々交換で買い物を行うようになった。これにより、商人ごとに品物やGoldに限界が設定されるようになった。
  • 戦闘は前作までと同様にシームレス形式。
    • 武器は抜刀してからマウスで狙いをつけ、クリックで攻撃する方式。ただし、前作までと違ってマウス操作で剣を振り回すことはできなくなり、また本作に限り攻撃判定がスキルの成功率に依存する。
    • 攻撃以外でも、ピッキングや調合・罠の解除など、ほとんどの行動はスキルレベルにより成功判定が行われる。
    • このシステムのため、スキルを上げるためのトレーニングや読書が殊更に重要となっている。
  • 闇社会・ダークファンタジーらしさを前面に出した世界観、ストーリー
    • 物語の舞台であるモロウウィンド(Morrowind)地方はダンマー(ダークエルフ)の国で、その歴史から排他意識が強い。他にも奴隷制度があったり、帝国でも流刑地扱いされているなど陰鬱な設定が多く登場する。
      • 今作ではモロウウィンド地方の巨大な島であるヴァーデンフェル(Vvardenfell)が舞台となる。
      • 拡張パックの「Tribunal」ではモロウウィンド地方の首都であるモーンホールド(Mournhold)、「Bloodmoon」では北西にあるソルスセイム(Solstheim)島が舞台となる。
    • 勧善懲悪的な展開はまず存在しない。エンディング分岐こそ廃されているものの、大なり小なりのクエストを通して『選択』を迫られていく。拡張パックを含むメインクエストのストーリーはやはり後のシリーズに繋がっている。
    • 各地の洞窟には盗賊など表を出歩けない人物が住み着いていることがあり、入ると襲われてしまう。
      • アイテムの中には「スクゥーマ」と呼ばれる麻薬が存在しており、これらを所持していると商人に取引を拒否されてしまうのだが、こういった盗賊のいる洞窟には得てしてスクゥーマが落ちている。スクゥーマ中毒を題材にしたクエストも存在する。
    • ゲーム開始直後はいつも通り囚人として始まり、船を降りる際に名前・性別・種族・顔・他、もろもろの能力値を決定していく。
    • 今作からカジートとアルゴニアンは亜人という設定が正式付与され*2、体格が人間と違うということで兜やブーツが装備できなくなっている。後のシリーズでは装備の差別はなくなった。
      • プレイヤーは流刑地とされるモロウウィンドに皇帝の密命を受けて送られてきたという設定。
      • 後の『Oblivion』などと異なり、今作の時点ではまだ自分で顔を作ることはできず、いくつかの候補の中から選択する方式となっている。
  • MODへの正式対応
    • 本作以降の最大の特徴・評価点として挙げられる新機能。
    • Win版に同梱されているツール「The Elder Scrolls Construction Set」などで作成する本作のMODは、プラグインの.esp/.esmファイルとリソースパッケージの.bsaファイル*3という形で、最少1~2ファイルにまで集約できる。
      これらをDataフォルダに置くだけで準備は完了。後はランチャーメニューの「Data Files」リストに出現したesp/esmファイルをチェックするだけ。
      • 『DOOM』のWADに倣ったこの機能は『Oblivion』『Skyrim』『Fallout 3』『Fallout 4』以降でも採用され続けることになり、シリーズ人気を確固たるものとした一因に。
    • 簡易的だがMODのパッケージ対応・管理機能を公式実装したことで、MODファイルの配布・管理が容易なものとなった他、ゲームの実行ファイルなど重要なファイルを直接いじる必要がある程度軽減された(完全に必要なくなったわけではないが)。
      • MODを利用すると何かしら不具合が出たりすることも少なくないわけだが、この形式なら大半のMOD*4は「Data Files」で手軽にON/OFFできるため、本体に与えるダメージが非常に少ない。MODを導入した結果問題が発生しても、即バニラの状態に戻せるため原因の特定もやりやすくなっている。
      • 後に発売された大型拡張ディスク「Bloodmoon」「Tribunal」も同じ形式でパッケージされている。これらには追加マップだけでなく本編全体に影響する要素があるので、手軽に切り替え可能となっているのは嬉しい配慮。
    • 発売から20年以上たった現在でも、モロウウィンド地方全域を構築する超大型MOD「Tamriel Rebuilt」や、実行ファイル自体を再構成する「OpenMW」といったプロジェクトが活動中であり、今もMOD界隈は盛況である。

賛否両論点

  • 戦闘の簡素化
    • アクション要素がそれなりに強いにもかかわらず、攻撃方法や判定は一般的なRPGのようにランダム性が強い仕様となっている。
      マウスをドラッグして剣を自由に振り回せ、それが顕著に現れる前作の操作を惜しむプレイヤーは多かった。
    • 本作でも一応方向キーと攻撃ボタンの組み合わせで突きと斬りを使い分けられはするが、結局「always use best attack」オプションの使用を推奨されることになった。
  • マップの縮小化
    • 本作のマップは25km²程。しかし、前作は161600km²もの広さを誇っており本作とは次元が違う。
    • とは言え前作までのマップはほとんどが自動生成で、ただっ広いばかりの単調なものであった。本作からはマップを凝縮し、ランダム生成を廃して限られた面積の中を徹底的に作り込んだと言えよう。

問題点

  • シリーズの常であるがバグが多い
    • ユーザーによるバグ修正MODの配布が行われるようになったのも今作から。後のシリーズは良い部分も多く継承したが、こういった悪い部分はまだまだ解消されていない。
  • 詰み要素が非常に多い
    • ゲーム世界全体がオープンワールド化したことで主人公のあずかり知らぬ所でNPCもまた生活している。
      その影響でいつの間にかクエストの重要人物が死んでしまい、最悪クエストの進行がストップしてしまうということも起こる。
    • ゲームオーバーの概念がないとはいえ、メインクエストも例外なく中断の可能性がある。そうなると最初からやり直すか、諦めてモロウウィンドの地で自由に暮らすか、である。
    • 次回作以降ではこの対策として「メインクエストに関わる人物には不死(Essential)属性が一時的に付く」仕様が登場。不慮の事故でクエストが詰む可能性がほとんどなくなった。
  • 非常に多いスラング
    • ファンタジーであれば専門用語も世界観に彩りを添える要素となるが、『Morrowind』は帝国の支配が薄い地方を舞台にしているためか非常に専門用語・作中スラングが多い。
      • そして、これこそが翻訳が進まず頓挫した原因である。それも英語圏の人たちですら戸惑うほどらしい*5らしい…。
      • 次作『Oblivion』ではこの件を反省してか難しいスラングは減ったが、逆に「この雰囲気がよかったんだよ」という人も。
  • ジャーナルのシステム
    • クエスト進行に関するログであるジャーナルだが、本作におけるジャーナルは本の形式になっており、クエスト進捗が追加されるたびにページが増加していく。
    • このため、ゲームが進めば進むほど膨大な内容のクエストログが記載されていき、非常に乱雑で見づらくなってしまう。
      • 一応、検索機能などはあるが頭文字やクエストを表示するといった機能しかなく、有効に働いているとは言えない。
      • 本当の意味での「Journal (日記)」である。主人公が書いているという設定なので彼(彼女)の人となりが見えてくる。

総評

MODによる高い拡張性、あらゆるものにアクセス出来るシステム、膨大なクエスト、ストーリーなどに縛られない自由な冒険。
『The Elder Scrolls』シリーズの特徴を高いレベルで実現し、現在のシリーズの基盤を固めた名作である。
日本語は公式非対応だがSteamでダウンロード販売されており気軽に入手可能となっている。
有志による日本語化もやや中途半端だが抵抗がないなら手にとって見るとよいだろう。


余談

  • 2019年3月26日に『The Elder Scrolls』シリーズが生誕25周年を迎えた。
    • それを記念して、2019年3月26日から2019年3月31日までWin版がBethesda.netで無料配布されていた。
  • Xb版は少ないメモリ(CPU・GPU共用で64MB)をやり繰りするため、ユーザーには分からない所で本体を再起動するという力技をしていたことを元開発者が暴露している(参照)。
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最終更新:2024年03月07日 17:00

*1 通常版とGOTY版のみで、拡張パック単体版は販売されていない。

*2 正確には『Morrowind』の前に出たスピンオフ『The Elder Scrolls Adventure: Redguard』から。

*3 管理リスクはあるものの、リソースファイルをパッケージ化せずに設置することも可能。この方式はルーズファイル(Loose Files)と呼ばれる。

*4 日本語化MODや後作での機能拡張MODは実行ファイルをも弄る必要があるが、前者については海外の有志により他の設定と一緒に手軽に変更できるソフトが配布されている。

*5 世界設定を細かく理解していないと分からない言い回しが多い。例えばダークエルフをエルフの言葉で表す[ダンマー]には男性名詞と女性名詞も用意されている。