U.S.NAVY

【ゆーえすねいびー】

ジャンル シューティング
対応機種 アーケード
発売・開発元 カプコン
稼動開始日 1990年10月
判定 良作


概要

『トップガン』等で知られるアメリカ海軍(U.S.NAVY)の戦闘機部隊を題材に、カプコンが世に放ったアーケードゲーム。
同社の『エリア88』(AC版)のシステムをほぼそのまま踏襲しており、事実上の続編に当たる。
本作は当初『エリア88』の続編として開発が進められていたが版権取得ができず、結果オリジナル作品として作り変える事となった(wikipediaより)という経緯がある。*1

ストーリー

時は米国とソ連の冷戦期。これまで米ソ間での軍事力のバランスがギリギリの所で保たれていた事で、世界平和が維持されてきていたが
1997年、「X国」が極東国家「J国」への侵攻を行った事をきっかけにアジア・ヨーロッパの各国で局地戦が勃発。世界は今まさに全面戦争の危機に瀕していた。
全世界で緊張が走る中、米国へ入ってきた極秘情報により、この戦争の裏で「X国」へ最新兵器を提供している死の商人組織「ラブー」の存在が判明する。
「ラブー」を壊滅させ、兵器の供給源を絶つ事が戦争終結への早道と判断した米国はラブー壊滅作戦を発案・実行に移す。
1999年未明。ラブー壊滅作戦の攻撃実行部隊として任命された海軍原子力空母「カールビンソン」は作戦行動を開始した…。

特徴

  • アメリカ海軍の戦闘機を操作する、二人同時プレイの可能な横シューティング。
    • 操作は1レバー2ボタン(ショット、ウェポン)。
    • 残機なしのライフ制、全10ステージの1周エンド構成。
  • ゲームの流れ
    • まず始めに以下の戦闘機から自分の用いるタイプを選ぶ。かっこ内はパイロットの名前である。
      『エリア88』ではオート連射の速度やショットの幅、下方向ショットの有無等で自機性能を差別化されていたが、本作では主に得意なショットの種類(ショット選択については後述)で差別化されており、前作と比べて各機体間の性能差は小さめになっている。
      • F-14 TOMCAT(リック・フォード)…空中戦闘を得意とするタイプ。ワイドショットの性能が特に優れている。他の2種類のショットは性能が劣っているため、他の2機と比べてクリアは難しい上級者向けの機体である。
      • F/A-18 HORNET(ジェームス・ロイ)…空中戦闘と地上攻撃の双方に対応できるタイプ。性能は平均的だが汎用性が高く、ラパイドガンの性能が特に優れている。後述のショット性能の関係で初心者向きの機体となっている。
      • A-6 INTRUDER(マーク・オルソン)…プレジションガンと、地上攻撃向きのウェポンの性能に優れるタイプ。空中戦中心の1~2面は苦手だがそれ以降で真価を発揮するため、中級者向け。
    • 戦闘機を選んだら、今度はあらかじめ用意されている資金でウェポンを購入して装備する。購入できるウェポンの種類や弾数はステージによって違い、機体によっても異なる。
      • ウェポンとは別に補助アイテムとして、ライフゲージの最大値が増える「FUELタンク」や一定回数ダメージを無効にする「シールド」もショップで購入可能。
    • 装備が終わったらゲーム開始となり、ショットやウェポンをうまく用いてステージをクリアする。
    • ステージをクリアすると、使い残したウェポンは売却され、また戦績に応じて資金がたまる。その資金で次ステージ用のウェポンを購入→出撃…を繰り返していく。
  • ライフ制で、ライフがなくなるとゲームオーバー。ライフは各ステージ開始時に全快する。
    • システム面で『エリア88』から唯一大きな変更がされた点。『エリア88』では自機の「残り装甲値」であったが、本作のライフは「燃料」であるため、何もしなくても時間経過で減っていく。
      敵弾に被弾したり、体当たりを喰らったり、地形にぶつかったりした場合は大きく減少する。
      • 時間経過によるライフ減少が要因でゲームオーバーになることはないので、そこは安心。
    • 赤い敵を倒すと回復アイテムが現れるので、それを欠かさず回収していく必要がある。
      • 回復アイテムの出現頻度は多めでボス戦中でも出現するため、余程のダメージを受けまくったり、中ボスやボス戦でわざと粘ったりしない限りは燃料切れ寸前に陥ることはない。
      • カプコンの過去作で例えると『1943』に近いシステムである。
  • ショットとウェポンについて
    • ショットは弾数無限。3種類あり、ショット幅の広さ(弾の多さ)と一発の威力がおおよそ反比例している。敵の落とすアイテムで切り替え可能で、種類(アイテム色)に関係なく一定の個数を回収するとショットのレベルが上昇する。
      • ワイドショット(赤):弾の横幅が広いが連射性能が低いため硬い敵との交戦は不利。しかし敵にギリギリまで接近して手連射すると欠点をカバーできる。
      • プレジションガン(青):ザコ敵を貫通するショット。横幅は最も狭く、連射性能は中程度。
      • ラパイドガン(緑):連射性能が高いショット。横幅は中程度で、硬い敵への時間あたりの攻撃力は最強。
    • ウェポンは回数制で、ミサイルや爆弾などがある。ステージ、機体ごとに販売品目が違い、また先述の通りステージクリア後に売却されるので次ステージには持ち込めない。

評価点

  • 秀逸なビジュアル。
    • オープニングはノリのいい音楽に合わせて戦闘機が空母から飛び出すというもの。いやおうなしにワクワクさせられる。
      • タイトル画面のまま放置すると現れるデモ画面も無駄に設定が細かく、映画の予告編を見ているような気分になる。
    • ステージクリアの画面も、無線の指示とともに着陸したり、あるいは空中で燃料補給したりとシチュエーションが多種多様。
    • また戦闘機や戦車、爆風などのグラフィックも細かく、臨場感が得られることうけあい。
  • 音楽はカプコンならではの耳に残る曲調で、プレイを盛り上げるのはもちろんのこと、ふとした時に口ずさみたくなる。
    • 楽曲は『エリア88』に引き続き、松前真奈美氏が担当している。
  • ゲームシステムが緻密。
    • 3種類の戦闘機と3種類のショットが用意されており、組み合わせによって異なるプレイ感覚を味わえる。
      • 二人プレイの場合だとそれが顕著で、仲間が思わぬ行動をすることにより良くも悪くも戦局が覆ったりもするためドキドキさせられる。
      • また戦闘機によって適したウェポンも異なるため、ウェポンとの相性による戦略性も生まれた。
    • さらに、本作は何もしなくてもライフが減るので、常に何らかの大ダメージで死ぬかもしれない緊張感がゲーム性を高めている。
      • ライフ残量が一定値を下回ると鳴り出すライフ切れの警告音の存在が更なる緊迫感を煽る。また、この「時間経過でライフが減る」仕様により補助アイテムの「FUELタンク」と「シールド」の存在が重要となっている。
    • 爆発のエフェクトも多くの種類があり、敵のヘリコプターや戦車を破壊するのはなかなか爽快。
    • 難易度もバランス調整が丁寧であり、腕の上達も実感しやすい。
      • 1面と2面道中は初見でも遊びやすい一方で慣れない内は強敵となる2面ボス「移動要塞ムラチョフ」。道中、ボス戦共にそれまでと比べて長丁場であり燃料切れの脅威度が跳ね上がる3面。敵の攻撃が激しくなる上に当たるとダメージとなる炎を噴出す燃料タンクに注意しなければならない4面等…と適度に山場を設けているのでダレてくるということはない。
    • プレイヤーが能動的に難易度を調整できるので、難しすぎて詰まるということがない。
      • 難しいと感じるステージでも、ウェポンを購入することで突破できるようになる。しかし買いまくって乱用していると先の面で金欠になりウェポンが買えなくなるというバランスである。
        初心者のうちはウェポンを活用したプレイで先に進み、全面クリアやハイスコア狙いが視野に入るくらい上達したらウェポンを買わないプレイスタイルに移行することになる。したがって難所で詰まって諦めるということが少なく、反復練習の効果を実感しやすい。
      • 自機とメインショットをそれぞれ3種類から選択できるので、プレイにマンネリ感をおぼえたら別の組み合わせにしてみると、また違ったプレイ感覚を味わえる。

問題点と賛否両論点

  • 有利不利だけで考えるなら機体やショットに選択の余地がなくなる。
    • 具体的には3種類あるショットのうち、ラパイドガンが明らかに他の2つよりも強く、終始これだけで事足りてしまう。そしてショットをこれしか使わないことを前提に考えると機体選択もF/A-18の一択になる。せっかく多彩な組み合わせがあるのに、一長一短の絶妙なバランスとは言いがたい。
    • もっともアーケードゲームとしては難易度が低めなので、F/A-18+ラパイドガンで楽にクリアできるようになったら、不利を承知で他の組み合わせでプレイすると、先述したように新鮮な感覚で楽しめるだろう。
  • 背景が白っぽい一部のステージで、敵弾がとても見づらくなる。
  • 『エリア88』とは違い時間でもライフが減っていくので、後半面のボス戦などでは常に警報アラームが鳴りっぱなしの状態になる。これが耳障りでうざったいという意見もある。
  • バグ
    • 日本版の初期生産分には、ラスボス戦のさなかに突然フリーズするという深刻なバグがある。
    • 後期生産分ではバグが治っているが、初期版・後期版を見分けることは不可能。
      • 海外版(後述)では確実にバグが修正されているので、中古基板を購入する際には海外版を選ぶのが賢明。

総評

格好良いビジュアルをこれでもかと詰め込んだ、近年の「避ける」シューティングとは一線を画す、カプコンならではの「撃つ」ミリタリーシューティングゲーム。
プレイヤーの興奮をどこまでも追い求めた良作といえよう。
実質前作である『エリア88』よりも難易度が上昇しており、これをどう取るかで評価が分かれる面もある。『エリア88』は簡単すぎたので本作くらいがちょうど良いという肯定的意見もある。


移植

  • カプコンアーケードスタジアム(2021年・Switch/PS4/One/Win)
    • ラインナップの1つとして収録。別途課金が必要。
    • 家庭用ハードへの移植は長年行われておらず、稼働31年目で実現した。
    • 90年代にSFCへ移植された『エリア88』とは大きく時間を空けるかたちとなった。

余談

  • 海外版のタイトルは『Carrier Air Wing』。意味は「空母航空団」である。
    • 『エリア88』(海外名:『U.N.SQUADRON』)の時では行われた高難易度化調整はされていない。
  • 作中、日本が舞台と思わしきステージが存在する。国内版のストーリー等では「J国」という表現になっているが、海外版では英語で「Japan(日本)」と普通に書かれている。
  • 本作の敵である「X国」と死の商人組織「ラブー」の兵器は現実のソ連軍の兵器をモチーフにしたものが大半だが、一部の兵器はアメリカ軍のものを利用している。
    また、上述の2面ボス「移動要塞ムラチョフ」と9面ボスの「レーザー砲台ガーマ」は本作オリジナルの兵器であり、どちらもかなり特徴的な外見となっている。*2
    • 舞台が現代なので登場する兵器は稼動開始時に存在していたものが中心だが、それらに混じって第二次世界大戦時のドイツ軍兵器である「カール自走臼砲」をモチーフにした兵器が8面ボスとして登場する。*3
      もっとも主砲がレーザー砲になっていたり、ミサイルハッチが搭載されていたりと魔改造が施されているが。
    • ちなみに「X国」とソ連は別の国家という設定である。*4
  • 国内版と海外版ではストーリー設定が大きく異なる。
    • 国内版は「米ソ冷戦」がモチーフでラブーが「死の商人組織」となっているのに対して、海外版では本作稼働の2ヶ月前に勃発した「湾岸戦争」がモチーフになっており、ラブーの設定も「中東地域の軍事国家」に変更されている。
      + 海外版ストーリー

      1990年代の10年間で世界は大きく変化していた。旧来のライバル間の協力関係の拡大や、世界の超大国間の友好関係成立は、世界の政治的・経済的のシナリオに変化をもたらしたが、その平和に大きな危機が迫ろうとしていた。
      1997年、中東の軍事国家「ラブー」は、ICBM、戦術核、衛星レーザー兵器等の世界全域を攻撃可能な大量破壊兵器を製造。世界のテロリストと共謀し、世界征服実現の準備を進めていた。
      そして1999年。米国政府に「ラブー」がそれらの兵器を携え日本の東京を襲撃したとの緊急連絡が入る。米国は「ラブー」への反撃及び壊滅作戦の実行を決定。
      世界最高の海軍戦闘機パイロット3人を乗せた海軍原子力空母「カールビンソン」は「ラブ―」の脅威から世界平和を取り戻すために作戦行動を開始した。

  • 各ステージ開始前に司令官から作戦内容や攻撃目標を伝えられる演出があるが、その司令官がショーン・コネリーにそっくりな見た目をしている。
    • 流石にヤバかったのか、海外版では若干だがデザインの変更がなされているが、それでも氏にそっくりな見た目のままであまり変化が無い。
    • 上記の『カプコンアーケードスタジアム』収録の日本版でも司令官のグラフィックは修正されずにそのままとなっている。
  • 現実のアメリカ海軍は「正規の軍隊」なのだが、本作では任務で使う武器は「配られる」のではなく、「出撃前に司令官が武器を売りつけ、それを自腹で買う」という傭兵式となっており、かなり奇妙な事になっている。
    武器を購入するための資金は、当然ながら「任務中に自力で稼ぐ」必要がある。
    • このようなおかしな設定が出てしまったのは、上述の通りゲームシステムを『エリア88』のものをほぼそのまま踏襲してしまった事が原因。『エリア88』では傭兵という設定だったので、自力で資金を溜めて武器を買う傭兵式のシステムは自然なものであった。
      元々『エリア88』の続編として開発されていた頃の名残ともいえる。
  • ステージ開始時にある事をすると所持金を減らさずに装備を購入(?)できるバグ技(通称「万引き技」)がある。
    • なお、本作はステージクリア時に所持している装備やゲームクリア時の所持金に応じてスコアボーナスが加算されるシステムになっている為、「万引き」はスコアラーにとっての必須テクニックと化している。
  • エンディングの内容は全ステージクリア時のコンティニューの有無で大きく変化する。スタッフロールが流れるのはノーコンティニューの方のみ。
    • 更にノーコンティニューでクリアした上でスコアが200万点以上だとある演出が追加される。演出としてはかなり細かいものだが、ノーコンティニュークリアが安定するようになったら狙ってみるのもいいだろう。
  • 「ラパイドガン」という聞き慣れない武器名は、どうやら「Rapid gun」の誤読らしい(wikipediaより)。ただし「ラパイド(Rapide)」はフランス語で「速い」を意味する単語のため、意味合いとしては一応合っている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • シューティング
  • 横シューティング
  • STG
  • 横STG

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月01日 01:17
添付ファイル

*1 これと類似したものとして『ザ・キングオブドラゴンズ』があり、こちらも当初は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のゲームとして作られていたが版権許諾が下りず、オリジナル作品になったとされている。

*2 前者は大型主砲とミサイルランチャーを搭載した四脚歩行兵器。後者は2基の回転式レーザー砲が特徴の防衛システム

*3 本作での名称は「列車砲台カール」

*4 アトラクトデモのストーリー解説の中で「このX国の軍事行動により、米ソ間の軍事力バランスが崩れた」という記述がある。