マーセナリーズ

【まーせなりーず】

ジャンル ミリタリーアクション
対応機種 プレイステーション2
発売元 エレクトロニック・アーツ
開発元 Pandemic Studios
発売日 2005年4月28日
定価 6,800円(税別)
廉価版 EA BEST HITS
2006年6月29日/2,980円
判定 良作


概要

近未来の北朝鮮を舞台としたオープンワールドのTPS。
原題は『MERCENARIES: Playground of Destruction』で、プレイヤーは傭兵となって、各勢力の依頼をこなしていく。

開発はガスマスクのロゴが印象的なPandemic Studios。
この会社は他にも『スター・ウォーズ バトルフロント (2004)』や『フルスペクトラムウォーリアー』、日本版だけがやたらとバカゲー化した『デストロイ オール ヒューマンズ!』などを手掛け高評価を得ている。


ストーリー

21世紀初頭、北朝鮮の総統チョイ・キムは韓国へ和平協議を提案。これは韓国の太陽政策を認めるということであり
韓国側も、北朝鮮軍の解体を条件としこれを承諾。人々の朝鮮半島の平和的再統一への期待と、総統への人気は一気に高まることとなった。

しかし、キム総統の息子であるチョイ・ソン将軍はこれを良しとせず、北朝鮮での和平調印式においてクーデターを決行。
これによりソンは、韓国の元首、そして自らの父であるチョイ・キムの殺害を遂行。独裁政権を築き、鎖国へと突入したのである…。

時が流れ、世間の人々からの記憶も薄れていたある日のこと。座礁していた北朝鮮の船舶を救助したオーストラリア海軍は
船内に核兵器を発見。
ひそかに国外へと流していたのである。すぐさま多国籍軍は北朝鮮に侵略、そのさなか30発の核弾頭が近いうちに発射されることが判明した。
国連はこの狂行を止めるべく、ただちにエグゼクティブ・オペレーションズ(通称ExOps)へ傭兵を依頼。

今、人類の未来をかけた"世界で最も危険で過激な場所"での戦いが始まる。


システム

  • プレイヤーは民間軍事会社であるExOpsの傭兵となり、それぞれ特徴のある3人から1人を選ぶ*1
    • 「マティス・ニルソン」: 体力が高く足が速いが見つかりやすい。得意言語/ロシア語・英語
    • 「ジェニファー・ムイ」: マティスとは逆に、体力が低く足は遅いが見つかりにくい。得意言語/中国語・英語
    • 「クリストファー・ジャコブス」: 両者の中間。爆発物に多少の耐性がある。得意言語/ハングル語*2・英語
  • 勢力は、国連軍・韓国軍・中国軍・ロシアンマフィアの4つ。それに加え、全勢力と敵対する北朝鮮クーデター部隊の計5つ。
  • マルチエンディングシステム。最終勢力図によって4つのエンディングに分かれる。
  • 支援要請システム」で、各種物資・砲撃・爆撃・制空権確保などを駆使してミッションを進めていく。
    • 具体的には航空サポート。レーザーポインター・サテライトなどで爆撃援護を受けたり、ビーコンを投げることで物資援助を受け取ることができる。
  • 北朝鮮を除く4つの勢力にはそれぞれ「友好度」が存在し、彼らの要請にどう応えていくかが攻略のカギとなる。
  • 各勢力の兵器に乗り込めば「カモフラージュ」状態になり、味方と認識される。上手く偽装し敵地に潜入することもまた大事な攻略要素となる。
  • 一般人・味方・敵関係なく車を「ハイジャック」できる。戦車やヘリコプターも例外ではない。
  • プレイヤーは各勢力の依頼をこなすと同時に、トランプのカードに見立てた「Deck of 52*3と呼ばれるソンの取り巻きである重要人物を捕えて、最終的にソンを捕縛することが目標となる。
  • マップには多くの設計図国宝(お宝のようなもの)が散りばめてあり、集めることでボーナス車両が貰えたりする。
  • 主人公は戦闘など様々な要因で死亡してもゲームオーバーにならず、「MASH」(Mobil Army Surgical Hospital)と呼ばれる野戦病院に運ばれて、体力も自動的に回復する。

評価点

  • 非常に高い自由度と広大なマップ
    • 依頼を無視して町を散策したり、建物を片っ端から破壊したり、車をハイジャックしまくってコレクションしたり…。
    • 周囲は敵対勢力が争っており、それに乱入するのも眺めるのもまた自由である。
    • マップは広く、"見えない壁"もほとんど存在しない。見える範囲はたいてい行くことができる。
  • 登場するオブジェクトはほとんどが破壊できる。できないのは樹木や岩など、基本的に自然物が多い。
  • 支援要請による敵勢力を一気に撃破する爽快感が魅力。もちろん町を荒野へと変貌させることも可能。
  • 銃器や乗り物が豊富で、その多くは実在するものである。また、地名や一部の建物・兵士の装備なども実在するものが登場している(平壌国際空港・寧辺の原子炉など)。
  • 基本的にロードはシームレス。一部マップ切り替えやミッション開始を除いて(後述)快適にプレイできる。
  • アクションやモーションが多彩。
    • 降車だけでも、自分だけ降りる・味方だけ降ろす・全員降りるの3つの方法があり、ミッションによっては重要なテクニックとなる。
    • 人の拘束は、各キャラごとに2種類ずつ用意されているなど。
  • 各勢力の兵士やマフィアはその国の言葉で喋る。普段聞きなれないロシア語や中国語が飛び交う様子は新鮮。「四塁打!」
  • チャプターの終了ごとにキャスターが中継するニュース映像デモが入り、臨場感を高めてくれる。

問題点

  • ミッション開始とゲーム開始時のロードが30~40秒と長い*4
    • ただし、一回のロードは長いものの回数は少なく、ミッションがいったん始まれば、次のミッションを受けるまで読み込みは無いのでそれほど苦にはならない。
  • 荒廃した町の表現と、ハードスペックの限界の両立を考えた仕様ではあるのだが、全体的にもやがかかっており、遠くの視界が悪い。
    • 特にスナイパーライフルを使うときが見辛い。
  • バグで、時々字幕が非表示になったり、SEが出なくなることがある。
  • 日本版のみのバグで、プレイヤーが使った時のショットガンの音が出ない。NPC使用時は問題ない。
  • 北米版では、例えば中国陣営の司令官の会話は、中国語が得意なムイしか理解できず、他キャラだと理解できないといった字幕が出る。
    • しかし日本版では誰を使っていても、翻訳を全て字幕表示させてしまったため、せっかくの得意言語設定が生かされていない。
  • お宝のコンプリートが困難。爆発で吹っ飛んでどこにいったか分からなくなったり、海などの行けない所に落ちると回収不可になってしまう。
  • エリア外の立ち入り禁止区域に侵入した場合、問答無用に攻撃を受け(戦闘機やヘリコプターなどの)乗り物に乗っていた場合は即座に撃墜され、死亡してしまう。
  • 各勢力から任務を請け負う場合、敵対する勢力の基地に侵入しなければクリアできないミッションがあり、全ての勢力と同時に友好関係を築くことは基本的に不可能となっている。
  • ステルス要素の出来が悪い。主人公ごとに生身での隠密能力の得意不得意の設定が存在するが、UIや敵AIなどが全面的にステルスアクション向けの作りではないため無意味に近い。
  • お金を稼ぐ手段や戦地での補給手段が限られており、ジリ貧になりやすい。
    • システム面だけで見れば当時の箱庭ゲーの中ではむしろ親切といえるが、それらのゲームより戦闘が激しく、弾薬や車両の購入で常に多額の出費を要するため。
  • 最終ミッションの難易度が極めて高い。味方の貧弱な戦力に対し理不尽なまでの猛攻の嵐という、20世紀の洋ゲーを彷彿させるもの。

総評

北朝鮮が舞台、しかも現実に割と近い設定であり(もちろん全て架空の話である)、色々な意味で危険かつ冒険心あふれる作品。
しかしそのぶっ飛んだ設定とは裏腹に、内容はしっかりと丁寧に作り込まれている。
物理演算を使用しており、爆発や破片が綺麗に飛び散る様子は決して手抜きを感じさせない。
ただただ銃を撃ちまくるというのではなく、支援要請で地形を変化させ、ヘリコプター、戦車を乗り回し町を駆け巡る爽快感は非常に高い。

『GTA』と比較されることがあるが、こちらは破壊や兵器を使えるといったところでちゃんと差別化は図られている。まさに戦場版『GTA』といえるだろうか。
一味変わったゲームをしてみたいという人はぜひプレイしてはいかがだろう。


余談

  • 上記の内容が内容だけに、韓国では発売されなかった*5
  • オープニングムービーには本物のニュース映像が使われている。
  • Xb版も出ているが北米版のみでのリリース。
  • パッケージに描かれているロゴを見ればわかるが、元々のパブリッシャーはルーカスアーツで、EAがパブリッシャーなのはPS2日本版のみである。
    • 続編はデベロッパーであるPandemic Studiosが2007年にEAの傘下となったことから、パブリッシャーもEAに移っている。
  • タイトルから『バイオハザード』シリーズを思わせるが、もちろんこのゲームと一切関連はない。マーセナリーはもともと「傭兵」の意味である。

その後の展開

  • 後に開発元であるPandemicは、ベネズエラを舞台とした続編『マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス』を2008年にリリースしている。こちらはPS2のみならずPS3/360/Winとマルチプラットフォームでのリリースとなった。
    • 発売後、ベネズエラ政府から「ベネズエラではクーデターは起こらない。このゲームはアメリカ政府がウゴ・チャペス大統領を失脚させる目的で作らせたのではないか」と米国政府とデベロッパーのPandemicに抗議声明を出している。
    • これを受けたPandemic側は、公式サイト(現在は閉鎖)に「我々はエンターテインメント企業であり、アメリカ政府の各機関から何らアナウンスも受けてはいない。登場する人物・ストーリー・イベントは全て架空のものであり実際の出来事と関係ない。」旨の声明を出している。
    • なお『マーセナリーズ2』発売の翌年にベネズエラでは暴力的感情を刺激する可能性があるビデオゲームの販売を禁止する法案が可決され、それによりほとんどのビデオゲームが発売禁止になっている。違反者への刑罰も3~5年の懲役刑が課せられる。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年11月26日 14:14

*1 これは日本版だけの特別仕様であり、北米版では外見のみの違いしかない。

*2 マニュアルのまま記載したが、本来は韓国語とするのが正しい。

*3 元ネタは、イラク戦争のお尋ね者トランプカード。

*4 北米Xb版は10秒ほど。

*5 別タイトルであるが『HOMEFRONT』も「世界的な強国となった北朝鮮がアメリカに侵攻する」というストーリー設定上から韓国では発売禁止措置が取られている。