蒼の彼方のフォーリズム

【あおのかなたのふぉーりずむ】

ジャンル 少女たちが空で闘い、恋を知るADV
※初回版

※特装版

※Perfect Edition

※4th Anniversary Box
対応機種 【初回版】Windows XP~8
【アニメ化記念特装版】XP~10
発売・開発元 sprite
発売日 【初回版】2014年11月28日
【アニメ化記念特装版】2015年11月27日
定価 9,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 FANZA:2017年11月10日/7,980円
判定 良作
ポイント 空を舞台にしたスポ魂モノ
世界観と設定の完成度は指折り
青春を感じられるシナリオ
萌えゲーアワード2014ユーザー支援賞及び大賞受賞作
発売後も話題がつきない


概要

前作『恋と選挙とチョコレート』で話題を集めたspriteの完全新作。
空を駆ける架空の競技「フライングサーカス」(以下FC)を主体とした、スポーツと恋愛を合わせた作品。
完成度の高い設定と、真っ直ぐかつ王道な展開が見事に融合し、発売わずか2ヶ月で『萌えゲーアワード2014』で最も支持された作品に選ばれた。
公式略称は『あおかな』。

シナリオ

小さかった頃に見上げた空に、
いちばん近くにいるのが、
自分だと思っていた。
これがあれば、どこへでも行けると。
誰よりも先に、彼方へ行けると。
そう、信じていた―――――――――

空を飛ぶことが、自転車に乗るぐらい簡単にできる世界。
そこで流行しているスポーツ「FC」。
かつて、そのスポーツで将来を期待されていた主人公は、
圧倒的な敗北による挫折と、ある理由からそこを離れていた。
だが、転校生である倉科明日香と出会い、
空の飛び方を教えるうちに
昔の熱が戻ってくる。立場が変わっての
「FC」への出場。
明日香の手を握った主人公は、
今度はどこまで高く飛べるのか。
ふたりと、その仲間たちが贈る
青春恋愛物語

キャラクター

+ クリックで展開

日向 晶也(ひなた まさや)
主人公。ジュニア時代は世界を狙えるほどの実力を持ったFC選手だった。
しかし世界に対する世間の重圧と、そんな中行われた野良試合で素質の差を見せつけられ、FCから足を洗った。
意外にも、主要キャラでは唯一重い過去を持った存在。そのため物語でも彼の過去に対する葛藤が大きなウェイトを占める。
恋愛事には結構疎い。

倉科 明日香(くらしな あすか)
本作のメインヒロイン。ピンクの長髪と特徴的な髪飾りが印象。
少々天然が入った春の陽気のような少女。FCは当初てんで初心者だったが、驚くべきほどの素質を持っており、その潜在能力はヒロイン中最大。 FC以外はあまり得意なことがなく、自分に自信がないせいか謙遜な部分が目立つ。
……中の人(PS Vita版)的にある魔法少女アニメキャラに通ずる部分がある。
誰にでもさん付けで丁寧語を喋るが、これは元々内気だったことから、他人と距離を置くようになったため。
甘いもの、特にパフェとイチゴが大好物。パーソナルカラーは赤とピンク。

鳶沢 みさき(とびさわ -)
長い黒髪と抜群のスタイルがウリの超マイペースキャラ。天才肌という言葉がぴったり似合う基本スペック高めの少女。
学校の成績はほとんど勉強していないのに常にトップクラス、FCも経験は少ないが非常に高い能力を持つ、などなど。
うどんが大の好物で、腹を空かせば常にうどんをせがむ。真白という後輩に同姓以上の愛情を注がれており、本人はほとほと困っている様子。
つかみどころがない不思議少女に見えるが、恋愛沙汰には結構敏感。パーソナルカラーは黒と黄。

有坂 真白(ありさか ましろ)
みさき超LOVEな一年生の後輩。全体的にちんちくりんで、FCの実力もあまり高くない。
割となんでも卒なくこなすように見えるが、勉強が大の苦手。授業中は赤縁メガネを使っている。
モンスターイーター(通称モンタッタ)というハンティングゲームにはまっており、そのマスコットキャラでもある「邪神くん」によく擬態して喋る。
擬態してるとき邪神くんは自動的に飛び跳ねたりしている。一体どういう仕組なのか……。
割とむっつり。パーソナルカラーは黄。

市ノ瀬 莉佳(いちのせ りか)
別の学園に通っている一年生。何に対しても真面目で実直な性格。
それ故にFCの実力も一定量あるものの、伸び悩んでいる様子。
肉が大好物で、作るのも大好き。真面目すぎるため、当初、女子の扱いにだらしなかった晶也にやたらと誤解を抱く。
晶也とはおとなりさん同士で、よく窓辺で直接語り合う仲。パーソナルカラーはピンクと白。

  • 以下サブキャラ

佐藤 麗子(さとういん れいこ)
本名は佐藤なのだが、やたら『院』という文字にこだわって「佐藤院」と自称している。よってこのふりがなは誤記ではない。
いわゆる典型的な高飛車お嬢様かと思いきや、かなり人情家で後輩想いの凄まじくいい人。

乾 沙希(いぬい さき)
寡黙で感情を露にしない印象。イリーナという強力なセコンドと共にしており、どのルートでも強敵として立ちふさがる。
「嫁コレ」にてサブキャラとしては初めて配信された*1

各務 葵(かがみ あおい)
かつて世界で活躍したFC選手。現在は学園の教師をやっている。凛々しい声とさばさばとした性格からか、当時は同性からの人気が凄かった模様。
晶也の古くからの先輩で、復活したFC部の顧問でもある。

青柳 紫苑(あおやぎ しおん)
スピードと筋肉に命をかけてる先輩FC選手。晶也がFCに戻るきっかけを作った、FC部の部長。涙もろく常に暑苦しい。
しかし先輩らしく自らの矜持や沽券をしっかりと持っており、なんだかんだで親しみやすい人。

青柳 窓果(あおやぎ まどか)
紫苑の妹でFC部のマネージャー。マネージャーとしての腕前は中々なのだが、場を和ませようとして羽目を外すことも多い。ヒロインでないことをやたら根に持っている。

白瀬 隼人(しらせ はやと)
FCのショップを経営している、葵の旧友。元は優れたFC選手だったらしいが、その実態は語られない。
筋肉を愛する紫苑とはそりが合う。公式サイトでは「葵とは因縁が?」と書かれているがただ旧友というだけ。

白瀬 みなも(しらせ -)
隼人の妹で、一年後輩。常にオドオドしており、真白に負けないくらいの背の低さで存在感が薄い(そんなことはないのだが)。

覆面選手(ふくめんせんしゅ)
へのへのもへじの袋を被った謎のFC選手。小柄で細めの体躯だが、声は勢いのある熱血系で、性格も自意識過剰気味。果たしてその正体は?

真道 一成(しんどう かずなり)
現世代最強と謳われるFCの殿堂選手。普段は穏やかだが、試合となると鬼神の如く恐ろしさで相手を叩きのめす、前半パートのラスボス的存在。
葵と隼人を神様のように敬っており、憧れである晶也のことも友人以上の感情を抱いている様子。

イリーナ・アヴァロン
ミステリアスなイメージを抱かせる少女。沙希のパートナー。外国人だが、日本語は結構流暢。みさきとは違う意味でつかみどころがない。

虎魚 有梨華(おこぜ ありか)
真白の幼馴染でありケンカ友達。今の高校に入ってからあっち系に目覚めた模様。

我如古 繭(がねこ まゆ)
有梨華の先輩であり、四島では真藤に次ぐ実力者と言われている。有梨華にお姉さまと呼ばせるなど、先輩後輩以上の関係になっている。

黒渕 霞(くろぶち かすみ)
凄まじい邪念を持つ少女。ラフプレーで有名な高校で一際ラフプレーに心血を注いでいる危険な選手。相手を挑発することがものすごい得意。
なお(本人も含めた、何人かの旧友の)名前の元ネタが大日本帝国の軍艦の名前。某艦隊ゲームにあやかったのだろうか。

評価点と魅力

  • 完成度の高いFC設定
    • FCは反重力装置を搭載した「アンチグラビトンシューズ」(グラシュ)を使った競技だが、この競技の設定が非常に練られている。
      競技のルールは至極シンプルだが、FCを語る上で欠かせない要素や技術、その原理。またいかにして勝利をつかむべきかの勝負の駆け引き、架空の競技でありながらも、徹底して構築された設定から溢れるばかりのアイディアをこれでもかと詰め込んだものとなっている。
      ただし、設定が練られている分、テキストを読み進めるにはFC用語をある程度理解していることが必要になる。
  • FCを再現するための高い演出効果
    • 本作の魅力はなんといってもFCに尽きる。
      FCが描く軌跡(コントレイル)が画面上で走る効果、激しいドッグファイトによる攻防を表現した美麗なグラフィック、そして試合の展開に応じた効果的な音響設定が融合し、臨場感の高い試合を楽しむことができる。
  • 真っ直ぐで熱くも甘いシナリオ
    • どのキャラルートにも倒すべき「ライバル」が存在しており、物語の主幹もはっきりしているため、読み進める際の中だるみがあまりない。
      そのために切磋琢磨し、時には挫折し、時には希望を見出して、そして勝利を掴む、といったスポ魂顔負けの熱い展開が目白押し。
      根本は王道なのだが、FCという架空の要素ありきのシナリオなため、予想がつかない展開になるという独特の魅力もある。
      そこから生まれるヒロインとの恋愛模様もメインシナリオにかかっているため、決して阻害要素にはならず、むしろ相乗効果を起こしている。
  • CGの動き
    • 立ち絵を使った寸劇のような動きは見ていて楽しい。
      • 走りだしたと思って急停止して前のめりになったり、ヒロインと会話中の脇で別のキャラがチョコチョコ動きまわったり、など。

問題点

  • 周回プレイに合わないシステム周り
    • 共通パートが長い章仕立てのシナリオなのだが、選択肢や章スキップは未搭載。
      また途中でスキップできない強制ボイスパートが存在しており、二周目以降はここのテンポが悪め。
      選択肢も2~3くらいしか選ぶ必要がないため、ルート確定までスキップ画面を見続けることが多い。
      • 実はルート確定の最終的な条件は最後の選択肢によって決まるため、そこに至るまでのフラグを全て立てておけば、後はそのデータをロードすることでルート突入直前から始めることが可能となっている。
        しかし、初見でそのことに気付くプレイヤーはあまりいないだろう。
  • 「音楽鑑賞モード」未搭載
    • 全体的にBGMは評価が高いにも拘らず、この仕様は残念。
    • 後にサントラが発売された為、ある程度のフォローにはなっている。
  • システムボイス
    • 起動時と終了時にヒロインのボイスが流れるのだが、任意で設定することができず、基本的にランダムか攻略した直後のヒロインのボイスが流れる。このあたりは少々自由度がきかない。
  • 寂しい立ち絵
    • 動きが良く、差分も結構多いのだが、立ち絵は差分含めて全1種類と物足りない。
  • FCの設定
    • 設定が練られているだけあって、シナリオを理解するにはFC用語を理解する必要があるが、そのFC用語が説明されるのは殆ど一度きりであり*2、復習するのに不便である。
      また、各キャラが使用しているグラシュや技も一度しか紹介されない。
      用語辞典でもあればそのあたりの事情は変わっていただろう。

賛否両論点

+ シナリオに関するネタバレ注意。

シナリオは全体的に高評価なのだが、所々で粗が見受けられる。

  • 明日香ルート
    • 全体的に謎を残さないシナリオになっているのだが、明日香の髪飾りをくれた少女の正体が最後まで明らかにされない。
      予想自体はかなり序盤でつくのだが、それが明らかになるパートを入れてもよかったのではないだろうか。
    • 他のルートは努力によって結果を出した面が強いのだが、本ルートでは努力による結果を出しつつも、最終的には才能で勝利した感があるのも、人によっては気になるところ。
  • みさきルート
    • 過去の晶也が少年にFCを教えてあげたら、センスの差を見せつけられてFCを止めてしまった……という挫折を味わった顛末が語られる。
      後半でその少年が実はみさきということが明らかになるのだが、それが明らかになるより前に、回顧録(トラウマ色が強いが)として挫折パートが再現される。
      何が問題かというと……このときの少年の声がまんまみさきであること。
      そのため、少年の正体が判明しても「声でバレてた」というしょうもない肩透かしを食らうはめに。
      せめてボイスなしか、違う声優で再現すればよかったものと思われる。
      ちなみに、少年(みさき)の声ありの回顧録は明日香ルートにもあるため、そちらを先にプレイすると盛大なネタバレとなってしまうことも。
  • 真白ルート
    • 全体的に恋愛要素が占めており、他のルートと比べるとかなり甘い展開が多いが、その分真白ルートのみ大会のシーンが描かれないため、他のルートと比べ熱さに欠ける。
    • また、細かい点だが、晶也が莉佳を名前で呼ぶテキストミスのシーンがある。
  • 莉佳ルート
    • 莉佳ルートに出てくる霞はいわゆる「闇堕ちキャラ」であるが、闇堕ちした原因が「霞があるヒロインにFCを教えてあげたが、その子に実力を越されたから」という晶也の過去の使い回し
      それだけならともかく、たったそれだけの理由でラフプレー選手になるという変貌ぶりは少々強引。
      両親が離婚したという下りもあるが、離婚の原因がわからないためフォローにならない。
      また、最終盤で霞は敗北したことで毒気が抜けるのだが、完全に「誰これ?」というレベルで変貌する。
      エピローグでは、最早見た目も性格も一切面影が残っていない淑女となる。
      この点はある程度時間が経過しているので問題ないとしても、試合が終わってすぐに人格が変わるのは違和感満載。
      ヒロインが霞の正体に気づくところも、伏線などが上手く使えてなく雑。
    • 真藤の引退後は佐藤院が部長を務めるのだが、霞の存在や危険性を認知しているにも拘らず練習試合を引き受ける。試合中に選手が負傷したにも拘らず、代役を入れて試合をそのまま続行する。選手の負傷原因を設備の不具合と考えるなど部長として問題がある箇所が見受けられる。
    • グラシュを起動している者同士が触れ合ったら、互いに弾かれるという設定があるのだが、莉佳ルートのCGに堂々と抱き合っている絵があり、矛盾が生じている。*3
+ システムに関するネタバレ注意
  • エロシーンはほとんど最終話にしかない
    • 文字の通り、なんと第一話から第七話までほぼ性交シーンがない。テキストが非常に多いためそこまでに至るのに10時間かかってしまう場合もあり、途中でエロゲーをやってることを忘れる人もいたそうだ。
      ただし、エロシーンは各ルート(全四ルート)2~3とぎりぎり許容範囲であるし、エロ主体のゲームではないので不満として挙がることは少なく、シナリオの内容を考えればこれぐらいで丁度いいという人もいる。
    • この仕様の為か体験版は全年齢対象となっている。*4

総評

架空の競技であるが、本格王道スポーツ系作品としては非常に出来が良い作品。
SF要素が入った新感覚スポーツを題材に、熱くも甘酸っぱい展開で青春を感じられるシナリオはかなり魅力的で、これらの要素を味わいたいユーザーには是非ともオススメしたい作品である。
シナリオは少々粗もあるが、作品の質を落とすほど重いものではないので、余程気にすることがなければ問題はないだろう。


余談

  • 前作同様アニメ化が決定しており、その発表は本作の発売より前であった。
    • これは元々ゲームとアニメのメディアミックス戦略によるものと思われる。
  • スマホ用ソシャゲ『蒼の彼方のフォーリズム‐ETERNAL SKY-』が配信されていた。
    • FANZAからブラウザ版が配信されるなどして長く続いていたが、後述の作品の権利のややこしさに巻き込まれる形で2018年5月31日にサービス終了となった。
      • 原作会社が買収されたあおりでサービス終了という珍しい形である。
  • 作品の権利は少々ややこしくなっている。詳細はWikipediaを参照。
  • アニメ『ぼくたちのリメイク』第1話に本作のパッケージが登場した。(参考画像

移植

  • 蒼の彼方のフォーリズム (Vita 2016年2月25日)
    • この業界では珍しく開発はPC版同様spriteが担当。
  • 蒼の彼方のフォーリズム HD EDITION (PS4 2017年1月26日)
    • Vita基準の移植。高画質化とミニゲームが追加されている。
  • 蒼の彼方のフォーリズム for Nintendo Switch (Switch 2018年3月29日)
    • Switch初のエロゲー移植。
  • 蒼の彼方のフォーリズム High Resolution(Win 2020年12月25日)
    • 非18禁。演出を強化し、High Resolution対応新システムを搭載。
    • 同日発売の『恋と選挙とチョコレート High Resolution』は18禁だが、こちらは非18禁な点に注意。

関連作品

  • 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1 (Win 2017年6月30日)
  • 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1S (Switch 2023年5月25日)
  • 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1P (PS4 2023年12月21日)
    • 有坂 真白を中心としたファンディスク。
  • 蒼の彼方のフォーリズム Perfect Edition (Win 2018年11月30日)
    • コンシューマー版の要素を加えた完全版。
  • 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2 (Win 2022年5月27日)
  • 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2S (Switch 2023年5月25日)
  • 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2P (PS4 2023年12月21日)
    • 鳶沢 みさきを中心としたファンディスク。
+ タグ編集
  • タグ:
  • アダルトゲーム

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最終更新:2023年12月22日 08:36

*1 明日香・みさき・真白・莉佳は配信済み。

*2 ルールや基本的な用語は公式サイトで説明されている。

*3 作中でも「空中で抱き合うことは出来ない」と言った発言がある。

*4 もっとも体験版にもそれらしい描写があるため全年齢対象とは言い難いが……