ATHENA ~Awakening from the ordinary life~

【あてな あうぇいくにんぐ ふろむ ざ おーでぃなりー らいふ】  

ジャンル サイキックアドベンチャーゲーム
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 3枚組
発売元 SNK
開発元 夢工房
ジャパンヴィステック
発売日 1999年3月11日
定価 7,140円(税5%込)
レーティング CERO:C(15才以上対象)*1
配信 ゲームアーカイブス
2007年8月30日/617円
判定 クソゲー
ポイント やたら薄い超展開なストーリー
大味なゲームバランス


概要

アテナ』の続編『サイコソルジャー』から始まり、今や『THE KING OF FIGHTER』を始めとするSNK作品に多数出演している人気キャラクター「麻宮アテナ」を主人公としたサイキックアドベンチャーゲーム。

各アテナ出演作とは関連性のないパラレルストーリーのオリジナル作品で、近未来を舞台に、突然超能力が目覚めてしまったアテナの心情・葛藤を中心に描かれている。


基本ルール

  • 3Dのマップを主人公アテナを操作して探索する。操作は『バイオハザード』的なラジコン形式。戦闘はエマージェンシーモードと言うコマンドバトルで行う。
  • 本作では超能力を駆使して調査、戦闘を行う。超能力はタイミング良くボタンを押して発動する。
    • 使用すると成否に関わらず「EPS」と言うゲージが減少する。EPSが無くなると超能力が暴走してアテナは意識を失い、ゲームオーバー。EPSは食べ物などのアイテムで回復できる。
    • 戦闘では敵の攻撃を受けると自動的にEPSを消費してシールドで防ぐので、アテナ自身に体力ゲージは存在しない。EPSが一般的なHPとMPの両方を兼ねていると思えばいい。『サーカディア』と言い、サイキックものは体力を削って戦うのが主流だったのだろうか。

問題点

  • ストーリーは説明不足&超展開ばかりで、プレイヤーがあまり理解できないまま勝手に進む。よく判らないまま主人公が覚醒し、よく判らないまま事件に巻き込まれ、そしてよく判らないまま敵が退場していき、最後の戦いへ…という有様である。冷静に読み解いたとしてもツッコミ所が非常に多い。
    • 超能力の覚醒で日常が崩壊していく女子高生の物語なのに、冒頭からバイオテクノロジーで蘇った恐竜と戦闘ロボットの戦いが繰り広げられるなど、些か違和感を禁じ得ない。近未来と考えれば無茶という訳でもないが、他のアテナ出演作とは著しく乖離した世界観となっている。
    • 超能力自体も都合のいいものであり、ピンチに陥れば超能力が覚醒して突破すると言う展開が続く。全体的にご都合主義。アテナの超能力が強大過ぎて、ほぼ全編「もう全部あいつ1人でいいんじゃないかな」状態である。
      • それだけの強大な力を望まず目覚めさせてしまったアテナの葛藤がテーマなのだろうが、その辺りは中盤で親友との関係がギクシャクするという程度にしか描かれない。
    • アテナの超能力はラスボスのニューロコンピュータが恐れ、戦闘部隊を投入しても制圧できないほど強力なものであるのだが、それについては結局何も明かされない。ラストダンジョンで申し訳程度に情報が入るだけで、投げっぱなしのまま終わる。『サイコソルジャー』のように「先祖から受け継いだ」といった説明も無い。
      • 前半から登場する重要キャラは、その力について思わせぶりなことばかり語るが、結局その力の正体については何も知らないらしく、最期は「君の力には必ず意味がある」という無責任な言葉を残して投げっ放しで退場する。
      • 挙句、トゥルーエンディングは思いっ切り次回作への引きが入って終わる。しかし続編は出ることは無く、全て投げっぱなしのまま終わってしまっているのが実情である。
    • 椎拳崇も登場する。しかし「アテナのナイト」を自称してストーカーのようにことあるごとに駆け付けるものの、毎度のように役に立たず退場するという不憫な役回りである。
      • 終盤にアテナと同じ超能力の持ち主であることが判明し、覚醒のシーンも一応ある。ある勢力がこの事実を認識して2人を監視するエージェントを派遣していた…などの事実も明らかになる。
      • だが、その割にはアテナばかり注目されており、拳崇の方は完全にスルーされていたことになる。上記の重要キャラもアテナと同じ力を持つはずの拳崇については一言も触れない。当然ラスボスもこの事を知っていたはずだが、そのラスボス曰く拳崇は「不確定要素」との事。結局、近未来でもみんな女子高生が好きなんですか…。
    • そもそもラスボスを倒さなければならない明確な理由が無い。
      • 強大な超能力を持つアテナを取り込むことで進化しようとしているが、それ以外は特に悪事らしい悪事もしていない。確かに街を支配しているが、だからと言って圧政を敷いている訳でもどこかに侵略している訳でもない。作中の事件はラスボスの手先が暴走して起こしたもので、ラスボス自体は手先に命令こそしたが事件に直接関与した訳ではない。
      • 放置しておけば将来的に良からぬことになるということかもしれない*2が、そう言った描写も薄い。アテナは狙われているので倒さなければ追われ続けることになるのだろうが、それぐらいしか理由らしい理由が描かれないため、単にアテナが生き延びるためにラストバトルに向かうという構図に見えてしまう。
      • また、ラスボスを倒せるのはアテナだけだとしきりに言われるが、上述した通り拳崇にも同じ力があることが既に判明していた訳で、これもツッコミ所に。結局、みんな女子高生が(ry
      • なお、ラスボスのいる地下研究所に向かうのは「特殊部隊がアテナを捕縛しようと銃撃していた際、友人がその巻き添えで撃たれてしまったため、怒りの感情を爆発させたアテナが無意識のうちに自身を転移させた」と言うものだが、友人が撃たれたのとラスボスは特に関係が無く、友人が撃たれたからと言ってそこに向かう理由など全く無い。
        「元を質せばラスボスの存在が異変の原因」だとは語られているので、そこから強引に結び付けられなくもないのだが、そもそもこの時点でアテナはラスボスの所在など知らないし、この後で例の重要キャラに焚きつけられるまではラスボスを倒そうなどとも考えてはいなかった。
    • 冒頭にて、自分達の研究の危険性を危惧しており、しかし強大な力によって拘束されてしまった研究者が描かれるが、ストーリーを進めると元々は人命を顧みないマッドサイエンティストだった事が発覚する。
      • 数年の時を経て自身の過ちに気付いた、という事で自身の罪とそれに対する罰を受け入れている描写もあるのだが、肝心の過ちに気付く過程については一切触れられていないので唐突にも思える。
    • 近未来という設定も、「下校時刻を過ぎると強制的に鍵が掛かり、外部との連絡も取れなくなる教室」「凶暴な恐竜を蘇らせ、飼育している割に安全性に問題があり過ぎる水族館」などに却ってツッコミ所を生じさせている箇所も。構造やセキュリティの面でもどこかズレており、後述する面倒なおつかいの要因でもある。
  • ムービー以外のイベントシーンでは音声が流れないにも拘らず、メッセージ送りが自動。そしてそのスピードも早い。
    • そしてムービーに字幕はない。専門用語が大量に飛び交うシーンがあるにも拘らず、である。この2点がただでさえ分かり辛い物語を余計分かり辛くしている。おまけにムービーの音声は聴き取り辛い。
  • 戦闘はコマンド形式でアクション要素はない。かと言って戦略性があるかと言うとゲームバランス自体が大味なのでそれも望めず、結局エマージェンシーモードは攻撃と回復アイテム使用を繰り返すただの作業に。
    • そもそも戦闘自体が数えるほどしか無く、このゲームが何をどう楽しむゲームとして意図されているのか判り辛い。OPで派手に登場した恐竜や戦闘ロボットも、こう言ったゲーム面の面白さに貢献しているとは言い難い*3
      • 全六章中、バトルらしいバトルがあるのは第五章と最終章のみ。最終章に至ってはラスボスの二戦だけであり、しかも二戦目は敵が全く攻撃してこないただの作業*4
    • 上述した通り、都合のいい超能力の発動シーンが多く、指定された通りの超能力を使うだけで終わるイベント的な戦闘も少なくない。ストーリーのご都合主義がゲーム性の薄さにも繋がっている。
    • 第三章の電車内にて操られた人間との戦いになるのだが、この時の操られた人間に攻撃されてもサイコシールドが発動しない。
      • ではダメージを受けるのかというと、超能力を使ったわけではないのでEPSゲージは減らない。つまりノーダメージであり、いくら喰らってもやられない訳である。シールドを張らない方がダメージにならないという変なことに*5
      • また、ここでは操られた人間をショックウェーブで撃退するのだが、前日に恐竜をバラバラにするほど威力があったショックウェーブが人間を無傷で気絶させる程度になっていたりと、ここもご都合主義的。威力を制御可能になったと強引に解釈できない事もないが、たったの1日でこれと言った描写も無いのでは都合の良さは否めない。
      • しかもここでアテナ自身が「そうだ。ショックウェーブを使えばいいかもしない」などと言い出す。繰り返すが、この前日に恐竜を粉砕したばかりである*6
    • そもそも戦闘でのゲームオーバーもラスボスを除き、「敵の攻撃を受けて力尽きる」ではなく、あくまで「自身の力の暴走に耐えられず倒れる」なので敵が全然脅威に思えず、逆に上述したような主人公のチートぶりが目立つことに*7
    • アクション系のゲーム出身であり、この当時、既にKOFシリーズで活躍していたアテナを主役とした作品なのにアクション要素を廃した作りとは、一体どの層を狙ったのだろうか?。
    • 一方、超能力発動の目押しは一部やたら難しいものがある。これの所為で自滅したり、死亡ムービーを何度も見せられる、なんて事も。
  • 基本、謎解きがメインだが、やたらお使い要素が多くあちこちをたらい回しにされやすく、その上マップが無駄に広く入り組んでいるのでこちらも作業化しがち。ストーリーとは対照的に探索パートは都合良く進ませてくれない。
    • それも鍵探しや先に進むための情報集めなど、退屈なフラグ立て作業ばかりで面白味が無い。プレイ時間の大半がこのフラグ立てであり、プレイ時間の水増しを露骨に感じさせる。
      • テレパシーやサイコメトリーなど超能力を活かした謎解きもあるのだが、大半は歩き回るばかりのお遣いである。
    • 特に酷いのが第二章のディノアクアリウムにある予備電源の管理室に入るパート。
      • 電源が落ちて扉が開かないため電源パネルを操作しにいく → 電源を入れるとパスワードを要求されるため知っている職員を探しに行く → パスワードを打ち込むとカードキーを要求されるため探しに行く → カードキーのある保管庫には鍵が掛かっているためその鍵を取りに行く → 保管庫の鍵が入っている警備ボックスには暗証番号が必要なので職員からテレパシーで聞き出す → 警備ボックスから保管庫の鍵を取り出し、保管庫に入ってカードキーを取る→やっと扉が開く。…扉一つ開けるだけでこの手間である。
      • あまりの面倒さにアテナ自身も「いい加減にして!」と憤慨したり「本当にややこしい…」と漏らすシーンがある程。分かっているならもっとサクサク進ませて欲しいものだが…。
    • 第五章も相当に酷い。前半は友人を探して学校中を走り回り、後半は爆弾を解除するためのアイテムを探して学校中を走り回る。アテナが走る姿を見るだけのゲームかと思えるほど。
      • 前者は行き違いを繰り返し、しかもあんまり無駄に動き過ぎるとバッドエンドフラグが立ってしまう。後者はアイテム探しで駆けずり回る上に何故か漢字の書き順を答えさせられる。
      • この章ではアテナが「もう嫌だよ…」と弱音を吐くシーンがあるが、同じ気持ちになったプレイヤーも多いことだろう。
    • 最終章ではラスボス以外全く敵がいないラストダンジョンを、これまたフラグ立てのために走り回される。そして不意打ちのように始まるミニゲームを失敗するとトゥルーエンドが見られなくなる。
    • このようなゲーム性を緩和するつもりだったのか、万歩計付き育成ゲーム「あてなっち」が収録されている。しかし第一章の最序盤で分かり難い場所を調べなければ入手できないので、気付かない人の方が多いだろう。
      • その場所は教室のアテナの机なのだがそこがどこなのかヒントは長い長いオープニングムービーの最後の方にチラっと映るのみで、しかも他のアイテムと違って光らないので初見で気付くのはまず無理と言っていい。
  • 操作性も良くない。『バイオハザード』に比べても明らかに劣化しており、スムーズに動かせない。
    • ちょっと方向転換するだけでぐるりと回ってしまったり、障害物に引っ掛かってまた変な方向を向いたりなど。真っ直ぐ走るのも苦労するほどである。
    • 鍵などのアイテムを使って進むのだが、この反応も悪く、然るべき所で使ったのに何も起こらなかったり、○ボタンを連打しているとアイテム使用がキャンセルされたりする。
  • ムービーで容量を食っているためCD-ROM3枚組とは到底思えないボリューム。
    • 途中で詰まらなければ3時間半程度。その約半分はムービーやイベントである。
    • オープニングのムービーを見て少し主人公を操作したらDISC1は終了。以降はさすがにそこまでではないにしてもやはり短く、ストーリーの超展開さにも拍車を掛けている。
    • もっとも、この調子でボリュームがあればそれはそれで苦痛と思われるが。

評価点

  • 容量を食っているだけあり、ムービーの出来はなかなか。
    • ゲームオーバームービーもアテナの服装が反映されていたり、章によって倒れ方が違ったりなどさり気なく差分が多い。
      • また、超能力の暴走で倒れる以外にも恐竜がエレベーターに突っ込んできて死亡、列車事故や爆弾解除失敗で大惨事、ラスボスの生体ユニットにされる、友人が恐竜に喰われるなどの別バージョンも用意されている。わざとやらない限りまず死なないような箇所にも専用ムービーがある場合も。
  • BGMは世界観に合ったものが揃っており、悪くはない。クソゲーのお約束とも言えるが…。
    • エンディングテーマも作品に不釣り合いなほどに格好良い。
  • バイオハザード3』に先駆けてクイックターンが採用されている。
    • 戦闘にアクション要素が無い本作だが、幸か不幸か上述の通り操作性の悪さの中では役に立つ。
  • 話し掛けられるキャラが多く、テレパシーで心も読めるのでテキスト量は少なくなく、読む楽しみはある。
    • しかしテレパシーはEPSを消費してしまうので、心を読み放題とは行かないのが残念なところ。
  • おまけミニゲームの「あてなっち」は何気によく出来ている。タイトルや機能から分かる通り『たまごっち』と『てくてくエンジェル』を組み合わせたようなものだが、キャラの成長や台詞のバリエーションもちゃんと作られている。
    • 最初はゆるキャラ風だったのがアイドルやギャルなどに急成長していく。一回も接しないとオタク化してしまうなど、接し方によって成長の方向性が異なるのも面白い。
    • それだけに気付きにくい場所にあるのは勿体ない。あと、その前に本編の方を作り込めと言いたくもなるが。

総評

人気キャラである麻宮アテナを主人公に据え、超能力を駆使して謎解きや戦闘を行うアクションアドベンチャー…という着眼点は悪くなかったが、ゲームとしてはお遣いばかりで至極単調な上に戦闘も大味で退屈。
ストーリーを楽しむにしても超展開なシナリオと理解を阻害する表示形式で、それも難しい。
麻宮アテナのファンであってもこのゲームを楽しむには相当な愛が必要だろう。
人気キャラクターのスピンオフ作品だけに、シナリオやシステム周りの作りこみが浅すぎるのが惜しいところである。


余談

  • 後にゲーム版を基にしたノベライズ『アテナ~選ばれし少女~』がファミ通文庫より上下巻でリリースされている。
    • ストーリーはゲームと異なっており、結末も消化不良だったゲームよりは綺麗にまとまっている。
  • 平成ウルトラマンシリーズの常連出演で有名な女優の石橋けいが主演した実写ドラマ版『ATHENA』の脚本は、本作のシナリオを土台にしている。
    • しかしストーリーはほぼ別物であり、なんと拳崇が登場しない。似た役割の男子生徒は登場するが別人である。
  • 本作の半年後には同じく『バイオハザード』タイプのサイキックアクションアドベンチャーである『ガレリアンズ』が発売している。
    • 両者は関連性は無いものの題材上、似通った点が幾つかある。しかしあちらは戦闘システムが良く出来ており、本作もそれぐらい作り込まれていればと思わずにはいられない。
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最終更新:2024年01月03日 14:58

*1 ゲームアーカイブス版で付与されたレーティングを記載。

*2 「倒さなければ理香(アテナの友人)のような犠牲者が増え続ける」と言われるが、後述するように彼女が負傷した件にラスボスは無関係である。

*3 ロボットとは一応戦闘がある。終盤に申し訳程度だが。恐竜についてはムービーでバラバラにするだけ。

*4 圧倒的優位の立場でラスボスにトドメを刺す演出は他のゲームにもあるが、本作は手順が多く本当に作業じみている。

*5 もちろん、他の敵の攻撃は銃撃など当たれば致命傷になるようなものなので、人間の素手攻撃の場合と単純な比較はできないが、ゲームとしては面白味が無いし描写としても不自然なものに。

*6 ここでショックウェーブを使って撃退すると敵から「おいおい、友達に対して遠慮の無い奴だな!」と言われる。正にその通り。

*7 また、ラスボスは例外とは言っても、ラスボス戦で負けた場合のムービーではいきなりアテナが倒れているので、いつも通りの力の暴走で倒れようにも見える。