三國志VII
【さんごくしせぶん】
ジャンル
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歴史シミュレーションゲーム
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対応機種
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Windows プレイステーション プレイステーション2 プレイステーション・ポータブル
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発売・開発元
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コーエー
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発売日
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【Win】2000年2月18日
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定価
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14,800円
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判定
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なし
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ポイント
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全武将プレイの走り
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三國志シリーズ
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概要
コーエーの歴史シミュレーション『三國志』シリーズの7作目。
それまでは君主を選択して、中国全土を統一するのが目的だった。
だが、本作では登場する武将の一人となり、三國時代を生き抜く事が目標になっている。
特徴
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全武将プレイ
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登場する全ての武将の中から一人を選択し、主人公にする事が出来る。
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本作最大の特徴。君主以外の武将でも主人公にする事が出来るので劉備に仕える関羽で忠臣プレイを行ったり、呂布として戦場を暴れまわる事も出来る。
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後の作品ではNPCになった于吉や禰衡といった武将も本作では武将として登場するため、彼らを主人公にする事も可能。
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君主でプレイする事で従来の作品と似た感覚でプレイする事も可能。
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もちろん、マイナーな武将でのプレイも可能。特に能力が低い武将の場合、捕虜になると問答無用で斬られる場合があるので難易度は上がる。
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終了条件
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本作では敵に国を滅ぼされても自身が死ななければ(死んでも跡継ぎがいれば)ゲームオーバーにならない。
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滅ぼされる際にあえて敵に寝返って、速攻で下野して、僻地で捲土重来しても構わない。
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また、敢えて隠遁して在野武将のままでいてもいずれかの勢力が中国全土を統一した時点で、在野武将エンディングが発生してゲーム終了。当然だが、こうしないと在野武将エンドは見る事ができない。
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身分とコマンド
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プレイヤーには身分が存在し、身分が高いほど権限も高くなり、行える都市コマンド(軍事、内政、外交、といったお馴染みのコマンド)や実行範囲が異なる。
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君主:あらゆる都市でコマンドが実行可能。都市や配下を管理して中国全土の統一を目指す。反乱は出来ない。
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軍師:自身が所属する国のあらゆる都市に命令を出す事が可能(ただし実行には許可がいる)、コマンド実行の際は自身で軍師助言を行う。反乱が出来るのはここまで。
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太守:自分の都市に所属する一般武将に都市コマンドの実行を命じる事が出来る。
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一般:太守から仕事を命令される事もあるが、自分から実行を願い出る事も出来る。
仕事をサボって鍛錬ばかりしてもいい、戦争時は自分の部隊のみを操作
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在野:放浪、諜報、と出来る事は少なめだが、あらゆる都市を自由に移動できる事が強み。空白地で旗揚げをするか、反乱をするか、登用されるかでそれぞれの身分に変わる。
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最初は権限も少ないが、勢力に仕えて実績を上げることで、太守、軍師と出世していくことが可能。
都市コマンドは一月に一度しか行えないが、武将との交友や自己鍛錬などの個人コマンドは行動力が続く限り何度でも行うことが出来る。
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武将との交友
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自分以外の武将と交友することで様々なメリットを得られる。その都市の武将に、親密度が低ければ手紙を出して自身を覚えてもらい、訪問することで親密になれる。
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武将と親密になると仕事の助けをしてくれたり、鍛錬に付き合ってもらって技能を教わることも可能。
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他国の武将と親密になれば所属する勢力へ誘われる事もある。
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敵の君主と親密になる事で捕虜になった時も殺されずに見逃されることが多くなる。
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自勢力の武将と親密になっていれば、下野の時に引き止めてくれたり、反乱の際の成功率にも影響がある。
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訪問する事で、様々なイベントが発生し、狩りに出て虎と一騎討ちになる事や名勝古跡を訪れたり、知己を紹介していくれたり、果ては訪問相手を暗殺する事も可能。訪問相手から技能を教えてもらったり、逆に友人が技能を伝授して欲しいと頼みに来る場合もある。
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住民との交流
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都市を巡察し住民と交流することで民心掌握が上昇し、こちらもメリットを得られる。
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能力が求められる依頼を受けることもあり、失敗すると民心掌握が低下する。
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民心掌握が高いと、内政の効果が高まったり、たまにアイテムを献上してもらえたりする。政治力の低い武将も民心掌握を上げれば高い内政効果を得ることができ、その効果は大きい。
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鍛錬による成長
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コマンドを実行する、鍛錬コマンドを行うことで能力の経験値が溜まり、100を超えると能力値が1上昇する。
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上記の通り、親密になった武将に師事する事も可能で(鍛錬能力がその武将以下である必要があるが)普段よりも多くの経験値が得られる。
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また、特定の都市で鍛錬する事で得られる技能もあり、技能の数は多い。
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能力値が高くとも有利な技能を持っていなければハリボテになる事も多いので技能を求める事は大事である。
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能力が高いと武術大会や漢詩大会への参加を求められ、好成績を残す事で褒美を貰え、出世への道を拓くことが可能。
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太守、軍師への出世は高い能力が求められる。太守は政治60、軍師は知力80が最低水準。太守・軍師への出世を志したプレイであれば能力をこれ以上にすることが目標となり、逆に「ずっと一般武将のままでいたい」という気分の時は政治力50くらい、知力75くらいをキープすれば一般武将の地位を維持できる。
評価点
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自由度
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とにかく殺されさえしなければ何をやっても良いので、自勢力が気に入らなければ下野をして自己鍛錬に勤しむ事も可能。
三國志の時代を好きな武将であらゆる角度から楽しめる。
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『三國志II』で雑魚武将として人気だった曹豹が久々に人気者となり、鍛えあげて張飛に復讐する事も出来た。
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公式も想定していたのか、エンディング時のムービーで何故か曹豹が登場している。
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中国全土の名勝古跡を巡る、あらゆる技能を覚える、アイテムを収集するといったやりこみ要素もふんだんにある。
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寿命が尽きそうになっても、特殊技能をもつ武将を訪ねることで延命を図る事が出来る。
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戦争の楽しさ
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戦争に関しては全武将プレイに合わせた様々な試みが施されており、それは概ね成功していると言える。
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戦争開始前に総大将と参軍によって大まかな作戦が決められ、その作戦に従ってプレイヤーが操作できない武将は動くため、全軍を指揮する立場でない武将でプレイしていても、ある程度は味方の動きを予想し、それを活かして行動する事が出来るようになっている。
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また、地形効果が強力な事や補給を断つ事によって敵の士気を下げられる事、包囲攻撃が強力な事などの様々な要素により、プレイヤー武将の小さな行動から拮抗した戦況を大きく動かせる事が多く、武将プレイの醍醐味であろう一武将として奮戦し味方を勝利に導く、と言うシチュエーションを容易に作る事が出来る。
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また、戦争前の評定で参軍が様々な策を立ててそれを実行するのだが、この策はシリーズ随一の多彩さと強力さを誇る。参軍となる武将の所有特技に合わせて選べる策は変わるため、軍師系の武将を育成する楽しさに繋がっている。
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その一方で全軍を自由に動かせる君主プレイではコツさえ掴めば優勢な敵軍をたやすく破れるため、戦争の難易度、と言う事ではシリーズの中では低い方だと言えるだろうが、これは全武将プレイでもクリアを可能にするための調整の結果、と見るべきだろう。
問題点
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同じ展開になりがち
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身分によって出来る事は異なるものの、身分が低いほど自由度が低くなるだけでその身分ならではのコマンドは少ない。よってどの武将を使用しても、最終的には高能力と使える技能で身を固めるプレイになりがち。
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軍師プレイや太守プレイで自分の君主を支えようにも提案を断られたり、せっかく取った領地を簡単に奪われることも多い。AIの弱い勢力に天下を取らせるのは並大抵の苦労ではない。
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本作では(君主になった際の)武将の登用基準がかなり異なっており、様々なタイプがある。それは良いのだが、中でも『名声型(名声の高い武将が推挙されるのを好む)』の場合、どんなにいい能力の武将でも「名声が低い」せいで不採用とするケースが多い。
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一例を挙げると、前半シナリオの孔融など。『人材こそ力』なこのゲームでは勢力を極めて伸ばしにくく、余程うまくやらないとあっさりと滅んでしまう。
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簡単に親密度が上がる為、難易度が低い
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武将に送る手紙は断られないため、どんな武将でも簡単に親密度が上がり、下がる事もほとんどない。その為、信頼を得るのが簡単になり過ぎてしまい作業感が出る。
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知力が低いと話にならない
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戦場では知力が低いと混乱や挑発にかかって、あっという間にやられてしまったり、偽報で勝手に退却させられる。
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その為、どんな武将でプレイをしても、計略にかからない程度の知力の鍛錬は必要となり、必然的に頭のいい張飛や呂布にならなければならない。
呂布で知力を鍛えている時に「そなたの知略を見込んで我が陣営に来てくれぬか?」と勧誘されると微妙な気持ちになる。
だが、知力は上げる事ができても、マスクデータ「冷静」を上げることはできないので結局挑発や混乱には引っかかることも…。
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能力値がインフレ気味
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本作では統率力が無くなった為、軍師の武力が軒並み上がってしまい、イメージを損なう武将が出てきた。
呉の黄蓋より周瑜の方が武力が高いといった首を傾げる評価も。
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…と様々なところで言われているが実はこれは誤解。
武将の特技に「一騎」というものがあり、これを持っていない武将は一騎討ちの際に武力-20の補正がかかり、これで従来の猛将と名指揮官の区別を付けている。
例として挙げられた2人は、パラメータは黄蓋は武力86、周瑜は武力89と表示されているが、
実は他シリーズで言えば黄蓋は統率86・武力86、周瑜は統率89・武力69なのである。
この仕様の本当の意味は、軍師の武力が高くなっているのではなく武力99=統率99という意味でもあるため、猛将の統率が高くなっているという事。
「軍師の武力が高い」とは正反対である。
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これが分かりづらかったのか、コンシューマ版では「武力」の名前が変わり「戦闘」という名前のパラメータになっている。
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また、能力はゲーム中にも簡単に上昇するため、後半になると武力100や知力100が珍しくなくなる。
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後味の悪いエンディングになりやすい
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統一時の各種要素でエンディングが決まるのだが、大抵の場合はバッドエンドが発生しやすい。
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せっかく統一したのに、異民族に殺されたり、劉禅似の子孫が帝位を簒奪されるエンディングばかりになるので君主プレイで統一した時の達成感が少ない。ある意味史実通り、とも言えるが。
もちろん、300年の栄華を誇るハッピーエンドも存在するが、達成条件が難しい。
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籠城戦が空気
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大抵は野戦で戦力がボロボロになり、そのまま勝敗が決するので籠城戦になる事は少ない。
また、籠城戦自体もコマンドの実行による殴り合いなので面白みは少ない。
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しかし一方で、君主プレイにて自国防衛側の場合は、状況や装備にもよるが下手な野戦よりも有効な戦術となりうる。
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自軍の武将達に弩と連弩を持たせて全員を弩兵にし、野戦を行わずに即座に籠城戦に突入して個別にコマンド入力して攻撃することで、莫大な火力が得られる為である。
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この場合、攻撃対象も任意に選べるので先に敵軍の攻城兵器や参軍を撃破しておけば、あとは極端に兵力差や都市防御力に問題がない限り、適当に矢を撃ち続けるだけで戦争に勝利出来るだろう。
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最終シナリオがそのままの形ではプレイ困難
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前作のショートシナリオである、諸葛誕が反乱を起こした年代(257年)のシナリオが本シナリオに昇格した。しかし、この年代の武将は前作から追加されていないため、魏・呉にはゲーム開始時から太守不在の都市が存在する有様である。しかも、シナリオ開始後に元服する武将は1人もいないので、武将は減る一方。寿命の長い武将を選べばクリアは有利になるが、まともに三国(+諸葛誕)の争いを楽しむ事は困難。新武将登録で補う必要があるだろう。
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次作『三國志VIII パワーアップキット』や、次々作『三國志IX』では、末期の武将が多く追加されているので、新武将として逆輸入すると手っ取り早い。
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ただ、シナリオ開始時に未登場武将がいないのは、全ての武将を主人公として選べるようにするための配慮でもある。登場最年少の司馬攸が10歳で元服しているのはそのため。
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黄巾の乱シナリオの削除(PC版/PS版)
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『V』より続いていた黄巾の乱シナリオが削除され、『IV』以前のように189年のシナリオが最も年代の早いシナリオになった。この為、張角等の黄巾党の武将たちが未登場になってしまった。
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PS2版では黄巾の乱シナリオが追加され、黄巾党の武将達も追加された。以降の続編でも黄巾の乱シナリオは必ず実装されている為、何故かカットされた本作のみ浮いてしまっている。
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全てのシナリオを遊べるバージョンが存在しない
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上記のようにPC版では黄巾シナリオが無く、PS2版ではWin版パワーアップキットで追加されたシナリオが遊べない。中には諸葛亮没後(234年)のシナリオがあり、このために225年(北伐)から257年(諸葛誕の乱)まで一気に時代が飛んでしまうことになる。
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現在PC版はSteamで販売されているが、有料追加シナリオ2つ(197年と208年)が適用できなくなっている。どちらも面白いシナリオであるため、プレイ環境から失われてしまうのはもったいない。
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捕虜になった武将がそこそこの確率で登用に応じる
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これが問題点になるのは、関羽や張飛、周瑜ですら登用に応じてしまうことがあること。引き抜かれた側はたまったものではない。
総評
全武将プレイは好評となり、以後のシリーズ作品でも採用されている。
新作が発表される度に、君主プレイか全武将プレイかが取り沙汰されるなど、シリーズに1つの方向性を打ち出したのは間違いない。
結婚や義兄弟といった要素こそないが、能力を上げやすく、様々な技能を覚えて時代を自分の好きなように作る楽しみはある。
難易度やハードルが低いので、シリーズ初心者にもおすすめできる作品である。
余談
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孔明の悲劇
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本作では能力が鍛錬で上がる事を考慮してか、今まで能力が最高値の100だった呂布と諸葛亮(孔明)でもシリーズで唯一能力値が下げられている。全ての武将の全ての能力が、「初期状態で100」というのは存在しない。
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呂布の武力は98になったが、それでも全武将中1位なので問題は無い、ところが、孔明は知力が92まで落ち、知力を+8するアイテムでかろうじて「92+8=100」を保っている有り様。
その為、劉備が滅ぼされると、アイテムが没収されて92に落ちてしまい、荀彧(又は周瑜)が軍師を務めている中で孔明は一太守に甘んじてアゴで使われる悲劇が起こる。
不評だったのか、VIII以降のシリーズでは再び初期状態で知力100に戻った。
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また、前述の武力の仕様により、張飛が実質統率96・武力96という名指揮官ぶりを発揮するのに対して、孔明は統率78・武力58という二流指揮官になってしまった。
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孔明転落の影響か、司馬懿も知力91になっている。こちらはアイテムなどは無いので91のまま。武力も高いので前線の太守・名軍事指揮官として活躍する。
なお龐統は知力95であり、今作では龐統>諸葛亮という逆転現象が起きている。
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と言うのは、「諸葛亮と言えば知力100の完全軍師」のイメージが強いがゆえの話。
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孔明の政治力98は全武将トップで、強力な武装「連弩」を生産できる能力があるので、今作の孔明の存在意義は「絶対に助言を間違えない完璧軍師」や演義における名指揮官ぶりではなく、「組織全体の戦力を押し上げてくれる名宰相」である。
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さらに、孔明は大量の特技を初期状態で習得しており、なんとデフォルトで落雷を発動可能。もしも知力92に低下していて荀彧が軍師をやってたとしても、戦場に孔明が参加していれば発動可能なので、今度は荀彧が落雷を放ってくる。シリーズでも落雷は仙人や妖術使い、黄巾賊の首脳陣、卑弥呼や水滸伝武将などの特殊な存在しか使ってくる事は無い大技だったのに、それを三國志レギュラーの孔明が使ってくる…。
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というわけで、今作の孔明は他シリーズの「統率90台の名指揮官」「知力100の完全軍師」の座を失った代わりに、最強装備(連弩)と攻撃魔法(落雷)で物理的に敵を粉砕するというキャラクターになったのだ。凶悪さで言えば他シリーズに決して劣らないであろう。
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呉の悲劇
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『V』同様、特定の勢力を攻めると専用の戦争BGMが流れる。本作では「魏」「蜀」「新君主」「呂布」に専用のBGMが用意されているが、「呉」を攻めても流れるのは汎用の戦争BGMである。
一応、呉の戦争BGMらしい曲は存在しているが、バグか仕様かゲーム中で聴ける場面は一切ない。エンディングで作中の曲がメドレーで流れる時に聴く事ができるので存在の確認はできるが…。
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顔グラフィック
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本作は全武将で当初、上半身まで含めた顔グラフィックが用意されていたが、最終的にはいつもどおりの顔グラフィックに落ち着いた。その名残がエンディングのムービーである。
最終更新:2023年06月19日 09:17