このページでは、ニンテンドーDS用ソフト『スローンとマクヘールの謎の物語』と、『スローンとマクヘールの謎の物語2』の2作品を紹介しています。



スローンとマクヘールの謎の物語

【すろーんとまくへーるのなぞのすとーりー】

ジャンル 新発想ストーリーパズル
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 512MbitDSカード
発売元 レベルファイブ
開発元 デジタルワークスエンターテインメント
発売日 2009年5月21日
定価 3,333円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 なし
ポイント 珍しい水平思考パズルシミュレーター
ゲーム…と呼べるかは微妙

概要

レベルファイブの『アタマニアシリーズ』第一弾。世界的に有名な推理パズル「水平思考パズル」をテーマにしている。
本作は、両氏が共同で執筆した『Lateral Thinking Puzzles』(日本語版は『ポール・スローンのウミガメのスープ』などの題で訳書が出ている)をゲーム化したもの。

なお、「スローンとマクヘール」とは登場人物の名前ではなく、水平思考パズルの第一人者ポール・スローン氏と水平思考パズルの研究者である数学者デス・マクヘール氏のことである。

水平思考パズルって?

このように言うと分からない人も多いだろうが、「ウミガメのスープ」というとなんとなく聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
とりあえず代表的な問題を一問例題として挙げる。

男はレストランに入るとメニューから「ウミガメのスープ」を注文した。

スープを一口すすると、男は席を立ち、レストランから飛び出した。
そして、男は崖から飛び降り、自殺してしまった。なぜだろう?
  • この文章が問題文であり、回答者は「はい」「いいえ」「関係ない」で答えられる質問を出題者に尋ねることで、この一見して不可解な状況の謎を解く…というのが水平思考パズルのやり方である。以下質問の一例。
    • 男はウミガメのスープの味が気に入らなかった?→いいえ
    • 崖から飛び降りて自殺したことは重要だった?→関係ない
    • ウミガメのスープの味は男の記憶にあった?→いいえ
    • 男はウミガメのスープを食べたことがあった?→はい
    • 男には漂流した経験があった?→はい
+ 正解・ネタバレ&微グロ注意

男はかつて家族や仲間と一緒に海上を漂流していた経験があった。
食料はほとんどなく、衰弱死してしまった息子の肉を食べるように仲間から言われるが、男は頑として食べようとしなかった。
そこで仲間達は「これはウミガメのスープだ」と偽り彼にスープを食べさせることに成功する。
数年後、本物のウミガメのスープを食べた彼はそれが記憶の味と異なっていたことで自分の食べたものの正体を悟り自殺したのだった。

システム

  • この独特な水平思考パズルをゲームにするために本作は独特なシステムを用いている。
    • 問題を開始すると問題文が下画面に表示され、その中から怪しいと思う単語をタッチする。例えば上の「ウミガメのスープ」だったら、問題文の中から「男」という単語をタッチすると「ウミガメ、レストラン、グルメ」という選択肢が表示され、ここから「ウミガメ」を選ぶと「スープ、アレルギー、愛護団体」という選択肢に繋がり、さらに「スープ」を選ぶと「思い出、高価、好き、驚いた」という選択肢が表示される。さらに「思い出」を選ぶことで、「男にとってウミガメのスープは思い出深い物だった?」という質問文が完成するのである。
      • 質問文にははい、いいえ、関係ない以外にも応答があり、物語の本質に迫る質問なら「いい質問ですね」と言われ、隠された謎に迫る質問なら「すばらしい質問ですね」と言われる。単なる褒め言葉ではなく、後者の「すばらしい質問ですね」にたどり着くと問題文の中には存在しない単語「シークレットワード」が解禁され、シークレットワードを用いて質問文を作ることが可能になる。
    • 自分が物語の本質を理解した、と思ったら解答に入る。解答編ではいくつかの選択式の質問がされ、全問正解でクリアとなり、物語の解答が示される。
      • 「いい質問ですね」を何個か出すと、画面背景の「想像の木」が成長し、解答編での選択肢が少なくなるボーナスがある。
  • ゲーム…とは言えないかもしれない。
    • 「制限時間」「質問回数の制限」「クリア出来なかった場合のペナルティ」「少ない質問数で答えにたどり着いた場合の特典」…といった、ゲームを「ゲーム」たらしめる要素が本作には一切ない。本気で皆無。おまけモードはあるが、普通にプレイするだけで解禁される。
      • 質問は何個してもいい(一応質問回数は表示されているが自己目標以外に意味は無い)し、解答編で間違えても再挑戦は何度でもできる。どうしてもわからなければ「後で解く」ことにして次の問題に進んでもOK。
    • じゃあ「電子書籍」なのか、というと「質問を重ねて解答にたどり着く」という独自の要素があるので純粋な電子書籍とも言えない。
      • 書籍版ではどうしても質問が最初から限定された数個しか掲載できず、水平思考パズルの本質である「物語の核心に迫る質問を考える」ということができないので、そういった意味では本来の水平思考パズルに近い形式の解答方法が可能である。ゲームでも書籍でもなく「シミュレーター」と捉えるのが一番近いかもしれない。
    • そもそも水平思考パズルは「勝負」ではなく、出題者と回答者が協力し合って物語の核心にたどりつく「共同作業」に近い側面もあるので、ある意味この方向性は誤っていない。

評価点

  • 演出は非常に雰囲気があっていい感じである。
    • 影絵風の個性を消した独特なイラストと穏やかなフルボイスの問題読みは、本作の問題の雰囲気に良くマッチしている。
    • 物語と物語の間では案内人がちょっとした解説を行ってくれる。物語と関係あったりなかったりだが時々深いことも言っている。
    • BGMも静かで落ち着きがあってなかなか良く出来ている。やりこむとおまけモードでBGMが解放されていく。

問題点

  • 解答編での「答え合わせ用の質問に正解できたらクリア」というゲーム的な方式に、構造上の問題がいくつもある。
    • この「答え合わせ用の質問」及びその選択肢自体が大きなヒントになってしまっている例が少なくない。
      • ひらめき系の問題は特に、「なんでそんなことを聞くんだろう?」と考えれば答えが出てしまう問題が多数見られる。
      • もし自分の解答に自信がなくても、たとえ一切答えがわからなくても、当然解答にトライすること自体はできる。問題を始めてすぐ解答することも可能。
      • 答え合わせ用の質問から答え自体は分からない場合でも、「この問題は何がカギになっているのか」は間違いなく見えてしまう。
      • そのため、プレイヤーが実直に質問だけから問題を解こうとする姿勢を見せないとこのゲームは根幹が傾く。
      • 間違いを潰す形で正解にたどり着けないよう、プレイヤーの解答の正誤に関わらず質問は全問出題される。それはいいのだが、「1問目:死因は? (他殺/自殺/事故死)」「2問目:どうやって殺された?」なんてのも出てくる。 1問目の存在意義は?
    • 質問には「問題の本質とは関係ない質問」が混ざっている場合が時々あり、これも正解しないと間違い扱いされる。
      • 例えば上のウミガメのスープなら、答えは「家族」ではなく「友人」でも物語の本質は変わらないのだが、「友人」だと正解にならない。
      • 本質的な「解答」自体はわかって早く次の問題に進みたいのに、解答編の質問に合わせて些末な部分を質問しなければならないこともしばしば起きる。
  • 自分がしたい質問ができない、という状況が発生しがち。
    • キーワードに沿って質問をしなければならないため、聞きたいことはあるのにどう聞けばいいかわからない、ということがある。
    • 核心的な質問は、上述のシークレットワードを解放しなければ作成できない。「最初からその質問をしたかったんだよ」という状況も起きる。
  • 問題の難易度にかなり幅があり、特に簡単な方は手垢のついたありきたりなクイズ問題やミスリード問題もそれなりに出てくる。
    • ある程度ミステリーやクイズ等に慣れていると「問題の半分ぐらいでわかった」「タイトルだけでもうわかった」ということも珍しくない。
    • それこそ、後述の『頭の体操』シリーズを読むような人であれば、両手の指で足りないほどの問題を即答できる。
  • 難しい問題は難しい問題で、大抵は良くできたクイズのように「やられた!」と納得するタイプの問題ではない。
    • 解答を聞いても、人によっては「いや、普通それだけのことでそんなことはしないでしょ……」などと違和感を覚えてしまう問題もいくつか。
  • 原作の問題ではあるが、上述の「ウミガメのスープ」を筆頭に、人死にの出るような暗い話が多め。
    • その暗さが意外性を呼んで問題を引き立てる場合はあるし、「ウミガメのスープ」もそうなのだが、そういった「暗さの必要性」を感じる話は必ずしも多くない。
    • 本作は『レイトン』から流れてきたライト層も割とプレイしたため、そのような内容には特に好みが分かれた。
      • 実際パッケージにも「レイトン教授オススメ!」と書かれており、レイトンファンに向けたセールスを期待していたことがうかがえる。
    • 問題の暗さもあってか、CEROは「B」。その割には漢字に全て振り仮名が振ってあったりと、対象年齢が判然としない。
  • 問題数は全80問とあまり多くない。
    • 一度解いてしまえば正解は変わらないので、やりこむには適さない。ただし、他人に解かせてみたりする楽しみ方はある(そのための専用モードがある)。
    • 価格自体は安いので妥協はできる範囲だが、本作が書籍のゲーム化であることを考えると値段が増えた分の付加価値があるかどうかは評価が分かれる。
  • 本作オリジナルのヒントキャラ「アンナ」が出張り過ぎで非常にうっとうしい。
    • 出題後、解答するまで常に画面をちょろちょろ動き回っており、落ち着いて考えたいのに邪魔になる。
    • 質問の回数が増えるとヒントが任意で聞けるが、「これとこれとこの選択肢を選ぶと「すばらしい質問ですね」にたどりつけるよ!」と直球で示してくる。
      • 総当たりでどうにかなる「何の質問をするか」のヒントより、もう少しぼかした問題自体のヒントを聞きたかったという声が多い。
    • しばらく放置するだけでも、ヒントっぽいなにかしらを喋ることがある。設定で切ることは不可能。
      • じっくり考えるゲームなのに、放置すると勝手にヒントを出すのでは全く趣旨と合っていない。多くのプレイヤーからウザキャラ扱いされた。
  • 間違えた際のボイスに「真面目にやっていますか?」というものがあり、イラつきを覚えたプレイヤーもいる。
    • とはいえ、よほど間抜けな質問をしない限りここまで冷淡な対応をされることはない。例えば上の「ウミガメのスープ」なら、実は男はウミガメだった?などというとんでもない質問文も作れるが、流石にこんな質問をしていたら馬鹿にされても仕方ないだろう。

総評

質問によって、起承転結の「起」と「結」の部分をもとに、理由となる「承・転」を導き出すという独自性はある。
ただ、確認の質問によって解答の正誤を判別するというシステムは難点も多く、ゲーム化するにおいてうまく落とし込めているとは言いがたい。
原作からの問題自体も、ちょっと先入観を捨ててみればすぐ分かるミスリードや既視感のある叙述トリックが結構含まれており、大した目新しさはない。
全てが「ウミガメのスープ」のような問題であると期待すると、間違いなく肩透かしを喰らう。

一方で、特に普段あまりゲームや謎かけ自体に触れないライト層からは、それなりにハマったという声も見られる。
同社の『レイトン』と同様、とっつき易さから初心者を呼び込んだ作品だということも事実ではあるだろう。


その後

  • 続編として『スローンとマクヘールの謎の物語2』が発売された。詳細は後述。

スローンとマクヘールの謎の物語2

【すろーんとまくへーるのなぞのすとーりーつー】

ジャンル 新発想ストーリーパズル
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 512MbitDSカード
発売元 レベルファイブ
開発元 デジタルワークスエンターテインメント
発売日 2009年9月3日
定価 3,333円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 なし
ポイント 問題は全問入れ替え
追加要素は些少

概要(2)

  • 前作から3か月ほどで発売された続編。発売間隔が短いことからもわかる通り、続編と言うよりは第二集とでも言うような内容である。

特徴・評価点(2)

  • 全問入れ替えとなった80問の物語。
    • 「練習問題」含めた全ての問題が新問となりつつ、前作と同じボリュームを持っている。
      • このため、前作を遊びつくしていても普通に楽しめる内容になっている。もちろんチュートリアルは一から丁寧に、問題の難易度も最初はごく易しい物になっているので本作からプレイしても何の支障もない。
  • 「挑戦状」という新システム追加。
    • 10問ごとに案内人もしくはアンナからちょっとしたパズルが出題されるようになった。水平思考パズルとは全く関係ない「嘘つきは誰?」や暗号物などだが、趣が違って気分転換にはちょうどいい。『レイトン教授』っぽい問題だと言われやすい。
      • もちろん、通常の問題と同じくスキップして後で解いてもOK。

問題点(2)

  • 前作の問題点はほとんど直っていない。
    • 解答方法などは、「そういうもの」として諦めがつかなくもないが、アンナの言動は多少大人しくはなったもののほぼそのまま。「オプションでオフにする」などがあれば良かったのだが…。
  • 問題の傾向が若干変化している。
    • やや難易度が高くなったというか、理不尽な傾向の問題が増えている感がある。その代わり、「一目で解けた」というような難易度の低いものは減っているのでこの辺りは痛し痒しか。

総評(2)

良くも悪くも前作からの無茶な変更点は皆無。雰囲気含めてほとんど同じ感覚でプレイできる。
つまり、前作が面白かった人なら普通に楽しめ、前作がつまらなかった人には相変わらず退屈な内容である。
好きな人にとってのパズルとしての楽しさは相変わらずだが、あまり過度な期待はしない方がいいだろう。