テニスの王子様 最強チームを結成せよ!

【てにすのおうじさま さいきょうちーむをけっせいせよ!】

ジャンル スポーツ(テニス)
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテインメントジャパン
発売日 2004年9月16日
定価 7,140円(税5%込)
プレイ人数 1~2人(ボウリングモードのみ4人)
レーティング CERO:全年齢対象
廉価版 コナミ殿堂セレクション:2005年6月30日/1,800円
判定 良作
ポイント テニプリの非恋愛ゲー最高峰
まさかのK.O.勝利実装
テニスの王子様 ゲームリンク


概要

原作の『テニスの王子様』は、『週刊少年ジャンプ』で連載されていた*1テニス漫画。登場人物達が繰り出す奇想天外な技の応酬は「テニス」ならぬ「テニ」と評されることも。

『テニスの王子様』のゲームでは、いわゆる乙女ゲーと呼ばれる女性向けの恋愛ゲームがよく知られているが、そうではないものも存在する。
そのうちの一つがこの作品であり、同社発売の『テニスの王子様 Smash Hit!』、およびその続編にあたる『2』(以後SH1・SH2と表記)の発展系として育成シミュレーション要素を前面に押し出したものである。
アクションとしてのテニス部分は完成度が高く、必殺技の再現度も十二分。『SH2』にてプレイできたボウリングモードも継続している。

シナリオはシンプルで、「関東ジュニアオープン」に出場し、優勝することを目標とする。
学校の垣根を越えたメンバー選定ができ、好きなキャラばかり集めたり、面白そうな組み合わせを考えてみたりなど自由なチーム作りが可能。


特徴

  • 50名以上の登場キャラクターたち
    • すべて原作キャラクターで、オリジナルキャラは存在しない。一部隠しキャラクターを除き、青学、不動峰、山吹、聖ルドルフ、氷帝、六角、立海大付属から参戦。
      • SHシリーズの登場キャラクターの大部分が継続して登場し、銀華中の福士や部長の幸村を始めとした立海大付属中の一部キャラクターなどは初参戦。
      • 一方、不動峰中の桜井や緑山中の季楽などのように必殺技は残ったがキャラクターとしてはリストラの憂き目にあう事例も。
    • ただ、開発・発売時期の原作は関東大会の途中であったために、人格や設定の定まっていないキャラも多少いる(立海大付属中のキャラに顕著)。
    • 余談だが、竜崎桜乃や橘杏のヒロイン勢も『SH2』から継続して(隠しキャラクターではあるものの)プレイアブルである。
  • 自由なメンバー編成
    • まず1人、リーダーとなるキャラクターを選ぶ。その後は日曜日に選手の勧誘や練習試合などを含めた複数のコマンドから1つを選択し、それ以外の日はランダムイベントを除き数種類ある練習から1人1つを選び、その週の練習とするという形である。
      • 通常の練習の中には必殺技を選択し習得できるものがあり、習得にステータスなどの制限がかかった技もあるものの、一部のキャラクター固有技などを除く大部分が習得可能。
      • 各キャラクターには、リーダーポイントおよびリーダー技というものがそれぞれ設定されており、それによってステータス以外にも差別化が図られている。
    • 「関東ジュニアオープン」では1チームでシングルス2つとダブルス1つを戦うため、リーダーを含めて最低でも4人集める必要があり、結果として選手の組み合わせ数は非常に多い。
      • 選手の勧誘が成功するかどうかは、リーダーのステータスや対象との友好度などにも左右はされるものの、勧誘することそのものには制限はない。
      • 越前リョーマの父である南次郎や、氷帝監督の榊、加えて病気療養中でコートに復帰できていない幸村はリーダーとしてしか大会に参加できない*2
  • テニス部分の操作について
    • 大本のシステムは『SH1』『SH2』のものがベースになっている。
    • スティックで移動し、○ボタンでテクニカルショット、×ボタンでパワーショットを放つ仕組みとなっている。サービスの場合は○×どちらでもトスを上げられ、種類はショット時のボタンに依存する。
      • スピンをかけたり、フラットに打ったりということは自動的に行われ、自ら意図して打つことはできない。また、テクニカルショットの場合はスティックを手前側に引きながら打つとドロップショットになり、逆に奥へ押し込みながらだとロブとなる。
    • キャラクターにはフットワーク(FTW)、パワー(POW)、スタミナ(STA)、メンタル(MTL)、テクニック(TEC)の5つのステータスが存在し、それぞれ移動速度、パワーショットの威力と速度、体力ゲージの多さ、気力ゲージの溜まりやすさと気力レベルの上限、テクニカルショットの切れに影響する。
      • 気力レベルは5段階あり、特殊な条件を満たさない限りレベル1から始まる。レベルに応じて気力ゲージの溜まりが早くなるため、これを早く上げることが重要となる。
        上げるためには必殺技でポイントを取るか、ゲームのキープやブレイクをサービス、リターン、スマッシュのいずれかで行うことで可能。また、特定の技や威力の高いボディショットを食らうと下がることもある。
    • 気力ゲージが必殺技ごとに設定された一定量に溜まると、キャラクターの周りの地面が赤くor青く色づき、それぞれR1+○ボタンorR1+×ボタンで必殺技を発動可能。
      タイミングは技ごとに違い、インターバル系、ディフェンス系、サーブ系、リターン系、スマッシュ系、ショット系に大別される。
      • このうちディフェンス系は、ショットを打ってから次のショット体勢に入るまでに発動するものであり、これを相手に発動されたことで自分のショット系必殺技のタイミングをずらされて発動できなかった、ということもままある。
    • このように、簡単な操作でさまざまなことができ、テニスとしてもテニヌとしてもしっかりとした作りとなっている。
      • ただ、ミスは必殺技の影響か体力が切れるか無理な体勢で打たない限りほとんどないので、多少大味な感も否めない。
    • 試合時には自分で操作することもできるが、CPUに操作を任せて監督に徹することもできる。

K.O.勝利

  • 体力ゲージが皆無の状態でボディショットを食らうと、K.O.と表示され、その時点で食らったほうが負けて試合が決するという機能が実装された。テニスゲームとしては異例だが、歴とした原作再現である*3
    • その際に、暗転こそしているがスローモーションで選手が宙に浮き、受け身も取れずに落ちて倒れこむという衝撃的な映像が流れる。
      • また、試合終了後の画面では、シングルスの場合は選手が倒れたままだが、ダブルスの場合だと担架で運ばれる様子が写される。
    • このため、ドライブAやナパームなどといった相手へ目がけて放つ必殺技の重要度が上がった。
      • デフォルトでは、原作の進行によりナックルサーブを習得し、もともとスマッシュ技として前述のナパームを覚えている切原だと狙いやすい。

評価点

  • 育成シミュレーションとしての出来のよさ
    • メンバーの育成方針や組み合わせの幅が非常に広いため、例えば弱い選手を誰も太刀打ちできないようなステータスまで引き上げたり、共通点を持ったキャラクターでそろえてみたり、といったことが可能。
  • 大量のイベント
    • 日曜日に遊びに行くコマンドを用いた場合も様々なイベントが待ち受けており、特定の条件を満たせば原作の手塚のように古傷を治療するため九州行きとなりチームを離脱、といったことももちろんあるが、特定の条件を持たないランダムイベントも多い。
      • 例としては、練習用具が足りないからメンバーに買い出しに行かせる(自分で行くことも可能)、練習をさぼる、などといったそれ自体には無理のないものである。
        しかしそれを誰もが行うため、前者であればパシリと化す跡部になったり、後者であれば海堂が練習をさぼったり、と原作にはないシチュエーションが楽しめる。
        これをキャラクターの新しい一面が見れたと好意的にとらえるか、それともキャラ崩壊に堕したと見るかは意見が分かれそうではあるが。
  • 豊富なボイス量
    • 育成シミュレーション中の一部ADVパートに声が入っていないためにフルボイスとまでは言えないが、上述のイベント群を含めキャストの熱演が光る。
    • テニス部分ではすべて声ありの上、一部の必殺技では各キャラクターそれぞれにボイスが収録されたものも複数存在する。
      • 特に、発動時一部を除いて1人1人違うダジャレを喋る「スマッシュしまっす」や、発動側と被発動側それぞれボイスを収録した「レギュラー外し」*4などは笑わせに来ているレベル。
      • キャラクターの組み合わせによっては試合開始時と終了時の掛け合いが変わることも。

難点

  • いろいろな不親切さ
    • 初期状態でタイトル画面から選べるのは「NEW GAME」、「LOAD GAME」、「SAVE」、「OPTION」の4種類。何も知らなければOPTION以外はそれぞれ何なんだと言いたくなる。
      • また、チュートリアルも存在しない。説明書にきちんと操作方法などは書いてあるため、「そちらを読め」という話ではあるが。
    • 一度クリアすると「BONUS」が開放され、エキシビションモードとギャラリーとしてそれまでに出現したスチルの閲覧ができる。また、条件を満たしていればボウリングモードも開放される。
      • イベントでボウリングをやらないと出現しないボウリングモードはともかく、対戦モードであるエキシビションモードが1度クリアしないとできないのは厳しい。
  • 3Dグラフィックの質
    • 試合時、およびボウリングモード時でしか使わないが、画質があまりよくない。
      • 特に試合時の場合、ディフェンス系必殺技を除く技はアップで写されることが多く、余計目についてしまう。
  • テニス部分でメンタルゲーに陥りがち
    • ショット技に球までのホーミング機能がついているため、発動さえしてしまえばどんなにポイントを決められそうでも追いついてラリーを継続してしまえる。
    • たとえば、サーブを放った際に球足の速いリターン技を相手に発動されて追いつけそうにない場所に打たれても、一歩踏み出して自分のショット技を発動してカバーする、という芸当もできる。
    • このような仕様のため、メンタルを上げて気力ゲージの上がる速度を速め、さっさと必殺技を決めて気力レベルを上げることが勝利する早道である。
    • また、覚醒というアビリティが存在し、気力レベルが最大の5のときに、気力ゲージを消費せずに必殺技を使える。メンタルが最高値のSSでないと気力レベル5にはならない上、そこまで上がっているのなら覚醒に頼る必要性もあまりないのだが。
      • 両者が覚醒を持っていた場合、上述の喩えも変わってくる。サービス技を放ったらリターン技で返され、それをショット技でカバーし、相手もショット技で応酬する、というまさしくテニヌのような展開になる。
      • ちなみに、デフォルトだとリョーマが持っている上、特定イベントを起こせば誰でも習得可能。前述のとおりメンタルSSにしない限り死にスキルだが。
    • そのため「テニスしたくてもテニヌになってしまった」ということも。
  • AIの出来の差が激しい
    • 原作で強かった一部キャラクターのAIは強化されており、CPU同士なら多少のステータスや技の差であれば跳ね返せてしまうほど。
    • そのため簡単には日吉よろしく下剋上、といかないのが現状。自分で操作して試合をするならまだしも、それ以外の楽しみ方もあるだけに口惜しい部分ではある。
  • 選ぶコマンドに偏りが出がち
    • 育成中、最高値のSSに届いたステータスは、練習によって経験値の減少が起こらない。
    • 経験値の減少が起こる練習は、走り込み、筋トレ、ダッシュの3種類である。走り込みはFTWとPOWが微増しSTAとMTLが大幅増する代わりにTECが微減するもので、筋トレはPOWが大幅増する代わりにFTWとTECが微減するもので、ダッシュはFTWが大幅増する代わりにPOWとTECが微減するものである。
      • 結果、ステータスを高めたいだけであれば、TECをSSにしてからそれ以外のすべてのステータスが上昇する走り込みを行う、という理論が出来上がった。筋トレやダッシュも場合に応じて使うが。
      • 逆に、TECが低いキャラクターはTECを捨ててそれらの練習を行う、という方法もある。
    • そもそも、練習で経験値の減少が起こるものすべてにTECが絡んでいるのもどうなのか。とはいえ他のステータスが減る練習というのも想像しにくいが……。
    • また、日曜日のコマンドにおいては、全員の友情度から産出される総合チーム力を高めるために、「遊びに行く」を選ぶのが一番効率が良い*5。練習試合や特定キャラクター1人の能力を高める特別練習などを使うかどうかが分かれる程度。
    • 往々にしてこの手の育成理論はプレイのマンネリ化を招きやすいものではあるが、タイトルで「最強チームを結成せよ」と謳う本作であるのに、「それでいいのか」と思わなくもない。
  • リーダー技の調整不足
    • それぞれのキャラクターは、リーダーに選択する事でリーダー技と呼ばれる試合中の特技とは違った特技が使用出来る。
      • これらは使用する事で試合を有利に運ぶ事が出来るのだが、強弱バランスや使用条件が少し厳しめ。
      • 特にチートと名高いのが仁王のリーダー技で、なんとこの特技、発動した時点で相手チームと自チームの獲得ゲーム数を入れ替えてしまう。
      • 例えこちらが後1ゲーム取られれば負けが決定してしまう様な状況でもこれを発動さえすれば、逆にこちらが王手になる。余りに理不尽である。
    • またリーダー技はリーダーが選手として出ている試合では使えない。
      • 当たり前といえば当たり前かもしれないが、一丸の想いを始め、この制限によりリーダーに選んだキャラは試合に出し辛い事も。

総評

自由度が高く骨太なシミュレーションと、平易ながら単純ではなく原作再現度の高いテニスアクションが組み合わさった一作。
粗こそあるものの、それを上回る魅力を持っていることも確かであり、今なおプレイ動画が投稿され続けている。
現在は続編の連載もあること、また販売本数の関係か多少プレミア値がついていることなどから、発売から10年を超えた今でも続編を求める声が存在する良作である。

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最終更新:2021年06月16日 02:49

*1 現在『ジャンプSQ.』で続編『新テニスの王子様』が連載中。

*2 南次郎と榊は育成も不可能。大人なので致し方ないが。

*3 全国大会で四天宝寺中の石田銀が青学の河村に波動球を直撃させて観客席に叩き込むなど、連載が続くにつれ現実離れした描写が増えていった。こうした面も「テニヌ」と呼ばれる所以の一つである。

*4 原作で榊がレギュラーを滝→宍戸に変えたことが由来。なんと他校キャラにも使える。

*5 余談だが、隠しキャラクターの1人である榊の出現条件が「氷帝キャラクターをメンバーに入れたうえで8週連続で遊ぶ」というものである。