planetarian ~ちいさなほしのゆめ~

【ぷらねたりあん ちいさなほしのゆめ】

ジャンル キネティックノベル


対応機種 Windows 98~XP
プレイステーション2
プレイステーション・ポータブル
Nintendo Switch*1
発売・開発元 【Win】Key
【PS2/PSP/Switch】プロトタイプ
発売日*2 【Win】先行販売版:2004年11月29日
パッケージ版:2006年4月28日
【PS2】2006年8月24日
【PSP】2009年2月28日
【PSPチャリティー版】2011年5月12日
【Switch】2019年1月31日
定価 【Win 先行販売版】1,365円
【Win パッケージ版/PS2】2,940円
【PSP】3,000円
【Switch】1,100円(全て税込)
レーティング 【Win】ソフ倫:全年齢対象
【PS2/PSP/Switch】CERO:A(全年齢対象)
配信 【Win】HD版:2020年4月17日/1,100円
判定 なし
Key作品


概要

ADVのジャンルでは業界大手のメーカーである株式会社ビジュアルアーツのブランド「Key」の第4作となるデジタルノベル。
キネティックノベル第1作でもある。キネティックノベルはADVから選択肢を排除したもので、より小説に近付いているがゲームならではの演出も生かしている。
ボリュームは少ないが、その分安価なので価格に見合うだけの価値はある。
シナリオの流れ自体は感動を重視する「Key」の作風から外れている訳では無いが、SF作品であることやロボットがヒロインなので「Key」として異色な作品でもある。


あらすじ

近未来、世界規模の戦争*3で使われた細菌兵器と熱核弾頭が原因で荒廃し、自律戦闘機械が跋扈するようになった世界が舞台。
更に陽が滅多に射さなくなり、有害な雨が降りやまなくなるという事態が10年続いている。
主人公は「屑屋」(くずや)と呼ばれている職業を営んでおり、過去の遺物*4を収集して取り引きすることで生計を立てている。
そんな生活の中で、世界に点在する廃墟の都市「封印都市」には近寄るなと過去に警告を受けていたが、そこに眠る物資の誘惑に負けて侵入した。
そして「封印都市」内で苦労しつつ迷いこんだ先がプラネタリウムであり、そこでプラネタリウムのコンパニオンロボット「ほしのゆめみ」と出会った。


キャラクター

  • 屑屋
    • 主人公と言える立ち位置だが名前は出ていない。「屑屋」は彼の生業、あるいはそれに従事している者への俗称。
    • 荒廃した世界を1人で生き抜いているので、非常にシニカル且つ冷徹な性格をしているが、ゆめみに付き合っているうちに考えが変わっていく。
      • そんな性格の彼がゆめみに付き合った理由は、元々自分の生き方や世界の有り様にうんざりしており、さらに「封印都市」内で同業者や自律戦闘機械に苦戦した結果、捨て鉢に近い気持ちでプラネタリウムに迷い込んだのが影響している。
    • 1人でも「屑屋」を続けてきただけあって腕はたち、複数の同業者や自律戦闘機械ともやりあえる知識と技量を持っている。
    • 雨が降り始める前は小さな子供だったので、戦前の平和な頃の物事については疎い。
  • ほしのゆめみ
    • プラネタリウムのコンパニオンロボットだが、自身でも壊れていると称しており、その際に故障個所を主人公に述べている。
    • ひたすら客を待ち続け、そして定期的にプラネタリウムの投影を開始しようとしている*5
      • ロボットだけあって人間にはない機能がついており、リボンの柄が変わったりイヤーユニットがホロスナップ*6・プリンタ・コネクタなどを兼ねている。
    • 行動規範は人工知能(AI)とも、よく出来た人口無能とも言うべきものになっている。
      • 基本的にはプログラムされた行動を繰り返すが、記憶能力とある程度の学習能力*7もある。しかし、人間ほどの柔軟性は無いので、杓子定規な受け答えをすることが多い*8
    • この30年間、一年に一週間(1年の52分の1)だけコンパニオン業務の時間中のみ稼動し、それ以外は充電のためにスリープするというサイクルで動いていた。
    • 彼女はプラネタリウムのスタッフに大切にされており、長く活動し続けていることや、コンパニオン業務以外の特異な行動に関してはその影響が大きい。
  • 老屑屋
    • 主人公と一年ほどコンビを組み、案内役を務めていた年老いた「屑屋」で、その時の主人公は護衛役を務めていた。
      • 故人であり、死因はブービートラップによるもの。
    • 主人公に対して「封印都市」の危険と魅力を語ったが、同時に「封印都市」「ロボット」について警告していた。

評価点

  • 俗に言う世紀末的な世界観とロボットを上手く使ったシナリオ。
    • 星空を見ることすらかなわない世界観のため、プラネタリウムの価値は高いとも低いとも言え、より印象的になっている。
    • お互いに争い合う人間や人間の手から離れた殺りく兵器ばかりの中、どこまでも人間のために尽くすゆめみに心を打たれやすい。
  • 曲数は少ないがBGMは高評価。
    • ちなみに戸越まごめ氏がほぼ全て(1曲のみ折戸伸治氏が作曲と編曲)編曲を担当しているが、原曲の6~7割はCharles Crozar Converse氏や宮沢賢治氏のもの。そのことの良し悪しはともかく、バリエーションを楽しむことが出来る。
      • 「星の世界」と「星めぐりの歌」は星に関する歌として、「慈しみ深き」*9は讃美歌として日本でも馴染みがある。
  • 原画担当がメカ少女の描写に定評のある駒都えーじ氏であり、価格を考慮しても少々CG数が少ない(ゆめみの立ち絵の種類は多め)が高評価。
    • シオマネキと呼ばれる兵器もしっかり描かれており、これも地味に高評価。
  • 前述しているが、内容量こそ少ないが1,365円という低価格だったので価格相応の価値は確実にある。

問題点

  • 結末の描写が少々打ち切りじみた感じになってしまっている。
    • この点は後述の書き下ろし小説で補足されている。この手の作品ではよくある「ゲームでちゃんとやってくれ」という話ではあるが。
  • 比較的現実的な描写を重視しているSF作品だが、設定や展開に穴があったり無理やり過ぎる部分が若干ある。
    • ある程度は仕方ないが、気になる人は気になる。
    • これも設定については後述の書き下ろし小説で、ある程度補足されている。

総評

  • AIR』のシナリオアシスタント、『CLANNAD』のことみシナリオを担当した涼元悠一氏がシナリオを担当しており、それらの作品と同じくシナリオの評価が高い。
  • 少なくともキネティックノベル版は価格相応の作品であり、癖も少ない。「Key」作品の中では知名度が若干低く、内容量も少ないが決して悪くない作品である。

余談

  • 本作の評価とは切り離しているが、パッケージ版には4つの短編からなる書き下ろし小説がついており、後にドラマCD化や一般販売されている。
    • 蛇足と批判する声もあるものの、本編の補足や完結編と言っても差し支えない内容で、これと本作を合わせると作品の完成度がより高くなる。
  • 本作発売後に色々あった模様で涼元氏はビジュアルアーツを退社し、しばらくした後にAQUAPLUSに入社した。
    • 涼元氏は『CLANNAD』の頃からライターとして高評価の一方で遅筆で有名*10であり、シナリオライターは辞めていないが、本作以後はあまり作品を残せていない。
      • 本作の書き下ろし小説はビジュアルアーツ退社後に発売されたものである。
  • 本作のPSPパッケージ版(初回生産分)は東北地方太平洋沖地震被災地チャリティー版であり、その流通・製造コストを除いて全て日本赤十字社に寄付したことで話題になった。
    • それ以前からイベント会場限定販売品としてパッケージが売られてはいる。
  • Switch版はKey初の任天堂機種への移植である。

その後の展開

  • 発売後は長らく小説やドラマCDなど細々とした展開のみで隠れた名作的な扱いだったが、2016年4月1日に12年越しにアニメ化が発表。
    • 同年7月から8月にかけて全5話のwebアニメとして配信された。
      • その後、9月3日にWebアニメ版を再構成し、小説版のエピソードを映像化した劇場版『planetarian ~星の人~』が公開。
      • さらに2017年3月よりwebアニメ版をプラネタリウムのコンテンツとして再構成した作品『planetarian ~ちいさなほしのゆめ~プラネタリウム特別版』が各地のプラネタリウム施設で公開された。
    • 2017年にはクラウドファンディングでゆめみの星空解説のシーンをVRで映像化した作品が製作された。
    • 原作15周年の2019年には、Keyにより前日譚にあたるエピソード『雪圏球』のOVA化のためのクラウドファンディングが行われた。
      • 最終的に目標金額を大幅に上回る7798万円もの資金を集め、2021年8月25日に『planetarian ~雪圏球~』のタイトルで発売。
    • 2021年から22年にかけて2クールに分けて放送されたSDになったKeyのキャラクター達のクロスオーバーアニメ『かぎなど』は、ほしのゆめみが解説するプラネタリウム内の上映作品という設定。ゆめみもナレーションの他、最終回のエピローグで屑屋と一緒に等身大の姿で登場する。
      • ほしのゆめみ役のすずきけいこ氏は本作以外にもKey作品に6役も出演していて、8話では歴代CVすずきけいこのキャラが総登場し、すずきけいこ劇場を繰り広げるネタがある。
  • bilibiliが配信していたソーシャルゲーム『アークオーダー』で、2020年5月27日から6月10日にかけて本作とのコラボイベント「プラネタリウム館通信」が開催され、イベント報酬としてユニット「UR誓霊・ほしのゆめみ」が獲得出来た。お前戦えたのかよ

キネティックノベルについて

  • 売上など
    • 『planetarian ~ちいさなほしのゆめ~』初回版はキネティックノベルとしての販売のみだったため、ダウンロード販売を嫌ったり利用出来ない層からは特に批判が多かった。
      • さらに後に発売されたパッケージ版や移植版だと声がついたり特典付きだったりするものの、価格が跳ね上がっているので割高と感じる人も多い。
      • これは声や特典の影響もあるがキネティックノベルという形式が、ダウンロード販売を主流にすることで流通コストを抑える工夫をしているためではある。
    • パッケージ版の要望意見が多かった・発売当初の売り上げが良くなかったという話が製作者サイドからも出ている。売り上げと作品の評価は関係ないが販売方法には問題があったと言えるだろう。
  • 本作以降もビジュアルアーツ系列からキネティックノベルがぽつぽつと発売された。
    • Keyの新作キネティックノベルは2016年の『Harmonia』まで間が開いた。
  • 2021年9月3日にキネティックノベル『planetarian -雪圏球-』が発売された。
    • OVA化プロジェクトのSGに設定されていたもので前日譚である。
    • 同日にHD版やドラマCDを収録した『planetarian Ultimate Edition』も発売された。
  • Key開発日誌では、『planetarian』『Harmonia』『終のステラ』がキネティックノベルのロボット3部作と位置付けられている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • Key
  • ビジュアルノベル
  • プロトタイプ

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最終更新:2024年03月19日 08:01

*1 ダウンロード専売

*2 代表的なバージョンのみに留める。

*3 本作開始時点から約30年前に勃発。

*4 兵器から食料まで幅広い。

*5 ただし、投影機が壊れているので開始できない。

*6 ホログラフィーで映像を撮影・録画する装置。加えてスピーカーも付随している。

*7 描写としてはあくまで機械的なもので、逸脱した技術の印象は受けない。

*8 プラネタリウムの客としての対応なら人間に限りなく近い受け答えが出来ているが、皮肉や記録していない物事など、外部データベースに頼る必要のあるものには対応出来ていない。

*9 余談だが、「慈しみ深き」と「星の世界」はメロディーが酷似している。これは関連している曲だが成り立ちに違いがある。

*10 遅筆ではなく理想が高いのかもしれないが、『CLANNAD』サブキャラのシナリオ(複数)を書けなかった等の話がある。