智代アフター ~It's a Wonderful Life~

【ともよあふたー いっつ あ わんだふるらいふ】

ジャンル 恋愛アドベンチャー



対応機種 Windows 98~XP
プレイステーション2
プレイステーション・ポータブル
Xbox 360
プレイステーション3
Nintendo Switch
発売・開発元 【Win】Key
【その他】プロトタイプ
発売日*1 【Win】2005年11月25日
【Win(Perfect Edition)】2014年9月26日
【PS2】2007年1月25日
【PSP】2009年3月19日
【360】2010年9月22日
【PS3】2012年7月29日
【Switch】2020年9月10日
定価 【Win】5,800円
レーティング Win アダルトゲーム
全年齢対象(メモリアルエディション)
CS版 CERO:B(12才以上対象)
判定 良作
Key作品


概要

ADVのジャンルでは業界大手のメーカーである株式会社ビジュアルアーツのブランド「Key」の第5作となる恋愛アドベンチャーゲーム。
CLANNAD』の智代エンディング後が舞台の作品であるため、ユーザーからファンディスクの様な扱いをされている場合もあるが、
本編の補足・補完や智代といちゃいちゃすることが主題の作品ではない*2
『CLANNAD』をプレイしておくとキャラの背景が分かりやすくなるが、『CLANNAD』の裏作品として描かれており、後日談の作品としては異色の立ち位置にある。

企画兼メインシナリオライターの麻枝准氏が批判も覚悟の上で出した作品なだけあり、その衝撃的な結末には賛否が分かれている。
しかし、裏を返せばそれだけに非常にメッセージ性の強い作品であり、結末に賛否あれど、作品そのものの総合的な完成度は極めて高い。

クリア後に現れるある選択肢を選ぶと、本格的なSRPG『D&T』がプレイ可能になる。これは本編とは別に好評を博している。


あらすじ

主人公の岡崎朋也は卒業して働き始めたのを機に一人暮らしを始めた。
恋人である坂上智代やその弟の坂上鷹文との仲も良好で、慎ましくも楽しく過ごしていた。
そんな中、鷹文が坂上家の父自身も存在を知らない、隠し子の三島ともを連れてくる。
そして鷹文の元カノである河南子も転がりこんできて、問題もあるがにぎやかで素晴らしい日々が始まる。


キャラクター

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  • 岡崎 朋也
    • 高校卒業して働き始めたばかりの社会人で、廃品回収会社に勤めている。
    • 口が悪い上に遠慮しない物言いで、そのことがシリアス・ギャグ・ツッコミなどのセリフ回しを印象的にしている。
    • 『CLANNAD』と比較すると、智代エンディング後なので気力が充実しており、意思もかなり強くなっている。
      • ただし、あくまで運動神経が優れている程度の常人なのは変わらず、利き腕が肩より上には上がらないので四苦八苦することもある。また、選択肢によっては途中で諦めてしまう。
      • 『CLANNAD』での後悔から常日頃から智代を支えられるかどうか考えており、そのために困難があってもくじけずに立ち向かっていく。
  • 坂上 智代
    • 朋也の恋人で、高校三年生でありながら通い妻みたいな状態になっている。
      • しかし学業との両立を完全に成立させていて成績は維持している。
    • 頭脳明晰で運動神経に至っては人外の域。喧嘩も伝説となっている程強いのだが、今は穏やかになっているので基本的には暴力をふるわない。
    • 性格も概ね非の打ちどころが無いが、非常に一途で好きな人にはかなり盲目的。
      • 『CLANNAD』と比較すると、智代エンディング後なので若干精神の弱さが目立っている*3
    • 子供好きでともに対してかなりの溺愛ぶりを見せる。
  • 坂上 鷹文
    • 智代の弟で朋也や智代との仲は良好。
    • PCの扱いに長けている上に頭も良く、今はインターネットを通じて外国人と共にOSを作っている。
    • 智代程ではないが運動神経も抜群。元はスポーツをしていて運動神経が良いと自負している朋也は一方的に張り合うことが多い。
    • 性格はおだやかな方だが割と我を通すことが多く、また、基本的に冷静。その一方で頑固なところもある。
      • わけあって河南子にだけは冷たい態度を取る。
    • 過去荒れていた智代や家族の改心は、彼が崩壊寸前の家庭を自分を犠牲にしてでも繋ぎ止めるために車道に飛び出たことがきっかけ。
      • この時の怪我が原因で去年はずっと歩けていなかった。その為、運動神経は良くても足の筋力や体力は全盛期よりかなり落ちてしまっている。
      • ともを連れて来たのはともと坂上家を守る一環で、坂上家の前に捨てられていた彼女を放っておくと全員が傷つく事態になっていたため。
    • 河南子がギャグキャラなら鷹文はいじられ系のキャラで、立ち絵を幅広くいじられている。
  • 河南子
    • 鷹文を追ってきた、鷹文の元カノ。
    • 口も態度も頭も非常に悪い上にプライドも簡単に捨てる、女の子とは思えない程の汚れキャラが売りだがムードメーカーでもある。
      • 基本的におちゃらけてはいるが義理堅く、朋也を度々助けてくれたりもする。
    • よく冗談を言っては学校ではどっかんどっかんいわせているらしい*4。しかし、かなり深刻な場面で河南子が冗談で人を笑わせた場面が一度も無いと朋也に指摘されて二重にショックを受けた*5
    • 鷹文との件や家庭で納得いかないことがあったために「ずっと続いていく愛」に懐疑的…どころか憎んでいる節すらあり、この件に関してはマジになる。
  • 三島 とも
    • 智代と鷹文の異母兄妹で幼稚園児。
    • 純真無垢な子供で色々なことをすぐ信じる。難儀な境遇ではあるが、彼女自身は年齢相応の普通の子である。
    • 仲が悪い=キスをしなくなると捉えているため、朋也と智代にキスをするようせがむことが多い。
  • 三島 侑子
    • 坂上家の父の元愛人であり、ともの母親。
    • 精神的に不安定なもののともに愛情があるのは確か。しかし、とある理由からともを坂上家の前に捨てて失踪している。
  • 岡崎 直幸
    • 朋也の父だが、喧嘩から朋也の肩を誤って壊してしまってからは他人行儀な状態が続いている。
    • 本作では朋也が一人暮らしを始めた関係で、『CLANNAD』共通ルートの時よりいっそう縁遠くなっている。
    • 『CLANNAD』で智代と初めて付き合い始めた時に、智代とも軽く面識がある。
  • 親方
    • 朋也の勤め先の親方で、2人だけの会社なので働き始めたばかりの朋也を鍛えながら仕事をしている。立ち絵や一枚絵などはない。
    • 寡黙で職人がたきの人物だが理解のある人で、社会人として無茶な頼みなども聞いてくれる。また、彼から教わった事は意外な所で役立つことになる。

評価点

  • メッセージ性の強いシナリオ
    • 本作はライターの麻枝氏が「人生」をとことん追求し、「永遠の愛」や「素晴らしい人生」を見事に描ききっている。
    • 作中の些細な出来事も繋がっていて、まさに「人生」と言うべき内容になっている。
      • 日々の生活の様子も愉快な上に現実的な描写になっており、そちらも評価が高い。
    • 朋也は何度も難しい問題にぶつかるが、これを根性で解決していく。頑張っていることがよく伝わり、読んでいて気持ちのよい文章になっている。
  • 音楽
    • BGMとしては当然として、単独で聴いても評価が非常に高い曲が揃っている。
      • 「hope」「dear old home」「old summer days」辺りは特に人気が高い。KSLのアルバム『Love Song』から「love song」の声無しのアレンジ版も使われており、こちらも人気が高い。
    • 『AIR』の「鳥の詩」を意識しつつ本作を表現しているOP曲「Light colors」や本作のテーマを歌で強烈に表現したED曲「Life is like a Melody」とイメージソング「hope -look up when i walk- 」も絶賛。
    • 初回版には歌のフルバージョン含めて全曲収録されているオリジナルサウンドトラックがついており、これだけでも買う価値があるとよく言われていた(後に一般発売)。
  • 音声
    • 「Key」としては初の初回からの声付き作品。全体的に高評価だが特に鷹文と河南子については1人2役*6を見事に演じ切っており、後から知って驚く人も多い。
    • ちなみに智代・直幸・D&Tの朋也は、後に移植で声がついた『CLANNAD』やそのアニメ版の声優とは違う。また、本作の移植に際して大人の事情(名義違いなど)や声優変更等もある。
    • PC版(PERFECT EDITION含む)とPS2移植版には朋也のボイスはないが、PSP移植版以降は朋也にもボイスがついた。
      • 朋也のボイスを担当したのは、アニメ版『CLANNAD』でも朋也を演じた中村悠一氏。それに伴い、D&Tでのボイスも同氏によるものに変更された。
  • SRPG『D&T』(ダンジョン・アンド・タカフミズ)
    • 作中内で河南子が鷹文達に作らせたゲームと言う設定で、シナリオは河南子が担当。立ち絵などは本作の朋也達の立ち絵が元になっていて格好は「すげぇリラックスした普段着」である。
    • 基本的にゆるいノリでありながら意外性のあるものになっていて、これのシナリオも割と評価されている。
      • ただゆるいだけでなく、ネタを多く入れており、特に杏仁豆腐をここまでプッシュ(おかしな方向性だが)したゲームはそうそうない。また、声付きであり、原作ネタからおかしなことまで台詞も幅広い。
    • 内容としては敵味方両方共に単純なAI(手動操作は出来ない)で戦うSRPGで、キャラ毎に速さの値に応じてターンがまわる*7
      • 戦闘前に配置・命令・装備・スキルなどを上手く組み合わせておき、戦闘後は入手したアイテムを限られた積載量でやりくりして攻略していくゲームになっている。
    • ユーザーが操作出来る部分は少なめだが、数多くのアイテムとレベル(レベルアップ時は手動でポイントを振る)と職業(条件が揃えばクラスチェンジ可能)、シビアなアイテム積載量などから割と幅広いプレイスタイルがある。
    • おまけとは言えない完成度になっており、何度も拠点に戻ることで育成やアイテム集めによるヌルプレイも可能だが、そういった稼ぎプレイをしない場合は手強い難易度になっている。
      • 普通は上手くやってもゲーム内時間5日程度かかる*8が、最短の3日クリア*9も可能。こういったやりこみプレイは運も絡むが、それ以上に戦略・戦術を考える必要があり、やり応えがある。
    • 本作は元々マウス操作前提で作られているため、マウスが使えない場合は少々プレイに面倒が生じる。
      • PS2版はUSBマウスが使用可能。
  • 作品の規模は大作とは言えないが、前述の『D&T』を含めるとそこらのフルプライス作品にも劣らぬ量にもかかわらず、ミドルプライスでフルサントラ(初回版)までついていたことも高評価。
  • 「Key」にしては割とエロい作品になっている。
    • 前半はシンプルにいちゃいちゃする様子を描いているのだが、後半は重要な意味をもつものや描写がある方が自然なものが多い。
    • また、エロではないが初回版はネタに関してもあまり自重しておらず、かなり危険なネタ*10が混ざっている。
  • 今までの「Key」にあった難解さ、抽象性が減少している。
    • 本作は同社の作品としては比較的コンパクトに収まっているせいか、一部の伏線の出し方を除けばひとまずわかりやすい作品になっている。
    • つまり、これより前の作品にあった抽象的・やや想像力が求められるような内容は本作では比較的薄まっている。
  • 移植版では18禁シーンや危険なネタが削除された代わりに代替となるものを入れている。さらに初回版を補足しているシーンが多数増えている。
    • 追加シナリオ分は都乃河勇人氏が担当しており、氏にとって本作が「Key」初作品である。追加分は後述の賛否両論点を除けば基本的に好評。
+ ネタバレ要素。クリックで開閉
  • 時折キーボードをタイプしているような演出があるが、これは最初にタイプしている通り本作は昔話であり、いろいろなことで悩んでいる人に対して智代が自身と朋也の体験談を元に「人生の素晴らしさを伝えたい」「人生の宝物を探しにいこう」という話をインターネットを通して伝えている体裁となっている。
    • ちなみに、バッドエンドはこの描写と矛盾が生じる「たらればの話」であり、本作のテーマとも乖離した終わり方となる。
  • 『CLANNAD』では同じような体験と祖母との出会いがあってようやく朋也と直幸は和解できたが、本作は別の形で和解する。出番こそ少ないが直幸が変わらず朋也を愛している具体的な行動も描かれ、これもまた評価が高い。
    • 麻枝氏は直幸との和解は智代とでなければ書けなかったと答えており、これが本作の制作動機*11の1つでもあると思われる。

賛否両論点

  • 詳細は重大なネタバレとなるので後述するが、衝撃的なシナリオなので賛否両論。
    • AIR』でもそうだったが、本作は発売後の批判がそれ以上に目立っていた。
  • 原画が『CLANNAD』の樋上いたる氏からフミオ氏に変更された。
    • フミオ氏の絵のクオリティに問題はないが、やはり原作から原画家が変更された事には抵抗のあるファンもいた。
  • 前作の『CLANNAD』が全年齢対象なのに対し、本作はR18指定なので、プレイヤーの間口がやや狭まった感がある。
    • ただし後にCS版が発売されているうえ、発売までの期間も他と比較して決して長くはない*12。後述するがCS版はシナリオが加筆されている。
    • 本作には18禁要素にも客寄せとは言えない作品的な意図があるため、「性的描写がカットされたCS版では本作の味は出せていない」という意見もある。後にCS版の追加要素などを含めたコンプリートバージョンが登場したため、この点の不満は実質解消されたと言える。
  • 『D&T』は比較的難しいSRPGなので、上手くクリア出来ないという人もそれなりにいる*13
    • 基本的に好評ではあるものの、シナリオが気になったりコンプしたい人にとって難易度などを批判される場合がある。
  • 内容量がやや少なめ
    • 最低50時間はかかると言われる『CLANNAD』に対し、本作は早ければ半日から1日集中すれば消化できる内容量である。なお、前者は声無しなのに対しこちらはボイスをしっかり聞いたうえでの時間。
      • ただし、『CLANNAD』は化け物や超大作と言っても過言ではない内容量であることと、逆に本作は価格をこれまでの作品より抑えており、内容量も価格相応は確実にあるので、批判されるようなことではない。
+ 重度のネタバレ要素があるので未プレイの方は注意。クリックで開閉
  • 終盤、朋也は突然脳血腫という重い病気にかかってしまい、記憶が中学卒業時点に戻った上に、1週間毎に記憶がリセットされる様になる。
    • しかも、朋也とユーザーはそれが3年間続いていることをしばらく経って知る。その後智代と結婚し、最後は脳血腫を治すための手術に臨んだが半分成功半分失敗し、記憶を取り戻したもののしばらくした後に病状が悪化し亡くなってしまう。
    • これらは「ずっと続いていく愛」や「もし記憶が無くなっても(以下略)」や頭部を複数回負傷するなど何度も伏線が張られているが、それでも衝撃を受けたユーザーが数多かった*14
      • ちなみに記憶リセットに至るまで頑張った過程や智代との最後のやりとりも皆ひっくるめて、「It's a Wonderful Life」で有り何一つ不要な要素のないものである。
      • また、朋也の最期の言葉である「…ありがとう…おまえのおかげでいい人生だった」という言葉に様々なものが集約されている作品でもあり、智代のそれからのことも含めて『AIR』で描いたハッピーエンドの完成系とも言える。
    • 移植版での追加シナリオでは脳血腫の発症に関する詳細な補足がされており、初回版より自然に没入しやすくなっている。
  • なお、本作のバッドエンドは3つ存在するが、この様な事態にならず、内2つではともと暮らし続けるのでむしろハッピーエンドでは? という見方もある。
    • しかしこれは決してハッピーエンドではなく、朋也も智代も辛いことから逃げているだけであり、智代に至ってはともの面倒を見るために学校にも行かなくなってしまう。
    • さらに鷹文や河南子とも疎遠になってしまうという終わり方である。母親の元に戻りたいという、ともの気持ちも無視してしまっている。
      • 上述の通り演出と矛盾しているのもそうだが、2人で歩き続けられたのは朋也やともが頑張って智代もそれに触発された結果*15であり、さらに周囲との関わりも薄れる*16のもあって、似たような困難(記憶リセットもだが、とも親子の様な事情でも)があれば朋也・智代、それにともが離れ離れになったり忘れようとするのは想像に難くない。つまり、「永遠の愛」や「素晴らしい人生」とは程遠い。
      • これはバッドエンド時に朋也自身も似たようなこと(誰も支えられない)を考えていたり、困難に対して一度でも選択肢を間違えるとバッドエンドに突入することからも窺える。
    • ちなみに、1つはどう捉えてもバッドエンドと言える終わり方。
  • 移植版は最後の結末がボカされており、朋也の生死が曖昧な表現になっている。この部分が最大の批判部分なのも確かだが、特に初回版からのファンにとっては極めて重要なシーンなので改変への否定意見も多く、激しく賛否両論。
    • 移植版製作の際、追加シナリオを担当することになった都乃河氏は、オリジナル版の「朋也の死」という結末に関して多くのユーザーから相当な批判を浴びせられたことを考慮し、朋也が無事に生存して智代と幸せに暮らすという、いわゆる「真のハッピーエンド」を作ることを画策していた。
    • しかしそれを知らされた麻枝氏は激怒し、「朋也の病死という結末を変えることは絶対に許さない」と都乃河氏に通告*17。それに反抗した都乃河氏と怒鳴り合いの衝突になったとされている。
      • その結果、オブラートに包まれた感じにはなったが、初回版を考慮した決しておざなりな追加ではない。良いか悪いかは別として間口は広がっている。
    • 他にも最後の18禁シーンは特に評価が高いため、これは基本的に残念な点。しかし、移植するにあたって仕方ない部分なので、初回版との比較はあっても変更への否定意見は少ない。
    • 都乃河氏は当時はまだ新人のライターだったにもかかわらず、自分に対して高圧的な態度で接してきた大御所の麻枝氏に対して一歩も引かず、自分の意見を貫き通したのである。これはもう凄いとしか言いようがない。
  • 『CLANNAD』の設定から朋也が幻想世界にひっぱられて早死にする運命、あるいは本作は『CLANNAD』のおまけみたいなものでは?という批判がある。
    • これは的外れな批判であり、関係ない*18。概要にも書いているが、作品として伝えたかったことは『CLANNAD』から引き離して捉えるべきである。
    • ただ、メタ的な観点から言うと「人生」を描きたかった都合で、最後まで描写する必要はある。これら根本的なことや手法をメタ的に批判したいのならそれは止む無しだろう。

問題点

  • 移植版の「D&T」のインターフェイスについて
    • 元々「D&T」は全ての操作をマウスで行うことを前提とした作品でありながら、家庭用に移植した際にパットでの操作に最適化させること無く、全くそのままの状態で移植されてしまっている。
    • そのためパットで遊ぶ際は操作性が劣悪であり、かなりストレスを感じる仕様となってしまっている。この辺は家庭用のユーザーに対して配慮をして欲しかった所。
    • 別売りのUSBマウスを使用可能だとの話が出ているようだが、本作のためだけにわざわざUSBマウスを別途購入させるというのはどうなのか。
    • また、一部で360版もマウスが使えないとの報告も寄せられている。これは360本体の設計上の仕様による物なのか、それともマウスの機種によって認識しなくなってしまうのかどうかは不明。
    • さらに、PSP版はそもそもUSBコネクタ自体が存在しないので、USBマウスの使用自体が不可能。操作性の悪いパットでの操作を余儀なくされてしまっている。

総評

『AIR』同様に賛否両論となった作品。ただシナリオが致命的に悪いための賛否両論というよりは、人によって合う合わないが大きいというところである。そこが大きな問題でもあるのだが。
本作の賛否両論は、良くも悪くも『CLANNAD』という派生元があることと『Kanon』や『CLANNAD』や『リトルバスターズ!』のハッピーエンドを肯定的に見ているファンから「智代と親父が可哀想すぎる」などと批判されるようになってしまったことに端を発していると言っても過言ではないだろう。
全年齢版の方が間口は広いので一般的にはこちらをお勧めするが、麻枝氏の熱烈なファンだと自認*19するなら初回版をプレイして損はない。
初回版は現在生産終了となっているが、一応18禁を含む内容自体は後に発売した『Perfect Edition』でプレイすることは可能*20

批判も多いが強烈なメッセージ性と、ベクトルがやや尖っているとはいえシナリオ自体の完成度も高く、数多のADVの中でも本作が一番好きという人も多い作品である。
誰彼構わずお勧め出来る作品ではないが、気になった方や覚悟がある方なら手に取ってみる価値は大いにあるだろう。


余談

  • 基本的には『CLANNAD』プレイ済みのユーザーがプレイしていると思われるが、中にはこの作品から始めたり、『CLANNAD』をアニメで満足して本作からやり始めるユーザーもいる。やや分かり辛いところもあるが基本的には問題無く楽しめる模様。
  • 『CLANNAD』等とは違い、積極的なメディア展開はなされていない。
    • TVアニメ版『CLANNAD』のDVD第8巻(及びBDボックス)のおまけとして『もうひとつの世界 智代編』が製作されたが、これは『CLANNAD』の智代ルート分に相応する話であり、本作との関係はない。
  • 麻枝氏は「批判は覚悟の上」と語っていたのだが、発売後に想定以上に批判の声が大きかった為、ショックを受けた麻枝氏が1~2ヶ月休職する騒ぎになってしまった。
    • 割と批判も受け止める姿勢で作品を作ってはいたのだが、こういう結果となってしまった。麻枝氏のメンタルに関する外野の意見は随分飛び交っていた。
    • 本人としては『AIR』でやったことと同じと言っており、実際にその通りなのだが*21、『AIR』と同じ様な批判のみならず『CLANNAD』の智代エンディング後が舞台ということを問題視する人も出てしまった。
    • 本作は元々『CLANNAD』制作後の私的な時間(メーカーの意向と思われる)で作っていた、同人的な作品だったものを途中で「Key」の作品とすることに決まった経緯がある。
      • 非常に実験的な作品となったのはこの経緯も関係しているが、納得いく「人が悲劇を乗り越える強さ*22」を追い求めたという点で氏のファンにとってはむしろ良かったと思われる。
  • 都乃河氏については前述しているが、フリーランスでシナリオライターをしている樫田レオ氏が「Key」の作品に関わったのも本作の初回版が初である。
    • 本作では具体的にどこを担当したかは触れられていないので評価しづらいが、後の作品にも関わっており、そちらでは都乃河氏と同様に評価は高い。
  • OP曲「Light colors」の空耳
    • 「プリズムを通した」という歌詞が「プリズム落とした」と間違えられやすい。
    • カラオケの字幕などで間違いに気付いたという報告がちらほら見られる。
  • 360版は発売日直前になって突然発売延期となり、予定よりも1年近く遅れてようやく発売された。
    • この件に関して移植を担当したプロトタイプは何の告知や弁明もしておらず、何故1年近くも発売が遅れたのか全く分かっていない。
    • PS3版は本来ならイベント限定販売の予定だったが、後にダウンロード版が販売された。
  • 2018年04月20日に『Perfect Edition』がWin用にダウンロード販売された。
    • KeyのPCエロゲのDL版は2013年10月11日の『リトルバスターズ!エクスタシー』『クドわふたー』が最後だったため、久々のDL販売であった。だが、現在は配信停止している。
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最終更新:2024年04月13日 23:37

*1 代表的なバージョンのみに留める。

*2 実際、公式でファンディスクという表現はされてはいない。

*3 『CLANNAD』ではこれと決めた目標があったのと、朋也と別れていた反動、本作で発生した問題等が影響している。

*4 例として、公約のないネタだけの演説で大ウケして生徒会長に当選し、その後職員会議で取り消しを喰らったらしい。

*5 河南子のやりとりはユーザーからは好評だが、素で笑わせているシーンは本当に一度もない。

*6 Win版は涼森ちさと氏、それ以外はすずきけいこ氏。

*7 例を挙げると、『タクティクスオウガ』のウェイトターンシステムに近い。

*8 参考までに、初回プレイでは9日前後はかかるケースが多いと思われる。

*9 2回強制的に拠点に戻るため。

*10 某マスコットキャラや有名人をそのまま言っていたりする。

*11 何故「朋也と智代」のその後の話で作品を作ろうと思ったのか?の問い。

*12 参考までに、『AIR』のCS版は約1年、『Kanon』は約1年3ヵ月、本作は1年2カ月。

*13 前述しているが、稼ぎプレイをすればかなりぬるくなるので困ったら稼げば良い。

*14 特に発売当時、前作のトゥルーエンド的な救済を期待した層は物凄い拒否反応を示していた。

*15 智代は本来精神的にはそこまで強くない。朋也も度々そう感じているし、過去荒れていたのも弱さ故である。一方の朋也も本来は人並み以上に弱いので、一度折れると弱くなる。

*16 これがどう大切かは、朋也が作中言っている「弱ければ、そいつの周りにいる人が助けてくれる」が表している。

*17 後にある程度は許せるようになったと語っている。

*18 製作者インタビューでもそれぞれが別個の人生である、という様な解答がされている。

*19 例えば『ONE』の長森シナリオや『AIR』や『リトルバスターズ!』の沙耶シナリオを素晴らしいものと感じられるなら、割と安心してお勧めできる。

*20 ただし、18禁に戻った影響か、一部に音声がない。

*21 『CLANNAD』では『AIR』でやりたいことやった反動として万人向けを目指した。

*22 『CLANNAD』では失くしたものを取り戻すと例えられた。