キャンペーン版 大戦略II

【きゃんぺーんばん だいせんりゃく つー】

ジャンル SLG
対応機種 PC-8801mkIISR以降、PC-9800VM/UV以降、X68000、MSX2、Windows
発売・開発元 システムソフト
発売日 【PC98】1989年12月15日
定価 【PC98】9,800円
判定 良作
大戦略シリーズ


概要

大戦略シリーズが、最も勢いのあった頃の作品。
本稿ではPC98版を取り扱う。

『大戦略II』のシステムをベースに、一連のマップをクリアするキャンペーンを付加。
新たなシステムも導入し、更にボリュームもアップした。

特徴とシステム

  • 基本システムは『大戦略II』と同様。
    • ターン制の現代戦SLG。HEXでのマップ構成も従来と同じ。『大戦略II』にあった兵器の種類や工業力、都市の耐久度と言った概念もほぼ同じ。
  • ボリュームの大幅アップ。
    • マップの広さが『大戦略II』と比較して最大4倍超になり*1、保有ユニット最大数も2倍の128になった。このため大きな展開での戦略が可能になった。従来では、海が狭いため使いづらかった艦船が、利用価値のあるものに。
    • 選択できる生産型(国)が倍の16種類に増えた。
    • 『大戦略II』は艦船ユニットが「ヘリ空母」「護衛艦」「揚陸艦」の3種類だったが、「空母A、B」「ヘリ空母」「戦艦」「巡洋艦」「駆逐艦」「イージス艦」「輸送艦」の8種類に増えた。
  • 視界の概念を導入。
    • 従来は全ユニットが見えていたが、本作では自軍の視界範囲内の敵しか見えない。このため索敵の意味合いが、非常に大きくなった。敵フェイズ時の敵の行動も見えないため、意表を突く攻撃をされる場合が発生しやすくなった。
    • 初・中・上級の3段階に変更可能で、初級は索敵無し、中級はプレイヤー、CPU共に索敵あり、上級はプレイヤーのみ索敵あり。
  • キャンペーンマップ。
    • 一連のマップをクリアしていくモード。マップクリア後、生産したユニットは次のマップに持ち越せる。経験を積んだユニット達は頼りになり、従来より育てる要素が強くなっている。
    • 1マップで終了の一般マップと違い、初期軍事費やプレイヤーの設定変更はできない。生産型だけは変更できる。さらに上限ターン数が設定されており、このターンまでにクリアできないと敗北となる。
    • 一応ストーリー仕立て。
  • マップエディタ・生産タイプエディタも完備。

評価点

  • マップ、ユニットのボリュームアップは、もちろん大きな評価ポイント。
  • AIも強化。
    • 視界の概念と合わせ、敵がなかなか手ごわいものとなっている。
  • なかなか手ごたえのあるキャンペーンマップ。
    • マップ構成は考えられており、単調に戦うだけでは制限ターン数内にマップをクリアすることは厳しい。これまでのシリーズではあまり緻密な作戦が必要がなかったが、本作のキャンペーンマップではそうはいかない。
  • マップエディタはさらに発展。
    • 『大戦略II』に比べ、かなり使いやすくなっている。ユニットも配備でき、複数の生産型の武器も配備可能。
    • 『大戦略II』や『スーパー大戦略98』のマップを読み込む事も可能。

問題点

  • 艦船ユニットは、相変わらず実在の兵器ではない。
    • ユニット名が「輸送艦」「巡洋艦」「空母」といった総称で固有名詞の兵器名ではない。艦船に関しては各生産型の違いがあまりない。
  • 索敵用の兵器がない。
    • 視界の概念はあるが、偵察用の兵器がない。
    • このためか通常の兵器の中に、不自然に視界の広いものがいくつかある。おそらく偵察に使う意図と思われるが、少々違和感がある。
  • 相変わらず爆撃機が役に立たない
    • 施設破壊用の「B爆弾」しか武器が無いうえ、自分のいるHEXしか破壊できない為妨害が簡単にできてしまう。*2*3
    • この仕様は『大戦略II』から変わっていない。
    • しかし、もし遠距離攻撃できるようになったとすれば今度はあまりに強すぎる。とにかく首都が滅びれば他の都市が無事でもゲームは終わる。遠距離攻撃可能な爆撃機が大量にいれば、対空兵器も全ての攻撃を防ぐことはできない。敵CPUもそんな爆撃作戦は想定せず対空兵器ばかり作ったりはしないので、簡単に爆撃で占領できてしまいゲーム性が台無しである。
    • 史実でも爆撃のみによって滅んだ国はない(第二次世界大戦末期に追い詰められたドイツの奇襲作戦としてのイギリス本土爆撃はあったがイギリスは滅んでいない)、爆撃をされてしまう時点でほぼ負けというリアルさを表現しているともいえる。
  • 「分散」による時間稼ぎ作戦ができてしまう。
    • 同種ユニットは「合流」「分散」ができるのだが、ユニットの経験値と弾薬は、合流時は平均化され、分散時はそのままである。そこで、あらかじめユニット数を少なくした部隊を生産したり、分散を繰り返して少数の部隊をたくさん作って特攻させると、相手の弾薬をかなり浪費させることができる。突き詰めれば敵の補給が間に合わないペースで実行可能。特にCPUに有効、人間同士でもこの作戦を互いに使うとマンネリになってしまう。
  • 遅くなった。
    • ボリュームアップしたため、単純に遅くなった。全軍のユニット数が最大に近づくと、自分のターンが回ってくるまでかなり待たされる。
  • ユニットの性能設定に疑問の余地も。
    • まだ本作の頃はソ連も健在で、湾岸戦争勃発以前だった。そのせいか共産圏(中国を除く)の兵器が現在から見ると、やや強めに設定されている。
    • 一部に設定ミスがある。中には、まるで戦闘できない兵器もある。
  • マップエディタでキャンペーンマップを作る事ができない。
  • Windows版はウィンドウサイズの変更ができない。
    • PC-9801版と同じ解像度640*400のウィンドウかフルスクリーンの2種類しか選べない為、最近の高解像度モニターでは見辛い。
      • Win版が出た当時は14~15インチのXGAやSXGAが主流だった為、あまり気にならなかった。

総評

大戦略シリーズが最も隆盛した時に出たゲームであり、それまでの積み上げが十分生かされている。
視界等の新たなシステムは戦術をより深いものとした。AIもそこそこでやり応えもあり、そしてボリュームアップは素直にうれしい点。さらにキャンペーンモードも悪くない。あえて言うなら、実在の艦船でないなどもう一歩踏み込んでもらいたい点もあった。
ある意味、シリーズの決定版とも言える一作。
上述のWindows版が低価格で流通している(DL販売もあり)のでこれから大戦略に触れる初心者にもお勧め。


PC-8801mkIISR版

  • 実は先行してPC88版の『キャンペーン版大戦略II』が発売されている。と言っても発売日は一ヶ月のずれ。元々、並行して開発されていたと思われる。
    • PC98版が『大戦略II』をベースとしているのに対し、PC88版は『SUPER大戦略』をベースにしている。さらにマシン性能の問題もあり、ボリュームもシステムもほとんど変わっていない。キャンペーンモードがある以外では、『SUPER大戦略』との差異がそれほど見られないものとなっている。ただ艦船ユニットが加入、航空機も武装変換ができるなど、全く同じという訳ではない。

移植等

  • マップコレクション
    • PC-9801版。8マップ構成のキャンペーンマップ2つと単品のマップ20枚を収録。
  • X68000版
    • PC-9801版の移植。グラフィックが全面的に描き直されている。
  • MSX2版
    • PC-8801MkIISR版の移植。
  • Windows版*4
    • 256色モードが追加されている以外はPC-9801版のベタ移植。
    • 上記のマップコレクションとセットになったバリューパックもあり。
  • PCエンジン版
    • 劣化移植のクソゲー。当該記事参照。
  • 以下の2本はシステムソフトではなく総合ビジネスアシスト製
  • 作戦別マップデータ集
    • PC-9801版。単品のマップ15枚を収録。
  • ユニット改造パック
    • PC-9801版。*5
+ タグ編集
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  • システムソフト
  • 大戦略

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最終更新:2022年02月15日 18:04

*1 64*64と128*128HEXの2種類。『大戦略II』は60*60

*2 マップによっては橋を破壊する事で敵を食い止める事ができるが、裏技を使えば工作部隊でできてしまう

*3 『大戦略II』では裏技で使えた核爆弾は本作では使用不可

*4 現在主流の64bit版では起動不可

*5 このソフトが無くてもバイナリエディタとbmp形式を扱えるグラフィックソフトがあれば改造は可能。某掲示板では一時期有志によるWin版の改造データが公表されていた