古色迷宮輪舞曲 ~HISTOIRE DE DESTIN~

【ふるいろめいきゅうろんど いすとわーる どぅ ですたん】

ジャンル 運命操作アドベンチャー
Win版

PSV版
対応機種 Windows XP~7(64bitOS対象外)
プレイステーション・ヴィータ
メディア 【Win】DVD-ROM
【PSV】PlayStation Vitaカード 各1枚
発売・開発元 【Win】Yatagarasu(八咫烏)
【PSV】イエティ
発売日 【Win】2012年7月26日
【PSV】限定版・通常版:2013年9月26日/ダウンロード版:2013年10月8日
定価 【Win】9,240円
【PSV】限定版:8,190円/通常版・ダウンロード版:6,090円(全て税5%込)
周辺機器 【PSV】PlayStation Vita TV対応
ディスクレス起動 可能
レーティング アダルトゲーム
【PSV】CERO:D(17才以上対象)
判定 良作
ポイント ジャンル名に相応しい、システムとリンクしたストーリー
『あえて言わせてもらうならば──“紅茶地獄”へようこそ、だ』


『あえて言わせてもらうならば──“悲劇”へようこそ、だ』




概要

後述する独特なゲームシステムが特徴のADV。良くも悪くも、このシステムは本作を構成する重大な要素の一つである。
このシステムが評価されてか、本作はWin版発売同年開催の萌えゲーアワードにおいてプログラム部門における金賞を獲得している。
ストーリー的には簡単に言えば“ループもの”であるが、そこにゲームシステム的な味付けがなされていることが本作ストーリーの大きな特徴の一つだろう。


ストーリー

閑静な住宅街に佇む喫茶店『紅茶館・童話の森』。
絵本や童話、壁掛けオルゴールなどが並ぶアンティークな店内。
紅茶の優しい香りと、俗世離れした女性店主が訪れる客を迎える。
主人公・名波行人は「アルバイト募集のチラシ」に
不思議な既視感を覚えながら、喫茶店で働き始めた。
新しい日常のサイクルが始まると思った──
その日、店に大きな木箱が届く。
木箱に入っていたのは、大量のウサギのぬいぐるみ……
そして、銀色の髪に紅い瞳をしたサキと名乗る不思議な少女だった。
少女は行人に言う。
『狂った“運命の輪”を戻せなければ一週間後、
行人は“死”を避ける事ができない。そして行人に近しい人間全てに“不幸”が訪れる』
少女の言葉通り行人を中心に次々と不幸が訪れる。
半信半疑ながらも行人は彼女を信じるようになっていった。
『助かる方法は、狂った“運命の輪”を元に戻すこと』
残された日は、たった一週間。
『あえて言わせてもらうならば──“悲劇”へようこそ、だ』
(PSV版公式サイトより引用)


システム・特徴

本作のベースはよくあるノベル型ADVだが、システムにおいては本作ならではの独創的な特徴が存在する。

  • 本作には一般的なADVのような選択肢は存在せず、文章を読み進める内に手に入る“言葉(キーワード)”を指定のタイミングで投げかけることにより進行する。
    • 入手したキーワードは文章内で強調して表示され、画面端のキーワードパレットに格納される。また、キーワード自体の解説閲覧も可能である。
    • 主に主人公に行動を促す目的で機能し、話し掛ける人物、移動する場所、使用する道具などをキーワードとして投げかけて主人公に行動させる。
      • 名詞だけではなく"取る"、"押す"などの行動を直接指定する場合や、主人公が求める解答を提示すると言った際にも使用する。
      • 例えば「誰に話しかけようか?」→"話しかけたい人名"、「ここで使用するべき道具は…」→"適切な道具名"など。前者はプレイヤーに選択を委ねるケース、後者は正解が固定されているケースである。
      • 場合によっては指定タイミングでキーワードを投げかけず、スルーすることも可能である。「聞いてみようか?」→"聞く"orスルー、と言った感じ。
      • 逆に適切なキーワードを投げかけなければ物語が進行しない場面も多々存在するが、物語最序盤で入手可能な“Hint”キーワードを投げかけることによりその場面での適切なキーワードが何かのヒントが示されるため、どうやっても詰まるということは少ないだろう。
      • ただし、それには後述の“運命量”を微量ながら消費してしまい、肝心な時にろくなヒントが示されない場合もある。何より場面場面におけるキーワードの推理と取捨選択がこのゲームの面白さを構成する要素の一つでもあるため、多用はおすすめできないが。
      • 尚、不適切なキーワードを投げ込んだとしても、その場で主人公の運命量(後述)が減少するだけで、それだけでデッドエンドルートに進まされたり登場人物に咎められるなどと言ったデメリットは無い。
  • 登場する各キャラクターには“運命量”というものが設定されており、前述のキーワード投げかけにより個別に上下する。運命量が尽きた人物は死亡する。
    • これはキーワードを間違えることでは基本的に下がるが、適切なキーワードであっても上がる場合もあれば下がる場合もある。
      • この上下はキャラごとに個別で行われるため、あるキャラの運命量が上がった場合でも別のキャラの運命量が下がるという場合が往々にしてあるのが曲者である。
    • 誰か一人でもこれが枯渇して死亡することで、後述の“リスタートポイント”へ強制的に戻されるというデメリットが発生する*1。その際は枯渇したキャラクターの運命量はある程度回復する。ただし、ストーリーの進行上強制的に枯渇=死亡する場合はその限りではない。
      • もっとも、運命量が枯渇した際に回復するのは枯渇したキャラクターのみであり、その他のキャラクターについてはその時点の量で据え置きである。これが後述の問題点の原因の一旦を担う要素と化してしまっているのだが。
    • 中には“運命量”を持たないキャラクターも存在するが、それもまた物語上の理由がある。
  • また、本作のストーリー構成は黄道十二宮を模した背景にコインが散りばめられる形で表現されており、主人公の運命量を消費することでコインで示された物語上の任意のイベントポイントに移動可能。当然、移動可能なのは既読部分のみではあるが。
    • ただし、ポイントはある程度まとまった上でブロックという形で区切られており、ブロック間の移動は“リスタートポイント”というブロック間におけるチェックポイント間でしか行えない。
      • 移動距離が元いた地点より離れれば離れるほど消費する運命量は多くなるため、無茶な移動は難しい。とは言え、リスタートポイントは適当に設定されているため、通常は移動により運命量が枯渇することはあまりないだろう。
    • 形は違うが、移動に制約の付いたチャートマップと表せば分かりやすいかもしれない。
    • なお、ストーリー上の現在地は任意のタイミングで確認可能である。
  • 本作のセーブシステムはオートセーブのみであり、セーブは上記のイベントポイント間を移動する際にのみ行われる。

キャラクター

+ クリックで参照
  • 名波行人(ななみゆきと)
    • 主人公。父子家庭。父親は海外赴任しており別居状態。ストーリーにもあるように、チラシがきっかけで“童話の森”にてバイトを始めるようになる。
    • 手先が異常に敏感かつ器用であり、裁縫等はプロ級である。
    • 明るい性格で精神力が強く、決意したことはその過程に何があろうとやり遂げようとする強さを持つ。
    • 一般的な恋愛ADV同様、立ち絵は表示されず声も無い。しかし説明書や公式サイトには立ち絵と担当声優が紹介されている。その理由はゲームを進めれば分かるだろう。
  • サキ
    • 木箱に入っていた上奇抜な出で立ち、おまけに記憶喪失気味と胡散臭さの塊のような少女。物言いは尊大ではあるが強さも優しさも併せ持っている。
    • 行人の運命の輪を戻すことで自身の記憶が戻ると考え、そのように行動していく。
  • 相羽和奏(あいばわかな)
    • 主人公の昔馴染み。才女ではあるが歯に衣着せぬ物言いのため友達は少なく、彼女にとってそう呼べる存在は主人公と後輩の一葉程度である。“童話の森”の常連。
  • 姫野美月(ひめのみつき)
    • 主人公の通う学園の先輩かつバイト先の先輩ではあるが学園にはあまり登校しておらず、学園内では不良として評判。
    • 本人は気さくで愛想のいい人物ではあるが、重度のシスコンである。身体能力は高い。
  • 桐原一葉(きりはらひとは)
    • 主人公の後輩。明るく素直な性格で、和奏とは仲が良い。こちらも童話の森の常連客。
  • 姫野美星(ひめのみほし)
    • 姫野美月の双子の妹。よく言えば寡黙で物静か、悪く言えば陰気で憂鬱な雰囲気をまとう少女。
    • 真意を図りかねる言動を行い、主人公たちを戸惑わせることも多い。極度の男嫌いでもある。
  • 雑賀恭平(さいがきょうへい)
    • 主人公の友人でメガネのイケメン。中身は腐男子だが、実は和奏と学年一位二位を争う優等生である。
  • 橋倉卓也(はしくらたくや)
    • 主人公の友人。気さくで明るく、猪突猛進な性格。
  • 古宮舞(ふるみやまい)
    • 童話の森の店長兼経営者であり、童話作家との二足のわらじを履いている。そのため夜更かしが多くなり朝には弱い。
    • ストーリー紹介にもあるように俗世離れした感覚を持つ天然キャラであるが、時折芯の強いところをのぞかせる。
      + 軽度のネタバレを含むため格納
    • 彼女がどのような存在であるかについては、その名前に集約されている。
      • また、ヒロインとしてはかなり特殊な立ち位置のキャラクターでもある。
  • なお、上記以外の登場人物も存在するが、種々の事情によりその紹介は割愛する。

評価点

ストーリーの完成度の高さ

  • システムがやや特殊とは言え本作がADVであることには変わりなく、そのストーリーが作品評価の肝となるのは他のADVと変わりないのだが、この点においては本作は十分以上の出来と表することができるだろう。
    + やや冗長かつ軽度のネタバレを含むため格納
  • 前述のとおり、本作のストーリーはシステムと密接に絡み合っている。なぜキーワードを投げかけるシステムなのか、なぜ主人公が場面移動をできるのか、なぜその際に主人公の運命量が減るのかなどは全て本作のストーリーにおける根幹を成す要素群である。
    • ストーリー自体も、伏線を張っていく序盤、序盤の伏線をある程度回収しつつ新たな伏線を張っていく中盤、ひたすら伏線を回収していく終盤とオーソドックスな構成ながら間々の起伏は十分にあり、中だるみしにくく盛り上がるものとなっている。
      • 伏線についても、序盤の序盤に仕込まれていたものが最終盤の状況に結びついたりするものも多々あるため、後から思い出すと『そうだったのか』と思う部分も多いだろう。
      • なぜ主人公がチラシに既視感を覚えたかをはじめ、“運命の輪”が二重三重に狂っていく過程の解明、運命量とは何か、サキの現実離れした容姿及び格好や主人公の手先が器用な理由等、見どころは枚挙にいとまがない。
      • また、ストーリー的な伏線のみならず、主人公をはじめとして狂った“運命の輪”に囚われた人物は総じて自覚の有無に関係なく過酷な運命に導かれることとなるため、彼らの人間模様的にも見どころは多い。この部分の盛り上がりの山が主にストーリー中盤に集中していることも、前述の中だるみ防止に一役買っている部分があるだろう。
    • 本作のストーリーの大まかな紹介として「色々な作品のミックス」という表現が使われることがある。確かに他の様々な作品にも通じる要素や展開が多彩に盛り込まれているが、パクリの継ぎ接ぎなどということはなく、本作独自の世界観とエッセンスによってオリジナリティが高く調和の取れた物語に仕上がっている。
  • 余談ではあるが、初回はあまり使われそうにないヒントによるメッセージも場面によってはなかなか味わい深い内容のものがある。もちろん、前述のとおり初回プレイ時におけるヒントの多用はおすすめできないが。
  • 本作のストーリー評価に深く切り込もうとすると重度のネタバレに多分に触れることが避けられないため曖昧な表現に終始せざるを得ないのだが、総合的な完成度は高い。その実はぜひ実際のプレイで確かめて欲しい。
    • 部分部分の粗はあるにはあるが、その概ねはストーリーの勢いで押しきれるレベルである。

その他の評価点

  • BGMは数こそ少ないものの、本作の雰囲気にはよく合っているものばかりである。
  • 本編終了後に開放される、キーワードシステムを使用したとあるキャラクターとの会話システムは概ね好評である。
    • やりようによっては相応のご褒美もあったりする。PSV版では隠しシナリオに突入する為にも必要な要素となっている。

賛否両論点

ほぼ一本道のストーリー

  • ループものでは珍しくない構成ではあるが、基本的に一本道のストーリーである。キーワードシステムによる分岐は主にデッドエンドか僅かな会話内容の変化のみ。
    • 序盤に大きく分岐する地点もあるのだが、結局ストーリーを進めると両方のルートを通る事になる。
      • それ以外に分岐らしい分岐と言えば後述の鬱展開のみであり、それもさして長くもないものである。もっとも、鬱展開が絶え間なく長々と続くとしたらそれはそれで別の問題が出かねないが。
    • 一度エンディングを迎えた後は各キャラの個別エンドにも到達可能になるが、こちらはおまけ程度についていると表して差し支えない内容。
    • 従って、展開の多様性という点においては乏しいと言わざるを得ない。
      • ただし、ストーリーで記載した通り「狂った“運命の輪”を元に戻す」という大目的が最後まで常に存在するため、そこに至るために必要のない展開が削ぎ落とされるのは仕方のないところではあるだろう。

ストーリーについて

  • 前述の通り、細かい粗や矛盾点も勢いで押し切れるレベルではあるが、押し切れない人には気になってしまっても仕方ない程はある。
    • 「狂った運命の輪」と言う、ただでさえ常識が通じないややこしいストーリー構成なのだが、詳細な解説を避けていたり、抽象的な言葉ではぐらかしている部分も見受けられる。登場人物の憶測や、根拠に乏しく判り難い説明台詞も多く、理解している登場人物がその前提でどんどん話を進めるので、理解の追いつかないプレイヤーが置いてきぼりにされる事も。
    • 最後まで明確には語られない謎、プレイヤーの考察に委ねる部分もいくつかある上、説明のつかない所は「そういうもの」「理屈じゃない」「考えるな、感じろ」と言わんばかりに押し切る事も多い。そう言った読み方が出来るプレイヤーには問題無いが、逆に理屈としての明確な解答が欲しいプレイヤーにはやや厳しい側面もある。
      + また、終盤には(重大なネタバレ)
    • 物語にメタフィクション要素が絡んでいた事が明かされる。前述したようにシステムと密接に関連したストーリーだが、そのシステムを操作しているプレイヤー自身をもストーリーに絡める話運びとなっているのである。そして以降は一部の登場人物が第四の壁を超えてプレイヤーに語りかけてくるシーンがしばしばある。
    • メタネタに感動するか興醒めするかは人それぞれだろうが、それを別としてもその辺りの説明がまた曖昧。

主人公について

  • 基本的に社交的で頭も切れて冷静且つ行動力もあるのだが、育ちの影響でかなり義理人情を重んじる所がある。それ自体は問題ではないのだが、時には異様なほどにそれを押し通そうとし、プレイヤーの意識との乖離が生じる事すらある。
    • 「決意したことはその過程に何があろうとやり遂げようとする強さを持つ」という長所は悪い方向にも強く働いている。中盤からはある理由から強い決意を以て行動するようになるが、その為なら手段を選ばなくなり、自身を人でなしと卑下しながらも外道行為に手を染める事が何度もある。それもかなりの期間、そう言った展開が続く。
      • 勿論、それらは未来の為に必要な事で、全て意味のある事である。主人公も結局人でなしにはなりきれず葛藤し、時には報いも受けるし、最終的にはそれらを乗り越えて成長していく。
      • しかしプレイヤーとしては、外道行為に手を染める主人公の視点を通して結構な間ストーリーを観なければならないのはなかなか精神的に堪え、主人公に共感できないと辛い道のりになる。また、時には外道行為をプレイヤー自身に指示させる事すらある。

Hシーンの少なさ

  • ストーリー重視のアダルトゲームでは珍しくないが、本作もHシーンは少ない。
    • エロではなくストーリーやシステムの方を売りとする本作では妥当ではあるが。また、コンシューマー移植の際に大きくストーリーを弄る必要が無いと言う利点もある。
    • それとは別にしても本作に恋愛要素は実は殆ど無い。最終的に行き着くトゥルーエンドも、PSV版の後日談も、主人公が誰かと結ばれるような結末ではなく、また、各ヒロインとのエンディングも前述したようにおまけ程度のものである。
    • 繰り返すが、本作の売りは運命を操作するストーリーとシステムであってエロや恋愛ではない。しかし見た目から安易にギャルゲー的な内容や実用性を期待すると肩透かしを喰らうだろう。

問題点

難易度が高い

  • システム上、適切なキーワードを投げかけるのに手間取ると運命量の枯渇により戻されることが多発する。これだけならまだしも、特に難易度が高いのがよりにもよってキーワードシステムのチュートリアルを超えた直後に発生する紅茶を入れるシーンである。
    • 該当シーンは正解のキーワードが分かりにくい上に投げかけるポイントも多く、おまけにスルーも不可能なので慣れていないプレイヤーはことごとくキーワードを間違い、リスタートポイントへ何度となく戻されるという事態が多発した。
      • そして、前述の通り運命量が枯渇したキャラクター以外の運命量はその時点で据え置きなので、正解のキーワードにおいても運命量が減少するキャラクターの存在する本シーンではたとえ正解のキーワードを入力しても戻される場合が発生し得る。
    • その場面から通称“紅茶地獄”と呼ばれるこの現象は、本作プレイヤーの間では語り草となっている。
      • 公式もその事を認知したのか、PSV版公式サイトにもTOPページに堂々と「美味しく紅茶を入れないと死んじゃうぞ~!?」と書かれている。
  • 無論、前述の通りヒント機能を使えば詰まることもそうそうないのだが、それでもこれも前述の通り肝心なところでヒント機能があまり役に立たなかったりする場面があるのも困りものではある。
    • ただし、そういう場面にはストーリー上の流れである程度そうなるに至る理由付けがなされているため、仕方のない部分はあるが。
    • また、ヒントの使用回数も記録されるので、そう言った所を気にする人はなかなか使いにくい。

一部システム上の問題

  • 一度エンディングを見た後に見ると別の場面に切り替わるポイントがあるが、一度変化すると以前の場面を閲覧することが不可能になる。
    • 該当シーンをもう一度見るためには最初から始めるか、もしくはある分岐の先に進みある程度進行状況を巻き戻す必要があるため、面倒さがある。
      • 更に後者の方法に至るためには本作でも屈指の救いのない世界を進まなければならないため、プレイヤーによっては精神的にかなり厳しい道程となるだろう。
      • それとは別に、後者にはその先にあるものを知らずにそのルートに辿り着いたプレイヤーが意図せず進行状況を巻き戻される、という状況も生み出してしまいかねないという問題点もある。
      • 何より、進行状況を巻き戻してしまう事で運命表の移動ポイントも消えてしまうので、真のエンディングに到達する為にはその地点から先をまたやり直さなければならない。本作はオートセーブである関係上、バックアップを取るなどの処置をしない限り「ロードして元に戻す」は通用しない。
      • しかも一度そのルートに進むと進行状況が巻き戻るまで脱出不可能である。
      • 一応、突入の是非はキーワードシステムを何重にも使った上での任意のもので、突入前にこのルートに進んではいけないという趣旨の警告は出るのだが、何も知らないプレイヤーでは「ただの演出だろう」「どうせここも一本道のストーリーの一部だろう」と思って進めてしまう事も。

総評

一般的なADVと比較するとシステム的なハードルの高さは多少あるものの、システムと不可分のストーリーは十分に練られたものであり、良作と扱うに不足ない水準ではあるだろう。
ただし、システムのハードル故に人を選ぶ部分があるのは確かなので、購入の際はまず体験版等で自分に合いそうかを試してからがよいのではないだろうか。


移植版

  • 2013年9月にPSV版『古色迷宮輪舞曲 ~La Roue de fortune~』が発売された。
    • 副題の~La Roue de fortune~(れ るー どぅ ふぉるてゅーぬ)は意訳するところの“運命の輪”。
    • 主な差異は18禁シーンの有無およびそれに伴う新規CG及び追加シナリオの有無、PSV用のインターフェイス調整となる。
      • システムが改善されており、キーワード選択画面が雰囲気重視の「歯車型」と利便性重視の「検索型」の2つが用意され、並び順もあいうえお順に加えてカテゴリー順にソートが可能になった。また、運命表の移動もリスタート地点を経由せず目的のコインに直接移動が可能になるなど、全体的に遊びやすくなっている。但し、紅茶地獄はしっかり健在
      • 「零日目」と「八日目」の2つの新規シナリオが追加されている。前者は本編に繋がる裏の物語。後者は本編の後日談と共に、本編では最後まで語られず終いだったある人物の真の結末を描く。
      • また、OPには主題歌とムービーが新規に用意された。Win版のオープニングテーマは追加シナリオのエンディングテーマになっている。
    • 本作を購入するのであれば、18禁要素にこだわるのでなければシナリオが加筆されておりシステムも全体的に改良されているPSV版の方がよいだろう。

余談

  • 古色は「フルイロ」であって「コシキ」「コショク」ではない。(参照
    この読み間違いに基づいた「古迷宮~」という誤変換が時々ある。
    • PSV版のオープニングテーマ中にも「ふるいろ」という歌詞がある。
  • 2013年10月にはWinにおいて、本作をはじめとするブランド4作をひとつにまとめたセット版が発売された。
  • 本作はブランドで唯一原画家が違う。
  • 概要で記載の通りではあるが、本作は2012年度萌えゲーアワードにおいてプログラム部門における金賞を獲得している。
    • 萌えゲーアワード自体が種々の事情*2によりその権威性については疑問符がつくところはあるものの、それでも本作製作ブランドのような中小ブランドが簡単に金賞を獲ることができるようなものでもないため、本作の評価に対する一定の指標としては機能するところではあるだろう。
  • 本作Win版を制作したYatagarasuは、本作の後『星彩のレゾナンス』を製作し、その後解散している。
    解散の判明はPSV版の発売直前であったが、問題なく発売された。

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最終更新:2022年11月22日 09:41

*1 死亡と言っても、作中に登場するぬいぐるみ「ジャン=バティスト・リエーブルマン男爵」によるニュース形式で伝えられると言う簡潔な演出になっている。

*2 コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)主催の賞のため、ソフ倫以外でレーティング審査を行っているブランド(アージュ、ニトロプラス等)の作品は投票対象となっていない。また、ソフ倫審査ブランド内でも一部ブランド(アリスソフト等)の作品は投票対象となっていない。