サーガイア
【さーがいあ】
ジャンル
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横スクロールシューティング
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対応機種
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ゲームボーイ Nintendo Switch
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発売元
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タイトー
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開発元
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アクトジャパン
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発売日
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【GB】1991年12月13日 【Switch】2022年10月6日
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定価
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【GB】3,600円(税別) 【Switch】500円(税10%込)
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書換
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ニンテンドウパワー 【GB】2000年3月1日/800円/F×1・B×0
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判定
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良作
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ダライアスシリーズリンク
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概要
AC版『ダライアス』のGBアレンジ移植作。基本的なシステムは原作とほぼ同じ。
主な違いは、パワーアップに必要なアイテムの個数が8個から5個に少なくなっていることや、その場復活(ゲームオーバーからのコンティニューのみ戻り復活)を採用していることなど。
ステージは全部で8面。分岐が存在しない代わりに、シリーズでは珍しいボスラッシュが4,8面に存在するのが特徴。(それぞれ1~3面、5~7面ボスの強化型と再戦する)
8体のボスの内、2体はオリジナルである。それぞれ、マンボウ型戦艦「ビッグマーマン」とカブトガニ型戦艦「エンシェントヘルム」。
難易度は全部で3段階。どの難易度でクリアしたかで、エンディングで表示される1枚絵が変化する。
ベルサー軍の侵攻を受けた惑星サーガイアへ、シルバーホークが救援に駆けつけるというストーリー。
評価点
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全体的に、アレンジ移植に無理がない。
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原作が元々シンプルなゲームシステムであることもあり、ハード性能の低いGBでも原作の雰囲気は問題なく再現されている。
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アイテムボールは色分けではなく、描かれたアイコンで区別するよう工夫されている。
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初心者に優しい難易度。
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オプション設定で残機数やオート連射の有無が設定可能。
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ステージ内に複雑な罠などが少ないため、STGに慣れていない人でも各ステージを突破しやすい。
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エクステンドしやすいため、ゲームオーバーになりにくい。また、ゲームオーバーになってもコンティニューが可能。
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解像度や性能面の兼ね合いもあるのだが、原作やPCE版と比べて敵の動きが遅めなので、狙いをつけやすい。ボス敵の攻撃パターンにも『スーパーダライアス』以上に緩和調整が入っている。
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1ゾーンあたりのアイテム数が多く、早い段階で装備を次の段階に進められるためミス後の復活が原作よりしやすい。
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殆どのステージで上下に壁があるため、アイテムを取り逃すことがほぼなくなった。この壁に限り、接触してもミスにはならない。
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原作でもこの壁への接触によるミスは発生しない。ちなみに、上下の壁がないステージでも侵入不可。
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レーザーとウェーブの打ち込みがしやすくなった。
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この2つは原作では全ての敵を貫通していたが、本作では一発で破壊できなければ敵を貫通しないようになった。
そのため、弾切れが起きにくくなり、近距離に張り付いた際に大ダメージを与えやすくなっている。
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この仕様のおかげで、ボスの弱点や破壊できる部位の近くに張り付いてショットを撃ちまくる時に、連続で響く重い爆音と合わせて爽快感を味わえるようになっている。
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グラフィックの出来が良い。
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地形は勿論、背景もきちんと描き込まれている。特に1面は「背景のあちこちで小爆発が発生している」という、グレースケール4階調からは考えられないほどの凝り様で、しかもそれらが60fpsで動作するというのだから驚きである。
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巨大戦艦のグラフィックの出来も見事。
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原作と比べてもキャラクターの描写に違いがほとんどなく、再現度が高い。
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原作同様に部位破壊が可能であり、パーツ破壊後のグラフィックパターンもちゃんと用意されている。
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携帯機にしては充実したボリューム。
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分岐はさすがにないが、全8面というのはGBのSTGとしてはかなりのもの。
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クリアまでの所要時間は約40分。
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ステージ内には1UPアイテムが地形に隠されていることもある。これを撃って探し出すのも本作の楽しみの一つ。
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人気の高い恒例ボスが登場している。
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1面ボスはキングフォスル。原作に登場したものは他に、ストロングシェル、カトルフィッシュ、グリーンコロナタスなどがいる。行動パターンは完全再現とまでは行かないが雰囲気は十分。
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『スーパーダライアス』や『ダライアスII』に登場したボス・レッドクラブがこちらにも出張してきている。
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本作オリジナルボス「ビッグマーマン」(マンボウ)・「アンシェントヘルム」(カブトガニ)が新規に登場。いずれも同生物をモチーフとしたボスが『ダライアス外伝』で登場しているが、初出はこちら。
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最終8面ボスラッシュのオオトリを飾るのはグレートシング。ラスボスが複数存在した原作の中でも特にインパクトを放っていたが、本作での抜擢により名実ともに代表的な宿敵として据えられたといえる。
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グレートシングのみ登場時は画面上から出現するため、他のボスとは一線を画す存在感がある。
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グレートシングの砲台を部位破壊できるようになったのは実は本作が初。更にパーツ破壊状況によって行動パターンが変化するという特徴まで搭載しており、まさしく別格の扱いとなっている。なお、シリーズでは珍しく全身弱点ではなく、口を撃たないと本体にダメージが入らない。
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「GB音源の限界に迫る」「オーパーツ」と評されるほど高品質なBGM。
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原作で使用されたほぼ全てのBGMが本作に採用されている。特に、5つのステージ曲は全て聞ける。
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サウンドディレクターは、原曲作曲者であるZUNTATAのOGRこと小倉久佳氏が、サウンドプログラムやそれに伴うアレンジはアクトジャパンスタッフ(おそらく草津きよし氏)が担当。
メロディやリズムの再現度が非常に高く、AC筐体の音源とは性能が全く違うGB音源でも原曲に可能な限り近い演出ができたのは、彼らの技術力の賜であろう。
問題点
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原作同様、ステージ道中が冗長。顕著なのがボスラッシュステージ。
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ボスステージは障害物としての地形や背景が全くないため、冗長さに拍車をかけている。
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ボスラッシュと言っても完全な連戦ではなく、1戦ごとに多数のザコが出現する。ここでアイテムも出るので、立て直し要素とも言える。
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ボス出現前及びボス撃破後の間が長く、無駄にプレイ時間が伸びる。前述のとおりプレイ時間が約40分と長いため、人によっては集中力を維持するのが難しくなる。
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ダライアスシリーズの売りのひとつであるゾーンセレクトがない。
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容量の都合上止むを得なかったのだろうが、やはり様々な面のプレイやマルチエンディングが楽しめるこの要素が欲しかったという声は少なくない。採用されていれば1プレイの冗長化を緩和する要素にもなり得た。
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マルチボムの仕様。原作では4方向に一斉発射される攻撃だが、本作では1方向ずつにしか発射しないため、使い勝手が悪い。
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単発の威力が大幅に増している代わりに右上-左下-左上-右下と一発ずつしか発射しないため、前段階のツインボム(2方向一斉発射)よりも防御力が落ちてしまう。
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つまり本作ではボムはマルチまで強化せず、ツインで止めておいた方が良いこともある。
とは言ってもマルチまで強化したからと言って攻略への影響はショットほどではないので、さほど気にする必要もない。
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ダライアスシリーズは「ショットの強化を途中で止めた方がいい」という仕様が度々発生するが、本作ではボムがその仕様を受け、そして悪影響が比較的軽微で済んだ珍しい作品。
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BGMに関して、「BOSS SCENE 5」のみ未使用。
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原作でBGMが使用された「キーンベイオネット」も登場していないが、同じく本作未登場の「ファッティグラトン」のBGM『BOSS SCENE 4』が本作ではストロングシェルに、また『BOSS SCENE 7』は『ビッグマーマン』にも割り当てられていたりするため、使用できるボス枠はあったはずである。
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特に本作のステージ6、7のボス戦では連続して「BOSS SCENE 3」が使用されており、このどちらかを「BOSS SCENE 5」に割り当てればすべてのBGMを満遍なく使用できた。
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容量の関係上、削らざるを得なかったとも思えるが、実は曲自体はデータ内に入っており、プログラムで呼び出せばちゃんと再生される状態となっている。特に説明がないが公式配信サントラにも含まれている。
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そのため単純に仕様ミスか、上記の該当ボス未登場により没にしたという可能性も考えられる。
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サウンドテストが存在しない。
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プレイ中はSEでBGMの一部の音が消されてしまうため、落ち着いて聴けないのは非常に残念。
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ポーズするかミスをしないと、スコアと残機の確認ができない。
総評
GBという制約の多いハードに、AC版やPCE版で表現されてきた「ダライアス」というゲームが見事に落とし込まれた作品。PCEの『スーパーダライアス』と双璧をなす名アレンジ移植といえる。
基本的なゲームシステムにほとんど変更がない(どころか改善された部分もある)、ほぼ全てのBGMが再現されている、人気ボスが登場しているなど、AC版のファンを納得させるには十分な内容。
特にBGMの評価は大変高く、ZUNTATAが関わったBGMが如何に高品質であるかを再認識させられると同時に本作最大の魅力にまでなっている。
単純に一つのSTGとして見ても、ボリューム・ゲームバランス・爽快感が高いレベルでまとまっており、当時の「携帯機向けダライアス」の決定版と言える存在になっている。
後の携帯機に向け、PSPで『ダライアスバースト』、VITAで『ダライアスバースト クロニクルセイバーズ』が発売された現在でも、その輝きは未だに色褪せていない。
余談
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「サーガイア」とは海外版『ダライアスII』のタイトルでもある。グラディウスの海外版タイトルである『ネメシス』のようなもの。
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何故GB版のタイトルが海外版の『サーガイア』なのかというと、前年に同じくゲームボーイで発売された『ネメシス』を意識しての命名と思われる。
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1997年に発売された『タイトーバラエティーパック』に本作が収録されている。
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2009年、iTunesで本作のサウンドトラックが配信された。未使用だった「BOSS SCENE 5」も収録されている。
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ZUNTATA公式HPで試聴もできるので、興味があれば聴いてみてほしい。
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ダライアス30周年記念としてZUNTATAより各シリーズのBGMの収録+αである「DARIUS 30th ANNIVERSARY EDITION」が発売されたが、本作のBGMは本家「DARIUS」と共にDisc1に収録されるという厚遇を受けている。
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2019年に発売されたNintendo Switch用ソフト『ダライアス コズミックコレクション』を
2018年7月16日・17日のAmazonプライムデー期間内に予約した際の特典
として初移植を果たした。
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このため、特典発表後は様々な方面から批判や物議を醸すこととなってしまった。詳細は『コズミックコレクション』の余談にて。
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プライムデー限定版に限らず、特装版自体もAmazonでいわゆる「konozama」が大規模に発生し、発送が1ヶ月以上遅れた顧客も存在した。遅れての到着となった人の中には「普通の特装版を買ったのにDLCコード入りが届いた」という報告があり、Amazon内で混乱があった模様である。
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なお、あくまで『コズミック~』内の収録作品ではなく、独立した単独ソフトとして扱われる。
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その後、2022年10月6日に一般販売された。
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本作から10年後にGBAで同じ初代のアレンジ移植作品『ダライアスR』が発売されたが、序盤が後半より難しい歪なゲームバランスなどでファンが求めていた『スーパーダライアス』のような初代に可能な限り近い移植ではないことに加え、低品質なアレンジな上に他作品からの盗作疑惑が含まれるBGMなどが原因で、到底ファンを満足させる出来には至らなかった。
ゲームの出来はハードで決まらないことを示す例として、本作と『R』はしばしば引き合いに出される。
最終更新:2022年11月27日 17:54