オトスタツ

【おとすたつ】

ジャンル パズル
対応機種 プレイステーション2
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 brain box
発売日 2002年5月30日
定価 5,800円(税別)
判定 良作


概要

I.Q』や『XI』などのパズルゲームを世に出してきたSCEによって発売されたパズルゲーム。
「落とす建つ」の名の通り、平面状のフィールドにピースを落として建物を建て、街を発展させていくゲームである。
独創的なゲームシステムと、ペーパークラフトをモチーフにした可愛らしい世界観が特徴。


システム

基本ルール

  • ゲームの基本は「落とす」と「建つ」。
  • 十字キーでプレイヤーキャラである「ソー」を動かし、○ボタンなどで手持ちピースをフィールドのマスへ落とす。基本操作はこれだけ。
    • ピースは木・水・土の三種類。
  • 特定の配置(後述)でピースを置くと、フィールド上に建物が建つ。連鎖を決めればより高レベルの建物を建てることが出来る。
  • 基本のフィールドは6×8マスで、右から左へゆっくりとスクロールしていく。左はじに到達した列は精算され、建てられた建物に応じてスコアが入る。
  • フィールドのすべての列に建物を1件以上建ててゴールにたどり着けばクリア。建物がない列が左はじに到達するとゲームオーバー。
    • 建物がない列には、目印としてアシストキャラの「モント」が立っている。モントが左はじに近づいてきたら早めに建物を建てること。

建物の建て方

  • ピースの置き方は難しくないが、ちょっと癖がある。
  • 建物が建つマスは土マスのみ。さらに土マスに隣接する上下左右のマスに特定のマスがあることが必要。
    • 土マスの上下左右のどこかに木と水のマスが両方があれば、レベル1の建物が建つ。
    • 土マスの上下左右のどこかに同じレベルの建物が2つ以上あれば、その建物よりもレベルの高い建物が建つ(連鎖)。
      • 同じ建物2つならば+1レベル、3つならば+2レベル、4つで囲めば+3レベル。レベルの上限は6。
  • 上記の条件を満たした時点で建物は自動的に建つ。従って、ピースを落としたマスに建物が建つとは限らない。異なる条件を同時に満たしている場合、一番高レベルの建物が建つ。

ピースとマス

  • 落とせるピースは前述の通り3種類だが、フィールド上のマスは大きく分けて7種類が存在する。
    • ブランクマス…何もないマス。
    • 木マス/水マス/土マス…対応するピースを落とすことで作ることが出来る。
    • 建物マス…建物が建ったマス。レベル1~6が存在する。
    • デビルマス…建物と同じくレベル1~6が存在する。同レベルの建物を建てることで退治され、建物に変わる。退治以外の方法では破壊できず、退治しないまま左はじに到達するとペナルティとしてフィールドが破られてしまう。
    • 山マス…いかなる方法でも破壊できない。
  • マスとピースには「相性」が存在し、マスにピースを落とすと、相性によって「元のマスのまま」「落としたピースに上書きされる」「爆発する」「山が生じる(土マス+土ピースのみ)」のどれかが起こる。たとえば、建物マスに水ピースを落とすと上書きされ水マスになるが、木や土ピースを落とすと爆発する。
    • 爆発が起こると、隣接したマスを含む計5マスが全て吹き飛ばされ土マスになる(ブランク、デビル、山はそのまま)。一見デメリットだらけに見えるが、うまく使えば連鎖によって一気に高レベルの建物を複数建てることが出来、むしろ利用不可欠なテクニックとなっている。

ゲームモード

  • tour…メインモード。6つのステージを進め、街を発展させてゆく。
  • puzzle…決められた手数でステージをクリアしていくモード。スクロールがなくじっくり考えられる。要は詰将棋。
  • traning…難易度を自由に調節して遊べるモード。
  • score attack…100秒間でのスコアを競うモード。
  • endless…ゲームオーバーになるまでに何banch(番地)まで行けるか競うモード。banchはスコアに応じて増え、同時に難易度も上昇してゆく。
  • stage…テーマに沿ってステージをクリアしてゆくモード。水だらけのステージなど、トリッキーなステージが並ぶ。
  • versus…二人対戦モード。フィールドが上下に分割されており、相手の陣地には入れない。相手をゲームオーバーにしたら勝ち。
  • guide…チュートリアルやヒント、デモプレイを見ることが出来る。

評価点

  • 「建つ」ことによる独特の爽快感
    • テトリスやぷよぷよなど、多くのパズルゲームが「消す」ことを目的としているのに対し、本作は建物を「建てる」ことが目的となっている。にょきにょきと建物が建ち、殺風景だったフィールドがにぎやかになってゆくさまを見るのは、オブジェクトを消すのとはまた違う楽しさがある。
    • また、「創造型パズルゲーム」として他では見られない一つの完成したシステムを造り出している点は純粋に称賛に値する。
  • シンプルでポップな世界観
    • オブジェクトや背景、キャラクター、メニューボタンにいたるまで、全てのデザインは「ペーパークラフトの世界」というテーマで統一されており、シンプルながらポップでカラフルな世界を作り出している。色とりどりの建物がフィールドに立ち並ぶさまはジオラマのようでとても可愛らしい。
      • また、仕掛け絵本のようにぴょこんと建ちあがる建物や夜になると建物に明かりが灯る仕掛けなど、紙の街というテーマに沿った細かい演出も見どころ。
      • メインキャラクターである「ソー」と「モント」もペラッペラの紙人形である。彼(?)らもシンプルながら愛嬌のある姿をしている。
    • ゲームの雰囲気づくりに大きく貢献しているのがBGMである。ビッグバンド調で、お洒落ながら明るい雰囲気でプレイを盛り上げてくれる。
  • 徹底的な親切設計
    • システムや後述の難点から薄々感じとれるかもしれないが、このゲームの本質はとっつきにくく、難易度が高く、猛烈に頭を使う理詰めの論理パズルである。その論理パズルを誰でも楽しめるゲームに昇華するため、本作では徹底的なサポート体制が敷かれている。
      • チュートリアルがとにかく丁寧で説明書を読まなくてもプレイできる。初プレイ時には自動的にチュートリアルに移り、ピースの落とし方から建物の建て方、ピースの相性まで実践を交えながら一から教えてもらえる。
      • tourモードのステージ1と2ではガイドアイコンが表示される。ガイドの指す場所にピースを落とすだけで建物が建ち、連鎖を起こすことが出来る。
      • ステージクリア型のモードはどれもステージ構成がよく練られており、遊んでいるうちに自然とルールやテクニックが覚えられるようになっている。後半になると徐々に難易度が高くなるが理不尽なほどの難しさではなく、ちょっとの気付きで一気に突破口が開けたりする。
      • 爆発が起こる組み合わせではカーソルが変化するなど、ゲーム画面中に多くの情報が組み込まれている。それでいて見づらくはない。
      • ステージとステージの間でヒントデモが流れる。内容は基本ルールから応用テクニックまで多彩。一度見たヒントはguideモードで閲覧可能。
  • 初心者も熟練者も楽しめる、シンプルで奥深いシステム
    • 基本ルールさえ理解すれば、何となくの操作で「建つ」楽しみを味わえ、分かってきたら今度は計画的に「建てる」ためのやりこみと達成感を味わうことが出来るようになっている。
    • 「斜め置き」というテクニックがあり、障害物の少ないステージではこれを使うだけで簡単に連鎖が置き、爆発も狙いやすい。しかし難易度が上がるとデビルや山が増え、一筋縄ではいかなくなる。クリアするには計画的なピースの配置、「魔法陣」と呼ばれる定石の利用、そして少しのひらめきが必要。一見デメリットの多そうな「建物をわざと潰す」「ギリギリまでデビルを退治しない」「わざと山を作る」なども上級プレイでは立派なテクニックの一つ。
    • 連鎖が起こりやすい場所は、ある種の幾何学的な特徴(斜めに同レベルの建物が建っている等)がある場合が多い。そのため「実際に爆発させたら何レベルになるか」はぱっと見分からなくても、「何となく爆発させたら高レベルになりそうな場所」は見つけやすい。
  • 豊富なゲームモード
    • 基本モードだけで7種類。裏モードを含めると倍近くになる。それぞれの内容も、総合版とも呼べるtour、じっくり考えるpuzzle、ひたすら建てまくるscore attack……など、きっちり特色づけられている。

賛否両論点

  • viewモードの存在
    • ポーズ中にviewモードに移ることができ、これを使うとポーズをかけたままゲーム画面をじっくり見れてしまう。ご丁寧にカーソルも動かせる。
    • 難易度が高いことに対しての救済措置だと思われるが、他のパズルゲームでは御法度であることが多く、賛否が分かれている。
      • 発売当初、パスワード入力によるインターネットランキングに対応していたため、「嫌なら使うな」だけでは済まされない部分もあったようである。現在ランキングサービスは終了しているため、viewモードを使わないことによる実害はない。

難点

  • 直観的に解けないゲームシステム
    • 難易度が上がるほど「論理的思考力」と「配置パターンの暗記」が重要になり、「ひらめき」や「直観」に頼ることができなくなる。
    • どこに何を落とせばよいか、どこに何が建つか、頭で分かっても直観的に分かりにくい。
      • ピースを落とした所に建物が建つとは限らないのが非常に厄介。それどころか建てたい場所に不用意にピースを落とすと、土マスが消えてしまい建設チャンスを逃してしまうことがしばしば。初心者が最初に躓く所であり、また慣れてきても焦ると思わずやってしまいがち。
    • また、puzzleモード以外ではフィールドがスクロールするため、じっくり考えたくとも考えられないというジレンマがある。
  • 覚えることが多い
    • ピースの相性や、建物を揃えることで何レベルの建つかについては法則性はあるものの、ほぼ総当たりで覚える必要がある。
    • また、論理的思考のみに頼って高レベルの建物を建てるのは非常に難しく、大抵は高レベル建設用の定石を覚える必要がある。
    • これらの要素は、「建つ」楽しみを味わうだけならしっかり覚えていなくても問題ない。しかし狙って建物を「建てる」ためには覚えていないとつらい要素である。
  • 後半の難易度の高さ
    • 前述の難点もあいまって後半はかなり難しい。「パズル好きだけでなく誰もが手軽に楽しめる(Amazonの紹介文より)」と紹介されているが、誰もがクリアできるかどうかはまた別問題。
    • tourの最終ステージは早いスクロールスピード、いやらしいマスの配置、高レベルのデビル満載と三拍子そろった難関コース。おまけに長い。その分クリアした際の達成感もひとしおではあるのだが。
    • また、難易度の上昇がわりと急。tourモードやstageモードなどではうまく調節されておりそこまで急には感じないが、それでもデビルと山が両方出てきたあたりで急に難しくなる。逆にステージがランダム生成されるendlessモードはこの問題が顕著である。
  • その他の問題点
    • tourのガイドを消すことが出来ない。
    • ルールを一言で説明しにくく、未プレイ者に本作を紹介しにくい。せっかくversusモードがあるのに……。

総評

ゲームルール・システム・ビジュアル・音楽に至るまで、全てにおいて完成度の高い良作。
知名度こそ低いものの、他では味わえない楽しさと中毒性があり、「隠れた名作」として本作を推す声も根強い。


余談

  • 前述の通り公式サイトでインターネットランキングが行われており、リザルト画面のパスワードを入力することでスコアや建てた建物数を競うことができた。現在すでにサービスは終了しており、また公式サイトも既に消滅している。
  • 『XIゴ』や『ブラボーミュージック』に本作の体験版が収録されている。逆に本作には『XIゴ』の体験版が収録されている。
  • 公式ガイドブックとして、「オトスタツ公式わくわくたいけんBOOK」が存在する。本作の体験版がついているところをみると、案内本としての要素が強めと思われる。
+ タグ編集
  • タグ:
  • PZL
  • ソニー・コンピュータエンタテインメント

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最終更新:2021年04月19日 10:48