破壊王 キング・オブ・クラッシャー

【はかいおう きんぐ・おぶ・くらっしゃー】

ジャンル 3D破壊アクション
対応機種 プレイステーション
発売元 ファブコミュニケーションズ
発売日 1998年11月12日
定価 5,800円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 自称「究極のストレス発散ゲーム」
劣悪な内容で究極のストレス蓄積ゲーム
荒削りなアクションゲーム
操作性が劣悪で破壊のカタルシスが半減
強すぎる警察と自衛隊
自転車操業すぎるシステム
バカゲーに見えて決して笑えない内容


概要

主人公の「司馬 九造(しば くぞう)」を操り、破壊と進化を繰り返しながら衝動の赴くままに全てを破壊し尽くす事が目的の3D破壊アクションである。
キャッチコピーは「サラリーマン、壊しまくり」


ストーリー

平凡なサラリーマンである司馬は、ある朝、自宅で朝食を取っている時に奇妙な昆虫に首を刺されてしまう。

すると、突然、司馬の全身を怒りと破壊への衝動が駆け巡る。謎の昆虫は、司馬にゆっくりと語りかける。

「壊せ。怒りを内に秘める事は無い。お前を苦しめ、お前を縛る全てを破壊してしまえ。怒りを破壊に変え、全ての束縛から解放された時、お前は永遠の自由を手にするだろう…。」

そして、司馬は内から湧き出る衝動に従い、己を束縛する世界の全てを破壊し始める……。


ゲームシステム

  • ステージクリア方式の3Dアクションゲーム。クリアまでのプレイ時間は4~5時間程度。
    • 操作はスティックと十字キーで移動、□でジャンプ、その他のボタンは攻撃に使う。
      • ステージを進むごとに司馬の姿がより巨大な生物に変化していき、その時々の姿によって繰り出せる攻撃も異なってくる。
  • ステージは「ノーマルステージ」と「ボスステージ」の二種類が存在する。
  • どちらも基本的にはステージ中に散らばるオブジェクトを破壊する事で「破壊率ゲージ」を蓄積させ、これを完全に満たす必要がある。
    • ノーマルステージはその状態でステージ最奥部のゴール地点に到達すればクリアーとなる。
      • 「ここがゴールですよ」と分かるような目印は存在しないのだが、基本的にステージは一本道なので行き止まり=ゴール地点である。
    • ボスステージはゴール地点が存在せず、ターゲットとなる特定の建造物を完全に破壊すればクリアー。破壊率は別途に稼ぐ必要があるが、大抵は目標の破壊中に溜まる。
  • 制限時間は存在しないが、HPに相当する要素として「ドーパミンゲージ」が存在し、時間経過と共に減少していく。ドーパミンゲージがゼロになれば力尽き、ゲームオーバーとなる。
    • ドーパミンゲージはオブジェクトを破壊する事で回復可能。その一方で、敵からの攻撃を受けると激しく減少する。また、R2ボタンと攻撃ボタンの組み合わせで出せる特殊な攻撃を行った場合も僅かに減少する。
      • ノーマルステージの場合、もしゴールに辿りついた時に破壊率が足りなければステージを逆行する必要に迫られるため、往復の間にドーパミンゲージは大きく減少してしまう。このため、破壊率を適度に上昇させつつ進行する事が重要となる。
      • ボスステージは狭いマップ内でとにかくターゲットを完全破壊すればよいので時間によるドーパミンゲージの減少は余り気にする必要はないが、大抵の場合非常に苛烈な攻撃に晒されるので、それをいかに捌きつつターゲットを破壊するかが重要となる。
  • ステージを進めるごとに司馬の姿は大きく変容していく。
    • 具体的には、人間→獣人→恐竜火を噴く怪獣空飛ぶ大怪獣と変化を重ねていく。*1
      • 変身するごとに破壊のスケールがどんどん大きくなり、人間の頃は車一台壊すのにも一苦労だが、空飛ぶ大怪獣ともなるとビル群も簡単になぎ払える。
  • ストーリーは一本道。しかし…(内容は後述)。

特徴・評価点

豊富な破壊オブジェクト

  • 破壊をメインの要素に据えているだけの事はあって、マップ上の破壊可能なオブジェクトはとても多い。グラフィックも手放しに褒められはしない出来だが、色々取り揃えて頑張っている*2
  • いかにも現実にありそうな会社のオフィスや閑静な住宅街、巨大な都市をただただ徹底的に破壊するのは、背徳感もあるがもちろん快感もある。
    • プロパンガスを破壊して民家を爆破したり、イスを蹴り飛ばして窓をぶち破る等、破壊の連鎖はそれなりの快感がある。
  • 形態が変化する事により、それまではただの障害物だったものが壊せるようになるのも楽しい。

BGMが秀逸

  • BGMの多くは、当時ロックバンド「THE STREET SLIDERS」のギタリストであった土屋公平氏のギター演奏をベースに作曲されており、ファンクな音楽が作品の雰囲気にもよくマッチしている。
    • 軽快でエッジなBGMが破壊音と小気味よく重なり、爽快感を引き立てるのに一役買っている。

問題点

劣悪な操作性

  • 操作性が悪く、破壊の快感を大幅に削いでしまっている。
    • キャラクターの動きが緩慢で、その場で方向転換が出来ない。後ろを向くだけでも非常に緩やかな弧を描いてカーブしなければならず、苛立ちが募る。また腕の振りが滅茶苦茶に大きいにもかかわらず移動速度は非常にノロノロとしており、まるでツルツルの地面を走らされているかのような錯覚を覚える。
      • 実はL2ボタンと方向キーを組み合わせる事でその場で方向転換が出来るのだが、痛い事にこの操作方法は 説明書に記載されていない 。たかが方向転換を隠しアクションにするはずが無いので単なる記載し忘れと思われるが、 よりによってなぜこれを載せ忘れたのか
  • やたらと無駄なアクションが多い。
    • 色々な種類の攻撃ができるのは良いのだが、どれもこれもやたらもっさりとしたモーションで、しかもかかる時間が威力に比例する訳ではない。
    • 結果として、モーションが短めの攻撃(パンチなど)を連発した方が強力になってしまい、破壊活動が単調になる。
    • ジャンプもお察しの通りかったるいモーションで、ジャンプ中の攻撃なども不可能なため必要性が薄い。本来は障害物を飛び越えたりするのに使うのだろうが、このゲームでは壊した方が早い
      • 一応、攻撃を避けたり、破壊不可能なオブジェクト(残骸等)を避けるのに使えない事もない。また、巨大な形態になるとジャンプによる体当たり自体が攻撃としても使い道がでてくる。
  • しゃがみ(R2+□)に至っては完全に無用の長物。アクション的にもギミック的にも求められる場面は一切ない

バランスが悪い

  • 破壊率の為に、意外と計画的な破壊活動を行わないとクリアできない。
    • マップ上のオブジェクト全てを破壊する必要は無いのだが、いくつかのステージは大部分の掃滅を強いられる。
    • ゲージが溜まらず、体力をすり減らしながら破壊可能なオブジェクトを求めてマップをうろうろと歩きまわったり、あとでゲージが足りなくなる事を恐れてしらみつぶしにオブジェクトを破壊して回ったり……「好き放題破壊を楽しむ」と言うよりは、「生き残るために地道に物を壊す」とでも言うべき状況に陥ってしまう。
      • これに前述の操作性の悪さが加わって、ゲーム全体のテンポが悪くなってしまっている。
    • 特に序盤はこの傾向が強く、そのせいでハードルが高くなっている。
    • 恐竜になって以降はそれなりにやりたい放題出来るのだが、後半に進むに連れて破壊できるオブジェクトがほとんどビルと敵のみになってしまい、今度は新鮮味が無くなってくる。最終形態にもなるともはや眼下の街並みを火炎放射や衝撃波で一方的に攻撃して機械的に破壊率ゲージを稼ぐのみで、気分はさながら雑草刈りである。
      • 前半部分は擁護しがたいが、後半は単調ながら人によっては楽しめるかもしれない……といったところである。
        冷静に言ってしまえば、ペース配分を間違えてしまった、とも言えるだろう。

人間を破壊できない

  • 序盤に登場する生身の人間は破壊することができない。
    序盤のステージでバンバン拳銃を発砲してくる警察に対しこちらの出来る事が逃げ回る事しかないというのはやはりストレスである。 その後のステージで登場する戦車やヘリは当たり前の様に破壊可能なので、その分ここが際立って理不尽に感じる。
    • 人間を直接殺害出来てしまうとゲーム性や対象年齢が変わってしまうので、そこを懸念しての事であるのは想像に難くないが、
      その割には最初のステージで赤子を抱いて逃げる自分の妻を攻撃した時には何かを破壊した時の音が響くという悪趣味な演出が入っている。
      (ただし、これは某氏の動画にもあるように隣室にあるタンスを破壊しているだけであり、実際にそれらを破壊したわけではない。)

ボリュームが薄い

  • 何度もゲームオーバーになる割に3時間でクリアできてしまう。
    • エンディング2パターン両方を攻略しても6時間といったところか。

ストーリーが難解

  • 極めて難解……を通り越して、ハッキリ言って訳が分からない。
    • 謎の虫に刺されてから、衝動のままにガソリンスタンド、変電所、ダム、国会議事堂、東京タワーまでも破壊し、やや苦戦しつつも自衛隊との戦闘に勝利した司馬。こうなれば、目指す先はもう世界しかない。
+ ネタバレあり
  • 脈絡なく渡米し、ニューヨークを火の海にした後、待ち受ける最後の敵は自由の女神である。特に説明も無く喋りだし、「あなたがやってくるのはわかっていました、でもあなたに私が破壊できますか?」等とラスボスに相応しい貫禄を見せつけてくる。しかし流石は大国アメリカの象徴、挑発的な台詞の通り手ごわい。アメリカ軍の苛烈な攻撃のみならず、いかなるテクノロジーによるものか手に持った松明からビームを発射して攻撃してくる
  • やがて二人(?)の激しい戦いによりリバティ島は更地と化し、地平線の果てまで見える景色の全ては炎に包まれる。既に生き物の姿は無く、動く物と言えば司馬、女神、 そして絶え間なく降り注ぐ無数の隕石 のみである。女神は「無益な破壊の先に貴方は何を得るつもりなのか」と問うが、司馬は止まらない。そのまま女神に攻撃を加え続けていると、唐突に赤ん坊の泣き声が響き渡る。すると突然、女神を護るように司馬の子供が彼の前に現れる。赤子の命に構わず戦いを続けるのか、それとも……。
    • ここでの行動によって、エンディングは2つに分岐する。

以上、読めばわかるように、あまり笑える内容ではないやたら軽快で陽気なBGMも、むしろプレイヤーの心を不安に駆り立てる。
「サラリーマン 壊しまくり」というコピーにふさわしいストレス解消用バカゲーを期待すると、思いもよらぬ陰惨な内容に唖然とさせられる結果となる。
全体を通してみると、人を殺すという行為の重さを実感させられる前半部よりも、怪獣となって街を壊し軍隊と戦う後半の方が、むしろ不快感の少ない、ありがちな内容になっているといえる。
一応、エンディングの分岐から察するに、破壊という行為に対するアンチテーゼ的な作品かもしれないが、それでは「ストレス発散ゲーム」を謡っているのに矛盾である。


総評

何をしたいのかは良く伝わってくる。「破壊アクションゲーム」の“破壊”の部分への拘りには一定の評価を下せるかもしれない。BGMも手を抜かず、良く頑張っている。ゲームそのものとしても何とか遊べるレベルではある。
だが、“アクションゲーム”としての部分の作り込みが甘いせいでそれらが台無しになっている。これではあまりにもったいない。
ストーリーや設定もバカゲースレスレだが、そこはコンセプト的にも二の次と思われるため、あまりうるさく言っても仕方ないところ。
「3Dでモノを壊しまくれればストレス発散ゲームになる!」という発想自体がそもそも安直に過ぎるという事もあるだろう。
ハード初期のような粗削りなゲームに落ち着いているところが惜しいところである。

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最終更新:2023年06月12日 17:42

*1 獣人=オージィー、恐竜=ビシュヌ、怪獣=シヴァ、大怪獣=ブラフマーという名前が付いている。後ろ3つはヒンドゥー教の3大神が元ネタ

*2 ただし、要所要所で挟まれるムービーの出来映えはハッキリ言ってお粗末。