ベルセルク 千年帝国の鷹篇 聖魔戦記の章

【べるせるく みれにあむふぁるこんへん せいませんきのしょう】

ジャンル アクション
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 サミー
開発元 ユークス
発売日 2004年10月7日
定価 6,980円(税抜)
レーティング CERO:Z(18才以上対象)
判定 良作
ポイント ガッツの辛さを味わうゲーム
凄まじい原作再現度


概要

月刊ヤングアニマルにて不定期連載中の三浦建太郎の漫画、『ベルセルク』のゲーム化作品。
ドリームキャストで発売された『ベルセルク 千年帝国の鷹篇 喪失花の章』に続く、家庭用ゲーム第2弾。
原作ありきのゲームとしてはかなり異例のレーティングがCERO:Z(18歳以上のみ対象)の作品である*1
シナリオはタイトル通り原作の千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇前半部を元にしている*2が、オリジナルキャラクターや本来はないグリフィスやゾッドとの対峙がある等、ゲーム化に伴い若干のアレンジが加えられている。


システム

  • 基本的には無双シリーズ辺りをイメージしてもらえればそう間違ってはいない。主人公ガッツを操り、むらがる魔物を大剣「ドラゴンころし*3」でなぎ倒してステージごとに決められた目的を達成するのを繰り返していく。
    • 特殊攻撃は、ガッツが全身に仕込んだ武装(投げナイフ、炸裂弾、義手大砲、ボウガン)と仲間キャラのサポートであるパートナーアサルト(回復のパック、攻撃のイシドロ、敵の動きを止めるセルピコ、防御力を上げるシールケ)を使い分ける。一度使った特殊能力は、各能力ごとに定められたクーリングタイムが経過するまで使えなくなる。なお、パートナーアサルトはシナリオでその仲間が加わるまでは使えない。
    • 時折、体力ゲージに「烙印」が表示されることがあり、この瞬間に△ボタンを押すと、敵を一撃で倒せる「ガッツアクション」が発動する。
    • また、他にもバーサクゲージというゲージを消費して、一定時間攻撃速度を大幅に向上させる「バーサクモード」というシステムもある。
  • 成長システムは経験値制だがやや特殊で、獲得した経験値を任意のパラメーターに割り振ることで、パラメーターごとに成長させる方式になっている。原作の関係上ガッツ以外の操作キャラがいないので、プレイヤーごとに個性を出すためにこのようなシステムにしたと思われる。
    • パラメーターは、耐久力、バーサク(バーサクの持続時間延長)、剣速、剣技(コンボの種類が増える)、溜め斬り(溜め斬りの威力上昇)、各種兵器及びサポートキャラのレベルアップ。攻撃力は上昇することはない。
      • 兵器やサポートキャラのレベルを上げると、クーリングタイムが短くなったり性能が向上したりする。
    • 経験値は敵を倒したときの他コンボをうまく繋げることでも稼げる。
    • また各地に点在する隠しキャラ「スプリガン」を集めることで経験値が手に入ったり、追加要素が入手できる。
  • セーブは各ステージクリア時か、ステージ途中に設置されたセーブポイントで行う。この際経験値の振り分けも行う。

評価点

  • 原作の重厚でグロテスクな世界観が良く再現されている。
    • グラフィックレベルはPS2全体で見てもかなり上質。全体的なグラフィックの方向性は、暗い雰囲気で固められており原作の世界観を壊していない。青空が見えるシーンすらほとんどなく、大抵吹雪だったり曇天だったり大雨だったり。まぁこれは原作からしてそうなのだが…。
    • 本作にまともな安全地帯はほとんどない。基本的にセーブポイントだろうが容赦なく敵は襲ってくる。原作でもほぼ眠る暇が無いレベルでガッツは敵に襲われているのでこれも原作再現。
  • テーマソングには、『剣風伝奇ベルセルク』『ベルセルク 千年帝国の鷹篇 喪失花の章』に引き続き平沢進氏を起用*4
    • これに合わせられるオープニングムービーは恐ろしいほどの高評価を得ており、原作ファンからは大絶賛されている。
      ちなみにこのOP、約3分というフルコーラスに近い長さながら全く長さを感じさせない。それほどまでに見入ってしまうのである。
    • なお、テーマソングの歌詞については「何言っているか分からない」と度々議論されるが、造語であり特にこれといった意味はない。
      実は歌詞の原案は原作者の三浦健太郎氏。そのままだと歌にならない為、平沢氏がアレンジしたとの事。
  • OPに限らず、各ムービーはかなりの上質であり、原作の名場面を上手く再現している。序盤の「蝕」のシーンなどほぼトラウマもの。
    「狂戦士の甲冑」使用のシーンや、その中に入り込んでガッツを連れ戻すシーン等も、エグさも含めて非常に高い原作再現度を誇っている。
    この辺りは当時まだアニメ化されていなかったので、本作が初の映像化となったのもインパクトを強めている。
  • 原作付きのゲームとしては珍しいCERO:Z指定だが、それに相応しくグロテスク描写に関して遠慮は一切ない。
    • 通常攻撃でも血飛沫は当たり前で、ガッツアクションを使用すると胴体切断、脳天から一突き、剣で地面に押し倒して踏みにじるなど、魔物ごとに固有のアクションで思いっきり殺し尽くす。原作でもガッツの戦い方は大体こんな感じなので、「原作再現にこだわったら自然とCERO:Zになってしまった」のかもしれない。
    • また、返り血を浴びて赤黒く染まっていくガッツの体やドラゴンころしも、原作と全く同じ汚れ方をする。本当に芸が細かい。
  • アクションゲームとしては動作・攻撃速度が若干モッサリしているが、むしろガッツの剣撃の重量感を再現する上ではこの演出は上々だと言える。
    • バーサクモード発動で大幅な高速化は可能。ただし、終了時に若干隙がありコンボが途切れてしまうのが難点。
    • 大砲発射からの反動斬りなども使えるなど、アクションゲームとしても原作再現を重視している。
    • ボスキャラクターに対するカウンターアクションはショートムービー仕立てになっており、演出としてカッコイイだけでなく、成功させると大ダメージを与えられる。
      • しかもアクション・モーションは原作再現の嵐である。例えば原作「生誕祭の章」でモズグスにトドメを刺したアクションが、本作では別の敵へという形で取り入れられている。怪物を喰らう怪物と評された荒々しさだけでなく、原作で見せた「凄い"剣士"」ぶりもカウンター/ガッツアクションで存分に再現されている。
    • 操作はやや複雑だが、冒頭にチュートリアルがあり、ロード画面で応用アクションの解説もされるなど配慮されている。
    • 最低難易度のEASYならゲームに慣れていなくてもサクサク進める程度の難易度になっている。
  • シナリオは多少の変更・修正はあれど、基本的に原作に忠実。先述したアクションも含めて原作再現度は非常に高い。
    • 声優も従来作と同じ神奈延年氏や渕崎ゆり子氏を起用。そちらから『ベルセルク』に入った人でも違和感なくプレイできる。
    • オリジナル展開として、剣の丘*5でのゾッド(使徒)戦、霊樹の館でのグルンベルト(使徒)戦*6等が用意されている。
      • これがまたオリジナル展開とは思えないほどの充実した内容であり、違和感が全くない。ガッツを踏みつけて雄たけびを上げるゾッドや、その口内に大砲をぶち込む等のアクションは原作ファン必見。
    • ゲームオリジナル使徒が登場するが、世界観を壊さず溶け込ませている他、ガッツの過去を掘り下げる内容になっているため問題視の声はない。
      • オリジナルではあるが原作中でも人気の高かった霧の谷の使徒に似た姿をしており、原作のそれと同じような演出がある*7
      • 追加されたシーンは、ガッツのトラウマをえぐるかのような精神的にえげつないものが多い。それだけにとある原作の名台詞がより引き立つという効果もある。
    • なお、クライマックスはグルンベルド→ゾッドの連戦となっている。原作ではグルンベルトを無視してそのまま脱出したが、ゲームにおける最終戦を用意したいがためにこのような展開にしたのだろう。
  • 設定集等も存在し、より『ベルセルク』の世界観に迫れるようになっている。未読の方も安心…というにはショッキングなシーンが多すぎるが。
  • クリア後は装備・時間に制限が加えられた上ボス等を倒すモード「100-animal murder」が追加。クリアする事で追加武器が手に入る。
    • 追加される武器は傭兵時代のガッツの剣(だんぴら)、サラマンデルの短剣、エンジョイ&エキサイティングな気分になれる棍棒、ゾッドの斬馬刀等の原作再現武器から、何故か世界観完全無視のエレキギターまで様々。
      • 原作中でも謎のままだった、シールケがガッツに渡そうとした斧が「土精の斧」という名前で登場している。
      • ただし、武器を変えても変化するのはリーチだけでモーションや攻撃力に違いは出ない。その為、一番強いのは結局初期装備のドラゴンころしである。まぁドラゴンころしよりエレキギターが強かったら色々台無しなのである意味仕方がないが…。

問題点

  • テンポの悪さ
    • ガッツのモーションに重量感があり、若干もっさりしているのは原作再現としてむしろ好評なのだが、唯一の例外が移動速度の遅さ。
    • 移動速度が遅い上にマップがやたら広いため、ステージクリア条件を達成する為にマップ中を駆け回る必要がある事もあるのでかなり面倒。
    • ロード時間もやや長めな上に、頻度も多い。人によってはかなり気になるだろう。
  • 構成のまずさ
    • ゲームではイーノック村をトロルの襲撃から守る原作と同じ内容の戦いがあるが、「村人が襲われてます、助けに行ってください」とシールケから指示があるのでそこに行き、トロルを100匹以上倒す。すると「今度は違うところで村人が襲われてます」と言われ別の場所に行き、またワンパターンに群がってくるトロルを100匹倒す…の繰り返し。
    • 特に寺院前の攻防戦は原作で言えばページをめくる度にトロル100匹斬りをせねばならず、オーガが出てきたときは驚愕より先にイベントが先に進んだことへの安堵感が来る始末。
  • 敵が堅い
    • 一撃で倒せる敵も多いのだが、それらは連射ボウガンでも一撃で倒すことが出来る。ドラゴンころしがオーバーキルな訳でもなく、攻撃力そのものは同一である。
    • ドラゴンころしで数回切るよりも、弓を撃ち、とどめの一撃のみドラゴンころしで切った方が効率的。
    • また、成長要素にガッツの攻撃力を高めるというものはない。その為、後半になるほど出現頻度が高くなる堅めの雑魚との戦いはストレスが溜まるだろう。
    • ボスは輪をかけて堅い。原作中にもあるガッツの起死回生の一撃が演出の一環としてあるのだが、ボスを倒しきるまで、同じ演出を何度も何度も繰り返してみることになる。
  • ボリューム
    • 全6章8ステージ。ゲーム全体のボリュームはそれなりにあり、総プレイ時間も決して短くはならない。
    • しかし難易度を変えてゲームクリアしても特に特典はなく、クリア後の「100-animal murder」のみ。つまりボリューム自体はそれなりだが、1回クリアしてしまうと他にやる事がほとんどない。
    • クリア済みのマップには、魔物を倒していく事で「魔物残存率」を減らしていくというやりこみ要素があるが、達成特典が(ネタ的にはおいしいが)微妙。移動速度の遅さから虱潰しに倒していくのがかなり面倒くさく、それだけの価値があるかと言うと…。
    • ガッツの成長を他難易度に引き継ぐ事も出来ず、ゲーム開始時の難易度で固定されてしまう。この為に最高難易度のEXPERTだろうが誤魔化し一切なしに自分の腕だけで戦う必要がある。ある意味これも原作らしいと言えなくもないが…。
    • ちなみに、成長させきると見る間に大砲ゲージ、炸裂弾ゲージ、仲間能力ゲージが回復していく為ひたすら大砲を撃ち、炸裂弾を投げるヌルゲーと化す。
  • パートナーアサルトは使用する度にスキップ不可のムービーを見せられテンポが悪い。
    • レベルアップする度に演出が変わるなど凝ってはいるが、2回目以降は流石に鬱陶しい。ゲーム攻略の上で必須アクションなので何度も使う必要がある。
    • また、仲間キャラはサポートではなく、ガッツと共に戦ってくれた方が良かったとの意見もある。セルピコやイシドロを操作できるシーンもない*8
      • 一応同行している仲間は時々台詞をしゃべるのだがパターンが少なく何度も同じことをしゃべるので、これも鬱陶しい。
  • いくつかのバグが報告されている。再現性や頻度、数は多くないが、ステージをクリアできなくなるという厄介なものも存在する。

総評

BGM・グラフィック・アクション・原作再現を非常に高いレベルで纏めた、キャラゲーの鑑と呼べる作品。
特に重厚な世界観や原作アクションの再現精度は極めて高く、原作ファンの誰もが唸らされる出来となっている。
ロード時間や移動速度といった問題点もあるが、それを補って余りある魅力を持つ作品であり、原作ファンなら是非手に取ってもらいたい逸品である。

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最終更新:2021年05月22日 20:00

*1 現在のCEROレーティングにおける指定。2006年3月までは「18歳以上対象」だった。

*2 大体黄金期編の終わりからシールケが仲間に加わり共に旅立つ辺りまで、コミックの22巻から27巻の物語。

*3 原作未読者の方に説明しておくと「ドラゴン殺し」の誤記ではない。平仮名が正式名称である。

*4 ちなみに『ベルセルク 千年帝国の鷹篇 喪失花の章』のテーマソングも、アニメ版の劇中歌のアレンジという素晴らしいチョイスだった。

*5 蝕で亡くなった旧鷹の団団員を弔うために、リッケルトが無数の剣を立てた丘陵地。

*6 原作では使徒のグルンベルトとは殆ど戦わなかった。

*7 「ロストチルドレンの章」のロシーヌ。子供が深く関わることに加えメインストーリーにあまり関係ないことから、作品屈指の人気エピソードながら映像作品等では真っ先に削られる。

*8 もっとも、この時のイシドロは実戦で通用するレベルではなかったが。