金色のガッシュベル!! ザ・カードバトル for GBA
【こんじきのがっしゅべる ざ かーどばとる ふぉー げーむぼーいあどばんす】
ジャンル
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魔本ファイルカードバトル
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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発売元
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バンプレスト
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開発元
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ビーンカードレーベル
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発売日
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2005年7月28日
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定価
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4,800円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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『ガッシュTCB』のゲーム版 粗は多いが『ガッシュTCB』の楽しさは味わえる
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金色のガッシュベル!!シリーズリンク
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概要
週刊少年サンデーで連載されていた漫画『金色のガッシュ!!』およびそのアニメ版『金色のガッシュベル!!』。
本作は、それらをもとにしたトレーディングカードゲーム『金色のガッシュベル!! THE CARD BATTLE』を、GBAで遊べるようにしたものである。
ストーリー
ガッシュ達の暮らすモチノキ町で、『金色のガッシュベル!! THE CARD BATTLE』が流行し始め、ガッシュもそのブームに乗ってカードゲームを始める、と言う至極単純なストーリー。
プレイヤーはガッシュ視点でカードゲームを行い、モチノキ町制覇を目指す。
カードゲームのルール(簡略)
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「魔本ファイル」に合計32枚のカードを収めて1つの魔本(デッキ)を構築する。
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一般的なカードゲームと違って「デッキをシャッフル」する事によるランダム性がなく、コンボや防御ページなどをよく考えて構築する必要がある。
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カードのカテゴリは5種類(ゲームに収録されている物のみ)
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魔物カード:《ガッシュ・ベル》など、術カードやパートナーカードを使うために必要なデッキの要となるカード
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パートナーカード:《高嶺清麿》など、魔物カードに付けるように場に出すカードで、場にあれば基本的にいつでも効果を使用できる
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術カード:《ザケル》など、魔物が攻撃や防御を行うためのカード
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イベントカード:《やさしい王様》など、魔物カードとは関係なく使えるが1ターンに1度しか使用できないカード
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MJ12カード:《ビッグ・ボイン》など、盤上での挙動はパートナーカードに近いが、魔物カードとは関係なく場に出して使用する
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術やイベント、魔物の効果の使用にはMPが必要。
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MPは準備フェイズ・スタートフェイズ・エンドフェイズの処理で、自分の魔本のページを1枚めくる時に2個増える。
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バトルはお互いに魔物カード、パートナーカードをフィールドに配置し、魔本ファイルの中に収めた『術カード』を使って攻防を行う。ダメージを受けたプレイヤーは、そのダメージの数字分だけ魔本のページをめくる。
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最終的に、先に魔本を全てめくりきられたプレイヤーが負けとなる。
評価点
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GBA(かつキャラゲー)にしてはかなり高い完成度。
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対戦中はキャラが吹き出しで反応してくれ、セリフのパターンも豊富。ゲーム全編においてキャラ崩壊も見られない。
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しかも、全てのキャラにボイス付きのセリフがある。それぞれの量は多くはないものの、GBAでここまでするのはなかなかの拘り様を感じさせる。
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術の演出等もGBAソフトとしては申し分ない。
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対戦中のBGMはアニメOPである「カサブタ」「君にこの声が届きますように」「見えない翼」のメドレーミックスと言う豪華な代物。
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過去の魔界王決定戦の優勝者のデッキを見る事ができる。
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第1回から第4回までの全部門における優勝デッキ(合計12個)を収録しており、ファンへの配慮が見られる。
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尤も、下記の問題点のせいで一概に長所とは言えないのが残念な所。
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「効果の割り込み」の簡略化。
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本TCGにおいて、最も難解かつ誤った認識も多かったルールである「効果の割り込み」が簡略化されており、未プレイ者でも参入しやすいよう配慮されている。TCG既プレイ者からは一部疑問の声が上がる事もあったが、初心者を取り込む事を考えれば英断だったと言えるだろう。
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「効果の割り込み」とは発動された効果に対して、解決前に他のカードを発動・解決する事ができるルールである。『Magic: The Gathering』で言う所の「スタック」。
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具体的には「割り込み合いが起きた場合の上限が3回まで」「割り込み解決中に新たな割り込みの発動を禁止」と言う点が変更されている。
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ソフト単品でフルコンプ可能。
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通信限定のカードなどは無いので、これから遊ぶ人も安心。
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配信要素だった「輝く赤い魔本」ファイルと《カードバトルforGBA》カードもフェイスパスと言うパスワード機能で入手可能。
問題点
カードプールに関する問題点
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収録されていないカードが多い。
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本作では実際のパック・カードダスを元としたカードダスによってカードが手に入る(スターターデッキや拡張カードダスのカードは直近の弾に混入される)のだが、収録範囲の中から使用率の高かったカードや印象的なカードを中心に抜粋して収録と言う手法が取られている。ゆえに実用度の低いカードや、面白い効果を持っていても使用率は低かったカードは大多数が未収録である。
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それに限らず条件の指定や発動タイミングなど、ゲームで再現する事が困難と言う理由で採用が見送られたと思われるカードも存在する。本来であれば、大会優勝者のデッキに採用されていた《志を継いで》はその最たる例だろう。
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切り捨てられた中には人気のキャラも多かったため、(既プレイヤーからすれば頷ける結果であっても)カードでの事情を知らない原作ファンには「わざわざ人気キャラを外してまで、人気の劣る敵キャラを採用する理由は無い」等と受け取られてしまった。
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例えば、原作において序盤で出た敵キャラに過ぎない「レイコム」はリアルのカード環境において「MP枯渇デッキ」の中核として活躍をしており、石版魔物編の中ボス格の一人「ツァオロン」も「格闘デッキ」における主流カードだった。
逆に、収録されなかった人気キャラの例を挙げると「バリー」は本作発売の11弾時点までで登場していたカードはとても貧弱、「パムーン」はかなり特殊な効果が多くゲームでは再現が困難だった事が不採用の理由として考えられる。
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無駄としか思えない収録が多い。
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特にガッシュやブラゴと言った主要キャラの魔物カード・術カードは、実用性の低い物までもが大量に収録され過ぎている。リアルのカードで登場の頻度が高かった事も影響しているのだろうが、GBA版収録のために取捨選択を行うなら、その時に厳選されても良かっただろう。
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前述のレイコムについても、魔物やパートナーの効果が強力である一方、術カードは弱いカードばかりで使用率は極めて低かったため、その術カードを大量に収録した事には疑問が残る。
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弱キャラ枠のNPCに使わせるためにわざと弱いカードを収録した、と言うような工夫が見られれば良かったのだが、そうした意図も感じられない。
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アルバム専用カード(見るだけで使えないカード)が多い。
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当時最新弾のカードやプロモーションカードなどがアルバム専用カードとして収録されている。収録されていても使う事ができないのでは意味が無い。カードカタログとして利用するには不完全なので、どちらにしても中途半端。そんなカードを収録するくらいなら、その容量を使用できるカードに充てた方が有意義だっただろう。
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カード環境の問題点はそのまま。
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そもそも『ガッシュTCB』では禁止カードやエラッタによる弱体化は行わず、インフレとメタカードで環境を塗り替えていく販売方針だった。
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そのため「MP枯渇魔本」や「格闘魔本」などの猛威を振るったデッキが本作でも構築可能。序盤から中盤に掛けては勿論、終盤になってもメタカードを採用していない相手はいるので、そういったデッキが通用してしまう。
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発売時の環境で対策し辛かったコンボは特に暴れ放題となる。「無敵手駒」コンボ等が良い例である。
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収録カードの関係か、魔界王デッキ博物館の内容が不完全。
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評価点としてあげた魔界王決定戦の優勝者のデッキは、概ね原型通りではあるものの、一部カードが未収録であるために他のカードで代用されていたり、データミスまで存在しており不完全な内容となっている。
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GBAのROMの容量や製作時間の都合で仕方がないのかも知れないが、ギャラリーを作るならせめてその分のカードは収録して欲しかった。
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魔界王デッキ博物館の不完全な点
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未収録カードゆえの変更
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第3回ジュニアの26ページ目:誤E-061《アーイル・ビー・バーック!!》 正E-069《志を継いで》
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第3回ミドルの18ページ目・22ページ目・28ページ目:同上
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第4回ミドルの16ページ目:誤M-122《ゴーレン[悪夢]》 正E-104《石の呪縛》
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第4回ミドルの24ページ目:誤E-077《僕の王様》 正E-069《志を継いで》
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データミス
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第2回ジュニアの27ページ目:誤M-001《ガッシュ・ベル[やさしい王様]》 正M-053《ブラゴ[王の風格]》
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第4回ジュニアの21ページ目:誤E-076《月の石のカケラ》 正E-070 《黒い覇道》
(《黒い覇道》は本作に収録されている)
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ルールやカード効果に関する問題点
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先攻第1ターンのスタートフェイズにページをめくってもMPを増やせるルールを採用している。
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先攻第1ターンのスタートフェイズにMPを増やせないルールは、公式は大会ルールと言う扱いだったようだが、現実には大会準拠の増やせないルールでゲームが行われる事が大半だった。そのため既プレイヤーには違和感を与える事になってしまっていた。
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後攻の場合、相手ターン中は展開できないため、先攻が第1ターンにMPを増やして一気に展開や攻撃をしてくると非常に不利になってしまう。バランスを考えても増やせないルールの採用が妥当だったであろう。
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以下のカードにはバグが確認されており、本来の楽しみ方ができなくなってしまっている。
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《レイラ&ビクトリーム[意外なコンビ]》は、レイラの呪文を打つ度に自身に魔力カウンターを1つ乗せられる効果なのだが、《ミグロン》を打つ際にある操作をすると一気に魔力カウンターが最大数まで乗ってしまうバグがある。これを利用すれば最大溜めの《チャーグル・イミスドン》が簡単に撃ててしまう。
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《ビクトリーム[おかわりだ!]》は本来ターン中に使った効果を「もう一度だけ」使える効果なのだが、このゲームではバグで1ターンに何度でも使えるようになっている。相手のMPが8以上の時に相手のページをめくれる《ロデュウ[クソったれ]》とコンボすれば、一気にゲームエンドに持ち込めてしまい、前半でMPを溜めて後半で一気に攻めるタイプのデッキを一方的に潰してしまう。
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とは言え、このゲームの対人戦は通信ケーブルによる対戦のみなので、バグ利用コンボを使うような相手とは戦わなければ良いのが救いである。CPUもバグ利用のコンボは使用してこない。
CPUの問題点
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壊滅的に弱い。
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「スタートフェイズに自分の魔本のページをめくる」と言う行為を行わない。
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このゲームでは「相手のターンに使う防御用の見開き」と「自分のターンに使う攻撃や展開用の見開き」を交互に作ると言うのが基本の一つである。自分でページをめくらないと言う事は、自分のターンに防御用の見開きで動けない等の状態に陥ってしまう。
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自分からページをめくる事でMPも増えるので、増やしたMPで一気に攻撃する等の戦術もあるのだが、CPUはそれすら理解していない。
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自分のカードを理解しておらず、コンボもほぼ使わない。
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1ターンに2回使える効果を1回しか使わなかったりする。
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毎ターンエンドフェイズに石版状態の魔物を敵味方問わず健康状態に戻す効果がある《月の石》を自分で使っておきながら石版状態にする効果を使ってくる。
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「自分の魔本の好きなページから○○を△△する」というタイプの効果はただ場に出すだけで、ゲーム終了まで発動さえしない。なぜ使えないカードをCPUのデッキに入れさせたのか。
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相手のバリエーション不足。
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このゲームでは「デッキをシャッフルする」概念が無く、お互いのデッキとプレイングで勝負が決まるため、同じデッキ同士で対戦を繰り返すと飽きやすい。
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そのため相手にもバリエーションが求められるのだが、登場するNPCの数が少ないと言う欠陥を抱えている。同じキャラでも異なるデッキを持っているが、使用してくる魔物が同じだったりと変化が体感し辛かったりする。
ストーリーの稚拙さ
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決して悪くはないのだが、要するに「強い奴を求めて練り歩く」だけのストーリーであり、物足りないと思ったプレイヤーも少なからずいた。
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複雑な設定やシナリオを転覆させるような大掛かりな展開、考えようによって変わる印象的なシーン等は無く、目立った面白みに乏しくもある。原作もさほど複雑なシナリオではなかったが、ここまで単純では無かった。
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ただし、プレイヤーの年齢層が非常に広かったので、しかたがない面もあっただろう。
カード獲得のバランスが考えられていない
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ゲームシステムに反してカードが集め辛い。
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このゲームでは、対戦1回につきコインが1~2枚手に入り、コイン1枚でカード4枚をカードダスから獲得できる。1回の対戦には10分近く掛かるので、カードは中々増えない。このバランス自体は、他のTCGのゲーム化でも似たり寄ったりではある。
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しかし、『ガッシュTCB』ではそれぞれ魔物に対応したカードをデッキに入れなければならない為、魔物カードが無いせいで使えない術やパートナーばかりが手に入る、あるいはその逆が多発してしまい、新しいカードが手に入ってもデッキに組み込めない事が多い。そもそもカードが中々増やせないので、同じデッキでプレイし続けるしかない状態が続いてしまう。
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一応、このゲームのカードダスは「既に上限数持っているカードは出現しなくなる」と言うシステムになっているので、同じ弾を買っていれば目的のカードが手に入る確率は上がる。
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また、カード購入時の強制セーブは無いので、リセットで欲しいカードが出るまで粘る事も可能。
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否が応でも初期デッキに入っている《ガッシュ・ベル》系カードは中盤辺りまでほぼ必須カードとなる。
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少し進めると収録弾が解禁される《ダニー[連続パンチ]》は魔物の効果で攻撃を行う事ができるため、術やパートナーを集めなくても使う事が可能で、連続攻撃によりダメージを通しやすい。おかげで大体の人がこのカードに頼る流れになってしまっている。
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中盤に入るとミニゲームでコインを得られるようになる。しかし、これがバランス崩壊に。
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なんと僅か20秒のミニゲームでコインを3枚も増やす事ができる。
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おかげでいくらでもカードを獲得できるようになり、デッキ構築は快適になるのだが、カードを集めるために対戦を行う必要が無くなり、ゲームとしてのバランスがまるで崩壊する。
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縛りプレイとして、ミニゲームを使わないと言う事もできるが、前述のバランスなので…
総評
贔屓目に見ても粗だらけで、ボリューム不足も否めない非常に惜しい作品。
しかし、カードを楽しむためのソフトとしてはまずまずの及第点。
キャラゲーとしての出来は良く、懐かしのボイスやBGMと共に『ガッシュTCB』が楽しめる。
かつてのガッシュファン、旧ルールを懐かしんで遊びたい当時のガッシュTCBプレイヤーなど、ちょっとでも気になった人は手に取ってみる程度の価値はある作品と言える。
余談
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リアルのガッシュTCBでは、本作発売の4ヶ月後に大幅なルール改定となる「真ルール」が施行された。
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真ルールについては「金色のガッシュベル!!THE CARD BATTLE @Wiki」で確認を。
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本作で用いられているのはそれ以前のルール(通称「旧ルール」)であるため、本作をシミュレーターとしての使用は難しくなってしまった。
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本作では理解しやすいように簡略化されていた「効果の割り込み」であるが、旧ルールではリアルのものとは差異があり、真ルールでは廃止となったため、本作からの参入者を却って混乱させる事となった。
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『ガッシュTCB』は2006年に販売とサポートが終了されてしまったが、原作・キャラクターの根強い人気によりファンやコレクターは現在も存在している。連勝PRカードや最終弾のレアカードは驚くほどの高価格で取引されている。
最終更新:2022年12月06日 19:20