このページでは、MCD『夢見館の物語』(「良作」)と、その続編であるSS『真説・夢見館 扉の奥に誰かが…』(判定「なし」)、外伝であるSS『月花霧幻譚 ~TORICO~』(判定「なし」)を取り扱う。



夢見館の物語

【ゆめみやかたのものがたり】

ジャンル バーチャルシネマ(アドベンチャー)
対応機種 メガCD
発売元 セガ・エンタープライゼス
開発元 システムサコム
発売日 1993年12月10日
定価 7,800円
プレイ人数 1人
周辺機器 バックアップRAMカートリッジ
セガマウス対応
判定 良作


静寂の恐怖が息を潜める



概要

CDの大容量を生かし動画を積極的に用いた「バーチャルシネマ」と呼ばれるゲームの第2弾(第1弾は『ナイト トラップ』)。
その幻想的な雰囲気は多くのユーザーを引き付け、今でも根強いファンが存在する。


特徴・評価点

  • 全編3Dの自分視点で展開する館を歩き回る臨場感の高さ
    • この当時は3Dで移動するといっても現在のように館内をフルに歩き回れるというものではなく、ポイントからポイントへ移動する際に移動する動画を再生する形ではあるものの、当時としては臨場感が桁違いに高い。
    • 移動に関する操作も非常にわかりやすく、文字情報やアイコンの使用も最低限に抑えられ、非常にとっつきやすいシステムとなっている。
    • 謎解きの要素があるといってもヒントを教えてくれる場所が存在し、デストラップも少ないため難易度的にも万人向けである。
  • 独特の幻想的な雰囲気と静謐の恐怖感の高さ
    • メガドライブ・メガCD自体はお世辞にもあまりグラフィック性能は高いとは言えない側面はあるものの、それを逆手にとって油絵調の画面にすることによって独特の幻想的な雰囲気を作り出すことに成功している。
    • 登場人物のほとんどが蝶の姿をしているがゆえに一種独特の不思議さを感じさせる。
    • ゲームの長さ自体は非常に短く1時間程度でクリアできるが、この独特の精神に忍び込むサイコホラー的かつ悲哀や切なさを感じさせるストーリーの完成度は非常に高い。
  • フルボイスで展開される声優陣の熱演、幻想的なBGM
    • 先述した独特な雰囲気を、折笠愛氏やこおろぎさとみ氏などの当時の一線級の声優を用いた熱演が引き立ててくれる。声のみで館の住人の人柄や内面を表現しており脱帽もの。
    • BGMも後に『耳をすませば』『ぼくらの』などの作品の音楽を手掛けることになる野見祐二氏が担当し、その幻想的なBGMは本作の世界観をより深く見せるのに役立っている。
    • また、要所要所で無音の場所があったり、時計の振子音や足音などが距離や環境などによって音量や反響度が異なってくる点など、効果音やBGMの使い方も光る。

問題点

  • ボリューム不足
    • さすがにこれだけのムービーを大量に用いた作品なだけに仕方がない側面はあるが、それでも短かすぎるとの声は拭い切れないだろう。
  • 謎解きについてはやや冗長すぎるきらいがある
    • ゲームのテンポを阻害するというほどではないものの、欠点が少ないだけに目立つ。
  • 謎解きに必然性がない
    • ヒントや、そこからの推理である程度論理的に謎解きができる。しかし、そういった謎や仕掛けがある理由や必然性がまったく説明されていない。

総評

短いながらもその独特の幻想的な雰囲気と静寂の恐怖があいまった逸品。
今でこそ粗の目立つ作品ではあるものの、比較的潤沢に出回っており入手難度も低いので、遊べる環境があるのであればぜひとも一度プレイしてみてほしい作品。


その後の展開

  • 後にSSで続編として1994年に『真説・夢見館 扉の奥に誰かが…』が発売された。
  • また、本作の外伝的な作品として『月花霧幻譚~TORICO~』が1996年に発売されている。この2作品に関しては下記を参照されたし。
  • 本作はセガがかつて展開していたゲームソフト配信サイト『セガゲーム本舗』にて、2004年6月1日より1か月間テスト配信としての無料配布を経て、2004年12月1日よりメガCDソフト配信第1弾として提供されていた。現在はセガゲーム本舗の閉鎖により配布終了。
  • 2022年10月27日発売のメガドライブミニ2にて本作が収録された。

真説・夢見館 扉の奥に誰かが…

【しんせつ・ゆめみやかた とびらのおくにだれかが…】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 セガサターン
発売元 セガ・エンタープライゼス
開発元 システムサコム
発売日 1994年12月2日
定価 7,800円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 憂う生首たち

概要(真説)

  • 『夢見館の物語』の続編。本作では夢見館の住人「ジュン」となって、館で起こった事件を解決する。

システム(真説)

  • 基本的にはアクション性のない3Dアドベンチャーである。
    • 移動は前作同様に定点間を移動するもので、自由度は低い。
      • 当時のADVに有りがちだが、部屋を出入りする時にわざわざドアノブを握る表現が入る。他の蝶が部屋を出入りする場面ではドアノブなぞ関係なく出入りしているのにである。
    • 登場人物らの会話はフルボイスである。
  • 感情入力システム
    • 主人公は全く言葉を発しないため会話の選択肢はないが、他の登場人物と唯一コミュニケーションを取る方法として感情入力システムがある。
    • 感情入力システムとは、他の登場人物が主人公に話をしている時に話の内容について「肯定」「否定」をボタン操作で入力するもの。
      入力結果によってバッドエンディングが確定する場面もある。また、入力すべきところでなにも入力しないと「無視」となる。

評価点(真説)

  • 新しいハードに合わせてグラフィックが大幅に麗美となった。
  • 夢見館の人々(?)の心の闇をうまく表現できている。
    • この館の住人は皆永遠の命と引き換えに蝶になって夢見館に引きこもった人達であり、いろいろな想いを抱えているのが窺える。

問題点(真説)

  • 前作と同様の圧倒的なボリューム不足
    • 3~4時間程度でクリア可能。バッドエンド以外の分岐はなく一本道である。
    • 謎解きと言えるほどの仕掛けもない。
      • 謎自体はあるにはあるものの、超展開であっけなく解決する。
    • グラフィックは綺麗だが、館の中自体は雰囲気ゲーとして歩き回れるほどの広さもなく、自由度もない。
      • これは好みの問題だが、前作をプレイしたユーザーには綺麗になったことで逆に幻想的な雰囲気が損なわれてしまったという評価もあった。
  • 全体的に漂う未完成臭
    • わざわざグラフィックが作り込まれ、いかにも何かの謎解きであろうギミックが全く無意味だったりする。非常に短いプレイ時間から考えると、恐らくは作りかけのまま放置されたと思われる。セガサターン本体の発売に合わせて急ピッチで発売させられたとも邪推してしまう。
  • 演出が奇妙
    • 夢見館の住人らは蝶であり、前作では蝶のまま表現されていたのだが、主人公が住民らと会話するときは何故か人間だった頃の姿の生首で会話する。
      • グラフィックに力を入れて、蝶を描き分けるということは出来なかったのだろうか?
    • バッドエンドの演出が電波
      • バッドエンドが確定すると他の登場人物から「隣の部屋に行け」と促され、わざわざ行くと何故かその部屋が改装されていてバッドエンドを告げられるという周りくどい演出なのだが、その部屋にいる人物の主人公に対する仕打ちが電波。
    • ラストがあっけらかんとしている
      • 少女のボケで終わるのだが、人が死んでいる中でこの展開には疑問の声もある。

総評(真説)

グラフィックは綺麗になったが歩き回れる範囲は狭い。主人公が蝶なのだから階段を使う必要はないだろうがそういう移動の自由度もない。
ストーリーは人物像は濃いが謎解きといえるレベルの謎解きはなく、そして短い。
演出も奇妙と言うしか無く、製作者側は驚かそうと思っていないにもかかわらず、初めて生首と対面した時は恐怖を感じる。
問題は、その奇妙な演出は狙ったものではないことで、あと少し吹っ切れていれば逆に伝説になったかもしれない。
登場人物らの回想シーンには特に力が入っており、製作者らが本作で表現したかったことは謎解きではなくそこにあるのだろうか…。


月花霧幻譚 ~TORICO~

【げっかむげんたん とりこ】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 セガサターン
メディア CD-ROM2枚組
開発・発売元 セガ・エンタープライゼス
発売日 1996年6月28日
定価 6,800円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 中世の街の3Dマップを彷徨う

概要(月花霧幻譚)

  • 『夢見館の物語』の外伝。
    • ストーリーは何もつながっておらず、時代すら違う。
      • 世界観も、月の力によって蝶になった人々が出てくる部分が似ているだけである*1
    • システムはシリーズを通じてほぼ同じである。
      • 本作は中世の西洋の街の3Dマップを使ったアクション性の低いアドベンチャーゲームである。
      • 前作の感情入力システムは無くなったものの、それ以外の操作性は全く同じである。

ストーリー(月花霧幻譚)

4年前に記憶を失ったフレッドは自分が何者なのかを探る旅をしていた。
そんな中で立ち寄った「霧の街」でフレッドは「他所者である」という理由だけで牢屋に入れられた。
霧の街の領主ゴードンから、伝説の「月の街」への道を探すように命じられ、見つけられなければ殺すと脅される。

システム(月花霧幻譚)

  • 基本的にはアクション性のない3Dアドベンチャーである。
    • 移動は前作同様に定点間を移動する。
      • 細かい変更点として、本作では部屋を出入りする時にドアノブを握る表現がなくなっている。
    • 登場人物らの会話はフルボイス。
      • 前作では主人公は一言も発しなかったが、本作ではかなり独り言を言う。

評価点(月花霧幻譚)

  • グラフィックがさらに麗美となった。
    • 中世の西洋の街並みをそれなりに表現しており、しかも前作から比べると移動できる範囲はかなり広くなった。
      • その広さは『シャドウ・オブ・メモリーズ』と同等の広さがあるのではないかと思わせるほど。
    • 同年代の作品とは比するものがないぐらいポリゴンがヌルヌル動く。
  • ボリュームが前作の倍以上
    • 前作はCD-ROM1枚をしかも2/3程度しか使っていなかったのだが、本作は2枚組み。
      プレイ時間も8時間程度。
    • 謎解きもしっかりある
      • 1作目は脱出ゲームぽかったのに対し2作目はほとんど謎解きがなかったため評価が分かれたが、本作では再びそれなりの謎解きがちりばめられている。
  • 演出もまともに
    • 本作で怖いと言われているのは、凶兆編の最後の主人公の白目ぐらいである。
    • 前作では蝶の人が話す場面で唐突に生首が現れたが、本作では全身が描かれるようになった。
      • しかし逆に、話をしない時でも人の姿のままなので「蝶の街に人間がいる」と誤解したままの人が大半となった。

問題点(月花霧幻譚)

  • 街で迷う
    • 中世の西洋の田舎町では有りがちなことだが、道がくねっていてしかも環状に繋がるため、自分がどこにいるのかはおろか街の全体像すら把握しにくい。
    • マップの構造はリアリティ的にはありだと思うが、問題はシステム的なサポートがない点。ミニマップが表示されれば良かったのだが。
      • 手書きでマップを書くのもかなり困難である。さらに、攻略本も月の街のマップに間違いがある。

総評(月花霧幻譚)

グラフィックは、もはやこの年代では最高レベルとなった。
前作で非難を浴びた謎解きの量もそれなりの水準へと戻り、総プレイ時間も倍以上となった。
ストーリーは一本道ではあるが、救った人の数に応じてエンディング後に変化があるというきめ細かな対応もあり、内容も前作に比べて共感できる結末を迎える。
ストーリー的には佳作レベルだが、中世の田舎街の3Dマップは現在の中古価格であれば見て損はないだろう。

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最終更新:2023年08月17日 22:45

*1 一応、ある登場人物は後に『夢見館の物語』で蝶として登場しているが。