夢をかなえるゾウ

【ゆめをかなえるぞう】

ジャンル 自分、伸びるでぇ! シミュレーション
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 トライファースト
開発元 ユークス
インテンス
発売日 2009年5月21日
価格 5,040円(税込)
プレイ人数 1人
セーブデータ 1箇所
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント 人気自己啓発本のゲーム化
コミュニケーションに特化した内容
やり直しがきかない残念仕様


概要

  • 2007年に発売され人気を得た自己啓発本『夢をかなえるゾウ』のゲーム化作品。名目上のジャンルはシミュレーションゲームとなっているが…。
  • 任意セーブ方式。操作はタッチメインだが、十字キーやボタンにも対応している。

『夢をかなえるゾウ』とは

原作の紹介・及びゲーム舞台

作家である水野敬也氏が著書したビジネスマン向け自己啓発本。一般的な自己啓発本と比べユーモラスな描写が多く、一部ではファンタジー小説として解釈される事もある。
とある1人暮らしのアパートを舞台に、突然居座る事となった(自称)神様「ガネーシャ様」と住民*1との奇妙な同居生活を描いた内容。
本作は原作の完全再現に加え、原作の倍以上のボリュームを持つオリジナルエピソードも収録されている(ジャケット裏の見出しから抜粋)。

ガネーシャ様に時折、住民に「課題」を出してくる。課題といっても、難しい知識や前置きは必要としない簡単なものばかり。しかし、「それを継続的に続けるのが大切」とガネーシャ様は言う。
一見では「課題といえるのかどうかすらも怪しい」課題ばかりだが、ガネーシャ様は「世界の偉人達は"自分の与えた課題"を守ってきた」のだと豪語する。それが真実かどうかはさておき…。

本作では原作と同じシチュエーションにて、「ガネーシャ様との同居生活を送る」という形でゲームが進行する。

ガネーシャ様の人物(?)像

突然プレイヤーの前に現れた(自称)神様。ほとんどの人間にはガネーシャ様の姿が見えず、「プレイヤーは選ばれし人間だからこそ」見えるとの事。

同じ名前であるヒンドゥー教の神様の一柱とはおそらく無関係。「擬人化した象で4本の手を持つ」という点は共通しているが、あまり威厳的な雰囲気は感じられない。
性格は非常におっさん臭く、短気で些細な事でもすぐにキレかかる。人の家へと勝手に同居しておきながら、住民の所有物を私物みたいに扱うなどの"あつかましい"一面も…。
重度のヘビースモーカーであり、さらには糖尿病が心配される程の"あんみつ"好き。また、ギャンブル狂でもあり、暇があればパチンコに通うのが日課らしい*2
コテコテな関西弁で会話を行い、その口調は神様とは思えない程の滑稽なもの。課題を出す際、偉人を引き合いにする度に「~くん」「~ちゃん」という愛称で呼ぶのが通例である。


主なルール

  • 契約書について。
    • ゲームを始めると、ガネーシャ様から「契約書」のサインを求められる。
      • 「プレイヤーの名前」「年齢*3」「性別」をサインしてゲームスタート。ゲーム途中でサイン変更をする事はできない。
  • ゲームの流れ。
    • 基本的にはガネーシャ様とコミュニケーションするだけのゲームである。
      • 画面は常時「住民(プレイヤー)のアパート部屋の中でガネーシャ様が住んでいる」という主観視線となっている。特例イベント時を除き、任意で部屋画面を抜ける事はできない。
      • 部屋画面には「ガネーシャ様」や「様々な家具」などが配置されており、これらをタッチすると何かの行動を起こせる。
    • 本作には一般的なシミュレーションゲームと違い、「ゲーム中に目指さなければならないクリア目的」というものは定められていない。
      • 「ガネーシャ様とコミュニケーションする ⇒ 下記の課題イベントに遭遇」の繰り返しで話が進展するといっていい。ゲームオーバーなどのペナルティに陥る心配も一切ない。
  • ガネーシャ様への行動について。
    • 部屋画面内にいるガネーシャ様をタッチすると、以下のコマンドから好きな行動を選べる。
      • 「語る」…ガネーシャ様が色々な会話を語ってくれる。ある程度の会話を聞くと課題へと発展する。会話によっては選択肢が発生する場合あり。
      • 「いじる」…ガネーシャ様の体の"あちこち"をいじれる。あまりにも激しい"いじり方"をすると"とんでもない"事が起きる…!?
      • 「何もしない」…何もせずに元の部屋画面に戻る。
  • 課題イベントについて。
    • 上記行動を繰り返す事によって、ガネーシャ様が様々な「課題イベント」を出してくる。
      • 一度発生した課題はセーブデータを削除しない限り二度と発生しない。課題の再鑑賞は下記の課題リストで行える。
      • 一部の課題は特定条件を満たしていないと発生しないものがある。よって、ただガネーシャ様の語りを聞くだけでは、とある課題が歯抜けする可能性が考えられる。
      • 本作における課題は「プレイヤー自らが現実世界で行う」ものであり、行った課題証拠をゲーム内で提出する術はない。
    • 課題終了後は一時的にガネーシャ様が画面から消えてしまう。
      • 消えたガネーシャ様を呼び戻すには「電話をする」「現実世界で時間を置いてからゲームを起動する」といった方法がある。
  • 牙のカケラ・家具購入について。
    • ゲーム内では定期的に「牙のカケラ」というお金的なアイテムを入手できる。
      • 入手方法としては「ゲームを起動する度に貰える」「家具をタッチする」などの方法がある。逆にとある条件を満たしてしまうと、牙のカケラが没収されてしまう場合もある。
    • 入手した牙のカケラと引き換えに、「家具素材の購入」が行える。
      • 購入した家具素材は自由にデザイン変更が可能。なお、画面内における家具そのものは終始不変であり、後述家具以外のものを購入する事はできない。
      • 変更対象の家具は「テーブル一式」「壁紙」「タンス」「壁飾り」「置物」「衣類」「テレビ」「窓 & カーテン」「カーペット」「照明」の10箇所。家具の素材は各10種類ずつ存在する。
  • 特殊な家具について。
    • 以下の家具をタッチすると、様々な設定変更や鑑賞などが行える。
  • 「PC」の設定変更。
    • 「課題リスト」…今までに出されたガネーシャ様からの課題を鑑賞できる。全60の課題が存在する。
    • 「インテリア」…家具素材の購入・及び家具のデザインを変更できる。
    • 「ゲームをやめる」…セーブをした後にゲームを終える。
    • 「解約」…セーブデータをリセットし、一からゲームをやり直す。
    • 「戻る」…部屋画面へと戻る。
  • 「本棚」のデータベース鑑賞。
    • 課題中における「引き合いにされた偉人達の簡易情報」と「ガネーシャ様のイケてるセリフ集」の各鑑賞が行える。
  • 「テレビ」の視聴鑑賞。
    • 6つのチャンネルがあり、何かを押すと専用のTV映像が流される。同じチャンネルでも状況によっては映像が変わる場合あり。5と6のチャンネルはスタッフロール鑑賞となっている。
  • 「ステレオ」のBGM設定。
    • ゲーム内で流すBGMのサウンドテスト・及び選曲ができる。ゲーム開始時では限られた楽曲しか選べないが、ゲームを進めれば選曲数が増えていく。
  • 「まりも」と触れ合う。
    • プレイヤーのペット(?)である"まりも"と触れ合える。行動によって"まりも"が成長する…らしい。

特徴

ゲームとしての特徴

  • ゲーム性は"ほぼ"皆無。
    • 率直にいえば本作は"ゲーム"といっていいのかすらも怪しい内容である。
      • 本作にはタイトル画面が存在しない。ゲームを起動すると"すぐさまに"部屋画面へと移行し、ガネーシャ様とのコミュニケーションが開始される。
      • ゲーム内で行う行動は原則として「ガネーシャ様と会話して、時折挟まれる課題を聞く」だけ。行動次第でエンディングが変わる事はなく、一本道で会話と課題が進行していく。
      • 強いてゲーム性を述べるならば「ガネーシャ様をいじくり、その反応を楽しむ」「家具や"まりも"をタッチしてみる」「家具をデザイン変更する」位のものしかない。
      • 本作における公式ジャンルは「シミュレーション」と名乗ってはいるが、「育成する」「経営する」「戦略・戦術を立てる」的なシミュレーション要素は全く存在しない。
    • コミュニケーション特化のゲーム。
      • 同じトライファーストからリリースされているDSソフト『佐賀のがばいばあちゃんDS』と本作には、明らかにゲーム化向けじゃない題材という共通点を持つ。
      • 『がばいばあちゃん』の場合は「半ば強引にゲーム性を組み込む」のに対し、本作の場合は「ゲーム性を廃し、コミュニケーション性だけに特化している」という点に相違がある。
      • ゲーム性が皆無な為、「遊戯的な意味でのゲーム」としての本作はクソゲー未満のシロモノでしかないだろう。何たって「遊べる部分がない」のだから"どうしようもない"訳で…。
        しかし、余計なものを斬り捨てている分、コミュニケーションゲームとしての本作は非常に魅力的な内容となっているのも事実である。
  • プレイヤー自身が「育成される」ゲーム。
    • ルールでも述べたとおり、ガネーシャ様の課題は現実世界で行うものである。
      • よって、課題が出されたからといってゲーム内で"それ"を実行できる手段はない。プレイヤーが現実世界で達成したと自覚すれば、課題達成の時なのである。これは説明書にも書かれている。
      • すなわち、本作は「ガネージャ様の課題を"バーチャルではない現実世界"で行い、それを続ける事でプレイヤーが現実面で成長していく」というコンセプトの元で課題が出され続ける。
      • ガネーシャ様は「一度出された課題を行ったか否か」を厳密にプレイヤーへ確認する事はしない。「課題達成を認めるのはプレイヤー自身」であり、ガネーシャ様が関わる事ではない為である。
    • 一見では簡単・しかし継続的に続けるのは困難な「課題」の数々。
      • (自称)神様が出す課題なのだから、相当な難題を予想する方も少なくないと思われるが、その課題内容の数々は拍車抜けする位に簡単なものばかりである。
      • 一例としては「可能な限り節約する」「靴を磨く」「トイレ掃除をする」などがあり、そのほとんどが"今すぐにでも達成できそうな"課題となっている。
      • しかしカネージャ様はこう言う、「飽きる事なく"これら"の課題を継続できるか」と。確かに単発では簡単な課題だが、何ヶ月・何年も継続できる者は正直多くないと思われる。
      • ガネーシャ様は課題途中に「世界の偉人達は一般的には軽視されやすい"さり気ない行動"を貫いた」と解説する。「あの超有名な偉人の"意外な行動"」を知っておくのも一興かもしれない。
      • もちろん、素直に課題を達成したからといって、いきなりプレイヤーが凄い立場へと出世するという根拠はない。あくまでも、「邪な考え抜きで課題を意識する」事こそが大切であろう。
  • 降臨! 黒ガネーシャ様。
    • ガネーシャ様は短気な神様である。あまりにも無礼千万な対応をするとブチギレして「黒ガネーシャ様」へと豹変してしまう
      • 黒ガネーシャ様は「黒いオーラをまとった悪魔みたいな顔付き」となり、普段のガネーシャ様に比べても明らかに"おぞましい"雰囲気を漂わせる。
      • 黒ガネーシャ様が降臨すると、「裏課題」という特別課題を出してくる。黒ガネーシャ様曰く「課題を続ければブラックな偉人になれる」との事らしい。
      • 裏課題は"あくまでも"正規課題とは別の存在であり、課題リスト内では鑑賞できない。まさに、表では公表できない程の「ワルの為の課題」といえる。
    • なお、黒くなるのは一時的であり、"ほとぼり"が冷めれば普段にガネーシャ様へと戻る。そして、無礼千万を繰り返すと何度でも黒降臨する…。


↓↓↓ 以下:ネタバレを含む表記です。知りたい方はリージョンをクリック。 ↓↓↓

+ ネタバレ注意
  • 別れは確実にやってくる…。
    • ガネーシャ様がプレイヤーの元へとやってきた目的は「60の課題を伝える」為である。これが何を意味するかというと…。
      • 課題をすべて出し終えてしまうと、目的を果たしたガネーシャ様はプレイヤーの前から姿を消してしまう。すなわち、ガネーシャ様との永遠の別れとなる
      • 普段は"ひょうきん"で軽いノリのガネーシャ様だが、別れの瞬間だけはシリアスな対応でプレイヤーに接する。何だかんだでプレイヤーを思いやってくれるガネーシャ様の対応が切ない…。
      • エンディングは「ガネーシャ様が姿を消し、誰もいなくなった部屋画面でゲームが続行される」というもの。もちろん、ガネーシャ様がいない以上、新たな課題が出される事はない…。
      • ガネーシャ様は消えてしまうが、セーブデータを消さない限り、出された課題はゲーム内に残り続ける。ガネーシャ様がいなくとも、そのまま課題を続けていくか否かはプレイヤーの意思次第…。

評価点

  • ガネーシャ様との色々対談。
    • (自称)神様なガネーシャ様ではあるが、非常に庶民的なノリでプレイヤーに話しかけてくる
      • "大阪のおばちゃん"ばりに関西弁全開で話すガネーシャ様が非常に滑稽であり、「この人(?)、本当に神様なのか?」と疑いたくなる。
      • 「あんみつ食いてえ」「ちょっとパチンコいってくる」など、自堕落的な生活を匂わせる会話が多く、一見では(自称)神様と同居している感じがしない。
      • テレビを鑑賞すると、ガネーシャ様の番組に対する鋭いツッコミトークが聞けるが、このツッコミが某新喜劇ばりの大阪漫才っぽくて吹ける。
    • しかしながら、課題関連におけるガネーシャ様の会話は至って真面目であり、親しみを持ちつつも的確なセリフ回しで語ってくれる
      • 馴れ馴れしい口調ながらも、その一言一言には大きな説得力が込められている。とっつきやすい庶民的ノリも相まって、すんなりと課題が頭に入ってくる程に分かりやすい。
      • 流石に(自称)神様だけあって「普段は自堕落ながらも、決めるときはビシッと決める」という、独特のカリスマ性を感じさせる一面があり、ガネーシャ様の偉大さを実感させられる。

問題点

  • 歯抜け課題の回収ができない仕様。
    • 本作における最大の問題として、普通にプレイすると一部課題を聞けない可能性がある
      • 本作は基本"ガネーシャ様との会話と課題"を繰り返す事でゲームが進行していくが、プレイの仕方によっては課題の歯抜けが発生してしまう
      • さらに問題な事にある程度話を進めていくと、歯抜けした課題が二度と発生しなくなる。すなわち、永久に課題が抜けた状態でエンディングを迎える事となる
      • エンディング後もゲームは続行されるが、上記の事情により課題が発生しなくなる為、どう頑張っても抜けた課題を回収するのは100%不可能となってしまう。
      • 一部の課題発生フラグ発生に関する情報は、ゲーム中において"ほとんど"示されない。よって、プレイヤーの多くは歯抜けした事に気付かないままゲームを進めてしまいやすい
      • どうしても歯抜け課題を回収したければ、解約(セーブデータ初期化)をして一からゲームを始めるしか方法はない
    • そもそも、ゲーム性を廃した作りなはずなのに、こんな難解なフラグを組み込んだのかが分からない。(自称)神様からの試練という事なのか…?

総評

  • 「(自称)神様との奇妙な会話のやり取りを楽しみつつも、人生を生きる上で"ためになる"課題を知る」という面白さを持つ作品。その反面、ゲーム性を求めるのは間違いなくお勧めできない。
  • 原作エピソードが完全収録されている為、本ソフトだけで原作分の内容も楽しめるのが嬉しい。といっても、原作本も面白い作品なので、ファンならば両方所持するのもありかもしれない。


余談

  • 一部説明書の表記がおかしい。
    • ゲームとは直接関係するものではないが、説明書内の後発ページで書かれている2つのQ & Aが誰得すぎる…。
      • 質問者「便秘症で困っている」 ⇒ ガネーシャ様の回答「夜に牛乳500ml飲め。本作のディレクターもよくやるらしい」。
      • 質問者「ジャガイモの芽はどうすればいいのか?」 ⇒ ガネーシャ様の回答「毒あるから調理する前に取っとけ」。
      • 後者側のQ & Aの後ろでは「ってかこのQ & Aおかしくね?」「何でジャガイモの芽の説明せんとあかんねん」というガネーシャ様の突っ込みで締められている。全くその通りだよ…

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最終更新:2021年08月07日 20:57

*1 原作での住民はサラリーマンという設定だが、本作ではプレイヤー自身が住民という設定となっている

*2 流石に容姿が異端すぎる為、外出する時は人間に変装しているとの事。といってもガネーシャ様がそう言っているだけで、作中における具体的な描写はない。

*3 999歳まで入力可能。仙人プレイヤーにも対応?