遊☆戯☆王5D's STARDUST ACCELERATOR -WORLD CHAMPIONSHIP 2009-
【ゆうぎおうふぁいぶでぃーず すたーだすとあくせられーたー わーるどちゃんぴおんしっぷにせんきゅう】
ジャンル
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対戦型カードゲーム
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対応機種
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ニンテンドーDS
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発売元
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コナミデジタルエンタテインメント
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開発元
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ウィル
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発売日
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2009年3月26日
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定価
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5,250円(税5%込)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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5D's世代に突入 序盤からとてつもない難易度 理不尽なステルス&倉庫番 再現度の低い原作ストーリー ライディング200回の苦行
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遊☆戯☆王シリーズリンク
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概要
高橋和希氏原作の人気漫画『遊☆戯☆王』を原作とするカードゲームアニメの第3シリーズ『遊☆戯☆王5D's』のDSソフト1作目。
DS版遊戯王全体としては5作目にあたる。
特徴
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5D'sの物語を追うストーリーモードと、デュエルシミュレーターに特化したワールドチャンピオンシップモードの2種類が存在。
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ストーリーモードは今回からは本格的なフィールド歩行型3DRPGとなり、自分が作ったキャラをネオ堂実野シティで動かすことができる。
またアニメ5D'sでおなじみのライディングデュエルを導入。
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ストーリーは5D'sの1期であり、プレイヤーはアニメでの不動遊星の立場に近い。
したがって、本作における遊星はほとんど空気である。
評価点
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DS版に移行+遊戯王OCGの進化により、多くの追加点がある。
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マスタールール採用。シンクロ召喚等の導入は問題なく成功している。
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収録カードがかなり強化され、拡張パック『CRIMSON CRISIS』とDT『魔轟神復活!!』まで収録。当時の環境トップだった【レスキューシンクロ】【ライトロード】【/バスター】等は問題なく作ることができる。
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以前までの任天堂携帯機の遊戯王ゲーはカードの歯抜け収録が目立ったが本作からはそれなりに改善された。
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特定のモンスターを召喚した際のカットインのBGMに5D's出身のものが加えられた。
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アニメと同じく、ライディングデュエルができる事。
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ライディングデュエルとはバイクに乗ってカードゲームをするというアニメ版未視聴だと理解しがたいデュエル方式。だが、もちろん卓上ではできないアニメ版限定のルールになってしまっているため、これができるというだけで評価に値する。
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しかもこのライディングデュエル、5D's世代になったPSPのタッグフォースでも出来ない事。それが出来るのはワールドチャンピオンシップとWiiのウィーリーブレイカーズだけなので出来るだけでも嬉しい。
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キャラクターの外見だけでなく、D・ホイール(ライディングデュエル及びレースに使用するバイク)のカスタマイズも可能。コース数は少ないがレースも行えるので、カスタマイズした愛車が駆け抜ける様を見る事も出来る。
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全ライディングデュエル及び一部のスタンディングデュエルではアニメと同じMC(CV:ベルナール・アッカ)による実況が入る。
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アニメ同様熱い叫びに定評があり、例えばカードを伏せただけでも「ここでセットー!」などと叫んだりする。
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余談だが「ジル・ド・ランスボウ」とのデュエル前での台詞が「ス」がうまく聞こえず、「ジル・ド・ランボウ」と言っているように聞こえたりする。
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TFシリーズに登場していないキャラ・原作ではデュエルをしなかったキャラともデュエル可能。上記のMCともデュエルでき、自分のデュエルとその実況を併行するという凄技を見せてくれる。
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ただしこちらにはゲームオリジナルカードがないため、【牛鬼】使いの氷室が【アンデシンクロ】の使い手だったりすることもある。
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他にも【マスクド・ナイト】使いのジル・ド・ランスボウが【戦士族ビート】使い手だったりもする。
問題点
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カードバック路線変更の弊害
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カードパックがゲームオリジナルのものから現実世界と同じものになり、OCGプレイヤーであればどこに何のカードが入っているかが一目で分かるようになった。この点だけ見れば評価できるが……
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しかし、デュエリストパック・雑誌の付属・プレミアムパックなど特殊なカードは『WORLD CHAMPIONSHIP EDITION(全8種)』というパックにごちゃまぜにされている。
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『BEGINNER'S EDITION』『EXPERT EDITION』など、「全200種類以上も収録されているので目当てのカードが出ない」「初期に登場した弱いカードが多い」という欠点があるパックのシリーズもほぼ完全再現されてしまっているため、これらに収録されているカードを集めるのには骨が折れる。
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一応救済処置として対戦回数を重ねると通常バックが解放されるのだが、そのバックも『RISE OF DESTINY 』や『ELEMENTAL ENERGY 』と言った第4期のバックばかり。
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追い打ちをかけるように、このゲームでは序盤から相手が《奈落の落とし穴》だの《次元幽閉》だの《神の宣告》だのの強力な除去カードでガンガン妨害にかかってくるし、モンスターもしっかり揃えてある。
WCSモードの対戦相手として初期から開放されている3体のデュエリストでさえ手強いデッキを持ち、デッキテーマの《おジャマ》を殆ど活かせていない最弱のおジャマ・イエローも実際には《怒れる類人猿》と《レスキューキャット》から出す《ゴヨウ・ガーディアン》が主力、攻略Wikiにはデッキテーマを「猫シンクロ」と書かれる有様である。
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一応、OCG準拠という利点を活かし、1つのパックで強力なモンスターが一式揃う【ライトロード】を組むなどの攻略法もあるにはあるが、キーカードは軒並みレアリティが高い。しかもそのパックが出るのは終盤。
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中盤以降はこんな相手ばかりなのに「特殊な方法で召喚できるモンスターを出して勝て!」という出現条件を持つキャラがWDCに数名いる。
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本作から、アニメ5D'sやOCGで目玉になっている「シンクロ召喚」が導入されたのだが、それによって出せるシンクロモンスターの入手が非常に難しい。
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まず、レアリティが高い。ほとんどがスーパーレア以上と容易なものではない。
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次に、パックの出現条件を満たすまでに手間がかかる場合もある。強力なシンクロモンスター《氷結界の龍 ブリューナク》と《A・O・J カタストル》が入っている『シンクロ覚醒!』は、「シングルトーナメント、レベル1で5回優勝」する事が出現条件である。
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同じく、《ゴヨウ・ガーディアン》等が入っている「THE DUELIST GENESIS」「ワームの進行!」は、「ストーリークリア後の特定のキャラに数回勝つ」のが条件。
また、当時の環境で猛威を振るっていた《ダーク・ダイブ・ボンバー》が入っている「CRIMSON CRISIS」は、「ストーリークリア後」に出現する。Wi-fiでのカード配信等を用いず外部情報も見ないで普通にゲームを進めていた場合、高確率でこのパックから4枚目以降のシンクロモンスターカードを入手する事となる。
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こうも入手難易度が高いのにもかかわらず、前述の通り敵が強いので、デッキを強化するためのカードを入手することすらままならないという事態になってしまっている。
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それ以外のシンクロモンスター、及びシンクロ召喚をするのに必要なチューナーモンスターの入っているパックも、大体クリア後に登場するデュエリストに勝つことが条件に絡んでいたり、シングルトーナメントで複数回優勝することが条件のものばかり。シンクロ召喚を本格的に楽しめるのはクリア後になる。
下記のスターターデッキさえ早期に買えれば多数のチューナーやシンクロモンスター、特に切り札になり得たであろうギガンテック・ファイター等が手に入り、多少は穴を埋める事が出来たのだが…
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こんな状況では、単体でシンクロに繋げられる《ジャンク・シンクロン》や初期デッキに足りないレベル8のシンクロモンスターかつ戦闘にも
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デッキ強化の為にパックを買うにはデュエリストポイント(DP)、要するにお金を使うのだが、このゲーム、かなりDPが貯めづらい。
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「連勝ボーナス」というCPUにデュエルを挑んで勝つたびに増えるボーナスがあり、CPUに1勝なら1DP、2連勝なら2DPとどんどん増えていき、前作までは100以上になってもまだ増えるという便利なものだった。負けそうになったらリセットさえすれば連勝は続くので、この仕様のおかげで前作ではかなりDPを溜めやすかった。
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だが、本作では、何故か連勝ボーナスが10でストップしてしまう。
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これとは別に、DPが溜まりにくい原因としてはやはり敵が強く勝ちにくいというのもある。
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こんなにDPが貯めづらいにもかかわらず、ストーリー序盤で1000DP払ってD・ホイールを買うイベントがあったり、D・ホイール強化パーツを買わないとWDCに出現しないキャラもいる。序盤の1000DPは新ボーナス達成ボーナス(1つ満たす度に100DP増加)のおかげであっさり貯まる事も多いが、カードゲームのゲームでカードを買う事以外に大枚をはたきたい人はそうはいないだろう。
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バグ・不具合関係
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ゲームクリア後、とあるデュエリストに話しかけるとトレードイベントが起こるのだが、稀にトークンやスピードワールド等本来デッキに入らないカードが手に入ってしまうバグがある。
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勿論デッキに入れても出したり発動することは不可能。
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この他にもハイパーサイコガンナーで攻撃表示モンスターを破壊しても何故か回復効果が発生したり、ネクロバレーがあってもゴヨウ・ガーディアンの効果が無効化されない等デュエルに悪影響を与えるバグも存在している。
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当然世界大会リストではそれらのカードがトークンやスピードワールド共々禁止カードに指定されている。
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ライディング・デュエルの問題点。
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このルールでは通常の魔法カードは使用できず、Sp(スピードスペル)を代わりに使用することになる。
しかし、(アニメ準拠ではあるが)これの突貫工事ぶりがすさまじい。まずSpを使うにはスピードカウンターが必要だが、それは往復1ターンで2しか貯まらず、12までしかストックできない。おまけにダメージを受けることでも減少する。
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そしてそのSpをカウンターを8だの10だの12だの大量に消費して使うカードが多い。この為Spを組み込もうとするとデッキバランスが崩れやすく、結局は魔法カードを使わない罠カード中心のデッキになってしまいがちで、ライディングデュエルらしさを味わいにくい。
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アニメ版で「スピードカウンター2つあれば使える」という優秀なカードだった《Sp-エンジェル・バトン》などは、どういうわけか「7つ取り除く」という重すぎる仕様に変更されており、使わせようとする気が感じられない。
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次作ではライディングデュエル時のフィールド魔法が《スピード・ワールド2》となり、強力な効果を得られるようになった。さらにダメージを受けた際のカウンター減少は廃止された。
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クリア後のあるパックの出現条件にとして、このライディングデュエルを200回も行わなければならない為完全な苦行になってしまう。
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「行わなければいけない」なので、負けても可能。なので、攻略サイトではライディングデュエルする相手に何回も挑んでワザと負けるデッキが書かれている程である。
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また対人戦でライディングができず、ストーリーのごく限られた相手としか戦えないのも残念なところ。
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ちなみにスタンディング(通常のデュエル)・ライディングを両方行うデュエリストは遊星のみである。
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といってもこのゲームの一応のメインである世界大会のルールは当然スタンディングだし、ゲーム中でも「特別にライディングデュエルで行われるぞ!」といった発言があるため、あくまで「ライディングはオマケ」という位置付けなのだろう。
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パックやある衣装の出現条件として、特定の相手に既定回数の勝利を重ねる必要があるのだが、肝心の勝利回数を参照する方法がない。前作にも存在していた不満点だが、かなり致命的かつ改善しやすそうな要素にもかかわらず、本作では引き続きそのまま。
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後の作品では相手に話しかけ「情報」というコマンドを選んだり、あるいはオプションの「対戦成績表」から勝敗数を見れるようになっている。
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カードと別に挿入される一部ミニゲームが、とにかく覚えゲーでかつ高難度。この攻略がストーリーを進める上で必須となる。
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3DRPG化を生かしたセキュリティ(警察)への潜入や、『倉庫番』のような箱庭を動かしてアイテムを見つける作業等。
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とくにD・ホイールとデッキを取り戻す時の逃走はかなり厳しい。
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動画サイトで、アドバイスありで攻略できた参考動画を上げた人もいるが、それでも出来ないという人がいる…どうしろと。
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次作からは「倉庫番」の難易度が低くなったり、絶対クリアする必要は無くなった。
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D・ホイールレースでは、逃げ切れなければゲームオーバーというミッションが複数回存在する。ストーリーの序盤~中盤でパーツも満足にそろっていない状態だったり、そのくせストーリー上パーツを買いに戻れない場面でも発生するため、詰みに近い状況にもなりうる。
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逆に二回目以降のレースではその時点で買えるパーツを装備しているとものすごく楽になってしまう。アニメ版の展開を知っているプレイヤーなら準備はしているであろうという前提でバランスを整えていると推測される。
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ストーリーの終盤、とある4人のデュエリストと対戦することになるが、全くデッキタイプの違う4人にライフ持ち越しで連勝しなければならない。中断もできないし、負ければ当然ゲームオーバーである。
さらに直前のセーブポイントでセーブしてしまうと、勝利するまでは狭くて何も無い空間に閉じ込められる。この状態だと新パックの開放条件の殆どを満たせないため、力不足を感じてカードを揃えようにも大抵の場合は既出のパックを購入して試行錯誤する事となる。
強力なテーマである【ライトロード】だけは必ず作成できる点が救いか。
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相手のデッキは【アンデシンクロ】【氷結界】【ライトロード】【ダムドビート】と堂々たるデッキが並ぶ。【氷結界】以外は当時のOCG環境を代表するデッキであり、【氷結界】も遅延行動が多いデッキのため連戦するには精神的に疲労しやすい。
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ちなみにこの後、本作のラスボスと戦うことになるのだが、お世辞にも強いと言えない。少なくともこの4連戦の後に控える相手としては弱過ぎる。
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前作のラスボスもライフ持ち越し5連戦ではあったが、負けてもやり直しになるだけでゲームオーバーにはならなかった。
とはいえ、セーブポイント自体は(罠のような存在だが)直前に置いてあるので、ゲームオーバーになったとしても発生するデメリットはせいぜい時間と連戦中に稼いだDP数百ポイントが無駄になる程度である。
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ストーリーもアニメのストーリーを再現と宣伝していたわりには再現性が低い。
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パッケージにも書かれているアニメ本編の主人公「不動遊星」の扱いがひどい。
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アニメで遊星が担っていた役割を今作の主人公が本当に殆ど持っていってしまっているため、基本的にいるだけの扱いになっている。
序盤にD・ホイールのパーツをくれるだけで、主人公のピンチを救ってくれたりとかしない。一応何度か顔を合わせることになるのだが、ほとんどの場合は出てきてすぐに去っていく。
そもそも遊星の目的が終盤まで語られないため、アニメのストーリーを知らないと彼が何をしているのかがわからない。
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それ以外にもアニメの登場人物をわざわざオリジナルのモブキャラに置き換えていたり、原作アニメにはないタッグデュエルトーナメントに強制的に参加させられたりする。
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そして、主人公の設定も色々と納得のいかないことになっている。
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主人公の設定について(ネタバレ)
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実は主人公はアニメで重要な存在「シグナー」の能力を黒幕が再現した人造人間であり、上記に書かれた地獄の4連戦の相手は主人公のクローンなのである。
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しかし黒幕が偽シグナーを作る必要はアニメ版を考慮すれば存在しない。
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おまけに、主人公が偽とはいえシグナーになる都合上、正統なシグナーでありながら遊星はそれに覚醒しないという本末転倒な結末を迎える。
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開発時期的にそこまで考慮できなかったのだろうが、アニメの終わった今となっては疑問の残る話である。
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ついでに主人公に負けたクローンが処分されたと思われる鬱展開のおまけも。
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前作の2008では、テンポも良かったのでかなり早くデュエルが出来ていたが、本作からは何故か、相手のターン(思考時間)がかなり長くなってテンポが悪くなった。
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おそらく、強化されたCPUの思考にDSのハードの処理能力が追い付いていないからだと考えられる。
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同時期に発売されたタッグフォースシリーズも似たような問題が起きていた。
総評
新要素には粗も多いが、遊戯王シミュレーターとしては従来同様良質であり、当時のOCGに近い環境でデュエルができた。
また内容はともかく5D'sの世界観に準拠したライディングデュエルを導入した点で、『TAG FORCE4』との差別化に成功している。
だが、近年のOCG準拠の遊戯王のゲームの中ではかなり難易度が高い部類に入る。
カードの入手やパックの出現すら難しいのはどうしても否めず、そこで大きく評価を落としてしまった。
余談
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Wiiの『遊☆戯☆王ファイブディーズ Wheelie Breakers』と連動すると、ライディングデュエルで使用できるオリジナルカード《Sp-ウィーリーブレイカー》が手に入る。
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本作の付属カードはアニメで鬼柳が使用した「インフェルニティ」シリーズのカード。
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当初の【インフェルニティ】は特別強いデッキではなかったのだが、後の鬼柳のアニメ再登場に伴い凄まじい強化がなされ、環境上位のデッキへと変貌した。
特に本作に付属した《インフェルニティ・デーモン》は【インフェルニティ】の必須カードであり、デッキへの3枚投入が基本なために需要が高まり、シングル価格が信じられない位に高騰してしまった。
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そのため、すでに次年のタイトルである『WCS2010』が発売しているというのに本作が追加出荷されるという異常な現象が発生してしまった。
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後に《インフェルニティ・デーモン》は再録されて入手しやすくなったので、値段は落ち着いている。
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世界大会の予選は昨年同様事前応募は必要なく、指定日にイベントスペースに行って参加する自由参加制であり、全国各地に遠征した人もそこそこいた模様である。
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さすがに反省したのか、次作の『2010』ではシンクロモンスターやストラクチャーデッキが序盤から入手可能・獲得DPの増加等多くの問題点が改善されている。更に敵の強さも調整され、難易度は低くなった。
最終更新:2023年06月18日 11:34