注意:本稿では『天外魔境 ZIRIA』と、そのリメイク作『天外魔境 ZIRIA~遥かなるジパング~』を紹介する。両方とも「良作」に分類。


天外魔境 ZIRIA

【てんがいまきょう じらいあ】

ジャンル RPG
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対応機種 PCエンジン CD-ROM2
発売元 ハドソン
開発元 ハドソン、レッドカンパニー
発売日 1989年6月30日
定価 7,200円(税抜)
判定 良作
天外魔境シリーズリンク

概要

日本をモデルにした架空の国「ジパング」を舞台にした和風RPG。
王道的なストーリー展開のシナリオで、システムそのものもオーソドックスなドラクエ型であるが、ハードの性能を活かした規格外のボリュームによってかなりのボリューム感を生み出しているのが特徴である。


ストーリー

マサカドと呼ばれる怪物を倒した火の一族の末裔の一人である自来也が、
各地に散らばった同じ火の一族の仲間を探し、大門教により復活しつつあるマサカドの打倒を目指す。


システム

  • フィールドがものすごく広いので、Bダッシュができるようになっている。
    • 当時の家庭用RPGでダッシュが行えるものは珍しく、プレイアビリティの面でも検診している。
  • RPGとしてはオーソドックス。
    • 同社の『桃太郎伝説』と同様に段(レベル)が上がった時の能力上昇はあらかじめ決まっていてランダム要素はなし。乱数に怯える心配がない。
    • 戦闘のシステムは素早さの高い順番に行動するターン制。
  • 各地に封印されている「白○○(動物名)様」を解放することで巻物が貰え、使える術が増えていく。

キャラクター

  • 火の一族の中で、蝦蟇(ガマ)・蛞蝓(ナメクジ)・蛇と言う部族(?)に分かれており、「蝦蟇は蛇に弱く、蛇は蛞蝓に弱く、蛞蝓は蝦蟇に弱い」という三竦みの関係が持たされている。
    • 主人公の自来也(声:岩田光央)は『蝦蟇』。綱手(つなで・声:江森浩子)は『蛞蝓』、大蛇丸(声:塩沢兼人)は『蛇』となっている*1
    • 街などでのイベントシーンでこの三人が絡むとき、会話などにこの三竦みの相がみられるなど、キャラクターのやり取りがコミカルで面白い。
  • サブキャラも度々ジライア達に協力してくれる宣教師ホテイ丸、ありとあらゆる手段で全財産を巻き上げてくるアシモト五兄弟など個性的な者が多い。また町の人の台詞も個性があり面白い。
    • 敵である大門教13人衆も一癖も二癖もある者ばかり。特に5番手に当たるキャラは後にシリーズ皆勤を果たすことになる。

評価点

  • CD-ROMを媒体として使用した世界初のRPGであり、「『DQIII』の520倍の容量」とされる破格の大容量を活かし、当時としては類を見ない要素、演出がこれでもかと盛り込まれている。
    • 登場人物は3000人*2、かの坂本龍一によるBGMは三曲が大迫力の生音で収録、アニメ声優やタレントを起用したキャラクターボイス、アニメーションでこれでもかと動き回るキャラクター等、当時としては全てが規格外のモンスター的な作品となっている。
    • 坂本氏に支払われたギャラは一億円と言われている。本人も否定していないので事実だと思われる。
  • スミソニアン博物館東洋研究第3主事である東洋研究家、P.H.チャダの著書『FAR EAST OF EDEN』を原作としている。ただし、この作者や文献の名が他所で確認されたことはない。
    • この件について公式の説明はないが、原作の存在自体がフィクションであり、「外国人から見た間違った日本観」というコンセプトを明確にするための一種のメタ演出であるという解釈が一般的であった。
      • 本作のメインプログラマーである岩崎啓眞が2012年1月1日に自身のブログに書いたところによると、P.H.はシリーズ原案者の一人であるあだちひろしが好きな小説家から、チャダはあだちの名前のアナグラムから取られたそうである(参照)。
    • 加えて、後に『リンダキューブ』などを製作する桝田省治のおどろおどろしさがこのゲームのスパイスとなりシナリオを盛り上げた。
      華やかで奇怪な「ジパング」という世界観を創りあげた原案者の広井王子とあだちひろし、そこに濃密な人間ドラマを加えたシナリオ担当の桝田省治、この3者の持ち味の相乗効果こそが本作の魅力の正体だと言えるだろう。
  • 難易度はシリーズ最高難易度。だが舞台が関東のみであるにもかかわらずひたすらに長いので、やり応えは抜群である。
    • 特にラストダンジョンの江戸城は、凶悪なマップの長さに定評のある『ファイナルファンタジーIII』のラストダンジョンに勝るとも劣らない凶悪さ。
      • ただ、終盤は敵から貰える経験値が急激なインフレを起こすので、しっかり段(レベル)を上げ(本作は敵とこちらの段の差が大きい場合は敵が戦闘中に逃げ出したり、敵の攻撃が当たりにくくなる)数回に分けて攻略すればそこまで苦にはならない。
  • 戦闘の特徴として、戦闘時に仲間一人でも戦闘不能になると全滅扱いになる。全滅すると手持ちの「両」(他ゲームでのGOLD、お金)が半減して宿屋に戻される。洋ゲーかと思うばかりの戦闘不能に対するペナルティへの厳しさは最高のスパイスになっている。

問題点

  • CD-ROM2のノウハウがまだ不十分だったこともあり、ロード回数が多く、時間も長い。
  • エンカウント率が高い。しかもアニメーションするため戦闘にやたらと時間がかかる。
  • 「しらべる」コマンドは足元ではなく一歩手前(目の前)を調べる仕様なのだが、そのせいで少し厄介なイベントがある。
    • 序~中盤あたりで「床下の隠し通路の入口を見つける」というイベントがあるのだが、この仕様のため「一歩手前に立ち、向きを合わせて」調べる必要がある。
  • ドラクエスタイルを意識してなのか、ジライア(主人公)があまり喋ってくれない。
    • また、各地の剣豪達と戦う事で剣技を習得できるのだが発動が完全にランダムのためにほぼ会心の一撃扱いである。
  • 防具は装備しても装備しなくても敵からくらうダメージは大して変わらないのでよろいとかぶとの代わりに道具を持たせたほうがいい。
    • 防具の防御値を設定していないミス疑惑があるとネット上のサイトで語られていた。

総評

CD-ROM2登場からわずか半年でソフトもまだ5本目という状況にもかかわらず、CD-ROMができることをフルに活かした内容は、同時代のゲームと比較すればこのゲームがどれだけ規格外の超大作だったかが分かるというものである。
後のRPG作品においてもゲーム性とビジュアルの両面で大作志向が強まっていくことを鑑みるに、この作品が国内におけるRPGに対して非常に大きな影響を与えた1作と言って過言ではない。

東洋の神秘ともいうべきその独特の世界観は数ある和風RPGの中でも今なお色褪せず、ゲーム性の面でも大作ならではのボリュームで楽しませてくれる。
今から遊んでも決して損はない作品と言えるだろう。


移植

  • 『天外魔境 ZIRIA』(PS3/PSP ※PCエンジンアーカイブスより配信)
    • CD-ROM2では難点となっていたロードの遅さが解消されているので、今からオリジナル版を遊びたければこちらがおススメ。
  • 『PC Engine Best Collection 天外魔境コレクション』(PSP)
    • 『II』『風雲カブキ伝』とセットになったオムニバスソフト。
  • 『天外魔境 ZIRIA~遥かなるジパング~』(2006年/Xbox360)
    • フルリメイク版。シナリオは桝田氏に書き直される前の原案をベースにしている。詳細は下記参照。
    • キャラクターのポリゴンモデリングとカメラワークに難があるものの、それ以外の点(ジライアのセリフ大増加など)は好評で、十分良移植・リメイクの部類に入る。火の勇者たちのキャラデザも向上しており、大蛇丸はより端整に、綱手は今風のデザインになって可愛くなり、ジライアに至ってはアングル次第で二枚目に見えるほど顔つきが男前になった。

その後の展開

  • 本作のノウハウと反省点を生かし製作されたのが本作の正統続編であり、PCエンジン最高傑作との呼び声高い『天外魔境II 卍MARU』である。
    • さらに後年『サクラ大戦』において広井氏の培ったノウハウが最大限に昇華され、桝田氏も負けじと『リンダキューブ』『俺の屍を越えてゆけ』など不気味さ溢れつつも骨太なストーリーを手がけていくこととなった。

余談

  • 元々本作は、戦闘画面が横視点のアクションゲームとなる予定であった。
    • 厳密にいえば、戦闘シーンのメイン画面がドラクエタイプで、戦闘が始まると小さい別ウインドウが表示され、SD化されたキャラを操作して攻撃したり避けたりする簡易的なアクション要素のある戦闘シーンだったという。
    • それをいわゆる完全な「ドラクエタイプ」に1からつくり直すことが決定され、その責任者に抜擢されたのが桝田省治氏であった。
    • ちなみにこのアクションシーンのあるプロトタイプのバージョンはハドソン側からの破棄要請があったにもかかわらず破棄されないまま偶然にもレッドカンパニー側に残っていたという(REDエンターテイメントになってからも現存しているかどうかは不明)。本作の完成版のマスターデータが両社共に紛失したにもかかわらず、このプロトタイプ版のデータが後々になって発見されるのは何とも皮肉である。
+ ZIRIAプロトタイプ
  • 本作は潜在的な人気もかなり高く、没イベントを追加した完全版を望む声も強かった。
    • が、肝心のデータが行方不明になってしまったため、作りたくても作れなかったとのこと。
  • マルチタップ(多人数プレイをするための拡張装置)の3でRun(ファミコンなどのスタートボタンに相当)を押すと「名作昔話じらいあ」と言うミニコントが始まる。
  • 1990年にOVA『天外魔境 ~自来也おぼろ変~』が作られている。
    • 『天外魔境III NAMIDA』宝箱(DXパック)の特典(DVD)の一つになった。
    • 当時のREDの会報にOVAと同じタイトルでアクションゲームを製作中という記事が載っていたが、結局発売はされなかった。
  • PCエンジンの専門誌にあった、天外魔境シリーズの過去作品に関する対談のページで「CD-ROMになって、容量が大きくなったからと、あれこれとイベントを追加していたら、容量が足りなくなって泣く泣く削った部分もあった」という、広井王子の言葉があった。
    • 入れたいイベントは、東北地方の物だったとか。
      • シナリオは一から十まで桝田氏が手がけたもの、というわけではない。広井氏の会社に所属している人物(上述のあだちひろし氏)が書いたものを桝田氏がゲームソフト向けに大幅に作り変えたのが本作のシナリオである。その際に東北あたりのイベントも削れらた模様。
  • 自来也は本来「ジライJIRAIYA)」と発音するのだが、本作ではローマ字表記時の字面の視覚性を良くするために「ジライZIRIA)」に変更されと、という経緯がある。
  • 後にPCエンジンDuoの購入キャンペーンとしてSUPER CD-ROM2に移植され対象者先着30,000名に配布されたが、大量に作られたため非売品にもかかわらず、ゲームショップで投げ売りされるという、非売品ソフトの中でも特にプレミア感の無いソフトになってしまった。
    • ゲームそのものはベタ移植で、ロードの時間が多少長くはなっているものの回数がかなり減っており、値段も通常版と変わらず売られているため、いまやるなら大差はないもののこちらの方がよいかもしれない。


天外魔境 ZIRIA~遥かなるジパング~

【てんがいまきょう じらいあ はるかなるじぱんぐ】

ジャンル RPG
高解像度で見る
裏を見る
対応機種 Xbox360
発売元 ハドソン
開発元 ハドソン、レッド・エンタテインメント、スティング
発売日 2006年3月23日
定価 6,800円(税抜)
判定 良作

概要(360)

『天外魔境 ZIRIA』のリメイク作。
単純な移植・リメイクでなく、ほぼ別作品と呼べるほどに改変が加えられている。


主な変更点(360)

  • 移植ではなく完全なリメイク作品であり、シナリオ修正前の原案要素などを交えて再構築されているためオリジナル版とは別物となっている。
    • 月姫がメインヒロインになったため、自来也は月姫を守る事に燃えるなど、自来也が全編においてセリフが増えている。
  • グラフィックやシステムは完全に作り直され原作の面影はほぼない。またBGMも一部を除きアレンジされている。
  • 戦闘は原作と同じターン制だが、戦闘画面が完全3Dになったため、『天外魔境III NAMIDA』と同様味方パーティが表示されるようになった。
    • また、仲間との連携が可能になっており、戦闘ボイスも導入されている。攻撃モーションも追加された。
  • ビジュアルシーンからアニメムービーに変更、ミニゲーム、ダウンロードコンテンツ、実績、ゲームクリア後のおまけなどが充実されている。
  • ちなみに一部声優の変更もされている。

問題点(360)

  • カメラアングルの悪さ
    • 建物から出た時やダンジョンでエリア移動した時などに画面が切り替わると、主人公が真正面からこちらを見ている状態となっている。
    • 移動時のカメラがかなり主人公に寄っており、地形が把握しにくくなっている。

総評(360)

完全リメイクであるため厳密にはオリジナルとは異なる作品であり、カメラアングルの悪さなどの欠点もあるが、オーソドックスなRPGとしてのオリジナルの良さは失われていない。新規の人も原作プレイ済みの人も、楽しめるようになっている。
何分古い作品がもとになっているため真新しさはほぼないが、作りはとても丁寧であり、人に安心して薦めることのできる作品といえる。


余談(360)

  • 日本国内であまり普及していないXbox360での販売で一時期はDL版での配信もあったものの配信が終了してからは、需給のバランスが悪く、現在でも中古価格が新品並みに高止まりしている。