釣り先生

【つりせんせい】

ジャンル RPG
対応機種 ゲームボーイ
発売元 J・ウイング
発売日 1998年9月11日
定価 5,400円
判定 クソゲー
ポイント ストーリー皆無の内容スカスカ
釣りシステムもチープ
バランス適当すぎ
図解から適当に掻い摘んだレベルの魚類知識
なぜか古代魚が釣れる


概要

『昆虫博士』と同時期に発売された釣りゲー*1
主人公はアングル諸島にて開催される「鉄人釣り大会」 に参加し、優勝をかけてライバルたちと競う。

特徴

  • 主なモードは、「大会」「フリー」「通信対戦」の3つ。
    • 「大会」は「鉄人釣り大会」に参加して、優勝を目指す。
      • 釣り大会は日程を最短の3日から94日まで自由に決めることが可能。マップは複数枚からランダムで選ばれる。体力等のパラメーターがあり、野生の動物が出没するなど、サバイバル的要素が強い。
    • 「フリー」は体力や日数に関係なく、自由に釣りが出来る(釣りを行ってもおなかが空いたりはしない)。ただし獲物は即リリースになるため換金や調理が行えない等、制約がある。
  • 「キャスト」と言った能力値のほか「たいりょく」「まんぷく」といったパラメーターが存在する
    • 「キャスト」はグローブを上位の物に代えることで基礎値が底上げされる。アイテムの所持可能数はバッグを変更することで増加。たいりょくやまんぷくは食事を取ったり回復薬を使うことで改善される。
    • 「ひょうか」は島民たちからどう見られているかを表わしており、ゴミ箱に物を棄てると上昇し、道端に捨てたり小さい魚をリリースしないと下がる。
      • リリースすると「評価が上がった」と出るが 実際には上がっていない
      • 上昇すると野生生物や保護官(ともに後述)、島民の反応が変わる。たとえば低い評価だと島民は口を聞いてくれなくなる。
    • 一応、RPGとしての体裁は保っている。ただし大会のたびに初期化されてしまう。加えてほとんどがマスクパラメーターとなっており、大まかにしか中身を知ることが出来ない。
  • 大会モードでは、島の各地を歩き回りながら釣りをすることになる。
    • 島には野生動物や保護官が出現する。これらは道を塞いでおり、動物はアイテムを渡したり(失敗して反撃されることもあり、体力が減少する)、罠を使ってどかすことが出来る。保護官は保護指定の魚を所持していると没収されてしまう(ただし罰金等は無い)。
      • いずれも「ひょうか」が高くなるとノーリスクで見逃してくれる。そのため「ひょうか」は非常に重要となる。
    • 大会は1匹のポイント制で、珍しい魚ほど高くなる。登録には大会本部に生きたまま持って帰ってくる必要がある。

評価点

  • 魚は60種類程度と、それなりの数は保っている。
    • 「古代魚」という分類の魚があり、現実世界では化石になっているような魚も釣ることが出来る。基本現実世界にいる魚のみを扱っているゲームが多いなかで、こういった古代魚を扱っている釣りゲームはやや珍しく、数少ない純粋に評価できる点と言えるか。
      • 出てくる魚はかなりマニアックなのだが、一応どれも化石から見つかっている実在(していたと思われる)魚である。ただ、「シムモリウス」は「シムモリウム」の誤字である可能性が高い。
    • 図鑑には釣りあげたアイテムも登録され、全81種類。
      • ただし、中身はどうかと言えば非常に大雑把かつ間違いだらけで、突っ込みどころ満載。問題点にて後述する。

問題点

釣りに関する問題点

  • 釣りゲーとしての出来はお世辞にもよくない。
  • マップは複数ありランダムで選ばれるのだが、中身はと言えばどれもこれもマップチップを適当に張り合わせただけというレベルにグチャグチャである。
    • 川はほとんどつながっておらず切れ切れになっており、湖も川とつながっていない閉鎖湖だらけと、地形としても滅茶苦茶である。
      • 釣り場は川、湖、磯、海とあるのだが、実際にはそれぞれ複数種類のマップチップがあるだけで、「○○川」や「××湖」といったものは存在しない。そのため魚の配置システムも適当と言うほかない。
      • 「~~に行けば○○が釣れる」等細かいゲーム性は一切無く、マップチップごとに釣れる魚自体が割り振られている。さらに言えば、実際にはマス目ごとに「魚の有無と魚種」までもが決まっているという仕様*2
      • 珍しい魚は釣りにくいが、大会ランカーがそのマップチップ内にいるかどうかで釣れるかが判別できる。ランカーが居ない場合も近くにいる釣り人がヒントをくれる。逆にいえばそれ以外では見た目が一緒のため判別が出来ない。
  • 釣りシステムの出来もそれほど良くはない。
    • 投げて、エサを振って、食いついたら引き上げる。これだけである。
      • 針システムは存在せず、エサによって食いつくか食いつかないかが決まっているだけ。
      • アピールについても、糸を引きながら左右に振る以外にない。それでも食いつくかはランダム要素が強く、逆にいきなり食いついてくることもある。
      • 魚の進行方向と逆にキーを入れることで弱らせることができるが、岩場ではいきなり岩に突進されて切れることも多々。竿関係なしにこれがよく起きる。
    • 珍しい魚や大きい魚は釣りにくいが、細かくパラメーターが分かれているわけではなく、単に引きが強かったり体力が高かったりという程度。「軽いが良く引く」とか「あまり引かないがとにかく重たい」というような現実世界での駆け引きはなく、『ぬし釣り』のように「針の大きさが違うと餌だけ取って逃げられる」というようなシステムもない。
    • 魚による差も見いだしにくく、単調なシステムではあるのだが外洋など障害物の少ない場所ならばそれなりに楽しめる程度の質にはなっている。逆に岩場や杭のある場所は運任せの要素が強い。前述の通り岩に当たるとすぐ切れるため、魚を弱らせてというような長期戦自体が困難で、陸地ぎりぎりで食いつかせてそのまま一気に引き上げるという一本釣りのようなテクニックを要求される。
  • 肝心の魚の説明が大雑把な上間違いだらけ。
    • 「一般呼称」と「標準和名」がしっちゃかめっちゃかに混じっている。「釣りモノ」はやや独特の区分もあり、釣りゲーならそれらに配慮して魚種や名前を設定していくのがベターであるのに、全く意識されていない。
    • 「ハゼ」「フグ」「サメ」のような総称、一般呼称の魚が多い。「アジ」のようにそれだけだとほぼ一魚種を指すような呼称、「サバ」のようにあまり区別しない魚*3はともかく、「カジキマグロ」のようにおおよそ魚釣りゲームとは思えないような俗称*4さえある。
    • 「ブラックシャーク」「Gグラミー」といった突拍子もない魚や、「アユモドキ」「カムルチー」「ドンコ」のようにやけにマニアックな魚が居たりする。
    • 釣れる場所や対応するエサもおかしい。なぜか「ハゼ」や「ボラ」が川で釣れたりする*5。河口もない上にマップチップが滅茶苦茶なのでやむを得ずそうしたのかもしれないが、磯で「マンボウ」が釣れたり、テナガエビで「イワシ」が釣れたりするなど、常識を疑うレベルのものさえある。
    • 毒を持っている魚*6もいるのだが、「フグ」はともかくとして、「カサゴ」「ヒラマサ」「カムルチー*7など普通に食べられる魚が毒を持っており、明らかに間違っている。
      • 「カサゴ」は「ミノカサゴ」とごっちゃにされた可能性がある*8。「ヒラマサ」はシガテラ毒の可能性があるが、わざわざゲーム内のNPCが「もうどくがある」などと言っている。「カムルチー」に至っては養殖までされている食用魚である*9
    • 全体として、魚に関する知識も魚釣りの経験もない人間が、自身の乏しくいい加減な知識・図鑑から掻い摘んだ知識・聞きかじっただけの情報で作った図鑑と言った感じの内容。

ストーリー関連の問題点

  • そもそもストーリーが無い
    • 参戦する理由はおろか、名前付きNPCについても何のイベントもない。
    • 釣り大会は「もっとも珍しい魚」を釣り上げ、生きたまま会場まで持ってきた人の勝利というもの。魚ごとにポイントがあるのだが、実際には「2643Pを超える魚を釣ったら勝ち」という単純なもの(NPC1位の「あらし」のポイントは固定)。
      • 2位以下には何もないし、高ポイントだからといって何かが起きることもない。さらには慣れれば簡単に超えることが出来る程度のポイントである。 むしろ2位になる方が難しい *10
    • 優勝後にそのデータで開始すると「ムーンルアー」というアイテムが所持品に入っているのだが…
      + ムーンルアーについて
    • 「ムーンルアー」は普通の魚は釣れず、かわりに「月光」という魚が釣れる(パッケージに載っている魚である)。
      • ただし 釣りあげた途端に糸が切れて逃げてしまう 。図鑑にも登録されないし、ストーリーが進むわけでもなく、 全く意味が無い

システム周りの問題点

  • アイテムにスタック機能が無い。
    • そのため餌は持てる量がかなり制限されてしまう。「購入する」「草むらや河原を探す」「釣りあげる」といった入手ルートの中、欲しい物を直接手に入れるには買う以外ないのだが、店舗は大会本部にしかない。他の方法では手に入るかどうかも何が手に入るかもランダムな上、体力を消費するため効率が非常に悪い。
  • 野生動物は鬼畜としか言いようがない。
    • ランダムで出没し道を塞いでいるのだが、アイテムを渡すか罠を仕掛けて駆除(この際肉が手に入る。餌や食事になる)するしかない。
      • ただしアイテムを渡してもほぼ攻撃を受けてしまう(というよりも何を渡せばいいのかの ヒントは一切ない )。動物に合った罠を使えば確実に駆除できるが、そうやってどかしても マップを切り替えると即復活する 。アイテムは一切スタックできない上動物の種類も多数に上るため、枠がいくらあっても足りない。
    • 反面、評価を上げると完全にスルーしてくれるようになる。逆にいえば評価を上げなければまともな釣りすらできずに病院送りにされる。
    • 野生動物や保護官がいるために「ひょうか」が高くないと釣りをすること自体が困難なのだが、評価を手っ取り早く上げる方法は 釣り具屋で買ったエサを店先のゴミ箱にひたすら放り込む 、という無茶苦茶なもの。正攻法で拾ったものを棄ててもなかなか上がらないため、必須の行為である。
  • 体力の減りや満腹度の減少が非常に速い。釣りをするとすぐに尽きて食事が必要になり、歩いているだけで空腹になって倒れてしまうこともしばしば。
  • 大会に登録するには魚を生きたまま持ち帰らないといけないのだが、この魚が とにかくすぐ死ぬ 。プレイヤーと同じく歩数ごとに弱っていくという仕様なのだが、あっという間に弱っていく上に、エサを与えても回復量は微々たるもので焼け石に水。そしてアイテムスタック不可という仕様上、大量投与で無理やり本部まで持たせるという戦法は困難。

総評

本作の釣りや野生生物の仕様等には、既存の人気釣りゲーム『ぬし釣りシリーズ』などと何とかして差をつけようとした感が窺える。しかし試みはほぼ全方面で失敗に終わっている。仕様そのものの問題、釣りゲーとしては魚にあまりに無頓着であること、といった完成度の低さ、ゲームバランスの悪さが目立つ。釣りそのものは場所によってはある程度楽しめる程度の出来とは言え、それ以上に体力消費やエサの仕様など、RPG面がほぼ全方面クソという劣悪さを誇っている。
同時発売の『昆虫博士』が、ストーリーやゲーム性に一定の評価が出来る代物になっているのに比べて、明らかに完成度が低く、むしろムーンルアーの謎仕様や説明書との食い違い*11を考えるに 開発途中で力尽きて作りかけを体裁だけ整えてそのまま発売した のではないかと強く疑われる。

余談

  • こんなゲームであるが2が発売されている。こちらはちゃんとストーリーもあり*12、月光といった魚も絡んで、ちゃんとしたゲームになっている。釣りシステムについても若干は改良されている。

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最終更新:2022年01月09日 22:53

*1 テレビCMも2作品一緒にやっていたのだが、発売自体は向こうのほうが半月ほど早い。

*2 隠しアイテム「ぎょたんのこころ」の仕様から判明している

*3 一般に鯖は「マサバ」と「ゴマサバ」があるが、釣りモノとしては区別されずに「サバ」である。

*4 例えば、動物を捕まえるゲームでモグラを発見したら「モグラネズミ」と出るようなものである。「釣りモノ」としてもカジキ類はわりと細かく区別されるため、このような呼称はナンセンスである。

*5 ともに汽水域に多い魚で、完全な淡水域までは進入しない。釣りとしても河口で釣る魚である。ちなみに淡水域にいるハゼの代表格が前述の「ドンコ」。

*6 このゲームでは魚をそのまま食べる事が出来るのだが、毒魚は食べると必ず毒状態になる。無毒魚は食べても絶対に毒にならない。どちらでもない魚はランダムで毒になる、という仕様

*7 いわゆるライギョのことであるが、韓国語読みがそのまま標準和名になっている。細かいことを言えばライギョという標準和名をもつ魚は存在せず、逆にライギョはタイワンドジョウ科の近縁種(コウタイ、タイワンドジョウ等)を含むこともある。いずれにしても「釣りモノ」としては「タイワンドジョウ」も「カムルチー」もライギョとして、サバ同様に区別されない。中途半端に標準和名を使ってるあたり、図鑑から引っ張って来た知識だけで作っている感が透けて見える。

*8 普通の「カサゴ」は棘はあるが毒は無い。

*9 ただし、野生種は寄生虫だらけなので生では絶対に食べてはいけないとされている(火を通せばOK)。もっとも、寄生虫のリスクについては淡水魚ほぼすべてに当てはまるものなので、わざわざカムルチーだけを毒にする理由は無い。

*10 NPC1位と2位の差が僅差の為そのレンジにポイントを入れるのが難しい。もっとも、だからといって何があるわけでもない。

*11 実際のゲームにはないパラメーターが映っている画像がある

*12 1に出てくる名有りNPCキャラは全員再登場するが、ちゃんとキャラが肉付けされている。